NOTE 26 · 営業の実践ノート
営業の「言った・言わない」を減らす引き継ぎメモ|担当・期限・未確認を残す
公開:2026年10月2日/更新:2026年10月3日
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伝えたつもりでも、相手は別の意味で受け取っていることがあります。引き継ぎは長文にするより、事実・担当・期限・未確認を同じ場所に残すところから始めましょう。
この記事の目次
- 1
事実と希望を分ける
- 2
次の担当と期限を書く
- 3
同じ記録で確認する
- 4
変更点と確認待ちを残す
会話・日付・記入例は説明用です。実際の条件へ置き換え、未確認の内容は約束しないでください。
なぜ「言った・言わない」が起きるのか
引き継ぎとは、自分が聞いた話を、次に動く人へ渡すことです。担当を交代するときだけではありません。事務への手配の依頼、現場への連絡、休みの前に代わりを頼むときも、すべて引き継ぎです。
初心者によくあるのは、こんな場面です。顧客から電話で「来週でお願いします」と言われ、事務の人に「来週納品で」と口頭で伝えた。ところが現場は聞いておらず、当日になって「聞いていない」「いや、言いました」となる。原因は、記録がなく、それぞれの記憶に頼っていることです。
記録がないと、後から確かめる方法がありません。どちらの記憶が正しいかを話し合っても、答えは出ません。その間、顧客への返事は止まったままです。
ウッシは、事務員・営業・社長・現場の間で情報共有に時間がかかっていた状況を話してくれました。依頼が来た時点で関係者へ共有し、役割を早く分けるようにしたという経験です。
この経験から取り入れたいのは、全員に同じ仕事をさせることではなく、「誰が次に何をするか」を見えるようにすることです。以下はその考え方を使った手順で、会話や記入例は説明用です。
引き継ぎメモの5つの欄
長い文章は要りません。次の5つの欄に分けて書きます。電話を切った直後や、商談から戻ってすぐの数分で書くのが目安です。時間がたつと、聞いたことと、自分が考えたことの区別がつきにくくなります。
- 依頼:何を求められているか。元の依頼が分かる日付や、記録の場所。
- 確定事項:相手と確認できた内容。誰が、いつ確認したか。
- 未確認:顧客の希望、自分の推測、回答待ちを分けて書く。
- 次の対応:誰が、何を、いつまでに確認・対応するか。
- 困ったときの相談先:間に合わない、条件が変わったときに、誰へ知らせるか。
5番目の相談先は、忘れやすい欄です。期限に間に合わないと分かったとき、誰に知らせればよいかが書いてあれば、次の担当者は一人で抱え込まずに済みます。
いちばん間違いやすいのは、2と3の区別です。たとえば「来週でお願いします」だけでは、希望なのか確定なのかが分かりません。「顧客の希望は来週。現場の日程は未確認。営業担当が現場責任者へ確認する」と分ければ、次の作業が見えます。
手順:メモを書いて渡す4ステップ
- 事実と希望を分ける。電話や商談の直後に、聞いた内容を「確定」「希望」「推測」に分けて書きます。迷ったものは「未確認」にします。
- 次の担当と期限を書く。「誰が・何を・いつまでに」を一行にします。名前を書いただけでは、その人が引き受けたことにはなりません。
- 同じ記録を見ながら、本人に確認する。会社で決まった共有場所にメモを置き、担当する本人に「この内容と期限でお願いできますか」と聞きます。返事をもらってから、確定として扱います。
- 変更点と確認待ちを残す。条件が変わったら、変わった点を先頭に書き、更新した日と確認した人を残します。
手順3の聞き方は、次のような形です。
説明用の会話例:「この案件は、在庫確認をお願いしたいです。明日の午前中までに回答可能でしょうか。難しい場合は、回答できる時期を教えてください。」
共有先に投稿しただけでは、必要な人が内容を理解して動けるとは限りません。返信がなければ、勝手に了承済みへ変えず、「担当確認待ち」と記録します。既読や通知の有無だけで、仕事が済んだと判断しないことがポイントです。期限が近いときの連絡手段は、会社のルールに合わせて選んでください。
手順4では、最新版だけを送り直さないようにします。「数量を2台から3台へ変更。納期は再確認中」のように、どこが変わったかを先に示します。古い版と最新版の区別がつくよう、同じ記録をあちこちに作りすぎないことも大切です。
記入例(説明用)
顧客から納品の希望を受けた、という架空の場面です。実践シートの5つの欄に対応しています。
| シートの欄 | 記入例(説明用) |
|---|---|
| 依頼内容・元の記録の場所 | 商品3台の納品。◯月◯日の電話で受けた。メモは共有の案件表に記入済み |
| 確定事項・確認した人と日時 | 数量は3台(◯月◯日、顧客の担当者に電話で確認) |
| 未確認/顧客の希望/推測 | 希望=来週中の納品。未確認=在庫と配送の日程。推測=在庫はありそう |
| 次の担当・対応・期限・本人の返答 | 在庫確認を事務の担当へ依頼。期限は明日の午前。本人の返答待ち |
| 変更点/遅れる場合の相談先 | 数量を2台から3台へ変更。来週に間に合わない場合は上司へ相談し、顧客へ連絡 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
メモを書く場所は、会社で決まっている共有の場所にします。決まりが分からないときは、先輩に「この案件のメモは、どこに書けばよいですか」と聞きます。個人のスマートフォンのメモや私用のアプリへ顧客の情報を書いてよいかどうかも、会社のルールを確認してください。
「在庫はありそう」は推測なので、確定の欄には書きません。本人の返答がまだなので、4つ目の欄は「返答待ち」のままにしています。
顧客に送る要約と、個人情報の扱い
引き継ぎメモを、そのまま顧客へ転送しないでください。顧客へは「共有する要点と、確認した約束」だけを送ります。原価、社内の相談、まだ承認されていない判断は、自分用に分けます。送る前に、宛先と内容を見直します。
説明用の要約例:「本日お電話で伺った内容です。数量:3台。納品のご希望:来週中。在庫と配送の日程を確認し、明日中に納品できる日をご連絡します。」
この要約には、「在庫はありそう」という推測も、社内で誰に頼んだかも書いていません。顧客に伝えるのは、確認できたことと、次にこちらが連絡する日です。
共有する範囲は、仕事に必要な関係者に絞ります。顧客の個人情報や機密情報を、外部の公開場所や、会社が認めていないサービスに貼り付けないでください。
個人情報保護委員会のガイドラインでは、個人情報を取り扱う事業者(会社など)は、個人データが漏れたり、なくなったり、壊れたりしないよう、必要かつ適切な安全管理の措置をとらなければならないとされています。働く人がその措置を守るよう、事業者が監督することも求められています。
詳しくは個人情報保護委員会の通則編(安全管理措置)を参照できます。具体的な保存場所や持ち出しのルールは会社ごとに決まっているので、先輩や上司に確認してください。
顧客へ送る文面と自分用のメモを分けて作りたいときは、商談後フォローが使えます。メールに反映する欄と、自分用の欄が分かれています。入力した事実や相手との合意は、自分で確かめてから使ってください。
よくある失敗と、食い違ったときの直し方
- 希望を、確定として伝える。「来週納品です」と伝えると、聞いた人は決定事項だと受け取ります。「顧客の希望は来週。日程は未確認」と書き分けます。
- 名前を書いて、頼んだつもりになる。本人が知らなければ、誰も動きません。本人の返答を欄に書くまでは「確認待ち」です。
- 長文で、全部を書く。読む人が、どこが自分の仕事なのかを探すことになります。5つの欄に分け、次の対応を一行にします。
口頭で頼んだときや頼まれたときも、同じです。話した後で、「先ほどの件、念のため書いておきます」と同じ内容を記録に残します。相手を疑っているのではなく、お互いが後から見返せるようにするためです。
すでに食い違いが起きているときは、誰のせいかを決める前に、記録をそろえます。「先ほどの内容を、次の担当が動ける形に整理したいです」と目的を伝え、依頼メールや共有記録を一緒に確認します。発言した人を責める表現より、どの条件が一致していないかを具体的に書きましょう。
今日の一件では、まず「未確認」を一つ見つけてください。確認する人が決まれば、それが次の行動になります。
担当が替わることを取引先へ伝える文例は、担当変更の挨拶にまとめています。
自分の一件で試す
言った・言わないを減らす引き継ぎ:実践シート
手元の依頼や商談記録を一件選び、分かったことから書きます。
記入例を見る(説明用)
説明用:依頼=商品3台の納品(◯月◯日の電話。共有の案件表に記入済み)/確定事項=数量は3台(顧客の担当者に電話で確認)/未確認=顧客は来週中の納品を希望。在庫と配送の日程は未確認/次の対応=在庫確認を事務の担当へ依頼。期限は明日の午前。本人の返答待ち/変更点=数量を2台から3台へ変更。間に合わない場合は上司へ相談し、顧客へ連絡する。
ここまでできたら、次へ。
希望を確約と混同せず、担当の了承状況と次の確認先が分かる。
まだ分からない欄があるときは?
無理に埋めず、確認先と次の連絡方法を決めましょう。判断する権限がない内容は、先輩や責任者へ相談します。