WORKED EXAMPLE
説明しなくても伝わる、
提案資料の完成見本。
現状から改善案、数字の比較、今回の判断まで。社内へ持ち帰る資料を、一つの例でたどります。
売上の増加と、費用を引いた利益の増加を分ける。
自分の案件に置き換えて使う、提案資料の実践教材
以下の会社・案件・数値はすべて説明用の架空設定です。本人や顧客の実績ではありません。 前半は顧客が社内で説明する資料の完成例、後半は作成者向けの空欄シートと確認方法です。
1|社内へ回す提案資料の完成例
提案:確認業務を減らし、受けられなかった案件を担当する余力を作る
今回決めたいこと:一部署で現状の作業時間を測り、改善の試行条件を整理してよいか。全体導入や新規受注の開始は、今回は決めない。
| 問題 | 現状の根拠・状態 | 改善案 | 試行で確認すること |
|---|---|---|---|
| 同じ内容を担当者ごとに確認している | 月40時間という担当者の概算。実測前 | 共通の依頼記録と、確認する担当・代行者を決める | 記録・確認・例外対応を含む作業時間 |
| 人手不足で案件を受けられない | 相談はあるが、件数・採算・開始時期は未確認 | 改善で生まれる余力を、その案件へ配置する | 案件候補、必要技能、受注可能性、必要時間 |
| 休暇中の引き継ぎが曖昧 | 窓口の代行方法が決まっていない | 担当者以外も進捗を確認できる記録へ変える | 代行者が記録を見て引き継げるか |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
これらはこの見本の仮想の現状です。実案件では観察・記録・本人への確認で置き換えます。休暇の改善は収益へ換算せず、引き継ぎの状態として評価します。
余力をどう使うか
現在の確認業務が月40時間、改善後が月20時間になると仮定します。差の20時間を、追加案件へ回す案です。
1件に2時間必要なら、計算上は月10件までです。ただし、同じ人員が担当できる技能と、必要な時期に20時間を確保できることが条件です。月合計だけ合っていても、繁忙日が重なれば受けられません。
既存の給与支出は変わらない想定です。空いた20時間を人件費削減額として計上せず、追加案件の対応余力としてだけ扱います。設定・研修の社内時間はこの20時間とは別に確認し、確保できるまでは開始日を決めません。
試算の前提
金額はすべて万円・税抜。以下は検討のための仮置きです。
| 項目 | 仮置きした値 | 実案件で確認する根拠 |
|---|---|---|
| 前年の月間売上 | 100 | 対象事業の月次実績 |
| 前年の月間費用 | 80 | 給与などを含めた対象事業の月次費用 |
| 前年の月間営業利益 | 20 | 売上−費用。会社の集計範囲と照合 |
| 追加案件数 | 月10件 | 見込み案件一覧、顧客の意思、対応能力 |
| 追加案件の売上 | 1件2 | 見積条件、数量、受注時期 |
| 追加案件の変動費 | 1件1.4 | 材料・外注・輸送などの必要費用 |
| 新たな月額費用 | 2 | 利用料・保守などの見積もり |
| 初期費用 | 12 | 初期設定等。この例では全額を開始月の費用に含める |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
実案件で初期費用の扱いが異なる場合は経理担当と集計方法をそろえます。この見本は税額や資金繰りの計算を含みません。既存事業の売上・費用は変わらない仮定で、季節変動も省略しています。
月ごとの比較
試行と条件確認を終え、仮に1月から月10件を受けられた場合のシナリオです。試行の承認で、この数字が確定するわけではありません。
| 月 | 前年売上 | 前年費用 | 前年利益 | 改善後売上 | 改善後費用 | 改善後利益 | 利益の差 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1月 | 100 | 80 | 20 | 120 | 108 | 12 | −8 |
| 2月 | 100 | 80 | 20 | 120 | 96 | 24 | +4 |
| 3月 | 100 | 80 | 20 | 120 | 96 | 24 | +4 |
| 4月 | 100 | 80 | 20 | 120 | 96 | 24 | +4 |
| 5月 | 100 | 80 | 20 | 120 | 96 | 24 | +4 |
| 6月 | 100 | 80 | 20 | 120 | 96 | 24 | +4 |
| 7月 | 100 | 80 | 20 | 120 | 96 | 24 | +4 |
| 8月 | 100 | 80 | 20 | 120 | 96 | 24 | +4 |
| 9月 | 100 | 80 | 20 | 120 | 96 | 24 | +4 |
| 10月 | 100 | 80 | 20 | 120 | 96 | 24 | +4 |
| 11月 | 100 | 80 | 20 | 120 | 96 | 24 | +4 |
| 12月 | 100 | 80 | 20 | 120 | 96 | 24 | +4 |
| 年間 | 1,200 | 960 | 240 | 1,440 | 1,164 | 276 | +36 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
計算の内訳:
- 月間の追加売上:10件×2万円=20万円。
- 月間の追加変動費:10件×1.4万円=14万円。
- 通常月の利益増加:20−14−2=4万円。
- 初月の利益増減:4−12=−8万円。
- 年間の利益増加:4×12−12=36万円。
売上は年間240万円増える想定ですが、利益の増加は36万円です。初月は前年より利益が下がります。 この表の改善後利益は、仮定どおり進んだ場合の数字です。
受注が少なかったらどうなるか
同じ単価・変動費・月額費用・初期費用で、件数だけを変えます。
| 月の追加件数 | 月の追加売上 | 月の追加変動費 | 通常月の利益増減 | 初期費用を含む年間利益増減 |
|---|---|---|---|---|
| 10件 | 20 | 14 | +4 | +36 |
| 5件 | 10 | 7 | +1 | 0 |
| 0件 | 0 | 0 | −2 | −36 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
0件の場合も月額費用を12か月払った想定です。途中で解約できるか、ほかに費用が残るかで実際の結果は変わります。
この前提では、平均月5件で初期費用を含む年間利益の増減がゼロになります。月10件を当然視せず、少ないケースも見て判断します。
実施前に確認すること
| 確認事項 | 担当する役割 | 期限 |
|---|---|---|
| 現状の確認時間と、改善後も残る作業 | 現場責任者と営業担当 | 試行条件を決める会議まで |
| 追加案件の件数・単価・納期・受注可能性 | 営業担当 | 試算を確定する会議まで |
| 変動費・月額費用・初期費用の範囲 | 購買・経理等の担当 | 試算を確定する会議まで |
| 配置する人員の技能と、研修・設定時間 | 現場責任者 | 開始日を決める前 |
| 試行を止める条件と、元の手順への戻し方 | 実施責任者 | 試行を始める前 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
実案件では役割を具体的な担当者に割り当て、期限を日付に置き換えます。確認が済まない項目は、済んだように書き換えません。
今回の依頼と、次の判断
まず、現状を測る担当者と、試行条件を話す日を決めたいと考えています。実測値、必要費用、案件の見込みをそろえた後に、この比較表を更新します。
導入は、担当者・費用・運用・受注対応の条件を確認して判断します。試行中に通常業務へ支障が出た場合は責任者へ報告し、事前に決めた手順へ戻します。
2|悪い資料と、説明できる資料の違い
| 伝わりにくい書き方 | この見本での書き方 |
|---|---|
| デジタル化すれば売上が伸びる | 確認業務の余力を追加案件へ回す。必要時間と受注見込みは確認が必要 |
| 年間240万円の効果 | 追加売上240万円、追加費用204万円、利益増加36万円という仮説 |
| 20時間空くので人件費も売上も改善 | 給与支出は据え置き。余力を案件へ回し、削減額との二重計上をしない |
| とりあえず導入したい | 今回は現状測定と試行条件の整理を相談。導入判断は条件確認後 |
| 人手不足を解消できる | 同じ技能・時期に必要な余力が作れるかを実測する |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
3|自分の案件に置き換える空欄シート
初心者は、まず1〜3を一件分書きます。数値や費用は、確認先を決めて先輩と埋めてください。
- 誰が、誰に説明する資料か:____
- 問題点と確認できた根拠:____
- 対応する改善案:____
- 前年の売上・費用・利益の対象範囲と出典:____
- 追加案件数と根拠:____
- 一件の売上・変動費と根拠:____
- 毎月かかる費用・初期費用:____
- 空く時間・必要な時間・技能・時期の条件:____
- お金に換算しない改善点と、その確認方法:____
- 未確認事項・確認する人・期限:____
- 今回決めたいこと:____
- 見直す日と、見直す条件:____
月別の表は次の形で埋めます。見込みは必ず実績と区別します。
| 月 | 前年売上 | 前年費用 | 前年利益 | 見込売上 | 見込費用 | 見込利益 | 利益差 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1月 | _ | _ | _ | _ | _ | _ | _ |
| 2月 | _ | _ | _ | _ | _ | _ | _ |
| 3月 | _ | _ | _ | _ | _ | _ | _ |
| 4月 | _ | _ | _ | _ | _ | _ | _ |
| 5月 | _ | _ | _ | _ | _ | _ | _ |
| 6月 | _ | _ | _ | _ | _ | _ | _ |
| 7月 | _ | _ | _ | _ | _ | _ | _ |
| 8月 | _ | _ | _ | _ | _ | _ | _ |
| 9月 | _ | _ | _ | _ | _ | _ | _ |
| 10月 | _ | _ | _ | _ | _ | _ | _ |
| 11月 | _ | _ | _ | _ | _ | _ | _ |
| 12月 | _ | _ | _ | _ | _ | _ | _ |
| 年間 | _ | _ | _ | _ | _ | _ | _ |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
利益=売上−費用。利益差=見込利益−前年利益。追加売上、現金支出の削減、時間の余力は別々に扱います。既存費用と追加費用に同じ支出を入れないようにします。
4|「一人歩きできるか」の確認
商談に参加していない人へ、完成資料だけを渡します。作成者は先に説明せず、次の五つを説明してもらいます。
- 何が問題なのか。
- 何を変えるのか。
- 数字はどんな前提で計算したのか。
- 負担や未確認事項は何か。
- 今回、何を判断すればよいのか。
この見本の答えは、「確認業務と人手不足」「記録と担当をそろえて余力を作る」「月10件等の仮定」「時間・技能・案件・費用が未確認」「まず現状測定と試行条件の整理」です。
完了の基準:五つとも、資料内の根拠を示して説明できること。 売上の増加を利益の増加と取り違えたら不合格です。口頭で補った箇所は、資料の修正箇所として残します。
一人が説明できても、すべての読者への再現性が証明されたわけではありません。実際の読者で確認した日、迷った箇所、直した内容を記録します。
- 確認日・読者の経験:____
- 説明できた項目:____
- 誤解・迷いがあった項目:____
- 原稿の修正:____
- 修正後の確認結果:____