NOTE 110 · 営業の実践ノート
「弊社」と「当社」の違い:社外あてと社内での使い分けと、一通の中でそろえる書き方
公開:2026年10月3日/更新:2026年10月4日
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「弊社」は、辞書に「自分の会社をへりくだっていう語」とあります。「当社」は「この会社。また、自分の所属するこの会社」で、語釈にへりくだる意味は入っていません。この違いから、取引先に向けて自分の会社を低く言うときは「弊社」、へりくだる相手がいない社内では「当社」、という使い分けが広く行われています。この記事では、辞書と文化庁の「敬語の指針」に書いてある範囲で違いを確かめ、一通の中で呼び方をそろえる書き方を、例で説明します。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 取引先へのメールで「弊社」と「当社」のどちらを書くかで迷うとき。社内の文書や、会社の案内文を書くことになったとき。
- 1
読む人が、社外の相手か、社内の人かを確かめる
- 2
会社のひな形や、先輩の文書の呼び方を見る
- 3
自分の会社の呼び方を一つ決める
- 4
一通の中に、別の呼び方が残っていないか探す
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
「弊社」「当社」「小社」「自社」「わが社」の意味
取引先へのメールに「弊社の商品は」と書いた。次の段落は、会社案内から文を写したので「当社では」になっている。読み返して、どちらが正しいのかで手が止まる。自分の会社の呼び方は、文を写したり、ひな形を使ったりするうちに、混ざりやすい所です。
先に、言葉の意味を辞書で確かめます。コトバンクに載っている二つの辞書を引きました。「 」の中は、辞書の文をそのまま写したものです。
| 言葉 | 辞書の語釈 | 語釈から言えること |
|---|---|---|
| 弊社(へいしゃ) | 「自分の会社をへりくだっていう語。」(デジタル大辞泉「弊社」)/「自分の属する会社をへりくだっていう語。」(精選版 日本国語大辞典「弊社」) | へりくだって言う語 |
| 当社(とうしゃ) | 「この会社。また、自分の所属するこの会社。我が社。」(デジタル大辞泉「当社」の1番目)/「自分の所属するこの会社。」(精選版 日本国語大辞典「当社」の2番目) | 「この会社」という意味。へりくだる意味は、語釈に入っていない |
| 小社(しょうしゃ) | 「小さな会社。また、自分が勤務している会社をへりくだっていう語。」(デジタル大辞泉「小社」の1番目)/「自分の属する会社をへりくだっていう語。」(精選版 日本国語大辞典「小社」の3番目) | へりくだって言う語。「小さな会社」という意味もある |
| 自社(じしゃ) | 「自分の会社。自分の勤めている会社。」(デジタル大辞泉「自社」)/「自分の所属している、また経営している会社。」(精選版 日本国語大辞典「自社」) | 「自分の会社」という意味。デジタル大辞泉は、反対の語に「他社」を挙げている |
| わが社 | デジタル大辞泉「当社」の語釈に、「我が社」が言い換えとして入っている。「我が」は「話し手のものであること、また、関係あるものであることを表す。わたしの。われわれの。」(デジタル大辞泉「我が」の1番目) | 「わたしたちの会社」という意味。へりくだる意味は入っていない |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
「わが社」「我が社」は、コトバンクでは見出し語としては見つかりませんでした。そのため、「当社」の語釈と、「我が」の語釈を並べています。
五つを分けるのは、へりくだる意味が入っているかどうかです。入っているのは「弊社」と「小社」。入っていないのは「当社」「自社」「わが社」です。「当」については、精選版 日本国語大辞典に、「名詞の上に付いて、この、その、現在の、さしあたっての、などの意を表わす。」(精選版 日本国語大辞典「当」)とあります。「当社」は、「この会社」と指しているだけの言葉です。
社外へはどちらを使うか、社内ではどうか
語釈の違いから、使い分けを考えます。
社外の相手へ:へりくだるなら「弊社」
自分の側を低く言う敬語を、文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日・文化庁)は「謙譲語Ⅱ(丁重語)」と呼び、「自分側の行為・ものごとなどを,話や文章の相手に対して丁重に述べるもの。」(18ページ)と説明しています。同じページでは、「拙著」「小社」などの名詞も、「名詞の謙譲語Ⅱだと位置付けることができる。」とされています。28ページには、「愚」「小」「拙」「弊」を付けて謙譲語Ⅱとして使う名詞の例に、「小社」と並んで「弊社」が挙がっています。
なぜ、自分の会社を低く言うのか。指針の35ページは、「小社」「愚見」「拙稿」のような言い方について、卑屈な言い方というよりも、「自分にかかわるものを小さく表すことによって,相手に対する配慮を示す」意識で使われているものだと解説しています。取引先に「弊社」と言うのは、自分の会社を低く置くことで、相手への配慮を表す形です。
取引先へのメールや商談で「弊社」が広く使われているのは、このためです。辞書の語釈と指針の説明に合っています。
では、取引先に「当社」と言うのは誤りでしょうか。辞書の「当社」の項にも、指針にも、社外の相手に使ってはいけない、という説明は見当たりませんでした。この記事でも、誤りだとは言い切りません。言えるのは、「当社」には、へりくだる意味が入っていない、という所までです。相手を立てて話す場面なら、「弊社」のほうが、語釈に合います。
社内では:へりくだる相手がいない
社内の会議や、社内あての文書では、読む人も聞く人も同じ会社の人です。へりくだって見せる相手がいません。「この会社」という意味の「当社」や、「わが社」「うちの会社」が使われることが多いのは、そのためです。
社内で「弊社」と言うのが誤りだ、という説明も、辞書と指針には見当たりません。ただ、語釈に照らすと、へりくだる相手がいない場面には合いにくい、とは言えます。社内の文書は、会社のひな形と、先輩の文書に合わせます。
「自社」は、ほかの会社と比べるとき
「自社」は、デジタル大辞泉が反対の語に「他社」を挙げているとおり、ほかの会社と分けて言うときに合う言葉です。「自社で製造しています」「自社の倉庫から出荷します」のような形です(説明用の例です)。自分の会社を呼ぶ言葉というより、「外に頼んでいない」「自分の所の」という意味を伝える言葉として使われます。「弊社」と同じ文に出てきても、役目が違うので、混ざったことにはなりません。
「小社」は、「弊社」と同じ向きの語
「小社」も、へりくだって言う語です。指針の18ページは、「拙著」「小社」などについて、主に書き言葉で使われる、と説明しています。出版社や新聞社の文書で見かけることがある語ですが、どの業界で使うかを決めた説明は、辞書にも指針にもありません。自分の職場で使われていなければ、「弊社」で足ります。
一通の中で混ぜない:相手の呼び方と対にする
呼び方を決めたら、一通の中でそろえます。理由は、読む人の側にあります。
同じメールに「弊社」と「当社」が出てくると、読む人は、「別の会社のことを言っているのか」と一度立ち止まります。親会社と子会社、販売の会社と製造の会社のように、関係する会社がいくつかある取引では、本当に別の会社を指していることがあるからです。同じものは、同じ言葉で呼ぶ。これは、敬語の決まりというより、読み違いを防ぐための書き方です。
相手の呼び方と対にして決めると、迷いが減ります。次の表は、広く行われている組み合わせの一例です。
| 場面 | 相手の会社 | 自分の会社 |
|---|---|---|
| 取引先へのメール・手紙・送付状 | 貴社 | 弊社 |
| 取引先との電話・商談 | 御社 | 弊社 |
| 社内の会議・社内あての文書 | (会社名で言う) | 当社・わが社 |
| ほかの会社と比べて説明するとき | 他社 | 自社 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
相手の呼び方(「御社」と「貴社」)の決め方は、「御社」と「貴社」の違いにまとめています。
混ざりやすいのは、文を写したときです。会社案内、ホームページ、前に送ったメール。写した元の文が「当社」で書かれていると、そのまま残ります。そろえる手順は、次のとおりです。
- 呼び方を一つ決める。取引先あてなら「弊社」です。
- 別の呼び方を検索する。メールや文書の画面で、「当社」「私ども」「うち」を一つずつ検索します。目で探すより、見落としが減ります。
- 見つかった所を、決めた呼び方に直す。直した後、文がおかしくなっていないかを声に出して読みます。
- 添付の資料は、分けて考える。パンフレットや会社案内は、広く配るために作られた資料です。中の「当社」を、メールに合わせて直す必要はありません。
「当社」を見かける文書:契約書・案内状・発表文
「当社」は、契約書、利用規約、会社案内、ホームページ、報道向けの発表文などで、よく見かけます。ここは、出典を示して言い切れることが少ない所です。分かっていることと、分かっていないことを分けて書きます。
辞書から言えること。「当社」は「この会社」という意味で、へりくだる意味が入っていません。デジタル大辞泉の「当社」には、「当社の規定により優遇」という用例が載っています。会社の決まりを、会社の立場で述べている文です。
そこから考えられること。読む相手が決まっていない文書や、会社としての決まり・事実を述べる文書では、特定の相手にへりくだる形を取らず、「この会社」と指すだけの言葉が合う、と考えられます。契約書では、「当社」「甲」「乙」のように、だれを指すかを最初に決めて書く形も見かけます。
確かめられなかったこと。「契約書には当社と書く」「発表文には当社と書く」と定めた公的な決まりは、見つけられませんでした。そのため、この記事では、どの文書でどちらを使うかを言い切りません。会社や業界によって、取引先向けの案内状に「弊社」を使う所も、「当社」を使う所もあります。
営業の立場で大事なのは、次の二つです。
- 会社が用意した文書の言葉は、自分で書き換えない。契約書、約款、規程、発表文の言葉は、会社として決めたものです。「弊社のほうがていねいだから」と直すと、ほかの条文や、ほかの文書と食い違います。気になる所は、上司か担当の部署に聞きます。
- 自分が書くメールや送付状は、その文書とは別に決める。契約書が「当社」で書かれていても、それを送るメールの本文は「弊社」で構いません。メールは、目の前の相手に向けて書く文だからです。
商談・電話・メールの例
すべて説明用の例です。[ ]は、自分の内容に置き換えてください。
メールの例
惜しい例:「弊社の[商品名]について、ご案内します。当社では、納品後の点検を年に一度行っております。うちの担当が伺います。」
良い例:「弊社の[商品名]について、ご案内します。弊社では、納品後の点検を年に一度行っております。弊社の担当が伺います。」
惜しい例は、三つの文で、呼び方が三つあります。二つめの文は会社案内から写した文、三つめは話し言葉がそのまま出た文です。意味は伝わりますが、読む人は、同じ会社のことかを一度確かめることになります。良い例は、「弊社」にそろえています。
「弊社」が三回続いて重く感じるときは、言葉を変えるのではなく、主語を省きます。「納品後の点検を年に一度行っております。担当が伺います」と書けば、自分の会社のことだと分かります。
電話の例
「お世話になっております。[自社名]の[氏名]です。先日お送りした見積書の件で、お電話しました。」
「納期について、弊社の工場に確認しましたところ、◯月◯日(◯)にお届けできます。」
名乗るときは、会社の名前を言います。「弊社の[氏名]です」とは名乗りません。相手は、どこの会社からの電話かを知りたいからです。名乗った後、自分の会社のことを言う所で「弊社」を使います。
商談の例
相手:「点検は、どこがやるんですか」
自分:「弊社の担当が伺います。外の会社には頼まず、自社で行っております」
「弊社」は自分の会社を指す言葉、「自社で」は「外に頼まず」という意味を伝える言葉です。役目が違うので、並んでいても混ざったことにはなりません。
話すときに「弊社」がかたく感じる、という人もいます。指針の28ページは、「弊」などを付けた名詞について「ほぼ,書き言葉専用である。」と説明しています。一方で、同じ指針の44ページには、社外の人に自分の上司のことを話す場面について、改まった場面では「弊社の部長」、ややくだけた場面では「うちの部長」と言うことができる、という解説があります。話すときにも、場面の改まり方で言葉を選ぶ、ということです。
迷いやすい判断と、間違えたあと
判断1:商談で「うちでは」と言ってよい?
上に書いたとおり、指針の44ページは、ややくだけた場面の言い方として「うちの部長」を挙げています。「うち」が誤りだ、という扱いではありません。基準は、場面の改まり方です。初めての訪問、相手の上司が同席している場、金額や条件を伝える場面は、「弊社」にします。何度も会っている担当者と、雑談に近い話をしているときは、先輩の言い方に合わせます。
「私ども」という言い方も、広く使われています。「弊社」より話しやすいと感じるなら、話すときの言葉として使えます。メールでは、一通の中で「弊社」と混ぜないようにします。
判断2:上司へのメールに「弊社」と書いたら、おかしい?
社内あてなら、へりくだる相手がいないので、語釈に照らすと合いにくい言葉です。ただ、誤りだとする説明は、辞書にも指針にもありません。直すなら「当社」です。「うちの会社」は、話すときには使えますが、文書では、職場の習慣に合わせます。
判断3:親会社や、グループの会社のことは、どう言う?
「弊社」は、自分の会社を指します。親会社やグループの別の会社を「弊社」と言うと、相手は、どの会社のことかを取り違えます。会社名で言うのが、分かりやすい決め方です。「弊社の親会社の[会社名]が製造しております」のように、関係と名前を両方言います(説明用の例です)。
失敗1:一通に「弊社」と「当社」が混ざったまま、送った
その場では:意味は伝わっているので、このことだけで訂正のメールを送る必要はありません。ただし、関係する会社がいくつかある取引で、相手が「別の会社のことか」と取り違えそうな文なら、「メールの中の『当社』は、弊社[自社名]のことです」と一言送ります(説明用の例です)。
後の記録:どこから写した文だったかを書きます。「会社案内から写した文に『当社』が残った。次からは、写した後に『当社』で検索する」のような形です(説明用の例です)。
失敗2:相手の会社を「弊社」と書いた・言った
その場では:こちらは、意味が逆になる間違いです。話している途中なら、「失礼しました。御社の」と言い直します。メールで、どちらが何をするかに関わる文を取り違えた場合は、訂正を送ります。どこが・正しくは何か、を書きます。直し方は、「御社」と「貴社」の違いの「失敗2」に例があります。
後の記録:取り違えた文を残し、送る前に「弊社」「貴社」の出てくる文だけを読み直す、と手順に足します。
失敗3:契約書の「当社」を、自分で「弊社」に直して送った
その場では:気づいたら、すぐ上司に伝えます。直した所、送った相手、送った日時を、分かる範囲で言います。相手への連絡は、上司と決めてからにします。会社が決めた文書を自分で変えたことになるので、一人で取り消しを進めないほうが、後の食い違いを防げます。報告の順番は、営業で失敗したときにまとめています。
後の記録:「会社が用意した文書は、言葉を直さない。気になる所は、送る前に聞く」と書きます。
今日やることは一つです。今日送るメール一通を開き、自分の会社を指す言葉を全部探して、一つの呼び方にそろえてください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
今日送るメールの下書きか、書きかけの文書。会社のひな形(見積書・送付状・案内文など)。先輩が同じ相手に送ったメール。
記入例を見る(説明用)
読む人=[会社名]の[担当者名]様。社外の取引先/会社のひな形や、先輩の文書=見積書の送付状のひな形は「弊社」。先輩が同じ相手に送ったメールも「弊社」。会社案内のパンフレットは「当社」だった/決めた呼び方=自分の会社は「弊社」、相手の会社は「貴社」/一通の中で見つかった、別の呼び方と、直した所=パンフレットから写した一文に「当社の保守サービスは」が残っていた。「弊社の保守サービスは」に直した。「うちの」は無かった/送る前に見直すこと=「当社」で検索して、残りがないか。「貴社」と「弊社」を取り違えた文がないか。添付する資料の中の「当社」は、そのままでよいか先輩に聞く。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
読む人が書いてあり、自分の会社の呼び方が一つに決まっていて、一通の中に別の呼び方が残っていない。
うまく進まなかったときは?
どちらにするか決まらなければ、会社のひな形と、先輩が同じ相手に送ったメールを見て、同じ呼び方にする。写した文に別の呼び方が残っていないか不安なら、「当社」「弊社」「私ども」をそれぞれ検索する。契約書や規程の言葉は、自分で直さず、上司か担当の部署に聞く。