NUSSI’S SALES NOTEウッシの営業ノート

NOTE 110 · 営業の実践ノート

「弊社」と「当社」の違い:社外あてと社内での使い分けと、一通の中でそろえる書き方

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「弊社」は、辞書に「自分の会社をへりくだっていう語」とあります。「当社」は「この会社。また、自分の所属するこの会社」で、語釈にへりくだる意味は入っていません。この違いから、取引先に向けて自分の会社を低く言うときは「弊社」、へりくだる相手がいない社内では「当社」、という使い分けが広く行われています。この記事では、辞書と文化庁の「敬語の指針」に書いてある範囲で違いを確かめ、一通の中で呼び方をそろえる書き方を、例で説明します。

今日できるようになること

今日送るメール一通を開き、自分の会社を指す言葉を全部探して、一つの呼び方にそろえる。

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こんなときに 取引先へのメールで「弊社」と「当社」のどちらを書くかで迷うとき。社内の文書や、会社の案内文を書くことになったとき。

この順番で進めよう
  1. 1

    読む人が、社外の相手か、社内の人かを確かめる

  2. 2

    会社のひな形や、先輩の文書の呼び方を見る

  3. 3

    自分の会社の呼び方を一つ決める

  4. 4

    一通の中に、別の呼び方が残っていないか探す

会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。

「弊社」「当社」「小社」「自社」「わが社」の意味

取引先へのメールに「弊社の商品は」と書いた。次の段落は、会社案内から文を写したので「当社では」になっている。読み返して、どちらが正しいのかで手が止まる。自分の会社の呼び方は、文を写したり、ひな形を使ったりするうちに、混ざりやすい所です。

先に、言葉の意味を辞書で確かめます。コトバンクに載っている二つの辞書を引きました。「 」の中は、辞書の文をそのまま写したものです。

言葉辞書の語釈語釈から言えること
弊社(へいしゃ)「自分の会社をへりくだっていう語。」(デジタル大辞泉「弊社」)/「自分の属する会社をへりくだっていう語。」(精選版 日本国語大辞典「弊社」)へりくだって言う語
当社(とうしゃ)「この会社。また、自分の所属するこの会社。我が社。」(デジタル大辞泉「当社」の1番目)/「自分の所属するこの会社。」(精選版 日本国語大辞典「当社」の2番目)「この会社」という意味。へりくだる意味は、語釈に入っていない
小社(しょうしゃ)「小さな会社。また、自分が勤務している会社をへりくだっていう語。」(デジタル大辞泉「小社」の1番目)/「自分の属する会社をへりくだっていう語。」(精選版 日本国語大辞典「小社」の3番目)へりくだって言う語。「小さな会社」という意味もある
自社(じしゃ)「自分の会社。自分の勤めている会社。」(デジタル大辞泉「自社」)/「自分の所属している、また経営している会社。」(精選版 日本国語大辞典「自社」)「自分の会社」という意味。デジタル大辞泉は、反対の語に「他社」を挙げている
わが社デジタル大辞泉「当社」の語釈に、「我が社」が言い換えとして入っている。「我が」は「話し手のものであること、また、関係あるものであることを表す。わたしの。われわれの。」(デジタル大辞泉「我が」の1番目)「わたしたちの会社」という意味。へりくだる意味は入っていない

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

「わが社」「我が社」は、コトバンクでは見出し語としては見つかりませんでした。そのため、「当社」の語釈と、「我が」の語釈を並べています。

五つを分けるのは、へりくだる意味が入っているかどうかです。入っているのは「弊社」と「小社」。入っていないのは「当社」「自社」「わが社」です。「当」については、精選版 日本国語大辞典に、「名詞の上に付いて、この、その、現在の、さしあたっての、などの意を表わす。」(精選版 日本国語大辞典「当」)とあります。「当社」は、「この会社」と指しているだけの言葉です。

社外へはどちらを使うか、社内ではどうか

語釈の違いから、使い分けを考えます。

社外の相手へ:へりくだるなら「弊社」

自分の側を低く言う敬語を、文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日・文化庁)は「謙譲語Ⅱ(丁重語)」と呼び、「自分側の行為・ものごとなどを,話や文章の相手に対して丁重に述べるもの。」(18ページ)と説明しています。同じページでは、「拙著」「小社」などの名詞も、「名詞の謙譲語Ⅱだと位置付けることができる。」とされています。28ページには、「愚」「小」「拙」「弊」を付けて謙譲語Ⅱとして使う名詞の例に、「小社」と並んで「弊社」が挙がっています。

なぜ、自分の会社を低く言うのか。指針の35ページは、「小社」「愚見」「拙稿」のような言い方について、卑屈な言い方というよりも、「自分にかかわるものを小さく表すことによって,相手に対する配慮を示す」意識で使われているものだと解説しています。取引先に「弊社」と言うのは、自分の会社を低く置くことで、相手への配慮を表す形です。

取引先へのメールや商談で「弊社」が広く使われているのは、このためです。辞書の語釈と指針の説明に合っています。

では、取引先に「当社」と言うのは誤りでしょうか。辞書の「当社」の項にも、指針にも、社外の相手に使ってはいけない、という説明は見当たりませんでした。この記事でも、誤りだとは言い切りません。言えるのは、「当社」には、へりくだる意味が入っていない、という所までです。相手を立てて話す場面なら、「弊社」のほうが、語釈に合います。

社内では:へりくだる相手がいない

社内の会議や、社内あての文書では、読む人も聞く人も同じ会社の人です。へりくだって見せる相手がいません。「この会社」という意味の「当社」や、「わが社」「うちの会社」が使われることが多いのは、そのためです。

社内で「弊社」と言うのが誤りだ、という説明も、辞書と指針には見当たりません。ただ、語釈に照らすと、へりくだる相手がいない場面には合いにくい、とは言えます。社内の文書は、会社のひな形と、先輩の文書に合わせます。

「自社」は、ほかの会社と比べるとき

「自社」は、デジタル大辞泉が反対の語に「他社」を挙げているとおり、ほかの会社と分けて言うときに合う言葉です。「自社で製造しています」「自社の倉庫から出荷します」のような形です(説明用の例です)。自分の会社を呼ぶ言葉というより、「外に頼んでいない」「自分の所の」という意味を伝える言葉として使われます。「弊社」と同じ文に出てきても、役目が違うので、混ざったことにはなりません。

「小社」は、「弊社」と同じ向きの語

「小社」も、へりくだって言う語です。指針の18ページは、「拙著」「小社」などについて、主に書き言葉で使われる、と説明しています。出版社や新聞社の文書で見かけることがある語ですが、どの業界で使うかを決めた説明は、辞書にも指針にもありません。自分の職場で使われていなければ、「弊社」で足ります。

一通の中で混ぜない:相手の呼び方と対にする

呼び方を決めたら、一通の中でそろえます。理由は、読む人の側にあります。

同じメールに「弊社」と「当社」が出てくると、読む人は、「別の会社のことを言っているのか」と一度立ち止まります。親会社と子会社、販売の会社と製造の会社のように、関係する会社がいくつかある取引では、本当に別の会社を指していることがあるからです。同じものは、同じ言葉で呼ぶ。これは、敬語の決まりというより、読み違いを防ぐための書き方です。

相手の呼び方と対にして決めると、迷いが減ります。次の表は、広く行われている組み合わせの一例です。

場面相手の会社自分の会社
取引先へのメール・手紙・送付状貴社弊社
取引先との電話・商談御社弊社
社内の会議・社内あての文書(会社名で言う)当社・わが社
ほかの会社と比べて説明するとき他社自社

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

相手の呼び方(「御社」と「貴社」)の決め方は、「御社」と「貴社」の違いにまとめています。

混ざりやすいのは、文を写したときです。会社案内、ホームページ、前に送ったメール。写した元の文が「当社」で書かれていると、そのまま残ります。そろえる手順は、次のとおりです。

  1. 呼び方を一つ決める。取引先あてなら「弊社」です。
  2. 別の呼び方を検索する。メールや文書の画面で、「当社」「私ども」「うち」を一つずつ検索します。目で探すより、見落としが減ります。
  3. 見つかった所を、決めた呼び方に直す。直した後、文がおかしくなっていないかを声に出して読みます。
  4. 添付の資料は、分けて考える。パンフレットや会社案内は、広く配るために作られた資料です。中の「当社」を、メールに合わせて直す必要はありません。

「当社」を見かける文書:契約書・案内状・発表文

「当社」は、契約書、利用規約、会社案内、ホームページ、報道向けの発表文などで、よく見かけます。ここは、出典を示して言い切れることが少ない所です。分かっていることと、分かっていないことを分けて書きます。

辞書から言えること。「当社」は「この会社」という意味で、へりくだる意味が入っていません。デジタル大辞泉の「当社」には、「当社の規定により優遇」という用例が載っています。会社の決まりを、会社の立場で述べている文です。

そこから考えられること。読む相手が決まっていない文書や、会社としての決まり・事実を述べる文書では、特定の相手にへりくだる形を取らず、「この会社」と指すだけの言葉が合う、と考えられます。契約書では、「当社」「甲」「乙」のように、だれを指すかを最初に決めて書く形も見かけます。

確かめられなかったこと。「契約書には当社と書く」「発表文には当社と書く」と定めた公的な決まりは、見つけられませんでした。そのため、この記事では、どの文書でどちらを使うかを言い切りません。会社や業界によって、取引先向けの案内状に「弊社」を使う所も、「当社」を使う所もあります。

営業の立場で大事なのは、次の二つです。

  • 会社が用意した文書の言葉は、自分で書き換えない。契約書、約款、規程、発表文の言葉は、会社として決めたものです。「弊社のほうがていねいだから」と直すと、ほかの条文や、ほかの文書と食い違います。気になる所は、上司か担当の部署に聞きます。
  • 自分が書くメールや送付状は、その文書とは別に決める。契約書が「当社」で書かれていても、それを送るメールの本文は「弊社」で構いません。メールは、目の前の相手に向けて書く文だからです。

商談・電話・メールの例

すべて説明用の例です。[ ]は、自分の内容に置き換えてください。

メールの例

惜しい例:「弊社の[商品名]について、ご案内します。当社では、納品後の点検を年に一度行っております。うちの担当が伺います。」

良い例:「弊社の[商品名]について、ご案内します。弊社では、納品後の点検を年に一度行っております。弊社の担当が伺います。」

惜しい例は、三つの文で、呼び方が三つあります。二つめの文は会社案内から写した文、三つめは話し言葉がそのまま出た文です。意味は伝わりますが、読む人は、同じ会社のことかを一度確かめることになります。良い例は、「弊社」にそろえています。

「弊社」が三回続いて重く感じるときは、言葉を変えるのではなく、主語を省きます。「納品後の点検を年に一度行っております。担当が伺います」と書けば、自分の会社のことだと分かります。

電話の例

「お世話になっております。[自社名]の[氏名]です。先日お送りした見積書の件で、お電話しました。」

「納期について、弊社の工場に確認しましたところ、◯月◯日(◯)にお届けできます。」

名乗るときは、会社の名前を言います。「弊社の[氏名]です」とは名乗りません。相手は、どこの会社からの電話かを知りたいからです。名乗った後、自分の会社のことを言う所で「弊社」を使います。

商談の例

相手:「点検は、どこがやるんですか」

自分:「弊社の担当が伺います。外の会社には頼まず、自社で行っております」

「弊社」は自分の会社を指す言葉、「自社で」は「外に頼まず」という意味を伝える言葉です。役目が違うので、並んでいても混ざったことにはなりません。

話すときに「弊社」がかたく感じる、という人もいます。指針の28ページは、「弊」などを付けた名詞について「ほぼ,書き言葉専用である。」と説明しています。一方で、同じ指針の44ページには、社外の人に自分の上司のことを話す場面について、改まった場面では「弊社の部長」、ややくだけた場面では「うちの部長」と言うことができる、という解説があります。話すときにも、場面の改まり方で言葉を選ぶ、ということです。

迷いやすい判断と、間違えたあと

判断1:商談で「うちでは」と言ってよい?

上に書いたとおり、指針の44ページは、ややくだけた場面の言い方として「うちの部長」を挙げています。「うち」が誤りだ、という扱いではありません。基準は、場面の改まり方です。初めての訪問、相手の上司が同席している場、金額や条件を伝える場面は、「弊社」にします。何度も会っている担当者と、雑談に近い話をしているときは、先輩の言い方に合わせます。

「私ども」という言い方も、広く使われています。「弊社」より話しやすいと感じるなら、話すときの言葉として使えます。メールでは、一通の中で「弊社」と混ぜないようにします。

判断2:上司へのメールに「弊社」と書いたら、おかしい?

社内あてなら、へりくだる相手がいないので、語釈に照らすと合いにくい言葉です。ただ、誤りだとする説明は、辞書にも指針にもありません。直すなら「当社」です。「うちの会社」は、話すときには使えますが、文書では、職場の習慣に合わせます。

判断3:親会社や、グループの会社のことは、どう言う?

「弊社」は、自分の会社を指します。親会社やグループの別の会社を「弊社」と言うと、相手は、どの会社のことかを取り違えます。会社名で言うのが、分かりやすい決め方です。「弊社の親会社の[会社名]が製造しております」のように、関係と名前を両方言います(説明用の例です)。

失敗1:一通に「弊社」と「当社」が混ざったまま、送った

その場では:意味は伝わっているので、このことだけで訂正のメールを送る必要はありません。ただし、関係する会社がいくつかある取引で、相手が「別の会社のことか」と取り違えそうな文なら、「メールの中の『当社』は、弊社[自社名]のことです」と一言送ります(説明用の例です)。

後の記録:どこから写した文だったかを書きます。「会社案内から写した文に『当社』が残った。次からは、写した後に『当社』で検索する」のような形です(説明用の例です)。

失敗2:相手の会社を「弊社」と書いた・言った

その場では:こちらは、意味が逆になる間違いです。話している途中なら、「失礼しました。御社の」と言い直します。メールで、どちらが何をするかに関わる文を取り違えた場合は、訂正を送ります。どこが・正しくは何か、を書きます。直し方は、「御社」と「貴社」の違いの「失敗2」に例があります。

後の記録:取り違えた文を残し、送る前に「弊社」「貴社」の出てくる文だけを読み直す、と手順に足します。

失敗3:契約書の「当社」を、自分で「弊社」に直して送った

その場では:気づいたら、すぐ上司に伝えます。直した所、送った相手、送った日時を、分かる範囲で言います。相手への連絡は、上司と決めてからにします。会社が決めた文書を自分で変えたことになるので、一人で取り消しを進めないほうが、後の食い違いを防げます。報告の順番は、営業で失敗したときにまとめています。

後の記録:「会社が用意した文書は、言葉を直さない。気になる所は、送る前に聞く」と書きます。

今日やることは一つです。今日送るメール一通を開き、自分の会社を指す言葉を全部探して、一つの呼び方にそろえてください。

YOUR TURN

自分の一件で、書いてみよう。

手元に用意するもの
今日送るメールの下書きか、書きかけの文書。会社のひな形(見積書・送付状・案内文など)。先輩が同じ相手に送ったメール。

記入例を見る(説明用)

読む人=[会社名]の[担当者名]様。社外の取引先/会社のひな形や、先輩の文書=見積書の送付状のひな形は「弊社」。先輩が同じ相手に送ったメールも「弊社」。会社案内のパンフレットは「当社」だった/決めた呼び方=自分の会社は「弊社」、相手の会社は「貴社」/一通の中で見つかった、別の呼び方と、直した所=パンフレットから写した一文に「当社の保守サービスは」が残っていた。「弊社の保守サービスは」に直した。「うちの」は無かった/送る前に見直すこと=「当社」で検索して、残りがないか。「貴社」と「弊社」を取り違えた文がないか。添付する資料の中の「当社」は、そのままでよいか先輩に聞く。

入力は自動保存されません。ページを移動する前に保存してください。保存した内容は他の人に自動送信されません。

CHECK

ここまでできたら、次へ。

読む人が書いてあり、自分の会社の呼び方が一つに決まっていて、一通の中に別の呼び方が残っていない。

うまく進まなかったときは?

どちらにするか決まらなければ、会社のひな形と、先輩が同じ相手に送ったメールを見て、同じ呼び方にする。写した文に別の呼び方が残っていないか不安なら、「当社」「弊社」「私ども」をそれぞれ検索する。契約書や規程の言葉は、自分で直さず、上司か担当の部署に聞く。

NEXT NOTE

次に読むなら

「御社」と「貴社」の違いを確かめる尊敬語と謙譲語の違いを確かめるメール全体の書き方を見る