NOTE 109 · 営業の実践ノート
「御社」と「貴社」の違い:辞書に書いてある使い分けと、メール・電話・商談の例
公開:2026年10月3日
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「御社」も「貴社」も、相手の会社を敬って言う言葉です。辞書(デジタル大辞泉)の「御社」の項には、「書き言葉では『貴社』を使うのが普通」とあり、補説には、同音の言葉が多い「貴社」に代わって、主に話し言葉で使われ始めたと書かれています。この記事では、辞書に書いてある範囲で使い分けを確かめ、営業が取引先に使う場面(メール・手紙・電話・商談)の例を並べます。就職活動の面接や履歴書の話は扱いません。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 取引先へのメールを書いていて「御社」と「貴社」のどちらにするかで手が止まるとき。相手が学校や病院、店のときに、何と呼べばよいか分からないとき。
- 1
相手が会社か、学校・病院・店・団体かを確かめる
- 2
話すのか、書くのかを確かめる
- 3
相手の呼び方と、自分の会社の呼び方を一つずつ決める
- 4
一通(一回の会話)の中で、同じ呼び方にそろえる
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
「御社」と「貴社」の意味を、辞書で確かめる
取引先にメールを書いていて、「御社の」と打ったところで手が止まる。メールは「貴社」だと聞いた気がする。電話ではどちらだったか。営業を始めたばかりの時期に、よく起きる迷いです。
先に、二つの言葉の意味を辞書で確かめます。コトバンクに載っている二つの辞書を引きました。「 」の中は、辞書の文をそのまま写したものです。
| 言葉 | 読み | 辞書の語釈 |
|---|---|---|
| 御社 | おんしゃ | 「相手を敬って、その人が属する会社などをいう語。書き言葉では「貴社」を使うのが普通。」(デジタル大辞泉「御社」)/「会社や神社を相手として敬っていう語。」(精選版 日本国語大辞典「御社」) |
| 貴社 | きしゃ | 「相手を敬って、その所属する会社などをいう語。」(デジタル大辞泉「貴社」)/「相手を敬って、その属する会社をいう語。」(精選版 日本国語大辞典「貴社」の2番目) |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
語釈から言えることは、二つあります。
- どちらも、相手の会社を敬って言う言葉です。敬意の重さに差がある、という説明は、どちらの辞書にもありません。
- デジタル大辞泉の「御社」の項には、書き言葉では「貴社」を使うのが普通、と書いてあります。
「御」や「貴」を付けて相手のものを高く言う形は、敬語の種類でいうと尊敬語です。文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日・文化庁)の26ページには、「御」「貴」「玉」を付けて尊敬語として使う名詞の説明があります。ただし、この指針の全文を検索しても、「御社」「貴社」という言葉そのものは出てきません。二つの使い分けを決めた公的な決まりは、見当たりません。この記事は、辞書に書いてある範囲で整理します。
なお、この記事で扱うのは、営業が取引先に使う場面です。就職活動の面接や履歴書での使い方は、目的が違うので扱いません。
話すときと書くときの使い分け:辞書に書いてある範囲
デジタル大辞泉の「御社」の項には、補説が付いています。
「同音の言葉が多く紛らわしい「貴社」に代わり、主に話し言葉において使われ始めた。1990年代初めころからか。」(デジタル大辞泉「御社」補説)
補説から分かるのは、なぜ話すときに「御社」が使われるようになったかです。「きしゃ」と読む言葉は、ほかにもあります。記者、汽車、帰社などです。声で「きしゃの」と聞いたとき、相手は、前後の言葉からどの「きしゃ」かを選ぶことになります。「おんしゃ」なら、その手間がありません。
書くときは、漢字が見えるので、同じ音の言葉と取り違えることがありません。辞書の文を並べると、使い分けは次のようになります。
| 場面 | 使われる語 | 辞書に書いてあること |
|---|---|---|
| 話すとき(電話・商談・あいさつ) | 御社 | 「貴社」に代わり、主に話し言葉において使われ始めた(デジタル大辞泉「御社」補説) |
| 書くとき(メール・手紙・書類) | 貴社 | 書き言葉では「貴社」を使うのが普通(デジタル大辞泉「御社」) |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
気をつけたいのは、辞書の言葉が「普通」であることです。書くときに「御社」を使うのは誤りだ、とは書いてありません。話すときに「貴社」と言うのは誤りだ、という説明もありません。この記事でも、どちらかを誤りだとは言い切りません。
「貴」を付ける語について、「敬語の指針」の26ページは、「御地」「貴信」「玉稿」などを挙げたうえで、これらの「ほとんどは書き言葉専用である。」と説明しています。「貴社」は例に挙がっていませんが、「貴」を付けた語が書き言葉に寄っている、という点は、辞書の説明と向きが同じです。
自分で決める基準は一つです。声に出すなら「御社」、文字にするなら「貴社」。辞書が「普通」としている形に合わせておけば、相手が読み方や聞き取りで引っかかることが少なくなります。会社や相手に決まった習慣があるときは、そちらに合わせます。
メール・手紙・電話・商談の例
場面ごとに、例を並べます。すべて説明用の例です。[ ]は、自分の内容に置き換えてください。
| 場面 | 相手の呼び方 | 例(説明用) | 対になる自分の会社の呼び方 |
|---|---|---|---|
| メール | 貴社 | 「貴社の[部署名]で、今お使いの台数を伺えますでしょうか」 | 弊社 |
| 手紙・送付状 | 貴社 | 「貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」 | 弊社 |
| 見積書・提案書の文章 | 貴社 | 「貴社のご要望に合わせ、2つの案をご用意しました」 | 弊社 |
| 電話 | 御社 | 「御社の[部署名]の[担当者名]様は、いらっしゃいますでしょうか」 | 弊社 |
| 商談・訪問 | 御社 | 「御社では、今はどのように発注されていますか」 | 弊社 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
自分の会社の呼び方は、相手の呼び方と対にして決めます。「弊社」と「当社」の選び方は、「弊社」と「当社」の違いにまとめています。
メールの例
件名:[商品名]お見積もりの送付([自社名]・[氏名])
[会社名] [担当者名]様
いつもお世話になっております。[自社名]の[氏名]です。
先日ご相談いただいた[商品名]のお見積書を、添付でお送りします。
貴社の[部署名]でお使いになる台数に合わせて、2つの案を入れました。
ご不明な点がありましたら、お知らせください。
相手の会社を指す所が「貴社」です。宛名は、会社名と名前で書きます。宛名に「貴社」「御社」は使いません。宛名の書き方はビジネスメールの書き出しに、会社あての「御中」は御中の使い方にあります。
電話の例
惜しい例:「先日は、きしゃのご担当の方にお時間をいただきまして」
良い例:「先日は、御社の[担当者名]様にお時間をいただき、ありがとうございました」
惜しい例は、意味は合っています。ただ、電話では漢字が見えないので、相手は「きしゃ」を頭の中で漢字に直すことになります。良い例は、「御社」に変え、だれに時間をもらったのかも名前で言っています。電話のかけ方の全体は、営業電話のかけ方にあります。
商談の例
惜しい例:「そちらでは、今はどうされていますか」
良い例:「御社では、今はどのように発注されていますか」
「そちら」でも、相手の会社のことを聞いているのは伝わります。ただ、会社を指すのか、目の前の担当者を指すのかが、聞く人によって分かれることがあります。初めての訪問や、あらたまった商談では、「御社」と言うと、会社の話だとはっきりします。何度も会っている相手で、先輩が「[会社名]さんでは」と社名で話しているなら、それに合わせて構いません。
会社以外の相手:学校・病院・店・団体など
営業の相手は、会社だけではありません。学校、病院、店、団体に提案することもあります。「社」は会社のことなので、相手が会社でなければ、別の言葉を使います。
次の表には、辞書で項目を確かめられた語だけを入れました。「 」の中は、辞書の文をそのまま写したものです。
| 相手 | 語 | 辞書の語釈 |
|---|---|---|
| 学校 | 御校(おんこう)・貴校(きこう) | 御校:「相手を敬って、その人が属する学校などをいう語。書き言葉では「貴校」を使うのが普通。」(デジタル大辞泉「御校」)/貴校:「文書などで、相手を敬って、その学校をいう語。」(デジタル大辞泉「貴校」) |
| 大学 | 貴学(きがく) | 「相手を敬って、その関係する大学をいう語。」(精選版 日本国語大辞典「貴学」) |
| 病院など、「院」の付く所 | 貴院(きいん) | 「院と名のつく機関を相手としたとき、その機関をいう敬称。」(デジタル大辞泉「貴院」)/「相手の病院、書院など、「院」と呼ばれるところをさしていう尊敬語。」(精選版 日本国語大辞典「貴院」の1番目) |
| 店 | 貴店(きてん) | 「相手を敬って、その店をいう語。」(デジタル大辞泉「貴店」) |
| 会(協会・商工会・組合の会など) | 貴会(きかい) | 「相手の会を敬っていう語。多く、手紙・文書などで用いる。」(デジタル大辞泉「貴会」) |
| 「局」の付く所 | 貴局(ききょく) | 「相手を敬って、その人の属する郵便局・水道局など、「局」と名のつく所をいう語。」(デジタル大辞泉「貴局」) |
| 図書館・博物館など、「館」の付く所 | 貴館(きかん) | 「相手を敬って、その人の属している、図書館、博物館など館と呼ばれる施設をいう語。」(精選版 日本国語大辞典「貴館」の2番目) |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
学校は、会社と同じ形です。デジタル大辞泉の「御校」に、書き言葉では「貴校」を使うのが普通、とあります。話すときは「御校」、書くときは「貴校」と考えれば、会社のときと同じ決め方で足ります。
表に入れなかった語もあります。銀行あての「御行」「貴行」、役所あての「貴庁」「貴省」、団体あての「貴団体」「貴法人」、病院あての「御院」などです。実際の文書で見かける語ですが、コトバンクでは、この意味の見出し語を確かめられませんでした。そのため、この記事では、使い方を言い切りません。
確かめられたのは、作り方のほうです。精選版 日本国語大辞典の「貴」には、接頭語として「相手、または相手に属する物を表わす語の上に付けて、「あなたの」の意を、尊敬の気持をこめて表わす。」とあり、実例に「貴銀行へ持参致さんかとも存じ候が」という文が引かれています。相手の組織を表す語の上に「貴」を付ける、という作り方そのものは、辞書に書いてあります。
自分で決めるときの順番は、次のとおりです。
- 相手の正式な名前を、名刺かホームページで見る。「◯◯病院」「◯◯クリニック」「◯◯信用金庫」「◯◯協同組合」など、名前の終わりで種類が分かります。
- 表にある語が当てはまれば、それを使う。
- 当てはまる語が分からなければ、名前で書く。「[正式な名前]様では」「[正式な名前]の皆様には」と書けば、語を選び違えることがありません。
- 先輩が同じ相手に送ったメールを見る。その業界で使われている語が分かります。
名前で書くやり方は、どの相手にも使えます。語を知らないまま、合っていそうな語を当てはめるより、相手の正式な名前を正しく書くほうが、相手にとって読みやすくなります。
迷いやすい判断
判断1:「御社様」「貴社様」と、重ねてよい?
「御社」「貴社」は、語釈のとおり、それだけで相手の会社を敬って言う言葉です。一方、「様」は、デジタル大辞泉に「人を表す語(名詞・代名詞)または人名・役職名・団体名などに付いて、尊敬の意を表す。」(デジタル大辞泉「様」接尾語の1番目)とあります。敬う言葉に、もう一つ敬う言葉を足した形になります。
辞書の「御社」「貴社」の項にも、「敬語の指針」にも、「御社様」「貴社様」を誤りとする説明は見当たりませんでした。この記事でも、誤りだとは言い切りません。ただ、指針の35ページには「敬語をたくさん使えば丁寧になるというわけではない。」とあります。
自分で決める基準は、「御社」「貴社」だけで、敬意は足りているということです。迷ったら、重ねずに書きます。会社名に付ける場合は「[会社名]様」で、こちらは「御社」と別の形です。相手の会社や自分の職場で「御社様」が使われているなら、その習慣に合わせて構いません。
判断2:メールに「御社」と書いたら、誤り?
辞書に書いてあるのは、書き言葉では「貴社」を使うのが「普通」、という所までです。誤りとは書いてありません。相手に意味が伝わらない、ということもありません。
これから書くメールは「貴社」にします。すでに送ったメールに「御社」と書いていても、訂正のメールを送る必要はありません。次の一通から「貴社」にそろえれば足ります。
判断3:相手が、個人でやっている店や事務所のときは?
基準は、相手の名前に、何が付いているかです。店なら「貴店」が、辞書で確かめられた語です。事務所や工房のように、当てはまる語が分からないときは、「[屋号]様」と名前で書きます。
話すときも同じです。「御社」が合うか分からないなら、「[屋号]さんでは」「こちらのお店では」と言えば、相手が引っかかりません。相手が自分の所を「うちの店」「当事務所」と呼んでいたら、その言葉が手がかりになります。
判断4:社内で、取引先のことを話すときは?
「御社」「貴社」は、語釈のとおり、相手に向かって、相手の会社を言う言葉です。社内の上司や先輩に報告するとき、その取引先は「相手」ではありません。会社名で言います。「[会社名]の[担当者名]様から、見積もりの依頼がありました」のような形です(説明用の例です)。
言い間違えたとき・書き間違えたとき
呼び方の間違いは、気づいた所で直せます。その場の動きと、後の記録をセットにします。
失敗1:一通のメールに、「御社」と「貴社」が混ざった
その場では:送る前に気づいたら、「貴社」にそろえます。メールの画面で「御社」を検索すると、残っている所が見つかります。送った後に気づいた場合、意味は伝わっているので、このことだけで訂正のメールを送る必要はありません。
後の記録:「前のメールの文を写したら、『御社』が残った。次からは、送る前に『御社』で検索する」のように、どこで混ざったかと、次に変えることを書きます(説明用の例です)。
失敗2:「貴社」と「弊社」を取り違えた
こちらは、意味が変わる間違いです。「弊社の担当の方に」と書くと、自分の会社の人のことになります。「貴社の製品は」と書くつもりで「弊社の製品は」と書くと、どちらの製品の話かが逆になります。
その場では:金額、納期、どちらが何をするか、に関わる文で取り違えた場合は、訂正を送ります。「先ほどのメールに誤りがありました。『弊社にてご確認』と書いた所は、正しくは『貴社にてご確認』です。失礼いたしました」のように、どこが・正しくは何かを書きます(説明用の例です)。おわびのメールの形は、おわびメールの書き方にあります。
後の記録:取り違えた文と、相手に送った訂正を残します。次からは、送る前に「貴社」「弊社」の出てくる文だけを、主語を確かめながら読み直します。
失敗3:電話や商談で、言い間違えた
その場では:「きしゃ」と言ってしまった、相手が学校なのに「御社」と言ってしまった、というときは、気づいた所で言い直します。「失礼しました。御校では」と、正しい語で続けます。言い訳は足しません。相手にとって大事なのは、話の中身のほうです。
相手の会社を「弊社」と言ってしまったときも同じです。「失礼しました。御社の」と言い直して、話を続けます。
後の記録:訪問や電話の前に、メモの一番上に相手の呼び方を書いておきます。「[学校名]:話すときは御校」のような形です(説明用の例です)。次に同じ相手と話すとき、このメモを見てから始めます。
今日やることは一つです。今日送るメール一通と、今日かける電話一本について、相手の呼び方と自分の会社の呼び方を、先に書いて決めてください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
今日送るメールの下書き(または電話の用件メモ)。相手の名刺か署名(会社・学校・病院・店・団体のどれかが分かるもの)。先輩が同じ相手に送ったメール。
記入例を見る(説明用)
相手の名前と、相手の組織の種類=[会社名]の[担当者名]様。株式会社なので、会社/話すのか、書くのか=午前に見積書をメールで送る。午後に、届いたかどうかを電話で確かめる/相手の組織の呼び方=メールは「貴社」。辞書に「書き言葉では『貴社』を使うのが普通」とあるため。電話は「御社」。先輩が同じ相手に送ったメールも「貴社」だった/自分の会社の呼び方=メールも電話も「弊社」にそろえる/送る前・話す前に見直すこと=メールの中に「御社」と「貴社」が混ざっていないか。「貴社」と「弊社」を取り違えていないか。相手の会社名の漢字が、署名と同じか。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
相手の組織の種類と、話すのか書くのかが書いてあり、相手の呼び方と自分の会社の呼び方が一つずつ決まっていて、一通の中で混ざっていない。
うまく進まなかったときは?
相手の組織の種類が分からなければ、名刺や相手のホームページで正式な名前を見る。呼び方の語が決まらなければ、「[正式な名前]様」と名前で書く。どちらでもよいか迷ったら、先輩が同じ相手に送ったメールを一通見せてもらい、同じ形に合わせる。