NOTE 164 · 営業の実践ノート
シャチハタとは:会社名と浸透印の通称、朱肉を使う印との違いと使い分け
公開:2026年10月4日
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「シャチハタ」は、シヤチハタ株式会社という会社の名前です。同時に、インクが内蔵されていて、朱肉やスタンプ台を使わずに押せる印(浸透印)の通称としても使われています。書類によっては「シャチハタ不可」とされることがあるので、どの書類に使えるかは、会社と、書類を出す先の決まりで確かめます。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 書類に「シャチハタ不可」と書いてあり、何がだめなのか・自分の印は使えるのかが分からないとき。
- 1
自分の印が、浸透印か、朱肉を使う印かを確かめる
- 2
仕事で押す書類を書き出す
- 3
会社の決まりと、出す先の指定を確かめて分ける
- 4
迷う書類は、押す前に出す先か先輩に聞く
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
シャチハタとは:会社の名前であり、浸透印の通称
「シャチハタ」という言葉には、二つの使われ方があります。一つは会社の名前、もう一つは、朱肉やスタンプ台を使わずに押せる印の通称です。
会社の名前は、公式サイトの会社概要に、「シヤチハタ株式会社」(シヤチハタ株式会社「会社概要」)と書かれています。「ヤ」が大きい字です。その理由について、同社は次のように説明しています。「当社が創業いたしました1925年(大正14年)では、当時の風潮で小文字を使用する機会が少なく、また、社名を文字で表した時に見栄えのバランスを整えるために大文字表記にした、という経緯があります。」(シヤチハタ株式会社 よくあるご質問「シヤチハタの『ヤ』はなぜ大文字なのですか?」)
社名の由来については、「シヤチハタは名古屋城の金のシャチホコに由来しております。」(シヤチハタ株式会社 よくあるご質問「社名であります『シヤチハタ』の意味が知りたいのですが。」)とあります。
通称としての使われ方も、同社が説明しています。
主にスタンプ台要らずで連続なつ印できる浸透印の事を「シヤチハタ」や「シヤチハタ印」と呼ばれています。
出典:シヤチハタ株式会社 よくあるご質問「『シヤチハタ印』とは何ですか?」
浸透印とは、印の中にインクが入っていて、印面にしみ出してくる作りの印です。押すたびに朱肉やスタンプ台に付ける必要がありません。職場で「シャチハタで押しておいて」と言われたら、多くの場合、この浸透印のことを指しています。
つまり、正式な社名の書き方は「シヤチハタ」、ふだんの会話や書類の注意書きでは「シャチハタ」と書かれることが多い、という関係です。この記事では、通称として「シャチハタ」と書きます。会社名を書類に正式に書く場面があれば、公式の表記に合わせます。
朱肉を使う印との違い:認印・実印・銀行印
浸透印と比べられるのが、朱肉を付けて押す印です。朱肉は、辞書に「朱色の印肉。朱と油を練って繊維質のものに含ませたもの。」(精選版 日本国語大辞典「朱肉」)とあります。
朱肉を使う印には、使い道による呼び名があります。辞書の説明を先に見ます。
- 認印(みとめいん):「実印以外の個人の印章。また、書類などの内容を認証するために押す印影。」(精選版 日本国語大辞典「認印」)
- 実印(じついん):「あらかじめ市区町村長に届け出て、必要の際には印鑑証明書の交付を受けられるようにしてある印章。一人1個に限られ、慣習上、重要な取引などに用いられる。」(デジタル大辞泉「実印」)
- 銀行印:銀行などの金融機関に届け出て、口座の手続きに使う印の呼び名として使われています。
認印・実印・銀行印は、何に使うかによる呼び名です。浸透印か、朱肉を使う印かは、印の作りの違いです。この二つは、別の分け方です。次の表で整理します。
| 比べる点 | 浸透印(通称シャチハタ) | 朱肉を使う印 |
|---|---|---|
| インク | 印の中に入っている。印面にしみ出す | 入っていない。押すたびに朱肉を付ける |
| 印面 | ゴム製(シヤチハタ株式会社の説明による) | 商品によって違う。販売ページや店で確かめる |
| 押すまでの動作 | ふたを取って、そのまま押す | 朱肉を付けてから押す |
| 使われる場面の例 | 社内の回覧、荷物の受け取りなど。会社の決まりによる | 出す先が朱肉の印を求める書類。契約や届出など |
| 手入れ | 印影が薄くなったら、決められたインクを補充する | 朱肉が乾いたら、朱肉を替えるか補充する |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
ゴム印は、辞書に「ゴム製の印判。」(デジタル大辞泉「ゴム印」)とあります。会社の住所や社名を押すゴム印(スタンプ台を使うもの)とは、インクが中に入っているかどうかが違います。
営業の仕事では、自分の名前の印のほかに、会社の印(角印や代表者の印など)が出てきます。会社の印は、営業が自分の判断で押すものではありません。押印と捺印の言葉の違い、取引先に印をお願いするときの言い方は、捺印と押印の違いにまとめています。
「シャチハタ不可」と言われる理由:公式の説明と、確かめ方
書類の注意書きに「シャチハタ不可」「浸透印不可」「スタンプ印不可」と書かれていることがあります。理由について、シヤチハタ株式会社は、よくあるご質問で次のように答えています。
「当社の浸透印は印面がゴム製です。ゴム印は、捺し方や時間の経過と共にゴムが変形し、印影に影響するためです。」(シヤチハタ株式会社 よくあるご質問「『シヤチハタ印不可』と言われるのはなぜですか?」)
印影とは、紙に押されて残った印の形のことです。同じ印を押したのに、押し方や時間の経過で形が変わると、「前に届けた印と同じかどうか」を見比べる手続きでは困ります。
実印について、百科事典には「1人につき1個に限られ、合成樹脂やゴム印など変形しやすいものや、印影の照合がむずかしいものは認められない。」(日本大百科全書(ニッポニカ)「実印」)と書かれています。印鑑登録の細かい決まりは、市区町村ごとに定められているので、登録するときは役所の案内で確かめます。
ここまでが、出典で確かめられる範囲です。それ以外の書類で不可とされる理由は、書類を出す先が、それぞれ決めていることです。この記事では、理由を決めつけません。大事なのは、次の3つの確かめ方です。
- 書類の注意書きと記入例を読む。押す欄の近くや、裏面、記入例に、印の指定が書かれていることがあります。
- 書かれていなければ、出す先に聞く。「こちらの欄は、浸透印でもよろしいでしょうか」と聞きます(説明用の例です)。
- 社内の書類は、会社の決まりを見る。総務や経理の案内、先輩の押し方を確かめます。
なぜ押す前に確かめるのか。不可の書類に浸透印を押すと、書類を作り直したり、相手に押し直しをお願いしたりすることになるからです。押す前の一言で、やり直しを防げます。
契約書に印が要るかどうか、という法律の考え方は、この記事では扱いません。国の資料をもとにした説明は、捺印と押印の違いにあります。
営業が使う場面と、使わない場面
使ってよい場面は、会社ごとに違います。次の表は、分け方の一例です。自分の会社の決まりを先に確かめ、表を書き換えて使ってください。
| 書類・場面 | 浸透印 | 確かめる先 |
|---|---|---|
| 社内の回覧・確認の印 | 使う会社が多い | 先輩の押し方、社内の案内 |
| 荷物や郵便の受け取り | 使う会社が多い | 会社の決まり。受け取ってよい人が決まっていることもある |
| 社内の申請書(経費・休みなど) | 会社による | 総務・経理の案内 |
| 見積書・請求書・領収書 | 会社の印を押す決まりのことが多い。自分の印で押さない | 上司、経理 |
| 契約書・覚書 | 会社の印を押す。営業が自分の判断で押さない | 上司、会社の押印の手続き |
| 役所や金融機関へ出す書類 | 出す先の指定による | 書類の注意書き、出す先の窓口 |
| 取引先の書式で頼まれた書類 | 出す先の指定による | 取引先の担当者 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
表の上3つは、「読みました」「受け取りました」という確認のしるしです。数が多く、早く押せるほうが仕事が進むので、浸透印が使われやすい場面です。
下の4つは、会社の外へ出る書類です。ここで大事なのは、浸透印かどうかより先に、誰の印を、誰が押すかです。会社の印を押す手続きは、会社ごとに決まっています。自分の名前の印を、会社の印の代わりに押しません。
外出先で印が要る場面がある人は、朱肉を使う認印を持ち歩くかどうかも決めます。持ち歩くなら、会社の決まり(私物の印を仕事で使ってよいか)を先に確かめます。なくしたときに、誰に報告するかも決めておきます。
選ぶとき・補充するとき
会社から印が支給されるなら、自分で買う必要はありません。自分で用意するときは、次の点を比べます。印面の大きさ(押す欄に収まるか)、自分の名字の既製品があるか、インクの補充のしかた、ふたをなくしにくい作りか、です。訂正に使う小さい印が要るかどうかは、会社の訂正のしかたで決まります。訂正印の考え方は、割印とはで触れています。
印影が薄くなったら、インクを補充します。補充のしかたは、メーカーと商品ごとに違うので、説明書か公式の案内に従います。シヤチハタ株式会社は、自社の浸透印について次のように案内しています。
「Xスタンパーは、当社専用インキを補充する仕様で設計されています。他社製のインキを使用したり、混ぜてしまうと、インキが固まり使用できなくなる可能性があります。」(シヤチハタ株式会社 よくあるご質問「市販されている他社製の油性顔料系インキや油性染料系インキは使えませんか?」)
同じページには、「誤った種類のインキを補充すると、正常になつ印できなくなる場合があります。」(シヤチハタ株式会社 よくあるご質問「市販されている他社製の油性顔料系インキや油性染料系インキは使えませんか?」、同じページ)ともあります。商品ごとの補充のしかたは、同社の「インキの補充方法」で確かめられます。ほかのメーカーの浸透印なら、そのメーカーの案内を見ます。
手元にあるインクを、「朱色だから同じだろう」と入れるのは避けます。朱肉用の液と、浸透印用のインクは、別の物です。
聞き方と答え方の例:惜しい例と良い例
社内の書類について、先輩に聞くときの例です。会話は説明用の例です。
惜しい聞き方:「これ、シャチハタでいいですよね」
良い聞き方:「経費の申請書に印を押す欄があります。浸透印で押してもよいでしょうか。朱肉の印が要るなら、押し直します」
惜しい聞き方は、「いい」という答えを先に決めています。先輩が忙しいと、「たぶんね」で終わるかもしれません。良い聞き方は、書類の名前を言い、だめだった場合の動きも伝えています。先輩は、「それは総務に出すから、朱肉で」と、はっきり答えやすくなります。
次は、取引先から「この書類、シャチハタでもいいですか」と聞かれたときの例です。
惜しい答え方:「たぶん大丈夫だと思います」
良い答え方:「確認いたします。少々お待ちいただけますか」(上司か、書類を受け取る部署に聞いてから)「お待たせいたしました。こちらの書類は、朱肉を使う印でお願いしております。お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします」
「たぶん」で答えると、相手はその言葉どおりに押します。後で不可と分かれば、相手に押し直しをお願いすることになります。自分の会社が受け取る書類でも、決めているのは受け取る部署です。聞いてから答えます。
こちらから書類をお願いするときは、最初から印の指定を伝えます。「ご署名の横に、朱肉を使う印でご押印をお願いいたします。浸透印はご遠慮いただいております」と書けば、相手は迷いません。お願いの言い方の全体は、捺印と押印の違いにまとめています。
迷いやすい判断と、押し間違えたあと
判断1:「シャチハタ不可」と書かれていなければ、使ってよい?
書かれていないことは、「使ってよい」と同じではありません。基準は、社外へ出る書類は、押す前に一度確かめることです。社内の回覧のように、先輩が浸透印で押している書類は、同じように押して構いません。
確かめる先は、書類を受け取る側です。「印の指定はありますでしょうか」と聞きます。指定がないと言われたら、その答えを、日付と相手の名前と一緒にメモに残します。
判断2:取引先が、浸透印で押して返してきたら?
自分で「これでは受け取れません」と決めません。受け取ってよいかどうかは、書類を使う部署(経理、総務、法務など)が決めることだからです。上司か、その部署に、書類を見せて聞きます。
押し直しをお願いすることになったら、相手の手間を減らす言い方にします。「恐れ入りますが、こちらの欄は、朱肉を使う印でお願いしております。お手数ですが、押し直しをお願いできますでしょうか。新しい用紙を同封いたします」と、理由と、こちらで用意する物を伝えます(説明用の例です)。
判断3:朱肉の印を忘れて、手元に浸透印しかないときは?
朱肉の印を求められている書類に、浸透印で代わりに押しません。基準は、押さずに持ち帰るか、出す先に聞くことです。「印を持参しておりません。後日お持ちしてもよろしいでしょうか」と伝えます(説明用の例です)。
期限が近いときは、上司に連絡して、どうするかを決めてもらいます。その場しのぎで押した印は、後で押し直すより手間がかかることがあります。
判断4:ほかのメーカーの浸透印も、「シャチハタ不可」に含まれる?
書類の「シャチハタ不可」が、どこまでを指すかは、書いた側が決めています。浸透印の全体を指しているのかどうかは、文字だけでは分かりません。自分の印が浸透印なら、メーカーにかかわらず、出す先に「浸透印でもよいでしょうか」と聞きます。
ここからは、押し間違えたあとの動きです。
不可の書類に、浸透印で押してしまった
その場では:自分で消したり、上から朱肉の印を重ねたりしません。書類を出す先か、上司に、「浸透印で押してしまいました。どのように直せばよいでしょうか」と聞きます。新しい用紙に書き直すのか、訂正の方法があるのかは、出す先が決めます。
後の記録:「注意書きを読まずに押した。次からは、押す欄の近くと裏面の注意書きを読んでから押す」と書きます。
印影が薄い・かすれた
その場では:同じ場所に重ねて押しません。二重になって、かえって読みにくくなります。社内の回覧なら、隣に押し直してよいかを先輩に聞きます。社外の書類は、出す先に聞きます。
後の記録:「インクが薄くなっていたのに、補充していなかった。説明書を見て、決められたインクを補充する」と書き、その日のうちに補充します。
別のインクを入れてしまった
その場では:そのまま使い続けず、メーカーの案内を読みます。会社から支給された印なら、総務か先輩に「違うインクを入れてしまいました」と伝えます。直せるかどうかは、メーカーの案内によります。
後の記録:「印の型と、補充するインクの名前を、印のケースにメモして入れておく」と、次に迷わないための動きを書きます。
今日やることは一つです。仕事で押す書類を書き出し、浸透印でよいもの・朱肉の印が要るものを、会社の決まりと出す先の指定で分けてください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
自分が仕事で使っている印(浸透印・朱肉を使う印)、最近押した書類の控え、会社の決まりが分かる資料か聞ける先輩。
記入例を見る(説明用)
自分の印の種類=机にあるのは浸透印のネーム印。朱肉を使う認印は、引き出しのケースに入れてある/仕事で押す書類の一覧=社内の回覧、荷物の受け取り、経費の申請書、見積書、契約書、取引先から頼まれる書類/浸透印でよい書類=社内の回覧と、荷物の受け取り。佐藤先輩に確認。経費の申請書は、総務の案内を読んで確かめる/朱肉の印が要る書類=契約書と見積書は、自分の印ではなく会社の印を押す決まり。押すのは上司。取引先から頼まれた書類に「シャチハタ不可」とあれば、朱肉の認印を使う/迷ったときに聞く人と、聞き方=佐藤先輩に「この書類は、浸透印で押してもよいでしょうか」と、書類を見せて聞く。取引先の書類は、取引先の担当の方に聞く。(名前と書類は説明用の例)
CHECK
ここまでできたら、次へ。
自分の印の種類が分かっていて、仕事で押す書類が、浸透印でよいもの・朱肉の印が要るもの・未確認のものに分けてあり、迷ったときに聞く人が決まっている。
うまく進まなかったときは?
自分の印がどちらか分からなければ、朱肉を付けずに紙に押してみる。印影が出れば浸透印。書類を分けられなければ、「未確認」と書いて、先輩に一覧を見せて聞く。出す先の指定が見つからなければ、書類の注意書きと記入例を読み直す。