NOTE 146 · 営業の実践ノート
割印とは:契印・消印との違いと、契約書を2通作るときに確かめること
公開:2026年10月3日/更新:2026年10月4日
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割印(わりいん)とは、2枚の書類が互いに関係していることを示すために、両方の書類にまたがって1つの印を押すことです。似た言葉に、契印(けいいん)、消印(けしいん)があります。収入印紙に押す印は、国税庁のページでは「消印」と呼ばれています。この記事では、言葉の違いと、契約書を2通作るときに営業が確かめることを説明します。押すかどうか、どこに押すかは、会社の決まりと相手の書類に合わせます。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 契約書を2通作ることになり、先輩から「割印をもらってきて」と言われて、何のことか分からなかったとき。
- 1
言葉の意味を確かめる(割印・契印・消印)
- 2
契約書の通数と、誰が1通ずつ持つかを確かめる
- 3
押す人・押す所・収入印紙のことを、社内の担当に聞く
- 4
相手に、押す所と返し方を伝え、戻ったら全部のページを見る
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
割印とは:2枚の書類にまたがって押す印
契約書を2通作ることになり、先輩から「割印も忘れずに」と言われる。あるいは、相手から戻ってきた契約書の上の端に、半分だけの印が押してある。初めて見ると、何のための印なのかが分かりません。
辞書は、割印を次のように説明しています。
「2枚の書類が相互に関連していることを証明するため、両書類にまたがって1個の印章を押すこと。また、その印影。割り判。」(デジタル大辞泉「割印」)
ポイントは、2枚の書類にまたがって、1つの印を押すことです。押したあとで2枚を離すと、印は半分ずつに分かれます。2枚を合わせると、1つの印に戻ります。これで、2枚が組になっていることが分かります。
契約書を2通作り、両方の会社が1通ずつ持つとき、2通にまたがって押す、という使い方が広く行われています。日本大百科全書(ニッポニカ)は、割印について、「文書の証明などの際に要求されることが多い。」(日本大百科全書(ニッポニカ)「割印」)と説明しています。
割印は、特別な印の名前ではなく、押し方の名前です。どの印で押すか、そもそも押すかどうかは、会社の決まりと、契約書の作り方によります。「契約書には割印が要る」と、ひとまとめには言えません。
割印と契印の違い、捨て印・訂正印
割印と一緒に出てくる言葉を、辞書の語釈で並べます。
| 言葉 | 読み | 辞書の語釈 |
|---|---|---|
| 割印 | わりいん | 2枚の書類が相互に関連していることを証明するため、両書類にまたがって押す(上の引用のとおり) |
| 契印 | けいいん | 「数枚からなる書類が一連のものであることを証明するために二つの紙面にまたがらせて押す印。」(デジタル大辞泉「契印」) |
| 消印 | けしいん | 「消したしるしに押す印。」(デジタル大辞泉「消印」) |
| 捨て印 | すていん | 「証書などで、訂正の場合などを考えて、前もって欄外に押しておく印。」(デジタル大辞泉「捨印」) |
| 訂正印 | ていせいいん | 「書類を訂正するとき、その箇所に押す印。消印。」(精選版 日本国語大辞典「訂正印」) |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
割印と契印の違い
語釈から言える違いは、何と何をつなぐかです。割印は、別々の2つの書類をつなぎます。契印は、1つの書類が何枚にも分かれているとき、その紙どうしをつなぎます。日本大百科全書(ニッポニカ)は「割印」の項で、「一つの書類が複数枚にわたるときには、数紙間の連係を証するために二紙間にまたがって印章を押すことが要求されるが、この場合には契印とよばれる」(日本大百科全書(ニッポニカ)「割印」)と書いています。
契約書が3枚あれば、1枚目と2枚目、2枚目と3枚目のつなぎ目に押すのが契印。その契約書を2通作って、2通にまたがって押すのが割印、という分け方です。
ただし、言葉の使い方には幅があります。精選版 日本国語大辞典は「契印」を、「二枚または、数枚からなる文書が続いていることを証拠だてるため、各紙のとじ目やつぎ目などに押す印。」(精選版 日本国語大辞典「契印」)と説明したうえで、言い換えとして「割り印」を挙げています。デジタル大辞泉も、契印を、発行する文書と原簿の両方にまたがらせて押す場合にも使う、と説明しています。
職場で「割印」と言われたとき、ページのつなぎ目の印(契印)を指していることもあります。言葉だけで決めず、「どこに押す印のことですか」と場所で確かめると、取り違えがありません。
捨て印と訂正印
捨て印は、あとで訂正が出たときのために、前もって欄外に押しておく印です。前もって押すということは、あとの訂正を相手に任せることになります。相手の書類に捨て印の欄があっても、営業が自分の判断で押したり、お客様に軽くすすめたりしません。会社の決まりを確かめます。
訂正印は、書類を直した所に押す印です。契約書の直し方は、会社によって決まりがあり、作り直すこともあります。直し方を自分で決めないことは、下の「押し間違えたあと」でもう一度書きます。
収入印紙に押すのは「消印」:誰が・何で消すか
契約書や領収書に貼った収入印紙にも、紙と印紙にまたがって印を押します。これを「割印」と呼ぶ人もいますが、国税庁のページでは「消印」です。収入印紙は、辞書では「国庫の収入となる租税・手数料その他の収納金の徴収のために、財務省が発行する証票。」(デジタル大辞泉「収入印紙」)と説明されています。
国税庁のタックスアンサーNo.7129「印紙税の納付方法」には、印紙を貼って納める方法について、次のように書かれています。
自己またはその代理人、使用人その他の従事者の印章または署名で、その課税文書と印紙の彩紋とにかけて、判明に印紙を消す必要があります。
「彩紋(さいもん)」は、印紙の模様のことです。書類の紙と、印紙の模様の両方にかかるように、印か署名で消す、ということです。国税庁の質疑応答事例「印紙の消印の方法」は、もう少し詳しく説明しています。要点を、書いてあるとおりに引きます。
| 知りたいこと | 国税庁のページに書かれていること |
|---|---|
| なぜ消すのか | 「消印は印紙の再使用を防止するためのもの」 |
| 誰が、何で消すのか | 「印紙を消す方法は、文書の作成者又は代理人、使用人その他の従業者の印章又は署名によることになっています(令第5条)。」 |
| 契約書に押した印でないといけないか | 「文書の消印は、その文書に押した印でなくても、作成者、代理人、使用人、従業者の印章又は署名であれば、どのようなものでも差し支えありません。」 |
| 消印にならないもの | 「単に「印」と表示したり斜線を引いたりしてもそれは印章や署名には当たりませんから、消印したことにはなりません。」「鉛筆で署名したもののように簡単に消し去ることができるものは、消印をしたことにはなりません。」 |
| 2社で作った契約書は、両方が消すのか | 「甲と乙とが共同して作成した契約書については、甲と乙の双方が消印しても甲と乙のどちらか1人が消印しても差し支えありません(基通第64条)。」 |
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消印をしなかった場合について、タックスアンサーNo.7131「印紙税を納めなかったとき」には、「「貼り付けた」印紙を所定の方法によって消印しなかった場合には、消印されていない印紙の額面に相当する金額の過怠税が徴収されることになります。」と書かれています。貼っただけで終わりではない、ということです。
ここまでが、国税庁のページに書かれていることです。その契約書に印紙が要るかどうか、いくらの印紙かは、書類の中身と金額で変わります。この記事では判断しません。営業は、自分で決めて貼らず、経理や法務の担当、上司に確かめます。金額の表は、国税庁のNo.7140「印紙税額の一覧表(その1)」と「印紙税の手引」に載っています。
契約書を2通作るときに、営業が確かめること
契約書に印を押すのは、多くの会社で、総務や決められた役職の人です。営業の仕事は、押すことではなく、押してもらう段取りを整えることです。確かめることは、次の6つです。
- 通数と、誰が持つか。2通作って1通ずつ持つのか、1通だけ作って写しを渡すのか。会社と相手で決めます。
- 自分の会社は、誰が・どの印を押すか。申請の方法と、かかる日数を聞きます。日数を知らないと、相手に伝える日程を約束できません。
- 割印・契印が要るか。契約書の下書きを、法務の担当か上司に見せて聞きます。相手の会社の様式なら、相手の指定に合わせます。
- 収入印紙が要るか、誰が用意するか。経理や法務の担当に聞きます。国税庁のタックスアンサーNo.7120「契約書の写し、副本、謄本等」には、「一つの契約について2通以上の文書が作成された場合であっても、その全部の文書がそれぞれ契約の成立を証明する目的で作成されたものであれば、すべて印紙税の課税対象となります。」と書かれています。通数は、印紙にも関わるということです。
- 押す順番と、送り方。自分の会社が先に押して送るのか、相手が先か。郵送なら、送付状と返信用封筒を用意します。封筒の選び方は封筒の宛名の書き方にまとめています。
- 戻ってきたら、何を見るか。全部のページを開き、印のある所、日付の欄、通数を見ます。足りない所があれば、自分で書き足さず、上司に報告します。
3と4を飛ばして先に送ると、あとで「印が足りない」「印紙が要った」と分かり、相手にもう一度お願いすることになります。相手の会社でも、印を押すには社内の手続きがあることが多く、やり直しは相手の時間を使います。
押す位置について
位置は、一般的なやり方として、次のように説明されることが多いものです。割印は、2通を少しずらして重ね、両方の紙にかかるように押す。契印は、ページを開いたつなぎ目か、とじた部分の帯(製本テープ)と紙の境目にかかるように押す。
これは慣習で、会社によって違います。自分の会社の決まりと、相手の書類の指定が先です。相手に押してもらう所は、付せんなどで示し、お願いの文にも言葉で書きます。
場面で変わるところと、頼み方の例
次の表は、場面ごとに営業が確かめることの一例です。
| 場面 | 確かめること | 聞く相手 |
|---|---|---|
| 契約書が1枚だけ | ページのつなぎ目がないので、契印の出番はない。割印が要るか | 法務の担当・上司 |
| 契約書が何枚もある | とじ方(ホチキス・製本)と、契印が要るか | 法務の担当・上司 |
| 2通作る | 割印が要るか。印紙のこと | 法務・経理の担当 |
| 相手の会社の様式で結ぶ | 相手の指定する押し方 | 相手の担当者 |
| 電子契約で結ぶ | 会社がその方法を認めているか。手続き | 法務の担当・上司 |
| 領収書や注文請書に印紙を貼る | 誰が貼り、誰が消すか | 経理の担当 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
相手に割印や契印をお願いするときは、言葉だけだと伝わりにくいので、場所を具体的に書きます。
惜しい例
契約書を2通お送りします。ご捺印と割印をお願いいたします。
相手の担当者が、割印という言葉を知っているとは限りません。知っていても、どこに押すのかは、会社によって違います。
良い例
契約書を2通お送りします。お手数をおかけしますが、付せんを付けた次の3か所に、ご押印をお願いいたします。
・2通それぞれの、最後のページの「乙」の欄
・2通を重ねた上の端(2通にまたがる印です。弊社の印の隣にお願いいたします)
押し終わりましたら、1通を同封の返信用封筒で、◯月◯日(金)までにご返送ください。もう1通は、御社でお持ちください。
これは説明用の文例です。押す所の数を先に言い、場所を一つずつ書いています。「2通にまたがる印です」と一言添えると、割印という言葉を使わなくても伝わります。印の言葉の選び方は捺印と押印の違いにまとめています。
迷いやすい判断と、押し間違えたあと
判断1:割印がないと、契約は無効になる?
この記事では、個別の契約が有効かどうかは判断しません。参考になる国の資料として、内閣府・法務省・経済産業省「押印についてのQ&A」(令和2年6月19日)は、契約書への押印そのものについて、「特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない。」としています。割印や契印を求めるかどうかは、会社の決まりによることが多いので、自分の会社の決まりを確かめるのが、営業にできることです。
判断2:相手が割印を押さずに返してきたら?
基準は、自分で「なくてよい」と決めないです。戻ってきた書類をそのまま法務の担当か上司に見せ、「割印がない状態で戻りました。このまま進めてよいですか」と聞きます。もう一度お願いすることになったら、相手には、こちらの案内が足りなかったことをおわびして、場所を具体的に伝えます。
判断3:収入印紙の消印は、営業がしてよい?
国税庁のページは、消印できる人を、文書の作成者、代理人、使用人、従業者としています。けれども、会社の中で誰が貼り、誰が消すかは、会社の決まりです。印紙を貼る書類かどうかも含めて、経理の担当に聞きます。聞き方は、「この契約書の印紙は、どなたが貼って、どなたが消しますか」で足ります。
判断4:先輩の言う「割印」が、どの印のことか分からないときは?
割印、契印、印紙の消印は、職場によって呼び方が混ざります。「2通にまたがる印のことですか。ページのつなぎ目の印のことですか」と、場所で聞き返します。言葉を知らないことより、取り違えたまま相手にお願いすることのほうが、あとの手間が大きくなります。
押し間違えたあと:自分で直さない
その場では:印がかすれた、位置がずれた、片方の紙にしかかかっていない。気づいても、上から押し直したり、線を引いて消したり、修正液を使ったりしません。直し方は会社によって違い、契約書を作り直すこともあります。書類をそのまま上司か法務の担当に見せて、指示を受けます。
相手の会社の側の押し間違いに気づいたときも同じです。自分で「大丈夫です」と答えず、社内で確かめてから、相手に連絡します。印紙を貼り間違えたときは、はがさずに、経理の担当に見せます。
後の記録:どの書類の、どこで、何が起きたかを書きます。「割印の場所を、口頭だけで伝えた。次からは、付せんと文の両方で示す」のような形です(説明用の例です)。報告の順番は営業で失敗したときにまとめています。
今日やることは一つです。これから作る契約書を一つ決め、通数・押す人・割印や契印の要る所・収入印紙のことを、誰に確かめるかまで書き出してください。
契約のあとに交わす書類は覚書とはに、商談の前に結ぶ約束は秘密保持契約(NDA)と営業の動きにまとめています。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
これから作る契約書(下書きでよい)、自分の会社の押印の決まりが分かるもの、相手の担当者の名前と送り先。
記入例を見る(説明用)
契約書の名前と、作る通数=業務委託契約書。2通作り、自分の会社とA社が1通ずつ持つ/押す人と、印の種類=自分の会社の側は、総務が会社の印を押す決まり。営業は押さない。申請は今日出す/割印・契印の要る所=契約書は3枚をホチキスでとじた形。ページのつなぎ目の契印と、2通にまたがる割印が要るかは未確認。明日の午前、法務の担当に下書きを見せて聞く/収入印紙=要るかどうか、金額、どちらの会社が用意するかは未確認。法務の担当に聞く。貼る場合の消印も、誰がするかを聞く。自分では貼らない・消さない/相手への頼み方と、返してもらう期限=「2通とも、最後のページの乙の欄にご押印をお願いいたします。押していただく所には、付せんを付けております。1通を、同封の返信用封筒で◯月◯日(金)までにご返送ください」と書く。割印や契印をお願いする場合は、場所を付せんで示し、文にも書く。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
通数、押す人、割印・契印の要る所、収入印紙のことが書いてあり(分からない所は「未確認」と、誰に聞くかが書いてある)、相手への頼み方に、場所と期限が入っている。
うまく進まなかったときは?
割印や契印が要るかが分からなければ、契約書の下書きを法務の担当か上司に見せて、「この契約書は、どこに印が要りますか」と聞く。収入印紙のことは、経理か法務の担当に聞く。相手の書類の押し方が分からなければ、相手の担当者に聞く。