NUSSI’S SALES NOTEウッシの営業ノート

NOTE 145 · 営業の実践ノート

捺印と押印の違い:意味と、取引先に書類をお願いするときの言い方

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捺印(なついん)と押印(おういん)は、辞書では、どちらも「印を押すこと」です。辞書は「押印」を、当用漢字の制定などにより、捺印に代わって用いられるようになった語、と説明しています。意味で使い分けるというより、自分の会社と相手の書類が使っている言葉に合わせれば足ります。この記事では、言葉の意味のほかに、取引先に書類をお願いするときの言い方と、営業が自分で決めてはいけない所を説明します。

今日できるようになること

印をお願いする書類を一つ決め、どこに・誰の印を・いつまでに・どう返してもらうかを書いて、お願いの文を作る。

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こんなときに 取引先に、契約書や申込書への印をお願いするメールを書いていて、「ご捺印」と「ご押印」のどちらを使うか迷ったとき。

この順番で進めよう
  1. 1

    言葉の意味を辞書で確かめる(捺印・押印・署名・記名)

  2. 2

    自分の会社の決まりを確かめる(どの書類に、誰が押すか)

  3. 3

    相手に、どこに・誰の印を・いつまでに・どう返すかを伝える

  4. 4

    戻ってきた書類を見て、足りない所があれば上司に報告する

会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。

捺印と押印の違い:辞書では、どちらも「印を押すこと」

取引先に契約書を送るとき、メールに「ご捺印をお願いいたします」と書くか、「ご押印をお願いいたします」と書くかで、手が止まることがあります。先輩のメールを見ると、人によって違う。どちらかが間違いなのでは、と不安になります。

まず、辞書の語釈を見ます。

言葉読み辞書の語釈
押印おういん「印を押すこと。」(デジタル大辞泉「押印」)
捺印なついん「印判をおすこと。また、おした印影。押印。」(デジタル大辞泉「捺印」)

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

どちらも、印を押すことを表しています。捺印の語釈の最後には「押印」と書かれていて、辞書は2つを言い換えのきく言葉として扱っています。捺印のほうは、押したあとの印(印影)も指す、と書かれています。

では、なぜ2つあるのか。デジタル大辞泉は「押印」の補説で、「当用漢字の制定などにより、捺印に代わって用いられるようになった語。」(デジタル大辞泉「押印」)と説明しています。精選版 日本国語大辞典にも、「もと「捺印」が用いられたが、当用漢字の制定、および「法令用語改正要領」の施行によって、この語が用いられるようになった。」(精選版 日本国語大辞典「押印」)とあります。

つまり、辞書から言えるのは、意味の違いというより、言葉の成り立ちの違いです。もとは「捺印」が使われ、あとから、法令などで「押印」が使われるようになりました。この記事で引く国の資料も、題は「押印についてのQ&A」です。

「どちらかが誤り」「目上の相手にはこちら」という説明は、上の辞書には書かれていません。会社の書類やメールでは、どちらも使われています。迷ったら、自分の会社の書類と、相手の書類が使っているほうに合わせます。同じメールの中で2つを混ぜないことだけ、気をつけます。

署名・記名・調印の意味:名前を書く言葉との組み合わせ

印の言葉は、名前を書く言葉と組み合わせて使われます。「署名捺印」「記名押印」のような形です。営業にとって大事なのは、こちらの違いです。

言葉辞書の語釈
署名「本人が自分の名を書類などに書くこと。また、その書かれたもの。」(デジタル大辞泉「署名」)
記名「氏名を書きしるすこと。」(デジタル大辞泉「記名」)
署名捺印「本人みずからが自分の氏名を書いて、自分の印を押すこと。」(デジタル大辞泉「署名捺印」)
記名押印「文書に自分の氏名を、自筆以外の印刷、ゴム印などの方法でしるし、印章を押すこと。」(精選版 日本国語大辞典「記名押印」)
調印「確認の捺印(なついん)をすること。押印(おういん)。」(精選版 日本国語大辞典「調印」)

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

語釈を並べると、違いが見えます。署名は、本人が自分で名前を書くことです。記名押印の語釈には、「自筆以外の印刷、ゴム印などの方法で」とあります。名前が印刷されている欄や、ゴム印で名前を押した欄は、記名に当たります。

「署名には捺印、記名には押印を組み合わせる」と説明されることがあります。ただ、辞書を見ると、組み合わせは一つに決まっていません。精選版 日本国語大辞典は「署名捺印」を「本人みずからが自分の氏名を書いて、自分の印を押すこと。署名押印。」(精選版 日本国語大辞典「署名捺印」)と説明し、「記名捺印」の項は「=きめいおういん(記名押印)」(精選版 日本国語大辞典「記名捺印」)としています。「署名押印」「記名捺印」という言い方も、辞書に載っているということです。

だから、言葉の組み合わせで悩むより、相手にしてもらうことが何かを確かめます。本人に手で名前を書いてもらうのか。名前は印刷してあって、印だけ押してもらうのか。書類の欄に「署名」「記名押印」などと書かれていれば、その言葉をそのまま使ってお願いします。

「調印」は、契約を結ぶ場面で「調印式」のように使われます。デジタル大辞泉は、「条約・協定などの内容が確定したとき、それに関係する当事国の代表者がその公文書に署名すること。」(デジタル大辞泉「調印」)という意味を載せています。ふだんの書類のお願いで「ご調印ください」と書く場面は多くありません。

契約に押印は必要か:国の「押印についてのQ&A」

「印がないと、契約は成り立たないのか」という疑問には、国の資料があります。内閣府・法務省・経済産業省「押印についてのQ&A」(令和2年6月19日)です。問1は、次のとおりです。

問1.契約書に押印をしなくても、法律違反にならないか。

私法上、契約は当事者の意思の合致により、成立するものであり、書面の作成及びその書面への押印は、特段の定めがある場合を除き、必要な要件とはされていない。

特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない。

一方で、同じ資料の問2は、裁判で書類が証拠になるときの印の役割を説明しています。そこには、「文書の真正が裁判上争いとなった場合でも、本人による押印があれば、証明の負担が軽減されることになる。」と書かれています。

読み取れるのは、2つです。押印は、特段の定めがある場合を除いて、契約が成り立つための要件ではないこと。そして、あとで争いになったときの証明には、役割があること。「要件ではない」ことと、「会社が決まりとして印を求める」ことは、両立します。

ここで気をつけたいのは、営業が「印は要りません」と自分で決めないことです。引用の中にある「特段の定めがある場合」に当たるかどうか、印を省いてよいかどうかは、書類と取引によって変わります。お客様から「印は、なくてもいいですよね」と聞かれたら、その場で答えず、会社の法務の担当や上司に確かめてから返事をします。この記事も、個別の書類について「有効かどうか」は判断しません。

取引先に書類をお願いするときの言い方

言葉選びより大事なのは、相手が、迷わずに押して返せることです。お願いの文には、次の5つを書きます。

  1. どの書類か。書類の名前と、通数を書きます。
  2. どこに押すか。「最後のページの、乙の欄」のように、場所を言葉で書きます。付せんや鉛筆の印で場所を示す会社もあります。
  3. 誰の印か。会社の印か、担当の方の印か。どの印を使うかは相手の会社の決まりによるので、分からなければ、こちらから細かく指定しません。
  4. いつまでに。日付と曜日を書きます。
  5. どう返すか。返信用封筒で郵送か、持参か、PDFか。何通を返し、何通を相手が持つかも書きます。

場所や通数を書かないと、相手は書類を最初から読んで、押す所を探すことになります。押す所が一つ抜けて戻ってくると、もう一度送り直す手間が、相手にもこちらにもかかります。

惜しい例

A社 佐藤様

契約書をお送りします。ご捺印のうえ、ご返送ください。よろしくお願いいたします。

ていねいですが、何通あるのか、どこに押すのか、いつまでに返すのかが分かりません。2通のうち1通だけに押して返ってくる、ということが起こります。

良い例

A社 総務部 佐藤様

いつもお世話になっております。◯◯商事の山田です。

本日、取引基本契約書を2通、郵送いたしました。お手数をおかけしますが、次のとおりお願いいたします。

・2通とも、最後のページの「乙」の欄に、ご押印をお願いいたします。

・1通を、同封の返信用封筒で、◯月◯日(金)までにご返送ください。

・もう1通は、御社でお持ちください。

ご不明な点がありましたら、山田までご連絡ください。

社名・日付は説明用の例です。通数、場所、期限、返し方を、箇条書きで分けています。相手は、メールを見ながら一つずつ進められます。

言い方は、「ご押印(ご捺印)をお願いいたします」「ご押印のうえ、ご返送ください」「ご署名とご捺印をお願いいたします」などがあります。手で名前を書いてもらう欄があるなら、「ご署名」を落とさずに書きます。郵送するときの一枚は送付状の書き方、同封する封筒は返信用封筒の書き方にまとめています。

どこに押すか、誰が押すか:書類の欄と、会社の決まりに合わせる

印を押す位置について、「名前の右に、少し重ねて押す」のような説明を見かけます。一般的にはそう押されることが多い、というもので、ふつうの取引の書類について、位置を細かく決めた公的な決まりは見当たりません。書類に欄があれば欄に、会社に決まりがあれば決まりに合わせます。

場面ごとに、営業が確かめることは変わります。次の表は一例です。

場面営業が確かめること気をつけること
自分の会社が出す書類(見積書など)印が要るか。要るなら、誰が押すか様式やシステムで、印の画像が入る会社もある。会社の決まりを聞く
相手に押してもらう書類(申込書など)押す欄と、手で書く欄欄の言葉(署名・記名押印)を、そのままお願いの文に使う
両方が押す契約書自分の会社は誰が押すか。先に押して送るか、後で押すか通数と、押す順番。割印や契印が要るかも確かめる
相手の会社の様式相手の指定(押す所・印の種類)分からない所は、相手の担当者に聞く。推測で押さない
電子の書類(PDFや電子契約)会社がその方法を認めているか自分で決めず、法務の担当や上司に確かめる

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

営業が、自分の判断で会社の印を押さない

会社の印は、多くの会社で、押してよい人と手続きが決まっています。総務や上司に申請して押してもらう、という形です。会社の印が押された書類は、相手から見ると「会社として認めた書類」です。担当者が一人で押すと、会社が中身を確かめていない書類が、外に出ることになります。

急いでいても、机の引き出しにある印を自分で押さないでください。自分の名前の印(認め印)を押す場面でも、「この書類に、自分の印でよいか」を先に確かめます。金額の入った書類の見直しは、見積書を送る前に確認する7項目にまとめています。

迷いやすい判断と、押し忘れ・押し間違いのあと

判断1:「ご捺印」と「ご押印」、どちらで書く?

基準は、書類と会社に合わせるです。書類の欄や、会社のひな形のメールが「押印」なら「ご押印」、「捺印」なら「ご捺印」にします。どちらもなければ、どちらを使っても、辞書の意味のうえでは同じです。言葉を選ぶ時間は、押す場所と期限を具体的に書くほうに使います。

判断2:相手から「印は、なくてもいいですか」と聞かれたら?

基準は、その場で答えないです。国の資料は、特段の定めがある場合を除き、押印は契約の要件ではない、としています。けれども、その書類で省いてよいかは、自分の会社の決まりと、書類の種類によります。「確認して、明日の午前中までにお返事します」と期限を伝え、上司には「A社から、契約書の印を省きたいと相談がありました。どう答えればよいですか」と、相手の言葉のまま聞きます(説明用の例です)。

判断3:上司が不在で、今日中に出したいときは?

基準は、印のない書類を出すか、出す日を変えるかを、自分で決めないです。ほかに押せる人がいるかを総務に聞きます。いなければ、相手に「社内の手続きのため、お届けが◯日になります」と先に伝えます。遅れることを早く伝えるほうが、相手は予定を組み直せます。

判断4:署名の欄に、ゴム印を押して返ってきたら?

「署名」と書かれた欄に、手書きではなく、ゴム印の名前が押されて返ってくることがあります。それでよいかどうかは、自分では決めません。書類をそのまま上司か法務の担当に見せて、「署名の欄が、ゴム印で返ってきました。このままでよいですか」と聞きます。

失敗1:押し忘れのまま、受け取った

その場では:戻ってきた書類に、印のない所がある。気づいたら、自分で何かを書き足したり、代わりに押したりしません。上司に報告し、相手には「お手数をおかけして申し訳ございません。2通目の乙の欄に、ご押印が抜けておりました。お送りし直しますので、ご対応いただけますでしょうか」と、場所を具体的に伝えます(説明用の例です)。こちらの案内が足りなかったのなら、そのことも一言添えます。

後の記録:何が抜けていたか、どう案内していたかを書きます。「通数を書いていなかった。次からは、通数と場所を箇条書きにする」のような形です。受け取ったら、その日のうちに全部のページを見る、という手順も足します。

失敗2:印がかすれた・ずれた・違う所に押した

その場では:自分の会社の側の押し間違いに気づいたら、上から押し直したり、修正液で消したりしません。直し方は会社によって違い、書類を作り直すこともあります。書類をそのまま上司に見せて、指示を受けます。相手に渡した後なら、先に上司に報告してから、相手に連絡します。報告の順番は営業で失敗したときにまとめています。

後の記録:どの書類の、どこで起きたかを書きます。押す前に、試し紙に一度押してから本番を押す、という手順を先輩に教わったら、それも書き足します。

今日やることは一つです。印をお願いする書類を一つ決め、どこに・誰の印を・いつまでに・どう返してもらうかを書いて、お願いの文を作ってください。

インクが内蔵された印と、朱肉を使う印の使い分けは、シャチハタとはにまとめています。

YOUR TURN

自分の一件で、書いてみよう。

手元に用意するもの
印をお願いする書類(契約書・申込書など)、自分の会社の押印の決まりが分かるもの、相手の担当者の名前と送り先。

記入例を見る(説明用)

お願いする書類と、相手=取引基本契約書を2通。A社 総務の佐藤様あて/押してもらう所と、誰の印か=最後のページの「乙」の欄。会社の住所・会社名・代表の方の名前は印刷済み(記名)で、その右に会社の印を押してもらう。どの印を使うかは、相手の会社の決まりによるので、こちらからは指定しない/自分の会社の決まり=自分の会社の「甲」の欄は、総務が押す決まり。営業は押さない。押してもらう申請の出し方を、今日、先輩に聞く。契約書に収入印紙が要るかどうかは未確認(法務の担当に聞く)/相手に送るお願いの文=「契約書を2通お送りします。2通とも、最後のページの乙の欄にご押印のうえ、1通を同封の返信用封筒で、◯月◯日(金)までにご返送いただけますでしょうか。もう1通は、御社でお持ちください。」/返してもらう期限と方法、届いた後に確かめること=◯月◯日(金)までに、返信用封筒で郵送。届いたら、印があるか、日付の欄、通数を見る。足りない所があれば、自分で書き足さず、上司に報告する。

入力は自動保存されません。ページを移動する前に保存してください。保存した内容は他の人に自動送信されません。

CHECK

ここまでできたら、次へ。

お願いする書類、押してもらう所、期限、返し方が相手に伝わる文になっていて、自分の会社の側は誰が押すのかを確かめてある。

うまく進まなかったときは?

どこに押してもらうかが分からなければ、書類の見本を先輩に見せてもらう。自分の会社の印を誰が押すのかが分からなければ、上司か総務に「この書類は、どなたに押印をお願いすればよいですか」と聞く。言葉で迷ったら、自分の会社の書類が使っているほうに合わせる。

NEXT NOTE

次に読むなら

割印・契印・消印の違いを確かめる送付状を書く返信用封筒を用意する