NOTE 60 · 営業の実践ノート
クレーム対応の基本:営業が最初の連絡で確かめることと、上司へ報告する順番
公開:2026年10月3日
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クレーム対応で、営業の担当者が最初の連絡でやることは、その場で解決することではありません。相手の話を最後まで聞き、事実を確かめ、ご不便へのお詫びを伝え、次に連絡する時刻を約束して、すぐ上司へ報告することです。原因や責任の判断、返金や交換の約束は、自分一人では決めません。この記事では、聞き取る項目、お詫びの範囲、上司への報告の順番を説明します。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに お客様から不満や苦情の申し出を受け、最初に何を言い、誰にどう報告すればよいか分からないとき。
- 1
話を最後まで聞き、相手の言葉でくり返して事実を確かめる
- 2
ご不便へのお詫びを伝え、原因や補償はその場で約束しない
- 3
次に連絡する時刻と方法を伝えて、持ち帰る
- 4
聞いた内容と自分が伝えたことを、すぐ上司へ報告する
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
クレーム対応とは:営業担当の役目は、聞いて、確かめて、つなぐこと
クレーム対応とは、お客様から、商品やサービス、こちらの対応について、不満や苦情の申し出があったときの対応のことです。「苦情対応」と呼ぶ会社もあります。
初めて受けるときは、次のような場面でつまずきがちです。電話口で強い口調で言われ、頭が真っ白になる。早く収めたくて「すぐ交換します」と言ってしまう。あるいは、「それは仕様です」と説明を始めて、相手の怒りを大きくしてしまう。
最初の連絡で、営業の担当者がやることは、解決することではありません。聞く・確かめる・つなぐの3つです。原因が何か、どちらに責任があるか、どう補うかは、その場の担当者一人では決められないことがほとんどです。
決められないことをその場で決めると、後で言うことが変わります。相手から見ると、「最初に言ったことと違う」となり、不満がもう一つ増えます。最初の連絡でできるいちばんの仕事は、正しい内容を、早く、決められる人に届けることです。
この記事が扱うのは、相手から申し出があったときの動きです。自分のミスに自分で気づいたときの報告は、営業で失敗したときにまとめています。聞き取りの確認には、クレーム初動チェックの道具が使えます。会社にクレーム対応の手順や窓口の決まりがあれば、そちらが先です。
最初の連絡でやる6つ
申し出を受けたら、次の順で動きます。
- 最後まで聞く。途中で説明や反論をはさまず、メモを取りながら聞きます。話をさえぎられると、相手は「聞いてもらえていない」と感じ、同じ話をもう一度始めます。聞き終えるほうが、結果として早く進みます。
- 事実を確かめる。聞いた内容を、相手の言葉でくり返します。「昨日届いた3箱のうち、1箱のふたが開いていた、ということでよろしいでしょうか」(説明用の例です)。くり返すと、聞きまちがいを直せて、相手にも「伝わった」と分かります。
- お詫びの範囲を分ける。ご不便やご不快をかけたことへのお詫びは、先に伝えます。原因や責任については、確認できるまで言い切りません。分け方は、次の章で説明します。
- 持ち帰る。返金、交換、値引きなどを、その場で約束しません。「確認して、ご連絡します」と伝えます。
- 次に連絡する時刻を伝える。「本日17時までに、私からお電話します」のように、時刻・方法・誰からかを言います(説明用の例です)。時刻がないと、相手は待つ間に不安が大きくなります。
- すぐ上司へ報告する。電話を切ったら、ほかの仕事より先に報告します。上司が早く知るほど、打てる手が増えます。
けがや体調、火や煙など、安全に関わる話が出たときは、この順番を待ちません。その場で、上司や責任者にすぐ連絡します。
約束した時刻が来たら、状況が進んでいなくても連絡します。「確認が続いています。次は、明日の10時にご連絡します」と伝えます(説明用の例です)。連絡がないことが、次の不満になるからです。
聞き取る5項目と、お詫びの範囲
聞き取るのは、次の5つです。上司が判断するのに要る材料が、この5つにまとまっています。
| 項目 | 聞くこと | 聞き方の例(説明用) |
|---|---|---|
| いつ | 起きた日時、気づいた日時 | 「お気づきになったのは、いつごろでしょうか」 |
| 何が | 対象の商品やサービス、数量、注文や納品の日 | 「どの商品か、分かる範囲で教えていただけますか」 |
| どうなった | 相手が見た状態、起きたこと | 「どのような状態だったか、教えていただけますか」 |
| 今困っていること | 相手の仕事や予定に、今出ている影響 | 「今、いちばんお困りのことは、どのようなことでしょうか」 |
| 相手が望むこと | 交換、説明、訪問など、相手の希望 | 「どのような形をご希望でしょうか。社内で確認いたします」 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
あわせて、相手の名前、連絡先、連絡してよい時間帯を確かめます。現物や写真があるときは、そのまま置いておいていただけるかをお願いします。どう扱うかは、会社の手順に従います。
相手の望むことを聞くのは、その場で応じるためではありません。上司に、正しく伝えるためです。聞いた後は、「ご希望は承りました。お約束はまだできませんが、社内で確認いたします」と、約束ではないことを言葉にします。
メモには、相手の言葉と、自分の推測を分けて書きます。「配送中に開いたのだろう」は、自分の推測です。相手が言ったのは「ふたが開いていた」です。分け方は商談メモ添削と同じです。
お詫びの範囲を分ける
お詫びには、二つの種類があります。分けて考えると、最初の一言が出やすくなります。
| 種類 | 中身 | 言い方の例(説明用) |
|---|---|---|
| 最初に伝えるお詫び | ご不便、ご不快、お手間をかけたことに対して | 「ご不便をおかけし、申し訳ございません」「お手間を取らせてしまい、申し訳ございません」 |
| 確認できるまで言わないこと | 原因、責任、補償についての判断 | 「当社のミスです」「全額お返しします」「すぐ新品と交換します」 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
お詫びをまったく言わないと、相手は、困っている気持ちを受け取ってもらえなかったと感じます。一方で、原因が分からないうちに「当社のミスです」と言い切ると、後で違っていたときに、説明が変わります。そこで、相手が困っているという事実に対して先にお詫びし、原因と責任は確認してから伝えます。
こちらの誤りだと、すでに確認できていることもあります。約束した日に連絡しなかった、などです。その事実については、その場でお詫びして構いません。その先の補い方は、同じく上司と決めます。
上司へ報告する順番
報告は、次の順で話します。上司が、聞きながら判断を始められる順番です。
- 用件。「クレームの報告です」と最初に言います。相手は、聞く準備ができます。
- 誰から・いつ・どの方法で。会社名と名前、受けた時刻、電話かメールか訪問先か。
- 相手の言葉。何が、どうなったと言われたか。自分の言葉に直さず、聞いたまま伝えます。
- 今困っていることと、望んでいること。急ぎの度合いが、ここで分かります。
- 確認できたことと、未確認のこと。推測を言うなら、「推測ですが」と前に付けます。
- 自分が相手に伝えたこと。お詫びした範囲、約束した連絡の時刻。約束していないことも、「していません」と伝えます。
- 判断してほしいこと。次に誰が何をするかを、相談します。
口頭で伝えるときの例です。会社名・人名・時刻・内容は、説明用の例です。
「お時間よろしいでしょうか。クレームの報告です。先ほど10時ごろ、A社の佐藤様からお電話がありました。昨日届いた商品3箱のうち、1箱のふたが開いていたとのことです。中身の数は、まだ数えていないそうです。今日の午後に使う予定があり、足りるかどうかを心配されています。ご希望は、足りなければすぐ届けてほしい、とのことでした。出荷のときの状態は未確認です。私からは、ご不便へのお詫びと、17時までにお電話することをお伝えしました。交換や追加のお届けは、お約束していません。この後の対応を、ご相談させてください。」
6番目の「自分が相手に伝えたこと」は、抜けやすい所です。上司は、相手がいま何を待っているのかを知らないと、次の手を決められません。
口頭で伝えた後は、同じ内容をチャットやメールで文字に残します。上司が不在で連絡がつかないときは、ほかの先輩か、その上の責任者に伝えます。ふだんのうちに、「上司がいないときは、どなたに報告すればよいですか」と聞いておくと、迷わずに済みます。
対応をほかの人に引き継ぐときは、相手に同じ説明を二度させないよう、聞いた内容を記録で渡します。書き方は引き継ぎメモにまとめています。報告の欄の分け方は、営業で失敗したときの第一報の型とそろえてあります。
場面で変わるところと、言い方の例
聞く・確かめる・つなぐ、という骨組みは同じです。場面によって、力を入れる所が変わります。次の表は一例です。
| 場面 | 力を入れる所 | 進め方(一例) |
|---|---|---|
| 電話で受けた | メモと、くり返し | 名前と連絡先を先に確かめる。切る前に、次の連絡の時刻をもう一度言う |
| メールで受けた | 返信の前に、上司へ | 原因の説明をすぐに書いて返さない。受け取ったことと、いつまでに連絡するかだけを、上司に確かめてから返す |
| 訪問先で言われた | その場で約束しない | メモを取り、くり返して確かめる。「社に戻って確認し、本日中にお電話します」と伝える。現物があれば、見せていただく |
| 自分の担当ではない件 | そこで話を止めない | 「担当ではないので分かりません」で終えない。内容を聞き取り、担当へ伝えることと、誰から連絡するかを伝える |
| 怒りが強いとき | 聞くことに集中する | 言い返さず、声の大きさを相手に合わせない。話が一段落してから、くり返して確かめる |
| 原因がまだ分からないとき | 分からないと言う | 「原因は確認中です」と伝え、次の連絡の時刻を約束する。推測は話さない |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
メールは、書いた文がそのまま残ります。急いで原因の見立てを書くと、後で違っていたときに、直すのがむずかしくなります。最初の返信は、受け取ったこと、ご不便へのお詫び、次に連絡する時刻の3つで足ります。
次は、言い方の例です。どれも説明用の例です。
惜しい言い方:「それは、配送の会社の問題だと思います。」
良い言い方:「ふたが開いていたとのこと、承知しました。出荷のときの状態を確認いたします。」
惜しい言い方は、言い訳に聞こえます。相手にとっては、どこの問題かよりも、自分が困っていることが先です。しかも、確認していない推測です。良い言い方は、聞いた事実と、こちらが確かめることを伝えています。
惜しい言い方:「説明書に書いてあるとおり、その使い方はできません。」
良い言い方:「お使いになったときの状況を、もう少し伺ってもよろしいでしょうか。」
相手の誤りを指摘すると、内容が正しくても、相手は責められたと感じます。使い方がどうだったのかは、聞いてみないと分かりません。先に状況を聞き、説明は、確認が済んでから上司と決めた内容で伝えます。
惜しい言い方:「すぐに新しい物と交換します。」
良い言い方:「ご希望は承りました。社内で確認し、本日17時までに私からお電話します。」
その場の約束は、守れなかったときに、次のクレームになります。良い言い方は、希望を受け取ったことと、次の連絡の時刻を伝えています。相手は、いつまで待てばよいかが分かります。
迷いやすい判断と、失敗のあと
判断1:返金や交換を求められたら?
自分では決めません。基準は、会社が「担当者が決めてよい」と決めている範囲かどうかです。範囲が分からなければ、決めてよい範囲はない、と考えて持ち帰ります。
言い方は、「ご希望は承りました。私の一存ではお答えできませんので、確認して◯時までにご連絡します」です(説明用の例です)。「今すぐ答えて」と重ねて言われても、同じ言葉と時刻をくり返します。上司には、相手の希望を言葉のまま伝えます。
判断2:「SNSに書く」「ほかの人に話す」と言われたら?
止めようとしたり、言い返したりしません。その言葉を理由に、その場で約束を変えることもしません。伝えることは、ほかの場合と同じです。「ご不快な思いをおかけし、申し訳ございません。確認のうえ、◯時までにご連絡します」。
言われた言葉は、そのまま記録し、上司に報告します。どう対応するかは、会社が決めます。
判断3:同じ方から、何度も申し出があるときは?
毎回、日時と内容を記録します。次に受けるときは、前の記録を読んでから話します。答える人によって内容が変わると、相手はどれを信じればよいかが分からなくなります。
窓口を一人に決めるか、どこまで対応するかは、上司に相談します。「A社の佐藤様から、同じ件で3回目のお電話でした。これまでの記録はこちらです。今後の窓口を決めていただけますか」と、記録を見せて聞きます(説明用の例です)。自分だけで、対応を打ち切ると決めることはしません。
判断4:身の危険や、行きすぎた要求を感じたら?
一人で対応を続けません。おどすような言葉がある、長い時間帰していただけない、といった場面では、まず自分の安全を先にします。訪問先なら、「上司に確認いたします」と伝えて席を外し、上司に電話します。電話なら、「上司に代わります」と伝えます。
その先の対応は、会社の決まりと上司の指示に従います。厚生労働省は、顧客等からの著しい迷惑行為(いわゆるカスタマーハラスメント)について、企業向けのマニュアルなどを公開しています。会社としての対応を決めるのは会社ですので、困ったときは、起きたことを記録して上司に相談してください。
ここからは、失敗のあとの動きです。その場の立て直し方と、後の記録をセットで決めておきます。
失敗1:その場で、交換を約束してしまった
その場では:すぐ上司に報告します。「A社の佐藤様に、交換しますと言ってしまいました。確認の前でした」と、言った言葉のまま伝えます(説明用の例です)。相手への伝え直しをどうするかは、上司と決めます。黙っておくと、相手は交換を待ち続けます。
後の記録:何と言ったかを、言葉のまま書きます。次に備えて、「確認して、◯時までにご連絡します」の一言を紙に書き、電話の近くに置きます。
失敗2:約束した時刻に、連絡できなかった
その場では:気づいた時点で、すぐ連絡します。最初に、遅れたことをお詫びします。これは、こちらの誤りだと確認できている事実です。状況が進んでいなくても、今分かっていることと、次の連絡の時刻を伝えます。
後の記録:約束した時刻を、その場で予定表に入れる手順を足します。約束するときは、自分が守れる時刻を言います。確認に時間がかかりそうなら、「まず◯時に、途中の状況をご連絡します」と約束します。
失敗3:言い返して、怒りを大きくしてしまった
その場では:「お話の途中で、失礼いたしました。もう一度、最初から伺わせてください」と言って、聞くほうに戻ります。自分では収められないと感じたら、上司に代わってもらいます。代わる前に、聞いた内容を上司に伝え、相手が同じ説明をくり返さなくて済むようにします。
後の記録:どの言葉の後に、相手の口調が変わったかを書きます。自分を責めるためではなく、次の言い方を決めるためです。自分の対応そのものが申し出の原因になった場合の報告は、営業で失敗したときの型を使います。
今日やることは一つです。聞き取る5項目と、「確認して、◯時までにご連絡します」の一言を紙に書き、上司が不在のときの報告先を確かめてください。
お詫びをメールで伝えるときの書き方は、お詫びメールの書き方にまとめています。
対応が落ち着いたあとに、経過を書類にまとめるよう言われたときは、顛末書の書き方を見てください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
申し出を受けたときのメモ、相手との取引の記録(注文・納品の日など)、会社のクレーム対応の決まり、上司と責任者の連絡先。
記入例を見る(説明用)
いつ・何が・どうなったか=今日の10時ごろ、A社の佐藤様から電話。「昨日届いた商品3箱のうち、1箱のふたが開いていた」とのこと。中身の数は、まだ数えていないそうだ/今困っていることと、相手が望むこと=今日の午後に使う予定があり、数が足りるかを心配されている。ご希望は「足りなければ、すぐ届けてほしい」/確認できた事実と、未確認のこと=確認できた:納品は昨日、3箱(納品の記録で確認)。未確認:出荷のときの箱の状態、配送中の扱い、中身の数。原因は分からない(推測は書かない)/上司へ報告した内容と、受けた指示=10時15分に鈴木課長へ口頭で報告し、同じ内容をチャットで送った。指示:出荷の担当に状態を確認する。佐藤様には、中身の数を教えていただけるようお願いする。追加のお届けは、課長が判断する/次に連絡する時刻・方法・担当=今日の17時までに、田中から佐藤様へ電話。状況が分かっていなくても、その時刻に連絡する。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
相手の言葉・確認できた事実・未確認のことが分けて書いてあり、原因や補償を自分で約束しておらず、上司への報告と、次に連絡する時刻・方法・担当が書いてある(分からない所は「未確認」と書いてある)。
うまく進まなかったときは?
何を聞けばよいか分からなくなったら、紙の5項目を上から読む。答えを求められて困ったら、「確認して、◯時までにご連絡します」とだけ言う。上司がつかまらなければ、ほかの先輩か、その上の責任者に報告する。強い言葉が続いてつらいときは、一人で続けず、上司に代わってもらう。