NOTE 85 · 営業の実践ノート
顛末書の書き方:始末書との違いと、事実・原因・再発を防ぐ手立ての書き方
公開:2026年10月3日/更新:2026年10月4日
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顛末書(てんまつしょ)とは、仕事で起きたトラブルについて、始めから終わりまでの事情を書いて出す書類です。書く項目は、いつ・どこで・何が起きたか、経過、原因、対応、再発を防ぐ手立てです。顛末書は何が起きたかの経過と原因を中心に書き、始末書はお詫びと反省を中心に書きます(呼び方と使い分けは会社で違います)。この記事では、始末書との違い、項目ごとの書き方、事実と推測の分け方、社内あてと取引先あての違いを、文例と表で説明します。会社に決まった書式があれば、そちらが先です。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 納期の遅れや誤出荷、書類の誤りのあとで、上司から「顛末書を出して」と言われたとき。
- 1
会社の書式と、あて先・期限を上司に聞く
- 2
記録を開き、起きたことを日時の順に書き出す
- 3
確認できた事実・推測・未確認を分けて、項目に書く
- 4
上司に見せて、直してから出す
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
顛末書とは:起きたことを、始めから終わりまで書く書類
顛末書(てんまつしょ)とは、仕事で起きたトラブルについて、始めから終わりまでの事情を書いて出す書類です。「顛末」は、辞書(デジタル大辞泉「顛末」)に「事の最初から最後までの事情。一部始終。」とあります。その一部始終を書いた書類、というのが名前の意味です。
営業の仕事では、納期の遅れ、注文と違う商品の出荷、見積書や請求書の誤りなどのあとに、求められることがあります。読むのは、上司、社内の関係する部署、場合によっては取引先です。どの人も、その場にいなかった人です。だから、その場にいなかった人が、読むだけで何が起きたかを追えるように書きます。
顛末書に、法律で決まった書式はありません。会社に決まった書式や書き方があれば、そちらが先です。書き始める前に、上司に「書式はありますか」「誰あてに、いつまでに出しますか」と聞きます。この記事は、書式が決まっていないときや、欄に何を書けばよいか分からないときのための一例です。手書きかパソコンか、言葉づかいをどうするかも、会社の過去の顛末書に合わせます。
初めて書くときは、お詫びと反省の言葉を並べて、肝心の「何が起きたか」が短くなりがちです。読む人が知りたいのは、気持ちの強さよりも、事実と、同じことを防ぐ手立てです。
トラブルに気づいた直後の報告は営業で失敗したとき、取引先へ送るお詫びのメールはお詫びメールの書き方にまとめています。
始末書と顛末書の違い
似た名前の書類に、始末書があります。辞書(デジタル大辞泉「始末書」)は、「過ちをわびるために、事情を記して関係者に提出する書類。」と説明しています。
言葉の意味から整理すると、二つの違いは、何を中心に書くかです。次の表は、その整理の一例です。
| 比べる点 | 顛末書 | 始末書 |
|---|---|---|
| 言葉の意味 | 「顛末」=「事の最初から最後までの事情。一部始終。」(デジタル大辞泉)。それを書いた書類 | 「過ちをわびるために、事情を記して関係者に提出する書類。」(デジタル大辞泉) |
| 中心になる内容 | 何が起きたかの経過、原因、対応、再発を防ぐ手立て | お詫びと反省。事情の説明を添える |
| 求められる場面の例 | トラブルの経過を、社内や取引先に報告するとき | 本人の過ちについて、会社がお詫びの書面を求めるとき |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
ただし、呼び方と使い分けは、会社によって違います。同じ内容の書類を「経緯書」「事故報告書」「報告書」と呼ぶ会社もあります。上司から「顛末書を出して」と言われたら、名前だけで判断せず、「何を書く書類ですか」と聞いて確かめます。
始末書は、会社の就業規則の中で、懲戒(会社が行う処分)の手続きとして書かれていることがあります。厚生労働省が公開しているモデル就業規則(令和7年12月版。就業規則の規程の例)の第67条には、懲戒の種類の一つ「けん責」の説明として、「始末書を提出させて将来を戒める。」とあります。
これは規程の例で、実際の扱いは、自分の会社の就業規則で決まります。求められているのがどちらの書類か分からないときは、自分で決めずに、上司に確かめてください。
書く項目と、書式の見本
書く前に、手元の記録を開きます。メール、注文書、納品書、出荷の指示書、電話のメモです。それを見ながら、起きたことを日時の順に書き出します。記憶だけで書くと、日付や数量がずれやすいからです。
次の表は、書式が決まっていないときの項目の一例です。右の列は説明用の例です。
| 項目 | 書くこと | 書き方の例(説明用) |
|---|---|---|
| 提出日・あて先・所属と名前 | 誰が、誰に、いつ出したか | ◯年◯月◯日/営業部長 鈴木様/営業部 田中 |
| 件名 | 何の件かが、一行で分かる題 | ◯月◯日 A社あて誤出荷についての顛末書 |
| いつ・どこで | 起きた日時と、気づいた日時、場所 | ◯月◯日に出荷。◯月◯日の午前、A社からの電話で判明 |
| 何が起きたか | 起きたことを一〜二文で。品名・数量・金額も書く | 商品Xを10箱という注文に対し、商品Yを10箱出荷した |
| 経過 | 気づく前と、気づいた後の動きを、日時の順に | 下の文例のとおり |
| 原因 | 確認できた原因。推測は「推測」、分からないことは「未確認」と書く | 出荷の指示書の品番を誤って入力した(確認済み) |
| 対応 | 済んだことと、これからやることの期限 | ◯月◯日、正しい商品を納品済み |
| 再発を防ぐ手立て | 誰が・いつから・何をするか | 入力した者とは別の者が、指示書と注文書を見比べる |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
「何が起きたか」を先に書き、「経過」を後に書くのは、読む人が最初に知りたいのが結論だからです。経過から書き始めると、読む人は、何の話なのかが分からないまま、長い文を読むことになります。
経過は、日時と事実だけを並べる
経過は、一行に出来事を一つ、日時の古い順に書きます。「誰が」を省かずに書きます。「確認した」とだけ書くと、誰が何を確かめたのかが、読む人には分かりません。感想や反省は、この欄には入れません。
原因は、確認できたこと・推測・未確認に分ける
原因の欄は、三つに分けて書きます。確認できたこと(記録や実物を見て確かめたこと)、推測(そう思うが、確かめていないこと)、未確認(まだ分からないこと)です。分けずに書くと、推測が事実として社内に広がります。
再発を防ぐ手立ては、行動で書く
「今後は気をつけます」は、読む人が、やったかどうかを確かめられません。誰が・いつから・何と何を見比べるのかを書きます。自分ひとりでは決められない手立て(ほかの部署の手順を変えるなど)は、「案」として書き、上司に相談します。
書式の見本(社内あて)
◯年◯月◯日
営業部長 鈴木様
営業部 田中
◯月◯日 A社あて誤出荷についての顛末書
1. 何が起きたか:◯月◯日に出荷したA社あての商品が、注文と違っていた。注文は商品Xを10箱、出荷したのは商品Yを10箱。
2. 経過:◯月◯日 午後、田中が出荷の指示書を作成。◯月◯日、倉庫から出荷。◯月◯日 10時ごろ、A社の佐藤様から田中に電話があり、注文と違う商品が届いたと伝えられた。同日11時、田中が指示書と注文書を見比べ、品番の違いを確認。11時30分、鈴木課長に報告。14時、田中が佐藤様に電話でお詫びし、納品日を伝えた。◯月◯日、商品Xを10箱納品し、商品Yを引き取った。
3. 原因:【確認できたこと】指示書を作る際に、田中が品番を誤って入力した。入力のあとに注文書と見比べる手順は、決まっていなかった。【推測】品番が一文字違いで、見間違えたと思われる。【未確認】倉庫で気づけなかった理由(確認中。◯月◯日までに報告する)。
4. 対応:正しい商品の納品と、誤った商品の引き取りは、◯月◯日に完了。A社の佐藤様には、同日、電話で完了を伝えた。
5. 再発を防ぐ手立て:◯月◯日から、指示書は、入力した者とは別の者が、注文書と品番・数量を見比べてから倉庫へ回す。見比べた者は、指示書に名前を書く。
以上
会社名・人名・日付・数量は、どれも説明用の例です。文の終わりを「した」「である」にするか、「しました」「です」にするかは、会社の過去の書類に合わせます。
惜しい例と良い例
項目ごとに、惜しい書き方と良い書き方を比べます。どれも説明用の例です。
経過の書き方
惜しい書き方:「先週、A社への出荷でミスがあり、すぐに対応しました。」
良い書き方:「◯月◯日 10時ごろ、A社の佐藤様から田中に電話があり、注文と違う商品が届いたと伝えられた。同日11時、田中が指示書と注文書を見比べ、品番の違いを確認した。」
惜しい書き方は、「先週」「ミス」「すぐに」が、どれも読む人によって受け取り方の変わる言葉です。良い書き方は、日時・人・行動が書いてあり、気づいてから確認までの時間も読み取れます。
原因の書き方
惜しい書き方1:「月末で忙しく、確認する時間が取れなかった。」
惜しい書き方2:「倉庫の担当者の不注意が原因である。」
良い書き方:「指示書を作る際に、田中が品番を誤って入力した(指示書と注文書を見比べて確認)。入力のあとに見比べる手順は、決まっていなかった。倉庫で気づけなかった理由は、確認中である。」
惜しい書き方1は、事情の説明が先に立ち、言い訳として読まれやすい文です。忙しかったことが事実でも、読む人が知りたいのは、どの手順が抜けたのかです。
2は、確かめていないことを言い切り、ほかの人のせいにしています。良い書き方は、確かめた方法を添え、分からないことは「確認中」と分けています。
再発を防ぐ手立ての書き方
惜しい書き方:「今後は確認を徹底し、同じことがないよう注意いたします。」
良い書き方:「◯月◯日から、指示書は、入力した者とは別の者が、注文書と品番・数量を見比べてから倉庫へ回す。見比べた者は、指示書に名前を書く。」
惜しい書き方は、気持ちは伝わりますが、明日から何が変わるのかが分かりません。良い書き方は、始める日・やる人・やることが書いてあるので、後から、続いているかどうかを確かめられます。
社内あてと取引先あての違い
取引先から「顛末書を出してほしい」「経緯を書面でほしい」と求められることがあります。社内あてと同じ文をそのまま出すことはしません。次の表は、違いの一例です。
| 比べる点 | 社内あて | 取引先あて |
|---|---|---|
| 誰の名前で出すか | 自分の名前。上司が確認する欄のある書式もある | 会社として出す。誰の名前にするかは、上司が決める |
| 書き出し | 件名の後、すぐに事実を書く | 冒頭に、お詫びを一文添えることが多い |
| 原因の書き方 | 社内のどの手順が抜けたかまで書く | 相手の判断に要る範囲で、短く書く。社内の個人名は書かない |
| 再発を防ぐ手立て | 担当と、始める日まで書く | 会社として約束できる内容だけを書く |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
取引先に出す書面は、会社としての約束になります。補償や値引きなど、自分で決められないことは書きません。くわしくはお詫びメールの書き方を見てください。
書式の見本(取引先あて)
◯年◯月◯日
株式会社A 総務部 佐藤様
株式会社B 営業部 課長 鈴木
◯月◯日納品分の誤出荷について(ご報告)
このたびは、ご注文と異なる商品をお届けし、ご迷惑をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます。経過と今後の対応を、下記のとおりご報告いたします。
記
1. 発生した内容:◯月◯日にお届けした商品が、ご注文の商品X(10箱)ではなく、商品Y(10箱)でした。
2. 経過:◯月◯日、貴社よりご連絡をいただき、当社で出荷の記録を確認しました。◯月◯日、商品X(10箱)をお届けし、商品Yを引き取りました。
3. 原因:当社で出荷の指示書を作成する際に、品番を誤って入力しておりました。
4. 再発防止策:◯月◯日より、出荷の指示書は、作成した者とは別の者が、ご注文書と照合したうえで出荷いたします。
以上
これも説明用の例です。郵送する場合に「拝啓」「敬具」を付けるかどうかは、拝啓と敬具の使い方を見て、会社の過去の文書に合わせます。添える送付状は、送付状の書き方にまとめています。
場面で変わるところ
| 場面 | 力を入れる所 | 書き方(一例) |
|---|---|---|
| 原因が、まだ分からない | いつまでに分かるか | 「原因は確認中」と書き、誰が・いつまでに確かめて報告するかを添える |
| 仕入れ先や配送など、社外が関わる | 確認できた事実だけ | 相手の会社から聞いた内容は、「◯月◯日、◯◯社より連絡」と、聞いた日と相手を添えて書く |
| 取引先から、期限つきで求められた | 間に合う範囲で先に出す | 分かっていることで一度出し、「原因の詳細は◯月◯日にご報告します」と次の期限を書く |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
出す前に、上司に見せる
書き終えたら、あて先が社内でも取引先でも、出す前に上司に見せます。理由は三つあります。自分の見ていない所で起きたことを、上司が知っている場合があること。書いた手立てが、ほかの部署の仕事に関わる場合があること。取引先あてなら、会社としての言葉になることです。
見せるときは、「確認できた事実と、推測と、未確認を分けて書きました。原因の欄を、特に見ていただけますか」と、見てほしい所を伝えます(説明用の例です)。伝え方の型は報連相とはが使えます。
迷いやすい判断と、出したあとの立て直し
判断1:お詫びの言葉は、書く?
基準は、誰あてかです。取引先あてなら、冒頭に一文、何についてのお詫びかを添える形が多く見られます。社内あての顛末書は、事実の報告が中心なので、お詫びを長く書くより、項目を埋めるほうが読む人の役に立ちます。
判断2:原因が分からないまま、提出の期限が来たら?
分かっていることで出します。原因の欄には「確認中」と書き、誰に・何を・いつまでに確かめるかを添えます。空欄のまま期限を過ぎるより、途中でも、分かった範囲で出すほうが、読む人は次の判断ができます。出す前に上司へ、「原因は倉庫に確認中です。今日は分かっている範囲で出してよいですか」と聞きます。
判断3:自分のミスではないと思うときは?
顛末書は、誰が悪いかを決める書類ではなく、何が起きたかを残す書類です。自分に原因がないと思っても、自分が見たこと・やったことを、日時の順に書くことは変わりません。ほかの人や会社の動きは、確かめた事実だけを書き、評価の言葉(「不注意」「怠慢」など)は付けません。
失敗1:出したあとで、事実の誤りに気づいた
その場では:すぐ上司に報告し、どこが・どう違っていたかを伝えます。直した版を出すときは、日付と「訂正版」であることを書き、直した所が分かるようにします。黙って差し替えると、前の版を読んだ人との間で、話が食い違います。
後の記録:どの項目を、何を見ずに書いたかを残します。「出荷日を記憶で書いた。次からは、納品書を開いて写す」のような形です(説明用の例です)。
失敗2:上司に見せる前に、取引先へ送ってしまった
その場では:送ったものをそのまま上司に見せ、「A社へ、確認の前に送りました」と伝えます。直す所があるか、取引先へ追加の連絡が要るかは、上司と決めます。自分の判断で、訂正を重ねて送ることはしません。
後の記録:「急いで先に送った。次からは、送る前に上司へ見せる」と、順番を書きます。
失敗3:再発を防ぐ手立てを書いたのに、続いていない
その場では:気づいた日から、やり直します。手間がかかりすぎて続かなかったのなら、続けられる形に変える案を添えて、上司に相談します。
後の記録:手立てを書いた日に、予定表へ「一週間後に、続いているか見る」と入れておきます。
今日やることは一つです。起きたことを日時の順に書き出し、確認できた事実・推測・未確認を分けて項目に書き、上司に見せてから出してください。
始末書を出すよう言われたときは、始末書の書き方を見てください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
会社の顛末書の書式(あれば)、元の記録(注文書・出荷の指示書・メール・電話のメモ)、上司への報告のメモ。
記入例を見る(説明用)
いつ・どこで・何が起きたか=◯月◯日に出荷したA社あての商品が、注文と違っていた。注文は商品Xを10箱、届いたのは商品Yを10箱。◯月◯日の午前、A社の佐藤様からの電話で分かった/経過=◯月◯日 午後、田中が出荷の指示書を作った。◯月◯日、倉庫から出荷。◯月◯日 10時ごろ、佐藤様から田中に電話。11時、田中が指示書と注文書を見比べ、品番の違いを確認。11時半、鈴木課長に報告。14時、田中が佐藤様に電話でお詫びし、正しい商品の納品日を伝えた。◯月◯日、商品Xを10箱納品し、商品Yを引き取った/原因=確認できたこと:指示書を作るとき、田中が品番を誤って入力した。入力のあとに注文書と見比べる手順は決まっていなかった。推測:品番が一文字違いで、見間違えたと思われる。未確認:倉庫で気づけなかった理由(倉庫の担当に確認中)/対応=済んだこと:正しい商品の納品と、誤った商品の引き取り。これから:倉庫への確認の結果を、◯月◯日までに課長へ報告する/再発を防ぐ手立て=◯月◯日から、指示書は、入力した者とは別の者が、注文書と品番・数量を見比べてから倉庫へ回す。見比べた者は、指示書に名前を書く。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
起きたことが日時の順に書いてあり、確認できた事実・推測・未確認が分けてあり、再発を防ぐ手立てが「誰が・いつから・何をするか」で書いてあって、上司に見せてから出している。
うまく進まなかったときは?
経過が書けなければ、メールや電話の記録を古い順に並べ、日時と出来事だけを一行ずつ写す。原因が分からなければ、「確認中」と書き、誰に・いつまでに確かめるかを添える。再発を防ぐ手立てが思いつかなければ、「どの時点で、何と何を見比べれば気づけたか」を一つ書き、上司に相談する。