NOTE 184 · 営業の実践ノート
電卓の選び方:営業が見積もりと掛け率の計算で使う一台を、6つの点で比べる
公開:2026年10月4日
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営業の電卓は、見積もりや掛け率の計算を「出す」ためだけでなく、出した数字を「確かめる」ために使います。選ぶときは、桁数、税計算、GT(総計)、訂正と検算、大きさ、電源の6つを、自分が扱う金額と使う場所に合わせて比べます。この記事では、特定の商品を薦めず、選ぶときに確かめる点を、メーカー公式の説明を引きながらまとめます。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 見積もりや掛け率の計算で電卓を使うことになり、どれを選べばよいか、どの機能が要るのか分からないとき。
- 1
扱う金額の大きさ・使う場所・会社の決まりを確かめる
- 2
6つの点(桁数・税計算・GT・訂正と検算・大きさ・電源)で、要るものを決める
- 3
候補2つを、同じ点で比べる
- 4
届いたら、税率の設定を確かめ、いつもの計算を一度やってみる
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
電卓とは:出した数字を確かめる道具
電卓は、辞書では「集積回路を使い、四則計算などを行う小型の計算機。」(デジタル大辞泉「電卓」)と説明されています。足す・引く・かける・割るの計算を、キーを押して行う道具です。
営業の仕事では、見積もりの合計、掛け率をかけた金額、値引きのあとの粗利などを計算します。見積書そのものは、会社の仕組みや表計算のソフトで作ることが多いでしょう。それでも電卓を手元に置くのは、出した数字を、別の手段でもう一度確かめるためです。確かめる計算のことを、検算といいます。辞書には「計算の結果が正しいかどうかを確かめる計算。」(デジタル大辞泉「検算」)とあります。
なぜ確かめるのか。見積書の金額は、相手との約束の出発点になるからです。桁を一つ間違えた見積書を送ると、訂正の連絡と作り直しが要り、相手の社内の手続きも止まります。送る前に電卓で一度たたくだけで、防げる誤りがあります。
スマートフォンやパソコンでも計算はできます。会社がそれで足りるとしていて、自分も困っていないなら、電卓を買う必要はありません。この記事は、電卓を一台用意すると決めた人が、どれを選ぶかを扱います。
この記事では、特定の商品や型番を薦めません。値段も書きません。機能の説明は、メーカーの公式ページに書いてある文を引きます。キーの名前や動きは機種で違うので、買う前と使う前に、その機種の説明を読んでください。
買う前に確かめる3つ
1. 扱う金額の大きさと、よくする計算
最近の見積書の控えを見て、一番大きい合計の金額を書きます。これで、要る桁数が決まります。次に、よくする計算を書きます。掛け率をかける、数量をかけて合計する、税込の金額を出す、粗利率を出す、などです。計算のしかたは、掛け率とはと粗利とはにまとめています。
2. 使う場所
自分の机だけで使うのか、外回りに持って行くのか、お客様の前で使うのかを書きます。机で使うなら、大きくて押しやすいものが候補になります。持ち歩くなら、かばんに入る寸法が先に決まります。
3. 会社の決まり
聞いておくことは3つあります。1円未満の端数をどう扱うか(切り捨て・四捨五入など)。扱う商品の税率が一つか、複数あるか。会社に備え付けの電卓があるか。
なぜ先に聞くのか。端数の扱いが会社の決まりと違うと、電卓の答えと見積書の金額が1円ずれることがあるからです。ずれの理由が分からないまま時間を使うより、先に決まりを聞くほうが早く済みます。
惜しい聞き方:「電卓って、どれがいいですか」
良い聞き方:「見積もりの確認用に、電卓を用意しようと思っています。1円未満が出たときは、切り捨てでしょうか。それと、うちで扱う商品の税率は、一つだけでしょうか」
これは説明用の例です。惜しい聞き方は、好みを聞いているので、答えが人によって変わります。良い聞き方は、選ぶために要る決まりを聞いています。
比べる6つの点:メーカー公式の説明から
次の表は、比べる6つの点と、メーカーの公式ページにある説明です(2026年10月4日に確認)。引用は、シャープ「電卓のキーの使い方」、シャープ「設定している税率の変更方法」、カシオの実務電卓の製品ページ、カシオ「検算タイプ」のページからです。製品ページは、機能の説明の出典として引いたもので、その機種を薦めるものではありません。
| 比べる点 | メーカー公式の説明 | 確かめること |
|---|---|---|
| 1. 桁数 | カシオとシャープの製品一覧には、桁数で絞り込む欄があり、8桁・10桁・12桁などが並んでいます | 扱う一番大きい金額が表示できるか。整数なら、8桁は99,999,999まで、10桁は9,999,999,999まで、12桁は999,999,999,999まで |
| 2. 税計算 | シャープ:税込みキーは「表示されている数値を税込み額にします。」、税抜きキーは「表示されている数値を税抜き額にします。」 | 税込・税抜のキーがあるか。税率を設定し直せるか。同社のページには「※【税込】、【税抜】キー(または、【TAX】キー)がない機種は、税率設定ができません。」とあります |
| 3. GT(総計) | シャープ:グランドトータルキーは「GTメモリー(グランドトータル:総計)の内容を表示します。」。イコールキーは「計算結果を表示します。GTメモリーに加算する役割もします。」 | 明細ごとの小計を足し合わせる計算をよくするなら、GTのキーがあるか |
| 4. 訂正と検算 | シャープ:[→]キーは「最も右側に表示されている数字を一つ消します。」。カシオの仕様の欄では「桁下げ」。カシオの検算機能は「伝票の集計計算などで検算したい時に、大変便利です。」 | 打ち間違えた1桁だけを消すキーがあるか。同じ計算を2回して確かめる機能が要るか |
| 5. 大きさ | カシオの製品一覧には「デスクタイプ」「ジャストタイプ」「手帳タイプ」「カードタイプ」など、シャープには「デスクトップタイプ」「ナイスサイズタイプ」「ハンディ・手帳タイプ」などの分け方があります。カシオの製品ページには「ジャストタイプ(手に持っても卓上でも)」とあります | 呼び方はメーカーで違うので、寸法(幅・奥行・高さ)の数字で比べる |
| 6. 電源 | カシオ:「ソーラーと内蔵電池のツーウェイ・パワー方式。計算中に光がさえぎられても計算内容を保護。」 | 光で動くか、電池か、両方か。電池の種類と、自分で替えられるか |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
6つのほかに、打ちやすさと見やすさがあります。シャープの実務電卓の製品ページには、「先に押したキーから指を離す前に次のキーを押しても、入力を受け付ける2キーロールオーバー機能付きの早打ち対応です。」、「電卓の裏面には、入力時の本体のすべりを防ぐ大型ゴム足を4か所に採用しています。」、表示について「見やすい表示角度が選べます。」と書かれています。カシオの実務電卓の製品ページには、「計算状態(+-×÷)を常に画面表示し、計算ミスを軽減。」とあります。速く打ったときに入力が抜けないか、打つときに本体が動かないか、表示が見やすいか、の3つです。店で実物に触れられるなら、数字を10個ほど続けて打って確かめます。
端数の扱いも見ておきます。シャープの仕様の欄には「小数部桁数指定」「四捨五入」「切り捨て」、カシオの仕様の欄には「ラウンドセレクター」という項目があります。小数が出たときの扱いを切り替える機能です。会社の決まりに合わせられるかを、仕様の欄で確かめます。
全部を満たす必要はありません。「買う前に確かめる3つ」で書いたことに合わせて、要るものに丸を付けます。見積もりの確認に使うなら、桁数・税計算・訂正のキーの3つから考えると、毎日の計算で困りにくくなります。
営業の計算での使い方の例
ここからの数字は、すべて説明用の例です。キーの名前と順番は機種で違います。シャープ「電卓のキーの使い方」にも、「機種によってはキーがない場合もあります。」とあります。使う前に、自分の電卓の取扱説明書で確かめてください。
掛け率をかける
定価1,000円の商品を「6掛け」で卸す場合、1,000×0.6=600円です。パーセントのキーを使う方法もあります。シャープの説明では、「m × n %」の順に押す計算は「m の n% を求める」計算です。1,000×60%で、600が出ます。「6掛け」と「6割引」は逆の数字になるので、どちらの意味かを先に確かめます(掛け率とは)。
明細を合計する:GT
見積書に、明細が3行あるとします。600円×10個=6,000円、1,200円×5個=6,000円、350円×20個=7,000円。合計は19,000円です。
シャープの説明では、イコールキーが計算結果をGTメモリーに加えます。3つの計算をそれぞれイコールで終えたあと、GTのキーを押すと、3つを足した19,000が表示される、という使い方です。見積書の合計の欄と見比べれば、明細の入力の誤りに気づけます。
気をつけるのは、前の計算の結果が残っていないかです。同じページには、GTのキーについて「2回続けて押すと、GTメモリーの内容を消去します。」、クリアオールキーについて「表示数値の他、計算過程、GTメモリー、メモリーの内容を含めて、電卓内をすべて消去(ご破算)します。」と書かれています。次の見積もりを確かめる前に、GTメモリーを消します。消さないと、前の見積もりの金額が足されたままになります。
税込・税抜
税込みキーは、表示されている数字を、設定されている税率で税込みの額にします。税率が10%に設定されていれば、19,000円は20,900円になります。押す前に、設定されている税率を確かめるのが先です。設定を変える手順は機種で違うので、メーカーのサポートのページか取扱説明書を見ます。
掛け率や粗利の計算は、税抜の金額どうしでそろえます。税込の定価に掛け率をかけると、金額がずれます。見積書のどの欄が税抜で、どの欄が税込かは、見積書の書き方で確かめられます。
端数が出たとき
1,250円×0.63=787.5円。四捨五入なら788円、切り捨てなら787円です。どちらにするかは、電卓ではなく、会社の決まりが決めます。電卓の切り替えを、決まりに合わせておきます。
確かめ方は、2通りある
一つは、同じ計算をもう一度して、同じ答えになるかを見る方法です。もう一つは、逆の計算をする方法です。600÷1,000=0.6 と、卸値を定価で割って掛け率に戻します。粗利も同じです。売値600円、原価450円なら、粗利は150円、粗利率は150÷600=25%です。計算式は粗利とはにまとめています。
場面で変わるところと、聞き方・選び方の例
| 場面 | 先に見る点 | ひとこと |
|---|---|---|
| 自分の机で、見積書を確かめる | キーの大きさ、表示の見やすさ、本体が動かないか | 置いたまま片手で打つことが多い。置き場所は先に決めておく |
| 外回りに持って行く | かばんに入る寸法、重さ、ふたやケースの有無 | かばんの中でキーが押されたままにならないかを見る |
| お客様の前で、概算を出す | 表示の大きさと角度 | 相手に見せるのは、売値と合計だけ。原価や粗利の計算は、その場でしない |
| 電話を受けながら計算する | 片手で打てる大きさ、打ち間違いを1桁だけ消せるキー | 急いで出した数字は「概算です」と伝え、あとで見積書で確かめる |
| 会社に備え付けの電卓を使う | 税率の設定、端数の切り替え、GTメモリーに前の数字が残っていないか | 前に使った人の設定のままになっていることがある |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
お客様の前でその場の金額を聞かれたときは、電卓で出した数字をそのまま約束にしません。「概算で〇〇円ほどです。正式な金額は、見積書でお出しします」と伝えます(説明用の例です)。その場で金額を聞かれたときの答え方は、見積書の書き方にまとめています。
次は、選び方の例です。
惜しい選び方:販売ページで、見た目と色が気に入った物を注文する。届いてから、税込のキーが無いことと、桁が足りないことに気づく。
良い選び方:先に、扱う一番大きい金額と、よくする計算を書く。候補2つの仕様の欄で、桁数・税計算・GT・訂正のキー・寸法・電源を見比べる。返品の条件を読んでから注文する。
惜しい選び方は、見た目から入っています。良い選び方は、自分の計算から条件を決め、仕様の欄で確かめています。見た目は、条件を満たした候補の中から選びます。
届いたら、使う前に3つを確かめます。税率の設定。端数の切り替え。そして、見積書の控えの明細を一度打って、合計が同じになるかです。
迷いやすい判断と、計算を間違えたあと
判断1:スマートフォンの電卓や、表計算で足りる?
基準は、見積書を作った手段とは別の手段で、確かめられているかです。表計算で作った見積書を、同じ表計算の式で確かめても、式の誤りには気づけません。別の手段がスマートフォンで足りていて、会社もそれでよいとしているなら、電卓は要りません。お客様の前でスマートフォンを出してよいかは、会社と訪問先で受け止め方が違います。先輩に「お客様の前で計算するとき、スマートフォンを使ってもよいでしょうか」と聞きます(説明用の例です)。
判断2:10桁と12桁、どちらにする?
基準は、扱う一番大きい金額に、余裕を足して決めることです。10桁でも、整数なら99億円台まで表示できます。金額だけなら足りる人が多いでしょう。ただ、割り算で小数が出る計算では、小数の部分にも桁を使います。迷うなら、今の見積書の合計を打ち、粗利率の計算まで一度やってみて、表示に収まるかで決めます。
判断3:税率の違う商品を、両方扱うときは?
シャープ「電卓」のページのよくある質問には、「インボイスには税率ごとの消費税額を定められたルールで記載する必要がありますが、複数税率に対応した電卓なら、計算・確認がスムーズです。」と書かれています。カシオの製品一覧にも、「W税率」という絞り込みの項目があります。扱う商品の税率が二つあるなら、二つの税率を切り替えて計算できるかを、仕様の欄で確かめます。どの商品がどの税率かは、電卓ではなく、会社の資料で確かめます。
判断4:会社に備え付けの電卓があるときは?
基準は、使いたいときに使えるかと、設定を自分で確かめられるかです。部で1台を回して使っていて、困っていないなら、買う必要はありません。共用の電卓は、前に使った人の設定が残っていることがあるので、使う前に税率と端数の切り替えを見ます。
ここからは、計算を間違えたあとの動きです。
間違えたあと1:税率の設定を確かめずに、税込の金額を伝えた
その場では:正しい税率で計算し直し、すぐに訂正します。「先ほどお伝えした税込の金額に、誤りがありました。正しくは〇〇円です。申し訳ございません」と、誤りと正しい数字を一文で伝えます(説明用の例です)。見積書を出したあとなら、上司に報告してから、作り直したものを送ります。
後の記録:「税率の設定を見ずに税込みキーを押した。次からは、使う前に、100を打って税込みキーを押し、設定を確かめる」と書きます。
間違えたあと2:GTメモリーを消さずに、次の見積もりを合計した
その場では:合計が見積書の金額と合わないと気づいたら、いったん全部を消して、最初の明細から打ち直します。途中から足し直そうとすると、どこまで入っているかが分からなくなります。
後の記録:「前の計算が残ったまま合計した。次からは、計算を始める前に、全部を消すキーを押す」と書きます。
見積もりが通って契約に進むと、契約書に押す印の話が出てきます。そのときは割印とはが役に立ちます。
今日やることは一つです。最近の見積書の控えを開き、一番大きい合計の金額と、よくする計算を書き出してください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
最近作った見積書の控え(金額の桁が分かるもの)、会社の端数の扱いが分かる資料か聞ける先輩、今使っている電卓(あれば)。
記入例を見る(説明用)
扱う一番大きい金額と、よくする計算=見積の合計で数百万円まで。掛け率の計算、数量をかけた合計、税込の金額の確認が多い/使う場所=ほとんど自分の机。月に数回、お客様の前で概算を出す/会社の決まり=端数は1円未満を切り捨て(佐藤先輩に確認)。扱う商品の税率は一つ。備え付けの電卓は部で1台で、使いたいときに空いていないことがある/6つの点で、要るもの・要らないもの=桁数は12桁。税込・税抜のキーは要る。GTキーは要る(明細の合計に使う)。訂正のキーは要る。大きさは机に置く形。電源は光と電池の両方で動くもの。検算の機能は、あれば使う/届いたあとに確かめること=税率の設定。端数の切り替え(切り捨て)。見積書の控えの明細を一度打って、合計が同じになるか。(数字と名前は説明用の例)
CHECK
ここまでできたら、次へ。
扱う一番大きい金額と使う場所が書いてあり、6つの点で要る・要らないが決まっていて、届いたあとに確かめることが書いてある。
うまく進まなかったときは?
扱う金額が分からなければ、最近の見積書の控えを3件見て、一番大きい合計を書く。端数の扱いが分からなければ、「見積もりで1円未満が出たときは、切り捨てでしょうか」と先輩に聞く。要る機能が決められなければ、今の電卓で困った場面を一つ書く。