NOTE 139 · 営業の実践ノート
粗利とは:粗利率の計算式と、値引きの前に営業が確かめること
公開:2026年10月3日
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粗利(あらり)とは、売上高から売上原価を引いた額のことです。粗利益(あらりえき)の略で、会計の言葉では売上総利益(うりあげそうりえき)と言います。粗利を売上高で割ったものが粗利率です。この記事では、辞書の語釈、計算のしかた、値引きをすると粗利がどれだけ減るかの計算例、見積を出す前に確かめる手順を説明します。数字は、すべて説明用の例です。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 先輩に「この見積、粗利はいくら?」と聞かれて答えられなかったとき。値引きを頼まれて、どこまで下げてよいのか分からないとき。
- 1
売上(税抜か税込か)と、原価に何を入れるかを確かめる
- 2
粗利=売上−原価、粗利率=粗利÷売上 で計算する
- 3
値引きをした場合の粗利と粗利率も計算する
- 4
会社の基準と比べ、承認をもらってから見積を出す
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
粗利とは:売上高から売上原価を引いた額
見積書の下書きを先輩に見せたら、「これ、粗利はいくら?」と聞かれた。合計の金額は答えられるのに、粗利は答えられない。営業を始めて間もないころに、よくある場面です。
粗利は「あらり」と読みます。辞書では、「「粗利益」の略。」(デジタル大辞泉「粗利」)とされています。その「粗利益」(あらりえき)の語釈は、次のとおりです。
- 「売上高から売上原価を差し引いた額。大まかに示される利益。売上総利益。粗利。」(デジタル大辞泉「粗利益」)
- 「売上額から生産原価(商業の場合は仕入れ原価)を差し引いた額。」(精選版 日本国語大辞典「粗利益」)
会計の書類では、「売上総利益」(うりあげそうりえき)という名前で出てきます。語釈は、「売上高から売上原価を控除した金額。」(デジタル大辞泉「売上総利益」)です。「控除」は、差し引くという意味です。粗利・粗利益・売上総利益は、同じものを指す言葉として、辞書に並べて書かれています。
引かれる側の「売上原価」は、「商品の売上高に対応する仕入原価、または製品の製造原価。」(デジタル大辞泉「売上原価」)と説明されています。仕入れて売る仕事なら仕入れた値段、作って売る仕事なら作るのにかかった費用、ということです。
ここで、一つ気をつけることがあります。原価に何を入れるかは、会社によって違います。百科事典にも、「粗利を計算する際に用いる売上原価は卸売・小売業や製造業など業種によって計算の仕方が異なる。」(日本大百科全書(ニッポニカ)「粗利」)と書かれています。送料や、外へ頼む作業の費用を原価に入れるのかどうか。これは、この記事では決められません。自分の会社の経理の担当か、上司に確かめてください。
計算のしかた:粗利と粗利率
粗利の式は、語釈のとおりです。用語集にも、「売上総利益=売上高-売上原価」(人材マネジメント用語集「売上総利益」)と、式の形で載っています。
粗利 = 売上 − 原価
粗利率(あらりりつ)は、粗利が売上のどれだけに当たるかを表す割合です。辞書の見出しは「粗利益率」で、「売上高に対する売上総利益(粗利益)の割合。」(デジタル大辞泉「粗利益率」)と書かれ、同じ意味の言葉として「粗利率。売上総利益率。」(デジタル大辞泉「粗利益率」)が挙げられています。「売上高に対する割合」なので、割る数は売上です。
粗利率 = 粗利 ÷ 売上(%で表すときは、100をかける)
流通の用語辞典には、短い計算例が載っています。「たとえば500円で仕入れた商品を1000円で販売すると粗利益は500円となる。この粗利益の販売価格に対する比率を粗利益率という。」(流通用語辞典「粗利益」)この例なら、粗利益率は 500÷1000 で、50%です。
もう少し仕事に近い数字で、計算してみます。次の表は、説明用の例です。
| 項目 | 金額・割合 | 計算 |
|---|---|---|
| 売上 | 100,000円 | 見積書の金額(この例は税抜) |
| 原価 | 70,000円 | 仕入れの金額(この例は税抜) |
| 粗利 | 30,000円 | 100,000 − 70,000 |
| 粗利率 | 30% | 30,000 ÷ 100,000 = 0.3 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
売上と原価は、同じ基準でそろえる
売上が税込で、原価が税抜のままだと、粗利が実際より大きく見えます。税抜と税抜、1台分と1台分、のように、同じ基準の数字どうしで引き算をします。税込と税抜のどちらで計算するかは、会社の決まりに合わせてください。消費税の扱いそのものは、この記事では説明しません。経理の担当に確かめてください。
営業がなぜ粗利を見るのか:値引きの計算例
営業は、売上の金額で話をすることが多い仕事です。それでも粗利を見るのは、値引きをしても、原価は変わらないからです。値引きした額は、そのまま粗利から減ります。
値引きは、辞書では「定価よりも安くすること。」(デジタル大辞泉「値引き」)と説明されています。上の例の商品を、値引きして売った場合を計算します。数字は、説明用の例です。
| 値引き | 売上 | 原価 | 粗利 | 粗利率 |
|---|---|---|---|---|
| なし | 100,000円 | 70,000円 | 30,000円 | 30% |
| 5%引き(5,000円引き) | 95,000円 | 70,000円 | 25,000円 | 約26.3% |
| 10%引き(10,000円引き) | 90,000円 | 70,000円 | 20,000円 | 約22.2% |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
10%引きの行を見てください。売上は100,000円から90,000円へ、10分の1だけ減りました。一方、粗利は30,000円から20,000円へ、3分の1が減っています。売上の1割の値引きが、この例では、粗利の3分の1に当たるわけです。
別の見方もできます。値引きの前は、1件で30,000円の粗利でした。10%引きでは、1件で20,000円です。値引きの前に2件で得ていた粗利(60,000円)と同じ額を得るには、3件を売る計算になります(20,000×3=60,000)。
この割合は、原価と値引きの大きさで変わります。自分の見積では、自分の数字で計算し直してください。大事なのは、値引きの額を、売上ではなく粗利と見比べるという見方です。
相手から見ると、「1割引いてほしい」は小さなお願いに見えます。こちらから見ると、粗利の3分の1の話です。この差を知らないまま「分かりました」と答えると、会社に戻ってから、上司に説明できなくなります。値引きを頼まれたときの受け答えは、見積書の書き方の「値引きを頼まれたら?」にもまとめています。
営業利益・純利益との違いと、粗利率の取り違え
利益という言葉は、粗利のほかにもあります。辞書と百科事典に書かれている範囲で、3つを並べます。
| 言葉 | 辞書・事典の説明 | 一言で言うと |
|---|---|---|
| 粗利(売上総利益) | 「売上高から売上原価を控除した金額。」(デジタル大辞泉「売上総利益」) | 売上から、原価を引いたもの |
| 営業利益 | 「企業の主たる営業活動から発生する利益。売上高から売上原価を控除して売上総利益を算出し、その金額から販売費および一般管理費の合計額を控除して求める。」(デジタル大辞泉「営業利益」) | 粗利から、さらに販売や管理の費用を引いたもの |
| 純利益 | 「企業が一定期間で最終的に得られる利益。」(共同通信ニュース用語解説「純利益」) | 会社に最後に残る利益 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
百科事典は、この順番を、「粗利から販売費や広告費など営業活動に伴う経費を除いた利益を「営業利益」という。」(日本大百科全書(ニッポニカ)「粗利」)と説明しています。つまり、粗利は、会社に残るお金そのものではありません。粗利から、さらに費用が引かれていきます。粗利が出ていても、それだけで会社がもうかっているとは言えない、ということです。
営業利益や純利益は、会社全体の決算で出てくる数字です。一件の見積で営業が自分で計算できるのは、ふつうは粗利までです。その先の数字の見方や、税の扱いは、会社の経理の担当に確かめてください。
粗利率と、「原価に乗せる割合」を取り違えない
初心者がいちばん間違えやすいのが、ここです。「粗利率30%」と、「原価に30%を乗せる」は、同じではありません。
原価に上乗せする額や割合は、「マークアップ」と呼ばれることがあります。辞書の語釈は、「原価に付加した金額・比率。」(デジタル大辞泉「マークアップ」)です。用語辞典には、「例えば、原価1,000円の商品の20%マークアップは200円で、小売販売価格は結果1,200円となる。」(DBM用語辞典「マークアップ」)という計算例が載っています。こちらは、原価をもとにした割合です。粗利率は、売上をもとにした割合でした。
同じ原価で、二つを比べます。数字は、説明用の例です。
| 考え方 | 原価 | 売値 | 粗利 | 粗利率(粗利÷売値) |
|---|---|---|---|---|
| 原価に30%を乗せる | 70,000円 | 91,000円(70,000+21,000) | 21,000円 | 約23.1% |
| 粗利率を30%にする | 70,000円 | 100,000円(70,000÷0.7) | 30,000円 | 30% |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
原価に30%を乗せても、粗利率は約23.1%で、30%には届きません。売値の差は9,000円です。上司に「粗利率30%で出して」と言われて、原価に1.3をかけて見積を出すと、言われた基準より低い金額で出すことになります。
なお、「値入率」(ねいれりつ)という言葉を使う会社もあります。この言葉は、辞書で見出しを確かめられませんでした。売値をもとにするのか、原価をもとにするのか。自分の会社でどちらの意味で使っているかを、先輩に確かめてください。聞き方は、「この30%は、売値に対する割合ですか。原価に対する割合ですか」です。
見積を出す前に、粗利を確かめる手順
粗利は、見積書を相手に出す前に確かめます。出したあとで粗利が足りないと分かっても、相手の手元には、その金額が残っているからです。順番は、次のとおりです。下の実践シートと同じ並びです。
- 売上を書く。見積書の合計のうち、粗利の計算に使う金額を書きます。税抜か税込かも、一緒に書きます。
- 原価を確かめる。価格表、仕入先からの見積書、社内のシステムなど、数字が書いてある物を見て確かめます。記憶で書きません。何を原価に入れるか(送料、作業の費用など)が分からなければ、先輩に聞きます。確かめた相手や資料の名前も、書いておきます。
- 粗利と粗利率を計算する。粗利=売上−原価、粗利率=粗利÷売上です。式も一緒に書きます。式が残っていると、確認する人が、どこで間違えたかを見つけやすくなります。
- 会社の基準と比べる。粗利や粗利率に、会社や部署の基準があるかどうかを確かめます。基準があれば、それと比べます。基準を下回るときは、自分で判断せず、上司に相談します。
- 承認をもらってから出す。見積書と、粗利の計算を、一緒に見せます。送る前の見直しは、見積書を送る前に確認する7項目と、見積提出前チェックを使ってください。
場面によって、先にやることが変わります。次の表は一例です。会社の決まりがあれば、そちらを優先してください。
| 場面 | 気をつける所 | 進め方(一例) |
|---|---|---|
| いつもの商品を、価格表どおりに出す | 原価が変わっていないか | 価格表の日付を見る。古ければ、先輩に今の金額を聞く |
| 仕入先から取り寄せる商品 | 仕入れの金額が、見積のたびに変わる | 仕入先の見積書を取り、その金額を原価にする。頼み方は見積依頼メールの書き方を見る |
| その場で値引きを頼まれた | 粗利を計算しないまま、答えない | 「条件を確認して、あらためてお返事します」と伝え、戻って計算する |
| ほかの会社と比べられている | 値引きの前に、粗利を見る | 比べ方は相見積もりの進め方を見る |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
言い方の例:惜しい例と良い例
上司に値引きの相談をするときの、説明用の例です。
惜しい例:「A社から、もう少し安くならないかと言われました。どうしましょうか」
良い例:「A社の佐藤様から、本体1台を90,000円にできないかと相談されました。今の見積は100,000円で、原価は70,000円、粗利は30,000円です。90,000円にすると、粗利は20,000円、粗利率は約22.2%になります。お返事は金曜までにほしい、とのことです。どこまでお応えしてよいか、相談させてください」
惜しい例は、上司が、金額も原価も一から聞くことになります。良い例は、相手の希望、今の粗利、値引き後の粗利、返事の期限がそろっています。上司は、判断だけをすれば済みます。相談のしかたは、報連相とはにもまとめています。
迷いやすい判断と、計算を間違えたあと
判断1:原価が分からないときは、どうする?
基準は、数字が書いてある物を、自分で見たかどうかです。「たしか、このくらい」で計算した粗利は、見積の根拠になりません。価格表にも社内のシステムにも無ければ、先輩に聞きます。「[商品名]の原価を確かめたいのですが、どの資料を見ればよいですか」と、資料の場所を聞く形にすると、次からは自分で確かめられます。
原価を、営業に知らせない会社もあります。その場合は、「この金額で見積を出してよいか」を、決められる人に確かめる形になります。
判断2:粗利の「率」と「額」、どちらを見る?
両方を書きます。率だけを見ると、金額の小さい取引でも良く見えます。額だけを見ると、値引きの重さが分かりにくくなります。どちらを基準にするかは、会社や部署によって違います。上司に「うちの部署では、粗利の額と率のどちらを基準にしていますか」と聞いてください。
判断3:粗利や原価の数字を、お客様に話してよい?
話しません。原価や粗利は、会社の中の数字です。「うちも、これ以上は粗利が出なくて」のような言い方も、数字を想像させます。値引きに応えられないときは、理由を数字で説明するより、「ご希望の金額は、社内で検討しましたが、お応えできませんでした」と結果を伝えます(説明用の例です)。代わりに出せる条件があるかどうかは、上司と決めます。
判断4:粗利が小さい見積は、出してはいけない?
そうとは限りません。初めての取引だから、数量が多いから、という理由で、会社が認めることもあります。営業が自分で決めないこと、が基準です。「粗利は◯円、粗利率は◯%です。基準より低いのですが、出してよいでしょうか」と、数字を添えて上司に聞きます。支払いの条件や取引の上限に関わる話は、与信とはも見てください。
間違えたあと1:粗利率を、原価で割って計算していた
その場では:まだ見積を出していなければ、計算し直して、上司に「先ほどの粗利率は、原価で割っていました。正しくは◯%です」と伝えます(説明用の例です)。すでに相手に出しているときは、自分で直した見積を送り直す前に、上司に報告します。金額をどうするかは、会社が決めます。
後の記録:「粗利率を、粗利÷原価で計算した。次からは、式を紙に書き、『売上で割る』と声に出してから電卓を打つ」と書きます(説明用の例です)。
間違えたあと2:古い原価で計算して、見積を出してしまった
その場では:気づいた時点で、上司に報告します。伝えるのは、いつ・誰に・いくらで出したか、正しい原価はいくらか、その場合の粗利はいくらか、の3つです。相手への連絡は、上司と決めてから行います。黙って金額を変えた見積を送り直すことはしません。報告の順番は、営業で失敗したときにまとめています。
後の記録:「価格表の日付を見なかった。次からは、原価を書く欄の横に、確かめた資料の名前と日付を書く」と書きます(説明用の例です)。
今日やることは一つです。今出そうとしている見積を一件決め、売上・原価・粗利・粗利率を書き出し、原価を誰に確かめたかを書いてください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
今出そうとしている見積書の下書き、価格表や仕入れの金額が分かる資料、電卓。
記入例を見る(説明用)
見積の相手と、品名・数量=A社の佐藤様。本体1台/売上=100,000円(税抜)/原価と、その金額を確かめた相手=70,000円(税抜)。仕入れの金額は、価格表で確かめた。送料を原価に入れるかどうかは未確認。今日、先輩に聞く/粗利と粗利率=粗利は 100,000−70,000=30,000円。粗利率は 30,000÷100,000=30%/値引きを頼まれた場合の粗利と、相談する相手=10%引き(10,000円引き)なら、売上90,000円、粗利20,000円、粗利率は約22.2%。自分では決めず、課長に相談する。数字はすべて説明用の例。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
売上・原価・粗利・粗利率が、式と一緒に書いてあり、原価を誰に確かめたかが分かる。値引きをした場合の粗利も計算してある。
うまく進まなかったときは?
原価が分からなければ、先輩に「この商品の原価は、どの資料を見れば分かりますか」と聞く。粗利率の計算に自信がなければ、粗利を売上で割ったか(原価で割っていないか)を見直す。会社の基準が分からなければ、「見積を出す前に、粗利はどこまで確かめればよいですか」と上司に聞く。