NUSSI’S SALES NOTEウッシの営業ノート

NOTE 139 · 営業の実践ノート

粗利とは:粗利率の計算式と、値引きの前に営業が確かめること

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粗利(あらり)とは、売上高から売上原価を引いた額のことです。粗利益(あらりえき)の略で、会計の言葉では売上総利益(うりあげそうりえき)と言います。粗利を売上高で割ったものが粗利率です。この記事では、辞書の語釈、計算のしかた、値引きをすると粗利がどれだけ減るかの計算例、見積を出す前に確かめる手順を説明します。数字は、すべて説明用の例です。

今日できるようになること

今出そうとしている見積を一件決め、売上・原価・粗利・粗利率を書き出し、原価を誰に確かめたかを書く。

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こんなときに 先輩に「この見積、粗利はいくら?」と聞かれて答えられなかったとき。値引きを頼まれて、どこまで下げてよいのか分からないとき。

この順番で進めよう
  1. 1

    売上(税抜か税込か)と、原価に何を入れるかを確かめる

  2. 2

    粗利=売上−原価、粗利率=粗利÷売上 で計算する

  3. 3

    値引きをした場合の粗利と粗利率も計算する

  4. 4

    会社の基準と比べ、承認をもらってから見積を出す

会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。

粗利とは:売上高から売上原価を引いた額

見積書の下書きを先輩に見せたら、「これ、粗利はいくら?」と聞かれた。合計の金額は答えられるのに、粗利は答えられない。営業を始めて間もないころに、よくある場面です。

粗利は「あらり」と読みます。辞書では、「「粗利益」の略。」(デジタル大辞泉「粗利」)とされています。その「粗利益」(あらりえき)の語釈は、次のとおりです。

会計の書類では、「売上総利益」(うりあげそうりえき)という名前で出てきます。語釈は、「売上高から売上原価を控除した金額。」(デジタル大辞泉「売上総利益」)です。「控除」は、差し引くという意味です。粗利・粗利益・売上総利益は、同じものを指す言葉として、辞書に並べて書かれています。

引かれる側の「売上原価」は、「商品の売上高に対応する仕入原価、または製品の製造原価。」(デジタル大辞泉「売上原価」)と説明されています。仕入れて売る仕事なら仕入れた値段、作って売る仕事なら作るのにかかった費用、ということです。

ここで、一つ気をつけることがあります。原価に何を入れるかは、会社によって違います。百科事典にも、「粗利を計算する際に用いる売上原価は卸売・小売業や製造業など業種によって計算の仕方が異なる。」(日本大百科全書(ニッポニカ)「粗利」)と書かれています。送料や、外へ頼む作業の費用を原価に入れるのかどうか。これは、この記事では決められません。自分の会社の経理の担当か、上司に確かめてください。

計算のしかた:粗利と粗利率

粗利の式は、語釈のとおりです。用語集にも、「売上総利益=売上高-売上原価」(人材マネジメント用語集「売上総利益」)と、式の形で載っています。

粗利 = 売上 − 原価

粗利率(あらりりつ)は、粗利が売上のどれだけに当たるかを表す割合です。辞書の見出しは「粗利益率」で、「売上高に対する売上総利益(粗利益)の割合。」(デジタル大辞泉「粗利益率」)と書かれ、同じ意味の言葉として「粗利率。売上総利益率。」(デジタル大辞泉「粗利益率」)が挙げられています。「売上高に対する割合」なので、割る数は売上です。

粗利率 = 粗利 ÷ 売上(%で表すときは、100をかける)

流通の用語辞典には、短い計算例が載っています。「たとえば500円で仕入れた商品を1000円で販売すると粗利益は500円となる。この粗利益の販売価格に対する比率を粗利益率という。」(流通用語辞典「粗利益」)この例なら、粗利益率は 500÷1000 で、50%です。

もう少し仕事に近い数字で、計算してみます。次の表は、説明用の例です。

項目金額・割合計算
売上100,000円見積書の金額(この例は税抜)
原価70,000円仕入れの金額(この例は税抜)
粗利30,000円100,000 − 70,000
粗利率30%30,000 ÷ 100,000 = 0.3

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

売上と原価は、同じ基準でそろえる

売上が税込で、原価が税抜のままだと、粗利が実際より大きく見えます。税抜と税抜、1台分と1台分、のように、同じ基準の数字どうしで引き算をします。税込と税抜のどちらで計算するかは、会社の決まりに合わせてください。消費税の扱いそのものは、この記事では説明しません。経理の担当に確かめてください。

営業がなぜ粗利を見るのか:値引きの計算例

営業は、売上の金額で話をすることが多い仕事です。それでも粗利を見るのは、値引きをしても、原価は変わらないからです。値引きした額は、そのまま粗利から減ります。

値引きは、辞書では「定価よりも安くすること。」(デジタル大辞泉「値引き」)と説明されています。上の例の商品を、値引きして売った場合を計算します。数字は、説明用の例です。

値引き売上原価粗利粗利率
なし100,000円70,000円30,000円30%
5%引き(5,000円引き)95,000円70,000円25,000円約26.3%
10%引き(10,000円引き)90,000円70,000円20,000円約22.2%

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

10%引きの行を見てください。売上は100,000円から90,000円へ、10分の1だけ減りました。一方、粗利は30,000円から20,000円へ、3分の1が減っています。売上の1割の値引きが、この例では、粗利の3分の1に当たるわけです。

別の見方もできます。値引きの前は、1件で30,000円の粗利でした。10%引きでは、1件で20,000円です。値引きの前に2件で得ていた粗利(60,000円)と同じ額を得るには、3件を売る計算になります(20,000×3=60,000)。

この割合は、原価と値引きの大きさで変わります。自分の見積では、自分の数字で計算し直してください。大事なのは、値引きの額を、売上ではなく粗利と見比べるという見方です。

相手から見ると、「1割引いてほしい」は小さなお願いに見えます。こちらから見ると、粗利の3分の1の話です。この差を知らないまま「分かりました」と答えると、会社に戻ってから、上司に説明できなくなります。値引きを頼まれたときの受け答えは、見積書の書き方の「値引きを頼まれたら?」にもまとめています。

営業利益・純利益との違いと、粗利率の取り違え

利益という言葉は、粗利のほかにもあります。辞書と百科事典に書かれている範囲で、3つを並べます。

言葉辞書・事典の説明一言で言うと
粗利(売上総利益)「売上高から売上原価を控除した金額。」(デジタル大辞泉「売上総利益」)売上から、原価を引いたもの
営業利益「企業の主たる営業活動から発生する利益。売上高から売上原価を控除して売上総利益を算出し、その金額から販売費および一般管理費の合計額を控除して求める。」(デジタル大辞泉「営業利益」)粗利から、さらに販売や管理の費用を引いたもの
純利益「企業が一定期間で最終的に得られる利益。」(共同通信ニュース用語解説「純利益」)会社に最後に残る利益

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

百科事典は、この順番を、「粗利から販売費や広告費など営業活動に伴う経費を除いた利益を「営業利益」という。」(日本大百科全書(ニッポニカ)「粗利」)と説明しています。つまり、粗利は、会社に残るお金そのものではありません。粗利から、さらに費用が引かれていきます。粗利が出ていても、それだけで会社がもうかっているとは言えない、ということです。

営業利益や純利益は、会社全体の決算で出てくる数字です。一件の見積で営業が自分で計算できるのは、ふつうは粗利までです。その先の数字の見方や、税の扱いは、会社の経理の担当に確かめてください。

粗利率と、「原価に乗せる割合」を取り違えない

初心者がいちばん間違えやすいのが、ここです。「粗利率30%」と、「原価に30%を乗せる」は、同じではありません。

原価に上乗せする額や割合は、「マークアップ」と呼ばれることがあります。辞書の語釈は、「原価に付加した金額・比率。」(デジタル大辞泉「マークアップ」)です。用語辞典には、「例えば、原価1,000円の商品の20%マークアップは200円で、小売販売価格は結果1,200円となる。」(DBM用語辞典「マークアップ」)という計算例が載っています。こちらは、原価をもとにした割合です。粗利率は、売上をもとにした割合でした。

同じ原価で、二つを比べます。数字は、説明用の例です。

考え方原価売値粗利粗利率(粗利÷売値)
原価に30%を乗せる70,000円91,000円(70,000+21,000)21,000円約23.1%
粗利率を30%にする70,000円100,000円(70,000÷0.7)30,000円30%

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

原価に30%を乗せても、粗利率は約23.1%で、30%には届きません。売値の差は9,000円です。上司に「粗利率30%で出して」と言われて、原価に1.3をかけて見積を出すと、言われた基準より低い金額で出すことになります。

なお、「値入率」(ねいれりつ)という言葉を使う会社もあります。この言葉は、辞書で見出しを確かめられませんでした。売値をもとにするのか、原価をもとにするのか。自分の会社でどちらの意味で使っているかを、先輩に確かめてください。聞き方は、「この30%は、売値に対する割合ですか。原価に対する割合ですか」です。

見積を出す前に、粗利を確かめる手順

粗利は、見積書を相手に出す前に確かめます。出したあとで粗利が足りないと分かっても、相手の手元には、その金額が残っているからです。順番は、次のとおりです。下の実践シートと同じ並びです。

  1. 売上を書く。見積書の合計のうち、粗利の計算に使う金額を書きます。税抜か税込かも、一緒に書きます。
  2. 原価を確かめる。価格表、仕入先からの見積書、社内のシステムなど、数字が書いてある物を見て確かめます。記憶で書きません。何を原価に入れるか(送料、作業の費用など)が分からなければ、先輩に聞きます。確かめた相手や資料の名前も、書いておきます。
  3. 粗利と粗利率を計算する。粗利=売上−原価、粗利率=粗利÷売上です。式も一緒に書きます。式が残っていると、確認する人が、どこで間違えたかを見つけやすくなります。
  4. 会社の基準と比べる。粗利や粗利率に、会社や部署の基準があるかどうかを確かめます。基準があれば、それと比べます。基準を下回るときは、自分で判断せず、上司に相談します。
  5. 承認をもらってから出す。見積書と、粗利の計算を、一緒に見せます。送る前の見直しは、見積書を送る前に確認する7項目と、見積提出前チェックを使ってください。

場面によって、先にやることが変わります。次の表は一例です。会社の決まりがあれば、そちらを優先してください。

場面気をつける所進め方(一例)
いつもの商品を、価格表どおりに出す原価が変わっていないか価格表の日付を見る。古ければ、先輩に今の金額を聞く
仕入先から取り寄せる商品仕入れの金額が、見積のたびに変わる仕入先の見積書を取り、その金額を原価にする。頼み方は見積依頼メールの書き方を見る
その場で値引きを頼まれた粗利を計算しないまま、答えない「条件を確認して、あらためてお返事します」と伝え、戻って計算する
ほかの会社と比べられている値引きの前に、粗利を見る比べ方は相見積もりの進め方を見る

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

言い方の例:惜しい例と良い例

上司に値引きの相談をするときの、説明用の例です。

惜しい例:「A社から、もう少し安くならないかと言われました。どうしましょうか」

良い例:「A社の佐藤様から、本体1台を90,000円にできないかと相談されました。今の見積は100,000円で、原価は70,000円、粗利は30,000円です。90,000円にすると、粗利は20,000円、粗利率は約22.2%になります。お返事は金曜までにほしい、とのことです。どこまでお応えしてよいか、相談させてください」

惜しい例は、上司が、金額も原価も一から聞くことになります。良い例は、相手の希望、今の粗利、値引き後の粗利、返事の期限がそろっています。上司は、判断だけをすれば済みます。相談のしかたは、報連相とはにもまとめています。

迷いやすい判断と、計算を間違えたあと

判断1:原価が分からないときは、どうする?

基準は、数字が書いてある物を、自分で見たかどうかです。「たしか、このくらい」で計算した粗利は、見積の根拠になりません。価格表にも社内のシステムにも無ければ、先輩に聞きます。「[商品名]の原価を確かめたいのですが、どの資料を見ればよいですか」と、資料の場所を聞く形にすると、次からは自分で確かめられます。

原価を、営業に知らせない会社もあります。その場合は、「この金額で見積を出してよいか」を、決められる人に確かめる形になります。

判断2:粗利の「率」と「額」、どちらを見る?

両方を書きます。率だけを見ると、金額の小さい取引でも良く見えます。額だけを見ると、値引きの重さが分かりにくくなります。どちらを基準にするかは、会社や部署によって違います。上司に「うちの部署では、粗利の額と率のどちらを基準にしていますか」と聞いてください。

判断3:粗利や原価の数字を、お客様に話してよい?

話しません。原価や粗利は、会社の中の数字です。「うちも、これ以上は粗利が出なくて」のような言い方も、数字を想像させます。値引きに応えられないときは、理由を数字で説明するより、「ご希望の金額は、社内で検討しましたが、お応えできませんでした」と結果を伝えます(説明用の例です)。代わりに出せる条件があるかどうかは、上司と決めます。

判断4:粗利が小さい見積は、出してはいけない?

そうとは限りません。初めての取引だから、数量が多いから、という理由で、会社が認めることもあります。営業が自分で決めないこと、が基準です。「粗利は◯円、粗利率は◯%です。基準より低いのですが、出してよいでしょうか」と、数字を添えて上司に聞きます。支払いの条件や取引の上限に関わる話は、与信とはも見てください。

間違えたあと1:粗利率を、原価で割って計算していた

その場では:まだ見積を出していなければ、計算し直して、上司に「先ほどの粗利率は、原価で割っていました。正しくは◯%です」と伝えます(説明用の例です)。すでに相手に出しているときは、自分で直した見積を送り直す前に、上司に報告します。金額をどうするかは、会社が決めます。

後の記録:「粗利率を、粗利÷原価で計算した。次からは、式を紙に書き、『売上で割る』と声に出してから電卓を打つ」と書きます(説明用の例です)。

間違えたあと2:古い原価で計算して、見積を出してしまった

その場では:気づいた時点で、上司に報告します。伝えるのは、いつ・誰に・いくらで出したか、正しい原価はいくらか、その場合の粗利はいくらか、の3つです。相手への連絡は、上司と決めてから行います。黙って金額を変えた見積を送り直すことはしません。報告の順番は、営業で失敗したときにまとめています。

後の記録:「価格表の日付を見なかった。次からは、原価を書く欄の横に、確かめた資料の名前と日付を書く」と書きます(説明用の例です)。

今日やることは一つです。今出そうとしている見積を一件決め、売上・原価・粗利・粗利率を書き出し、原価を誰に確かめたかを書いてください。

YOUR TURN

自分の一件で、書いてみよう。

手元に用意するもの
今出そうとしている見積書の下書き、価格表や仕入れの金額が分かる資料、電卓。

記入例を見る(説明用)

見積の相手と、品名・数量=A社の佐藤様。本体1台/売上=100,000円(税抜)/原価と、その金額を確かめた相手=70,000円(税抜)。仕入れの金額は、価格表で確かめた。送料を原価に入れるかどうかは未確認。今日、先輩に聞く/粗利と粗利率=粗利は 100,000−70,000=30,000円。粗利率は 30,000÷100,000=30%/値引きを頼まれた場合の粗利と、相談する相手=10%引き(10,000円引き)なら、売上90,000円、粗利20,000円、粗利率は約22.2%。自分では決めず、課長に相談する。数字はすべて説明用の例。

入力は自動保存されません。ページを移動する前に保存してください。保存した内容は他の人に自動送信されません。

CHECK

ここまでできたら、次へ。

売上・原価・粗利・粗利率が、式と一緒に書いてあり、原価を誰に確かめたかが分かる。値引きをした場合の粗利も計算してある。

うまく進まなかったときは?

原価が分からなければ、先輩に「この商品の原価は、どの資料を見れば分かりますか」と聞く。粗利率の計算に自信がなければ、粗利を売上で割ったか(原価で割っていないか)を見直す。会社の基準が分からなければ、「見積を出す前に、粗利はどこまで確かめればよいですか」と上司に聞く。

NEXT NOTE

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掛け率の計算を確かめる見積書の項目と作り方を確かめる見積書を送る前の確認をする