NOTE 140 · 営業の実践ノート
掛け率とは:「6掛け」の読み方と計算、聞き間違いを防ぐ確かめ方
公開:2026年10月3日/更新:2026年10月4日
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掛け率(かけりつ)は、定価に対する卸値の割合を指して使われることが多い言葉です。「6掛け」なら定価の60%、「7掛け」なら定価の70%、という読み方をします。計算は、定価×掛け率=卸値です。この記事では、辞書の語釈、計算のしかた、粗利との関係、見積書での書き方、聞き間違いを防ぐ確かめ方を説明します。数字は、すべて説明用の例です。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 先輩や取引先から「この商品は6掛けで」と言われて、いくらのことなのか自信が持てないとき。
- 1
何の値段に対する掛け率かを確かめる
- 2
定価×掛け率で、金額に直して計算する
- 3
税抜か税込か、当てはまる商品・数量・期間を確かめる
- 4
金額と条件を、書いたもので相手と確かめる
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
掛け率とは:定価に対する卸値の割合
取引先との電話で、「この商品は、6掛けでお願いできますか」と言われた。先輩からは、「B社は7掛けだから」と引き継ぎを受けた。何となくうなずいたものの、いくらのことなのか、自信が無い。掛け率は、知らないままでも会話が進んでしまう言葉です。
「掛け率」という見出しは、コトバンクに載っている辞書では見つけられませんでした。載っているのは、もとの言葉の「掛け」です。名詞としての語釈は、「売り値に対する卸値。また、本来の値段に対する、値引きして売る値段の割合。」(デジタル大辞泉「掛(かけ)」)です。数字の後ろに付く使い方については、「漢語の数詞に付いて、その数の割合であることを表す。」(デジタル大辞泉「掛(がけ)」)とあり、「定価の八―で卸す」という用例が添えられています。
この語釈から言えるのは、次の二つです。
- 「掛け」は、もとの値段に対する割合を表す。
- 「八掛け」のように、数字と一緒に使う。
仕事の場では、この割合のことを「掛け率」と呼び、定価に対する卸値の割合を指して使われることが多い、というのが一般的な使われ方です。卸値(おろしね)は、「卸売りの値段。」(デジタル大辞泉「卸値」)、定価は、「ある品物について前もって決めてある売り値。」(デジタル大辞泉「定価」)と説明されています。
ただし、辞書に「掛け率」としての決まった定義が載っているわけではありません。何の値段に対する割合なのかは、会社や取引によって違うことがあります。定価のことも、メーカーが示す希望小売価格(「ある商品について、製造業者などが希望する小売価格。」(デジタル大辞泉「希望小売価格」))のことも、会社が決めた標準の価格のこともあります。この記事の後半で、確かめ方を説明します。
一緒に出てくる言葉:上代・下代
掛け率の話では、「上代」(じょうだい)と「下代」(げだい)という言葉が出てくることがあります。辞書では、上代は「流通業界で、商品の小売価格のこと。」(デジタル大辞泉「上代」)、下代は「流通業界で、商品の仕入れ価格のこと。卸値。」(デジタル大辞泉「下代」)です。「上代の6掛け」と言われたら、小売価格の60%、という意味になります。
似た字の「掛け値」は、別の言葉です。「値切られることを予想して、実際の販売価格よりも値段を高くつけること。また、その値段。」(デジタル大辞泉「掛値」)という意味で、掛け率のことではありません。
計算のしかた:定価×掛け率=卸値
計算の式は、一つです。
卸値 = 定価 × 掛け率
「6掛け」は、定価の10分の6、つまり60%です。「7掛け」は70%です。「割」という単位については、辞書に「歩合の単位。1割は10分の1。」(デジタル大辞泉「割」)とあります。6掛けは、定価の6割の値段、と読みます。
定価10,000円の商品で計算します。数字は、説明用の例です。
| 言い方 | 割合 | 計算 | 卸値 |
|---|---|---|---|
| 5掛け | 50% | 10,000 × 0.5 | 5,000円 |
| 6掛け | 60% | 10,000 × 0.6 | 6,000円 |
| 7掛け | 70% | 10,000 × 0.7 | 7,000円 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
「65%」のように、きりの良くない掛け率もあります。口頭では「6.5掛け」「ろくごがけ」のように言われることがあり、聞き取りにくい所です。耳で聞いた掛け率は、%と金額に直して、確かめます。
「6掛け」と「6割引」は、逆の数字になる
いちばん多い取り違えが、これです。「6掛け」は、定価の6割の値段で売ること。「6割引」は、定価から6割を引くことです。
| 言い方 | 意味 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 6掛け | 定価の60%の値段 | 10,000 × 0.6 | 6,000円 |
| 6割引 | 定価から60%を引いた値段 | 10,000 − 6,000 | 4,000円 |
| 4割引 | 定価から40%を引いた値段 | 10,000 − 4,000 | 6,000円 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
同じ「6」でも、金額は6,000円と4,000円で、2,000円の差が出ます。6掛けと同じ金額になるのは、4割引です。「掛け」と「引き」が聞き取りにくい電話では、とくに気をつけます。
数量をかける前に、1つ分を確かめる
掛け率は、1つ分の値段で確かめてから、数量をかけます。6掛けで20個なら、6,000×20で120,000円です。7掛けなら140,000円で、差は20,000円になります。掛け率の1つの違いは、数量が増えるほど、大きな金額になります。
掛け率と、粗利・値引きの関係
掛け率は、売る側と買う側で、見え方が変わります。どちらの立場でも、掛け率が変わると、粗利が変わります。粗利(あらり)は、売上から原価を引いた額のことです。くわしくは、粗利とはで説明しています。
自分が卸す側のとき
自分の会社の商品を、取引先に卸す場面です。定価10,000円、自分の会社の原価が4,500円の商品で、計算します。数字は、説明用の例です。
| 掛け率 | 卸値(自社の売上) | 原価 | 粗利 | 粗利率 |
|---|---|---|---|---|
| 7掛け | 7,000円 | 4,500円 | 2,500円 | 約35.7% |
| 6掛け | 6,000円 | 4,500円 | 1,500円 | 25% |
| 5掛け | 5,000円 | 4,500円 | 500円 | 10% |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
掛け率が1つ下がるごとに、卸値は1,000円ずつ下がります。原価は変わらないので、粗利も1,000円ずつ減ります。7掛けから5掛けになると、粗利は2,500円から500円になります。
相手の「もう1掛け、下げてもらえませんか」は、短い一言です。こちらにとっては、定価の10%分の値引きです。その場で「分かりました」と答える前に、粗利を計算します。掛け率を変えてよいかどうかは、自分で決めず、上司に相談します。
自分が仕入れる側のとき
仕入先から6掛けで仕入れて、お客様に売る場面です。定価10,000円の商品を、6,000円で仕入れます。
| お客様への売値 | 仕入れ(原価) | 粗利 | 粗利率 |
|---|---|---|---|
| 定価どおり(10,000円) | 6,000円 | 4,000円 | 40% |
| 定価の1割引(9,000円) | 6,000円 | 3,000円 | 約33.3% |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
定価どおりに売れば、粗利率は40%です。6掛けで仕入れて定価で売ると、残りの4割が粗利になる、という関係です。お客様に1割引で売ると、粗利は4,000円から3,000円に減ります。仕入れの掛け率が変わらないまま値引きをすると、引いた分は、そのまま自分の会社の粗利から減ります。
送料や手数料が別にかかる取引では、原価はもっと大きくなります。何を原価に入れるかは、会社の経理の担当か、上司に確かめてください。
見積書や取引条件での書き方
掛け率は、口頭だけで決めると、後で食い違います。「6掛け」という言葉には、もとにする値段も、税の扱いも、入っていないからです。書くときは、次の5つをそろえます。次の表は一例です。会社の様式があれば、そちらに合わせてください。
| そろえること | 書き方の例 | 書かないと、どうなるか |
|---|---|---|
| もとにする値段 | 「定価(税抜)10,000円に対して」 | 定価か、希望小売価格か、別の価格表かで、金額が変わる |
| 掛け率 | 「60%(6掛け)」 | 「6掛け」と「6割引」を取り違える |
| 金額 | 「卸値 6,000円(税抜)」 | 計算のしかたの違いに、どちらも気づけない |
| 税抜か税込か | 「金額はすべて税抜」 | 税の分だけ、金額がずれる |
| 当てはまる範囲 | 「対象:[商品名]。◯個以上のご注文。◯年◯月までのお取引」 | ほかの商品や、少ない数量にも当てはまると受け取られる |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
大事なのは、掛け率だけでなく、金額も一緒に書くことです。割合は、人によって計算のしかたが違うことがあります。金額が書いてあれば、相手は自分の計算と見比べて、違いに気づけます。
税抜と税込
定価が税込で書かれている商品もあります。消費税率が10%の場合の例で、定価が税抜10,000円・税込11,000円の商品を、6掛けにします。税抜の定価にかければ6,000円、税込の定価にかければ6,600円です。どちらの数字で話しているかがそろっていないと、600円の差が出ます。
税抜と税込のどちらで取引の金額を表すか、端数をどうするかは、会社の決まりと、相手との取り決めによります。税の扱いそのものは、この記事では説明しません。会社の経理の担当に確かめてください。
見積書やメールに書く文の例
「[商品名]につきまして、定価(税抜)10,000円に対し、60%(6掛け)の6,000円(税抜)でお見積りいたします。」
「この条件は、1回のご注文が20個以上の場合のものです。お見積りの有効期限は、◯年◯月◯日です。」
例は、説明用です。もとにする値段、掛け率、金額、税、当てはまる範囲が、二つの文に入っています。見積書の欄の意味は、見積書の書き方にまとめています。
聞き間違い・言い間違いを防ぐ確かめ方
掛け率の行き違いは、計算の間違いより、言葉の受け取り方の違いから起こります。確かめる質問は、二つです。
- 「定価の何%ですか」と聞く。掛け率を%に言い直し、もとにする値段も一緒に確かめます。「6掛けというのは、定価の60%、というお話でしょうか」と聞きます。
- 「税抜ですか、税込ですか」と聞く。もとにする値段と、卸値の両方について確かめます。
そのうえで、金額に直して、くり返します。「定価が税抜10,000円ですので、1個6,000円、税抜、ということでよろしいでしょうか」(説明用の例です)。相手が「はい」と言えば、割合の受け取り方が違っていても、金額でそろいます。
場面によって、確かめ方が変わります。次の表は一例です。
| 場面 | 起こりやすいこと | 確かめ方(一例) |
|---|---|---|
| 電話 | 「掛け」と「引き」、「6」と「7」を聞き違える | 金額に直してくり返す。切ったあと、同じ内容をメールで送る |
| 対面の商談 | うなずいて、分かったことにしてしまう | その場でメモに金額を書き、相手に見せて確かめる |
| メール | 「6掛け」とだけ書かれている | 返信で、もとにする値段・税・金額を書いて、合っているかを尋ねる |
| 社内の引き継ぎ | 「B社は7掛け」と口頭だけで聞く | 契約書や過去の見積書の場所を聞き、自分で見る |
| 初めての取引先 | もとにする値段が、こちらの思う定価と違う | 相手の価格表をもらい、どの欄の値段かを確かめる |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
言い方の例:惜しい例と良い例
取引先に、掛け率を伝える場面です。説明用の例です。
惜しい例:「では、6掛けでお出しします」
良い例:「定価の60%、6掛けで、1個6,000円、税抜でお出しします。20個以上のご注文の場合の条件です。本日中に、見積書でお送りします」
惜しい例は、もとにする値段も、税も、数量の条件も、相手の想像にまかせています。良い例は、割合を二つの言い方で言い、金額を言い、条件を言い、書いたものを送ると伝えています。
取引先から、掛け率を言われた場面です。
惜しい例:「6掛けですね。承知しました」
良い例:「確認させてください。定価の60%、というお話でしょうか。定価は税抜の10,000円で考えておりますので、1個6,000円、税抜になります。この金額でお受けできるかどうか、社内で確認して、明日の午前中にお返事します」
惜しい例は、二つの間違いを含んでいます。受け取り方を確かめていないこと。そして、その場で承知していることです。掛け率を変える話は、値引きの話です。良い例は、内容を金額で確かめたうえで、返事は社内で確認してから、と伝えています。
迷いやすい判断と、間違えたあと
判断1:「もう1掛け下げて」と言われたら?
その場で答えません。基準は、掛け率を決める立場に、自分がいるかどうかです。決めてよいと言われていなければ、希望を正確に聞き取ります。どの商品か、数量は変わるのか、いつまでに返事が要るのか、の3つです。
上司には、「B社の鈴木様から、6掛けを5掛けにできないかと相談されました。今の粗利は1個1,500円で、5掛けにすると500円になります。数量は月20個のままです。返事は来週の月曜まで、とのことです」と、粗利の計算を添えて伝えます(説明用の例です)。
判断2:相手によって掛け率が違うのは、おかしい?
取引の量や条件によって、掛け率が違うことはあります。おかしいかどうかを、営業が自分で判断する必要はありません。気をつけるのは、ある取引先の掛け率を、別の取引先に話さないことです。取引の条件は、その相手との間の情報です。「ほかの会社さんは、いくつですか」と聞かれても、答えません。「ほかのお取引先の条件は、お話しできないことになっています」と伝えます(説明用の例です)。
判断3:掛け率が書かれた資料が、見つからないときは?
前に出した見積書の金額から、割り算で掛け率を出すことはできます(卸値÷定価)。ただ、それは「前回はそうだった」という記録で、今も同じ条件とは限りません。先輩に「B社の掛け率を、前の見積書から60%と読み取りました。今も同じでよいでしょうか」と、自分で調べた結果を添えて聞きます(説明用の例です)。
間違えたあと1:「6掛け」を「6割引」と取り違えて、見積を出した
その場では:気づいた時点で、上司に報告します。伝えるのは、いつ・誰に・いくらで出したか、正しい金額はいくらか、の2つです。相手への訂正は、上司と決めてから行います。訂正するときは、「◯月◯日にお送りした見積書の単価に、誤りがありました。正しくは6,000円です。申し訳ございません」と、誤りと正しい内容を並べて伝えます(説明用の例です)。自分の判断で、黙って金額を変えた見積書を送り直すことはしません。報告の順番は、営業で失敗したときにまとめています。
後の記録:「電話で聞いた掛け率を、金額に直して確かめなかった。次からは、金額をくり返し、切ったあとにメールで送る」と書きます(説明用の例です)。
間違えたあと2:税込の定価に掛け率をかけて、伝えてしまった
その場では:まだ見積書を出していなければ、すぐに相手に連絡します。「先ほどお伝えした6,600円は、税込の金額でした。税抜では6,000円です。失礼いたしました」と、どちらの数字が何なのかを言い直します(説明用の例です)。見積書を出したあとなら、上司に報告してから訂正します。
後の記録:「カタログの定価が税込だった。次からは、定価を書くときに(税抜)(税込)を付ける」と書きます(説明用の例です)。
今日やることは一つです。取引先を一社決め、掛け率・もとにする値段・税抜か税込か・当てはまる範囲を書き出し、分からない所に「未確認」と書いてください。
計算に使う道具は、電卓の選び方で、桁数や税計算のキーなど比べる点をまとめています。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
取引先との取引条件が分かる資料(契約書、価格表、過去の見積書)、商品の定価が分かる資料、電卓。
記入例を見る(説明用)
取引先と、対象の商品=B社の鈴木様。[商品名]/掛け率と、もとにする値段=6掛け(定価の60%)。もとにするのは、カタログに載っている定価10,000円/税抜か税込か=定価10,000円は税抜。卸値も税抜で話している、と先輩に確かめた/金額に直した計算=10,000×0.6=6,000円。20個なら 6,000×20=120,000円/当てはまる範囲と、確かめた相手=この商品だけか、ほかの商品も同じ掛け率かは未確認。数量が少ないときも同じかどうかも未確認。明日、課長に契約書の場所を聞いて確かめる。数字はすべて説明用の例。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
掛け率、もとにする値段、税抜か税込か、金額に直した計算、当てはまる範囲が書いてあり、未確認の所と、確かめる相手が分かる。
うまく進まなかったときは?
掛け率が分からなければ、先輩に「B社との掛け率は、どの資料に書いてありますか」と聞く。計算に自信がなければ、掛け率を%に直して(6掛け=60%)、定価にかけ直す。相手の言った数字に自信がなければ、「定価の何%、というお話でしょうか」と、金額と一緒に確かめる。