NOTE 03 · 営業の実践ノート
商談ヒアリング:質問を増やす前に、相手の一言を受け取る
公開:2026年10月2日/更新:2026年10月3日
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ヒアリングとは、商談で相手の状況や困りごとを聞き取ることです。質問をたくさん用意しても、会話が続くとは限りません。一つ聞いたら、返ってきた答えを短くまとめて返し、そこから次の質問を選びます。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 相手の返事が短く、次に何を聞くか迷うとき。
- 1
相手の答えを短くまとめて返す
- 2
まだ分かっていないことを一つ選ぶ
- 3
最近の一件について聞く
- 4
聞いた事実と自分の推測を分けて書く
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
ヒアリングで、初心者がつまずく場面
質問を10個用意して商談に行ったのに、3つ聞いたところで相手の返事が短くなる。沈黙がこわくて、商品の説明を始めてしまう。営業を始めたばかりの頃によくある場面です。
相手から見ると、質問が次々に飛んでくる状態は、アンケートに答えているのと変わりません。答えたことがどう受け止められたのか分からないので、だんだん短く答えるようになります。
直すところは、質問の数ではありません。「聞く→相手の答えをまとめて返す→次を一つ選ぶ」という往復にすることです。この記事では、質問の順番、答えの返し方、メモの分け方の3つを説明します。訪問前の準備は初めての訪問で準備する3つのことを見てください。
質問は「今のやり方」から順番に聞く
いきなり「何かお困りですか」と聞くと、「特にないです」と返ってくることがよくあります。困りごとは、聞かれてすぐ言葉になるとは限らないからです。答えやすい事実から聞いていきます。
| 順番 | 聞くこと | 質問の例 |
|---|---|---|
| 1 今のやり方 | 事実。誰が・いつ・どうしているか | 「いまは週に何回、どなたが納品を受け取っていますか」 |
| 2 最近の一件 | 直近の具体的な場面 | 「直近の納品のとき、手間がかかったことはありましたか」 |
| 3 影響 | それで何が起きているか | 「そのとき、ほかのお仕事に影響はありましたか」 |
| 4 希望 | いつまでに、どうなっているとよいか | 「いつ頃までに、どうなっていると助かりますか」 |
| 5 決め方 | 誰が、何を見て決めるか | 「進める場合は、どなたにご確認いただくことになりますか」 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
質問を始める前に、今日聞きたいことと時間を一言で伝えます。「本日は15分ほど、いまの納品の状況を伺えればと思っています」のように言うと、相手も何を話せばよいかが分かります。
ポイントは2番目です。「普段はいかがですか」と聞くと、答えは「まあ、普通です」になりがちです。「直近の一回」「先月の月末」のように一件に絞ると、相手は場面を思い出して話せます。
5つを全部聞く必要はありません。相手がすでに話してくれたことは飛ばします。予算や時期の聞き方に迷うときは、初対面で困ったときの質問集に場面ごとの例があります。
答えを要約して返す
要約して返すとは、相手の答えを短くまとめ、「〜ということですね」と確かめることです。相手は「伝わった」と分かります。違っていれば、その場で直してもらえます。
- 相手が話し終わるまで待つ。途中で次の質問を考え始めると、後半を聞き逃します。
- 相手が使った言葉を残して、一文にまとめる。言い換えすぎると、別の意味になります。
- 「〜ということですね」と返す。自信がなければ「〜という理解で合っていますか」と聞きます。
- 相手が「そうです」と言ったら、まだ分かっていないことを一つだけ聞く。
営業:「直近の納品のとき、手間がかかったことはありましたか」
相手:「月末は確認が重なるんですよね。納品の検品と請求書の確認が、同じ日に来るので」
営業:「月末は、検品と請求書の確認が同じ日に重なるのですね」
相手:「そうなんです。先月は検品が翌日に回ってしまって」
営業:「先月は翌日に回ったのですね。そのとき、困ったことはありましたか」
検品とは、届いた商品の数や中身が注文どおりかを確かめる作業のことです。この会話で、営業は新しい話題を足していません。相手の言葉を返し、出てきた「先月の一件」をもう一歩聞いただけです。それでも、困っている場面が具体的になっています。
気をつけたいのは、返すときに自分の推測を足してしまうことです。相手が「月末は確認が重なる」と言ったのに、「人手が足りないのですね」と返すと、相手が言っていないことを言ったことにしてしまいます。まずは相手の言葉のまま返します。
相手が「特に困っていない」と答えたら、その答えもそのまま受け止めます。無理に問題を探そうとすると、答えを誘導することになります。「今のやり方で回っているのですね」と返し、希望や決め方の質問へ進むか、その日は終えます。
聞いた事実と、自分の推測を分けてメモする
商談中は、相手が言ったことと、自分が「たぶんこうだろう」と思ったことが頭の中で混ざります。メモの段階で分けておかないと、あとで推測を事実として提案書に書いてしまいます。
| メモの種類 | 意味 | 記入例 |
|---|---|---|
| 相手の発言・要旨 | 相手が実際に言ったこと | 「月末は検品と請求書の確認が同じ日に重なる」「先月は検品が翌日に回った」 |
| 自分の理解 | 要約して返し、相手が「そうです」と言った内容 | 月末の納品日に、確認作業が集中している |
| 仮説 | 自分の推測。まだ確かめていない | 納品日を月末からずらせば、負担が減るのかもしれない |
| 未確認 | まだ聞けていないこと | 納品日は変えられるのか。検品は何人でしているのか |
| 次に聞く一問 | 未確認から一つ選ぶ | 「検品は、何名でされていますか」 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
仮説(かせつ)とは、「こうではないか」という自分の見立てのことです。仮説を持つのは悪いことではありません。次の質問を考える材料になります。ただし、相手に確かめるまでは、事実の欄に移しません。
聞きながら書くのが難しいときは、相手の言葉を単語で書き留めるだけでかまいません。項目が決まった用紙がほしいときは、商談ヒアリングシートを開いておくと、悩み・現状・予算・時期などを欄ごとに残せます。商談のあとでメモを書き直す手順は、商談メモの直し方で説明しています。
よくある失敗と直し方
用意した質問を、順番どおりに全部聞く
相手がすでに話したことをもう一度聞くと、「聞いていなかったのか」と受け取られます。質問のリストは、聞けたものに線を引きながら使います。残った中から、次に聞くものを一つ選びます。
答えを聞いて、すぐ商品の説明を始める
「それなら当社の商品で解決できます」と早く言いたくなります。しかし、困りごとを一つ聞いただけでは、ほかの条件がまだ分かっていません。説明に入る前に、「ここまでの理解で合っていますか」と要約を返します。
沈黙がこわくて、質問を重ねる
相手が黙っているのは、考えている時間かもしれません。質問のあとは、心の中で5つ数えるくらい待ってみます。それでも答えが出ないときは、「たとえば直近の一回ではいかがでしたか」と、場面を小さくして聞き直します。
よくある質問
予算や決裁者のことは、初回から聞いてもよいですか?
決裁者とは、買うかどうかを最終的に決める人のことです。聞いてかまいませんが、理由を添えます。「条件に合う案に絞りたいので」と前置きすると、相手も答えやすくなります。「まだ決まっていない」と言われたら、「未確認」と書いて次回に回します。
話が広がって、時間が足りなくなったら?
残り時間を見て、「あと5分ほどですので、一点だけ確認させてください」と断ります。聞けなかったことは「未確認」に書きます。帰り際に「残りはメールで伺ってもよろしいですか」と相談します。
聞いた内容は、商談のあとでどう使いますか?
「自分の理解」に書いた内容は、商談後に送るお礼メールの確認事項になります。相手に文字で見てもらうと、聞き違いがあった場合に直してもらえます。書き方は、商談後のお礼メールで説明しています。
今日やることは一つです。次の商談で、相手が一つ答えてくれたら、質問を重ねる前に「〜ということですね」と一度返してみてください。商談のあとで、下のシートに書きます。
商談全体の流れを先に確かめたいときは、商談とはを読んでください。
予算や決裁の流れなど、答えにくいことを尋ねる前置きは、「差し支えなければ」の使い方にまとめています。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
相手の直前の返答、面談の目的、残り時間。
記入例を見る(説明用)
発言=月末は検品と請求書の確認が同じ日に重なる/自分の理解=月末の納品日に確認作業が集中している/仮説=納品日をずらせば負担が減るのかもしれない/未確認=納品日は変えられるか、検品は何人でしているか/次に聞く一問=検品は、何名でされていますか。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
相手の発言・自分の仮説・次の確認が分かれ、同じことを重ねて聞いていない。
うまく進まなかったときは?
すでに答えがあるなら質問を飛ばす。疲れや時間切れが見えたら要点を返して区切り、必要な追加確認だけ相談する。