NOTE 141 · 営業の実践ノート
相見積もりとは:見積を出す側の営業がやることと、取る側の注意
公開:2026年10月3日
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相見積もり(あいみつもり)とは、複数の取引先などに同じ条件で見積を出してもらい、比べることです。略して「あいみつ」とも言います。営業は、見積を取られる側になることが多い立場です。この記事では、取られる側の営業がやること(条件をそろえる、含まれるもの・含まれないものを書く、期限を守る、結果を聞く、振り返る)を中心に、取る側になったときの注意も説明します。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに お客様から「ほかの会社にも見積を頼んでいます」と言われ、何を確かめて、どう出せばよいか分からないとき。
- 1
相手が示した条件・比べる点・期限を聞いて書く
- 2
条件のとおりに見積を作り、含むもの・含まないものを書く
- 3
期限までに出し、結果が分かる時期を確かめる
- 4
結果を聞き、理由と次に直すことを記録する
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
相見積もりとは:同じ条件で見積を取り、比べること
商談の終わりに、お客様から「ほかの会社にも見積をお願いしています」と言われた。断られたのか、値引きを求められているのか、分からない。初めてだと、返す言葉に迷う場面です。
相見積もりは「あいみつもり」と読みます。辞書の見出しは「合(い)見積(も)り/相見積(も)り」で、二つの書き方が並んでいます。語釈は、「複数の取引先などに同条件で見積もりを提出させ、比較すること。あいみつ。」(デジタル大辞泉「合見積り/相見積り」)です。略した「あいみつ」という言い方も、語釈の中に載っています。なお、「見積り」は、「見積もること。また、その数字。」(デジタル大辞泉「見積り」)と説明されています。
語釈の中で、営業にとって大事な言葉は、「同条件で」と「比較する」の二つです。
- 相手は、同じ条件で並べたい。だから、こちらが条件を変えて出すと、比べられない見積になる。
- 相手は、比べて決める。だから、何で比べるのかを知らないまま出すと、金額の数字だけで並べられる。
相見積もりは、断りの言葉とは限りません。会社の決まりとして、何社かから見積を取ることになっている場合もあります。「比べて決める」という相手の進め方を、そのまま受け取ります。
営業は、見積を取られる側(出す側)になることもあれば、仕入先に頼むときのように、取る側になることもあります。この記事は、取られる側を中心に説明します。取る側の、見積を頼むメールの書き方は、見積依頼メールの書き方にまとめています。
社内で「あいみつ」と言うのは、ふつうの言い方です。お客様に向けて話すときや、書くときは、略さずに「相見積もり」「複数の会社にお見積りをお願いしている」と言うほうが、言葉を知らない相手にも伝わります。
相見積もりだと言われたとき・言われないとき
言われたとき:聞くことは3つ
「ほかにも頼んでいます」と言われたら、まず「承知しました」と受けます。そのうえで、次の3つを聞きます。
- 条件。品名、数量、仕様、納品の場所、設置などの作業の有無。相手がほかの会社にも同じ条件を伝えているはずなので、その条件をそのまま教えてもらいます。
- 比べる点。金額のほかに、何を見るのか。納期か、納品後の対応か、支払いの条件か。
- 期限と、決める時期。いつまでに出せばよいか。いつごろ決まるのか。
自分:「承知しました。お見積りを作るにあたり、3点だけ確認させてください。数量と仕様は、先ほど伺った内容でよろしいでしょうか」
お客様:「はい、2台で、設置までお願いしたいです」
自分:「ご検討にあたり、金額のほかに、特に重視される点はございますか」
お客様:「納品までの日数ですね。来月中には使い始めたいので」
自分:「来月中のご利用開始ですね。お見積りは、いつまでにお出しすればよろしいでしょうか。お決めになる時期も、差し支えなければ教えてください」
やり取りは、説明用の例です。聞いていないことが、二つあります。ほかの会社の名前と、ほかの会社の金額です。相手が自分から話さないかぎり、こちらからは聞きません。聞かれた相手は、答えにくく、こちらが金額だけを合わせに来ると受け取ります。
言われないとき:探らずに、比べる点を聞く
相見積もりかどうかを、相手が言わないこともあります。伝えるかどうかは、相手の会社の方針です。「ほかにも頼んでいますか」と問いつめる必要はありません。言われたときと同じ質問が、そのまま使えます。
| 場面 | 聞くこと | 言い方(一例) |
|---|---|---|
| 相見積もりだと言われた | 条件・比べる点・期限 | 「ご検討にあたり、金額のほかに、特に重視される点はございますか」 |
| 言われていない | 見積の使い道と、決まるまでの流れ | 「お見積りは、この後どのように検討されるご予定でしょうか」 |
| メールで依頼だけが届いた | 足りない条件 | 「お見積りを作るにあたり、2点確認させてください」と、まとめて聞く |
| その場で金額を聞かれた | その場で数字を作らない | 「条件を確認して、見積書でお伝えします。◯日までにお送りします」 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
言われても言われなくても、やることは同じです。条件をそろえ、何が含まれているかが見積書だけで分かるようにして、期限までに出す。相手が社内で検討するときの流れは、法人営業とはで説明しています。
見積を出す側がやること:条件をそろえ、範囲を書く
相見積もりでは、こちらがいない場で、見積書どうしが並べられます。説明を足す機会は、ないものと考えます。見積書とメールだけで、中身が伝わるように作ります。順番は、次のとおりです。
- 相手が示した条件のとおりに作る。数量、仕様、納品の場所を、自分の都合で変えません。条件を変えた見積は、ほかの会社の見積と並べられないからです。別の案(数量を変えた案、別の商品の案)も出したいときは、指定どおりの見積を先に作り、別案を一緒に出してよいかを、先輩に相談します。
- 含まれるもの・含まれないものを書く。送料、設置、設定、古い物の引き取り、保守。相手が「当然入っている」と思いやすい所です。見積の備考か、送るメールに、含むものと含まないものを、それぞれ書きます。
- 比べる点に、答えを書く。相手が納期を見ると言ったなら、納期を、確かめた日付で書きます。相手が聞いたことへの答えが見積書のどこにも無いと、金額だけが比べられます。
- 粗利を確かめ、承認をもらう。相見積もりだからと、自分の判断で金額を下げません。粗利の計算は粗利とはに、掛け率の計算は掛け率とはにまとめています。
- 期限までに出す。社内の承認にかかる時間から逆算して、下書きの日を決めます。期限に遅れた見積は、比べる場に間に合わないことがあります。
なぜ「含まれるもの/含まれないもの」を書くのか
金額だけで並べられると、範囲の違いが見えなくなります。次の表は、説明用の例です。
| 会社 | 見積の合計 | 設置の作業 | 設置まで含めた金額 |
|---|---|---|---|
| 自社 | 300,000円 | 含む | 300,000円 |
| もう一社(例) | 280,000円 | 含まない(別に30,000円) | 310,000円 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
見積の合計だけを見ると、自社のほうが20,000円高く見えます。設置まで含めると、自社のほうが10,000円低くなります。ただ、これは、相手が範囲の違いに気づいたときの話です。こちらの見積書に「設置の作業を含みます」と書いていなければ、相手は気づけません。
ほかの会社の見積の中身は、こちらには分かりません。できるのは、自分の見積に何が入っているかを、はっきり書くことだけです。ほかの会社の見積を想像して、「他社は設置が別のはずです」と言うことはしません。
送るメールに書く一文の例
「お見積書をお送りします。ご依頼の条件(本体2台・本社へ納品・設置あり)のとおりに作成しました。」
「金額には、本体・送料・設置の作業を含みます。古い機械の引き取りは含んでおりません。必要な場合は、別にお見積りします。」
「納期は、ご注文から◯週間です。在庫を◯月◯日に確認した日付です。」
「お決めになるのは月末と伺いました。◯月◯日ごろに、状況を伺ってもよろしいでしょうか。」
例は、説明用です。条件のとおりに作ったこと、含むもの・含まないもの、相手が見ると言った納期、次に連絡する日、の4つが入っています。見積書の点検は見積書を送る前に確認する7項目、提案の中身の作り方は提案書の作り方を見てください。
出したあと:結果を聞き、負けたら振り返る
結果を聞く
見積を出したら、結果を聞きます。聞かないままだと、決まったのか、まだ検討中なのかが分からず、社内で在庫や人手の予定を立てられません。聞くのは、相手と決めた日です。見積を出すときに「◯日ごろに伺います」と伝えておけば、その日の連絡は、催促ではなく、約束した確認になります。
惜しい例:「先日のお見積り、いかがでしたでしょうか。ぜひ、当社でお願いします」
良い例:「◯月◯日にお送りしたお見積りの件で、ご連絡しました。月末にお決めになると伺っておりましたので、その後の状況を教えていただけますでしょうか。追加で必要な資料がございましたら、お知らせください」
惜しい例は、相手に、答えを急がせる形になっています。良い例は、どの見積のことか、なぜ今連絡したのかを伝え、相手が「まだです」と答えやすい聞き方になっています。返事を待つあいだの進め方は、「検討します」の後にまとめています。
負けたあと:理由を聞き、記録する
ほかの会社に決まった、と言われることはあります。そのとき、まず伝えるのは、お礼です。「ご検討いただき、ありがとうございました」。値引きを持ち出して、決まった話をひっくり返そうとはしません。相手は、社内の手続きを終えています。
そのうえで、理由を一つだけ聞きます。
「今後の参考にしたいので、差し支えない範囲で、決め手になった点を教えていただけますでしょうか」
「差し支えない範囲で」と付けるのは、相手に答えない自由を残すためです。相手が話さなければ、それ以上は聞きません。ほかの会社の名前や金額を、聞き出そうとしません。
帰ってからの記録には、次の4つを書きます。失注分析シートも使えます。
- 相手の言葉。「納期が1週間早い会社に決めた」のように、聞いたままを書く(説明用の例です)。
- 自分の見積で、足りなかった所。比べる点を聞いていたか。含むもの・含まないものを書いていたか。期限に間に合ったか。
- 分からないこと。理由を聞けなかったなら、「理由は未確認」と書く。想像で「価格で負けた」と書かない。
- 次に直すこと。一つだけ、行動で書く。「次からは、見積を頼まれたその場で、比べる点を聞く」など。
「価格で負けた」とだけ書くと、次にできることが、値引きしか残りません。理由を相手の言葉で書いておくと、納期、範囲の書き方、出す早さなど、自分で直せる所が見つかることがあります。メモの書き方は、商談メモ添削を見てください。
取る側のときに気をつけること
営業も、仕入先や外部の会社に見積を頼むときは、取る側になります。出す側の気持ちを知っていると、何に気をつければよいかが分かります。気をつけることは、3つです。
| 気をつけること | 理由 | やり方 |
|---|---|---|
| 同じ条件で頼む | 条件が違うと、比べられない。相手は、作り直しになる | 品名・数量・納期・納入場所を、同じ文面で伝える |
| ほかの会社の見積書や金額を見せない | その会社の取引の情報を、別の会社に渡すことになる | 見積書を転送しない。金額を口頭でも伝えない |
| 断る会社へも、返事をする | 返事が無いと、相手は予定を空けたまま待つ | 結果が出たら、お礼・結果・おわびを伝える |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
頼むメールの書き方、一社ずつ別のメールで送る理由、断るときの文面は、見積依頼メールの書き方に例文があります。ここでは、くり返しません。
相見積もりだと、相手に伝えるかどうか
伝える会社も、伝えない会社もあります。これは、会社の方針で決まることです。自分で決めずに、先輩に「相見積もりであることは、お伝えしてよいですか」と聞きます。
何社から取るか、誰に頼むか
何社から見積を取るか、どの会社に頼むか、金額がいくら以上なら相見積もりにするか。こうした決まりは、会社ごとに違います。この記事では扱いません。自分の会社の購買の決まりに従ってください。決まりがどこに書いてあるか分からなければ、上司に聞きます。法律に関わる判断が要りそうなときも、自分で決めず、上司や会社の担当の部署に相談します。
迷いやすい判断と、間違えたあと
判断1:「ほかの会社は、もっと安かった」と言われたら?
その場で、金額を答えません。基準は、相手の希望を、数字と条件で聞き取れたかです。聞くのは、いくらなら検討できるのか、数量や範囲は同じか、いつまでに返事が要るか、の3つです。ほかの会社の見積書を見せてほしい、とは言いません。
「ご希望は、承りました。同じ条件(2台・設置あり)でのお話、ということでよろしいでしょうか。社内で確認して、◯日の午前中までにお返事します」
上司には、相手の言葉のまま伝え、粗利の計算を添えます。応えられないときは、理由をくわしく説明するより、「社内で検討しましたが、ご希望の金額にはお応えできませんでした」と結果を伝えます(説明用の例です)。
判断2:ほかの会社のことを聞かれたら?
「B社さんの商品は、どうですか」と聞かれることがあります。ほかの会社の悪口は言いません。よく知らないことを、知っているように話すこともしません。自分の会社の商品について、言えることを答えます。「ほかの会社様のことは、正確にお答えできません。当社の場合は、設置まで含めてお出ししています」(説明用の例です)。
判断3:期限に、間に合いそうにないときは?
基準は、期限の前に、相手に伝えたかどうかです。期限を過ぎてから「遅れました」と言うのと、前の日に「◯日の午前中までお時間をいただけますか」と相談するのとでは、相手ができることが違います。間に合わないと分かった時点で、上司に相談し、相手に連絡します。待ってもらえるかどうかを決めるのは、相手です。
間違えたあと1:条件を変えた見積を、出してしまった
その場では:気づいた時点で、上司に報告し、相手に連絡します。「◯月◯日にお送りした見積書は、数量を3台で作成しておりました。ご依頼は2台でした。2台でのお見積りを、本日中にあらためてお送りします。申し訳ございません」と、どこが違ったかと、正しいものをいつ出すかを伝えます(説明用の例です)。
後の記録:「依頼のメールと見積書を、並べて見比べなかった。次からは、送る前に、品名・数量・納品の場所を一行ずつ照らし合わせる」と書きます(説明用の例です)。
間違えたあと2:ほかの会社の金額を、話してしまった
取る側のときに、仕入先へ「B社は◯円でした」と言ってしまった。あるいは、出す側のときに、別のお客様へ出した金額を話してしまった。どちらも、取引の情報を外に出したことになります。
その場では:自分だけで片づけようとせず、すぐに上司に報告します。誰に・いつ・何を話したかを、そのまま伝えます。その後の動きは、上司の指示と会社の決まりに従います。報告の順番は、営業で失敗したときにまとめています。
後の記録:話した相手、日時、内容、報告した相手、その後に取った動きを、順に書きます。次からは、金額を聞かれたら「お話しできないことになっています」と答える、と決めておきます。
今日やることは一つです。相見積もりになっている(なりそうな)一件を決め、相手が示した条件・比べる点・提出の期限・含まれるものと含まれないものを書き出してください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
相手からの見積依頼のメールや商談メモ、作りかけの見積書、会社の見積の承認の流れが分かるもの。
記入例を見る(説明用)
相手と、頼まれた内容=A社の佐藤様。本体2台。型番は依頼メールのとおり。設置も頼みたい、とのこと/相手が比べる点と、決める時期=「金額と、納品までの日数を見ます」と聞いた。何社に頼んでいるかは聞いていない。月末の会議で決める予定/提出の期限と、出し方=◯月◯日(金)の正午までに、メールでPDFを送る。社内の承認に1日かかるので、下書きは水曜までに作る/見積に含まれるもの・含まれないもの=含む:本体2台、送料、設置の作業。含まない:古い機械の引き取り(必要かどうかは未確認。今日、佐藤様に聞く)/結果の聞き方と、振り返り=会議の翌日に、メールで結果を伺うと約束した。結果が出たら、理由と、次に直すことを書く。内容はすべて説明用の例。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
相手が示した条件、比べる点、提出の期限、含まれるもの・含まれないものが書いてあり、結果をいつ・どう聞くかが決まっている。
うまく進まなかったときは?
比べる点が分からなければ、相手に「ご検討にあたり、特に重視される点はどこでしょうか」と聞く。条件が足りなければ、「お見積りを作るにあたり、2点確認させてください」とまとめて聞く。値引きを求められたら、その場で答えず、上司に粗利の計算を添えて相談する。