NOTE 34 · 営業の実践ノート
手土産の渡し方:取引先で、いつ・誰に・何と言って渡すか
公開:2026年10月3日
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手土産は、あいさつを済ませて席に着く前後に、その場でいちばん立場が上の人か窓口の担当者へ、紙袋から出して「皆さんで召し上がってください」と一言添えて渡すやり方が広く行われています。ただし、渡してよいかどうかは相手と自分の会社のルールで決まるので、先にそこを確かめます。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 取引先へ手土産を持っていく前に、渡し方を決めたいとき。
- 1
渡してよいかを、上司と相手に確かめる
- 2
誰に・どのタイミングで渡すかを先輩に聞く
- 3
紙袋から出し、正面を相手に向けて、一言添えて渡す
- 4
相手の反応と渡した品を、帰ってから記録する
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
手土産を渡す場面で、初心者がつまずくこと
手土産を持って訪問すると、玄関から応接室まで、紙袋を下げたまま歩くことになります。いつ出せばよいのか、誰に渡せばよいのか、袋のまま渡してよいのか。迷っているうちに商談が始まり、帰りぎわにあわてて渡す、ということが起こりがちです。
手土産は、品物そのものより、渡すまでの動きで迷うものです。決めておくことは3つだけです。いつ・誰に・何と言って渡すか、です。
この記事は「渡し方」にしぼって説明します。そもそも渡してよいかの確かめ方、品物の選び方、会食の段取りは、手土産・接待の準備にまとめています。
渡す前に確かめる2つ:渡してよいか、誰に渡すか
1. 渡してよいか
贈り物を受け取らないと決めている会社があります。自分の会社にも、手土産の金額や申請の決まりがあることがあります。買う前に、上司へ「今回、手土産を持っていってよいですか」と聞きます。
相手側のルールは、前の担当者の記録や先輩の話で確かめます。相手が公務員などの場合は、法令のルールがあります。くわしい確かめ方は手土産・接待の準備に書いているので、渡す前に読んで、上司へ相談してください。
2. 誰に渡すか
渡す相手は、その場にいる中でいちばん立場が上の人、または窓口になっている担当者とすることが多いです。部署の皆さんで分けてもらう品なら、窓口の担当者へ渡すと、配ってもらいやすくなります。
誰に渡すか迷うときは、同行する先輩に決めてもらいます。上司や先輩と一緒の訪問では、立場が上の人が渡すことも多いので、「どなたが渡しますか」も聞いておきます。
渡す相手とおよその人数が分かると、品物の条件も決まります。分けやすいように一つずつ包まれているか、日持ちがするか、常温で置けるか、です。
渡すタイミングを、場面で決める
渡すタイミングは、訪問する場所で変わります。次の表は、広く行われているやり方の一例です。訪問先や会社の慣例があれば、そちらを優先してください。
| 場面 | 渡すタイミング(一例) | 訪問の前に確かめること |
|---|---|---|
| 応接室・会議室に通された | あいさつと名刺交換を済ませ、席に着く前後 | 先輩と自分の、どちらが渡すか |
| 受付や玄関先で用件が済む | あいさつの後、用件に入る前 | 受付で預けてよいか、担当者を呼んでもらうか |
| 担当者の席や作業場で立ち話 | あいさつの後、相手の手が空いているのを見てから | 置き場所があるか。なければ机や棚に置いてよいかを聞く |
| 喫茶店や会食の店など、外で会う | 帰りぎわ。相手が持ち歩く時間を短くするため | 持ち帰り用の袋ごと渡してよいか |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
冷蔵が必要な品や、すぐ食べてほしい品は、部屋に通される前に受付や担当者へ伝えて預けることもあります。常温で置ける品を選んでおくと、タイミングで迷うことが減ります。
おわびのための訪問では、あいさつ代わりの手土産と同じ渡し方にならないことがあります。品を持っていくかどうか、いつ出すかを、行く前に上司に決めてもらいます。
初めての訪問と、2回目以降で変わること
初めての訪問では、名刺交換が先にあります。名刺交換のあいだは、袋を足元に置くか、腕にかけて両手を空けます。交換が終わり、「どうぞおかけください」と言われる前後が、出しやすい区切りです。
2回目以降は、名刺交換がないので、あいさつの直後に渡せます。前回の記録に「受け取ってもらえたか」「誰に渡したか」があれば、同じ人へ渡します。
相手が複数のとき、自分側が複数のとき
相手が複数なら、その場でいちばん立場が上の人へ渡す、とされることが多いです。誰が上か分からなければ、窓口の担当者へ「皆さんで」と言って渡すと、角が立ちにくくなります。
自分側が複数なら、上司や先輩が渡すことが多く見られます。その場合、自分の役目は、袋を持って運ぶこと、渡す直前に袋から出して先輩へ手渡すことです。どこで出して渡すかを、建物に入る前に先輩と決めます。
相手が忙しそうなとき
相手が急いでいる、次の予定が迫っている、というときは、一言を短くします。「皆さんでどうぞ。常温で置けます」だけ伝え、用件に入ります。渡すこと自体が、相手の時間を使うからです。
自分:「明日のA社の訪問で、お菓子はどのタイミングで渡せばよいですか。名刺交換の後、座る前に、私から佐藤様へお渡しするつもりです」
先輩:「それでいいよ。部長さんが同席したら、部長さんに渡してね」
社名と名前は説明用の例です。聞いた内容は、実践シートの「渡すタイミング」に書いておきます。
渡し方の手順と、一言の例
応接室で渡す場合の手順です。動きは5つあります。
- 部屋に入る前に、袋の中を見る。箱が傾いていないか、袋がぬれたり破れたりしていないかを確かめます。値札やレシートが入っていたら、出しておきます。相手の前で袋の中を直すと、渡す前から手間取って見えます。
- 席に着くまで、袋は手に持つか、足元に置く。机の上には置きません。机は、相手が資料や飲み物を置く場所だからです。置くときは、自分のかばんの横に、倒れないように立てます。
- 紙袋から品物を出す。持ち運び用の紙袋は外し、品物だけを渡すやり方が広く行われています。紙袋は、持ち運ぶあいだ品物を汚れから守るためのもの、と考えられているからです。袋は、たたんで自分が持ち帰ります。
- 正面を相手に向けて、差し出す。箱の文字や包装の正面が、相手から読める向きに回します。両手で持ち、机の上をすべらせるのではなく、手渡しします。逆さのまま渡すと、相手は持ち直してから中身を確かめることになります。
- 一言を添える。誰に向けた品か、どう扱えばよいかを短く伝えます。受け取った人は、この後、部署で配ったり保管したりするからです。長い説明は要りません。
自分:「本日はお時間をいただき、ありがとうございます。皆さんで召し上がってください」
相手:「ありがとうございます。お気遣いいただいて」
自分:「一つずつ包んであります。常温で置いておけます」
説明用の例です。「心ばかりですが」「お口に合うとよいのですが」など、添える言葉は人や会社によって違います。先輩が使っている言い方があれば、それに合わせると迷いません。
添える一言を比べる
同じ品でも、一言で受け取りやすさが変わります。次の3つは説明用の例です。
惜しい例1:「あの、これ、どうぞ」
惜しい例2:「駅前の有名なお店のもので、朝から並んで買ってきました。季節限定で、材料にもこだわっていまして……」
良い例:「皆さんで召し上がってください。一つずつ包んであって、常温で置いておけます」
惜しい例1は、誰に向けた品かが分かりません。担当者は、自分がもらってよいのか、部署で分けるのかを迷います。惜しい例2は、手間をかけたことが前に出て、相手はお礼を重ねなければならなくなります。商談の時間も減ります。
良い例は、誰に向けた品か→分けやすさ→保存のしかたの順で、相手がこの後に知りたいことだけを伝えています。賞味期限が短い品なら、「◯日までにお召し上がりください」を足します。
袋のまま渡すとき
外で会うときや、相手がそのまま持ち帰るときは、袋があるほうが相手は楽です。その場合は「袋のままで失礼します」と添えて、袋ごと渡すこともあります。
買った店の袋が雨でぬれた日や、袋をもらい忘れた日もあります。箱が入る大きさの無地の紙袋を一枚かばんに入れておくと、袋を替えられます。
断られたとき・渡しそびれたとき、帰ってからの記録
「受け取れない決まりです」と言われたら
相手は、会社の決まりを守って断っています。「失礼しました。持ち帰ります」と引き下がります。「お気持ちだけでも」と重ねてすすめると、相手はもう一度断らなければなりません。
品物は袋に戻し、そのまま商談に入ります。帰ったら上司に伝え、次の担当者も分かるように、顧客のメモへ残します。
記録は、聞いた言葉と、次からどうするかを分けて書きます。たとえば「◯月◯日、佐藤様より『会社の決まりで、贈り物は受け取れない』と言われた。品は持ち帰り、上司に報告済み。次回から手土産は持っていかない」のように書きます(説明用の例です)。「断られた」だけだと、次の担当者は、その日だけの話か、会社の決まりなのかが分かりません。
渡しそびれたら
商談が始まってから気づいたら、話をさえぎって出す必要はありません。商談の終わりに、「ごあいさつが遅れました。皆さんで召し上がってください」と渡します。
相手が急いでいて渡せなかった日は、無理に追いかけません。持ち帰って、上司に次の扱いを相談します。賞味期限が近い品は、次回まで持ち越せないこともあるからです。
帰ってから記録すること
渡せた日も、記録を残します。書くのは、渡した日・品物・金額・渡した相手・相手の反応です。次の訪問で同じ品が続くのを避けられますし、担当が替わったときの引き継ぎにもなります。
領収書の出し方や経費の扱いは、会社の決まりに合わせます。
よくある失敗と、迷いやすい判断
失敗は、その場の立て直し方と、帰ってからの記録をセットで決めておきます。
失敗1:紙袋を下げたまま、商談が終わりそうになる
その場では:話の途中で出そうとせず、商談の終わりを待ちます。資料を片づける前に、「ごあいさつが遅れました。皆さんで召し上がってください」と渡します。遅れた理由を長く説明する必要はありません。
帰ってからの記録:「渡すタイミングを決めていなかった。次回は、名刺交換の後、座る前に出す。先輩に合図をお願いする」と、原因と次の動きを書きます。
失敗2:人数より、個数が足りなかった
その場では:数が足りないことを、その場で言い立てる必要はありません。そのまま渡し、配り方は相手に任せます。相手から「人数が増えまして」と言われたら、「数が足りず、失礼しました」と一言おわびします。
帰ってからの記録:顧客のメモに「営業部は12人(◯月◯日、佐藤様から聞いた)」のように、人数と、いつ誰から聞いたかを書きます(説明用の例です)。次に買う人が、同じ数え間違いをせずに済みます。
失敗3:相手の手がふさがっているときに、差し出した
その場では:相手が資料や飲み物を持っていたら、いったん手を引きます。「こちらに置いてもよろしいですか」と聞いて、机の端や、相手が示した場所に置きます。受け取らせようと差し出したままにすると、相手があわてます。
帰ってからの記録:「お茶を出していただく前に渡す」など、その訪問先での出しやすい区切りを書いておきます。
判断1:今回は、持っていくべき?
毎回持っていくと、相手の負担になることがあります。上司に聞く前に、自分で3つを確かめます。前回の記録で受け取ってもらえているか、今回の訪問に区切りの意味があるか(初めてのあいさつ、年始、担当の交代など)、会社に決まった慣例があるかです。
そのうえで、「A社の訪問ですが、担当交代のあいさつなので、お菓子を持っていこうと思います。よろしいですか」と、自分の案と理由を添えて上司に聞きます。「どうしましょうか」とだけ聞くより、早く決まります。
判断2:担当者が不在だったら、預けてよい?
基準は、品物が日持ちするか、預かってくれる人がいるか、誰あてかを伝えられるかの3つです。3つともそろえば、自分の名刺を添えて預け、後で担当者へメールか電話で知らせます。
冷蔵が必要な品や、賞味期限が短い品は、預けると相手に保管の手間がかかります。その場合や、預かってよいか受付の人が迷っている場合は、持ち帰って出直します。
判断3:予定になかった上の立場の人が、同席したら?
渡す相手を、その場で変えるかどうかの判断です。基準は、部署の皆さん向けの品か、特定の人あての品かです。皆さん向けなら、同席した上の立場の人へ「皆さんで召し上がってください」と渡すと、窓口の担当者も困りません。
先輩が一緒なら、先輩の動きに合わせます。こうした場面に備えて、訪問の前に「部長さんが同席されたら、どなたにお渡ししますか」と聞いておきます。
判断4:その場で開けて、出してくださったら?
相手が「せっかくなので」と箱を開け、こちらにも出してくれることがあります。すすめられたら、「ありがとうございます。いただきます」とお礼を言って受けるのが自然です。断り続けると、相手の気づかいを止めることになります。
食べられない事情があるときは、「お気持ちだけいただきます」と短く伝えます。商談の時間が限られているなら、先に用件を済ませてからいただきます。
今日やることは一つです。次の訪問で「いつ・誰に・何と言って」渡すかを、先輩に聞いてメモしてください。訪問のあとのお礼の書き方は、営業のお礼メールにまとめています。
通された部屋でどこに座るかは、上座・下座の記事にまとめています。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
訪問の予定(場所・相手の人数)、上司の指示、前回の訪問メモ、手土産と袋。
記入例を見る(説明用)
渡してよいかの確認=上司に確認済み(担当交代のあいさつなので持っていく。金額の上限も聞いた)。A社は前回も受け取っている(前任者のメモ)。相手は民間の会社/渡す相手と人数=窓口の佐藤様へ。営業部は8人くらい(先輩に聞いた)。部長が同席したら、部長へ「皆さんで」と渡す/渡すタイミング=応接室で、あいさつと名刺交換の後、座る前。名刺交換のあいだは袋を足元に置く。出すきっかけは、先輩が目で合図をくれる/添える一言=「皆さんで召し上がってください。一つずつ包んであって、常温で置いておけます」。相手が急いでいたら「皆さんでどうぞ」だけにする/断られたときの対応と、帰ってからの記録=「失礼しました。持ち帰ります」と言って袋に戻し、重ねてすすめない。帰ったら上司に報告し、聞いた言葉と「次回から持っていかない」を顧客メモに書く。渡せたら、渡した日・品物・金額・渡した相手・相手の反応を書く。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
渡してよいことを確かめてあり、渡す相手・タイミング・一言が書いてあって、断られたときの動きも決まっている。
うまく進まなかったときは?
渡してよいか分からないままなら、買う前・渡す前に上司へ聞く。タイミングが決められなければ、当日は先輩に渡す役をお願いし、動きを見て次回のメモにする。一言が出てこなければ、「皆さんで召し上がってください」だけで足りる。