NOTE 144 · 営業の実践ノート
ご清祥とは:意味と読み方、「ご清栄」「ご健勝」との違いを辞書で確かめる
公開:2026年10月3日
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「清祥」は「せいしょう」と読み、辞書では「手紙文で、相手が健康で幸せに暮らしていることを喜ぶあいさつの語。」と説明されています。「ご清祥のこととお慶び申し上げます」は、手紙の書き出しで、相手が元気で幸せに過ごしていることを喜ぶ一文です。時候の挨拶のあとに置きます。似た言葉の「ご清栄」「ご健勝」などとは、辞書の語釈が少しずつ違います。この記事では、語釈に書いてある範囲で、違いと選び方を説明します。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 案内状や礼状のひな形に「ご清祥」と書いてあり、意味や、「ご清栄」との違いが分からないとき。
- 1
あて名が、会社か・個人か・複数の人かを確かめる
- 2
相手の今の様子(体調・災害・不幸)で、気になることが無いかを確かめる
- 3
辞書の語釈と照らして、言葉を一つ選ぶ
- 4
時候の挨拶のあとに置き、字と表記のそろいを読み返す
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
「ご清祥」の意味と読み:辞書で確かめる
案内状のひな形を開くと、一行目に「皆様にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます」と書いてある。読み方も意味もあいまいなまま、日付とあて名だけを直して出している。営業の仕事で、よくある場面です。
「清祥」は「せいしょう」と読みます。辞書(コトバンク「清祥」)のデジタル大辞泉は、「手紙文で、相手が健康で幸せに暮らしていることを喜ぶあいさつの語。」と説明し、例に「御清祥のこととお喜び申し上げます」を挙げています。同じページの精選版 日本国語大辞典は、「手紙で、相手が健康で幸福に暮らしていることを喜ぶあいさつの語。」です。
二つの辞書から、三つのことが分かります。
- 手紙の言葉である。どちらの辞書も「手紙文で」「手紙で」と書いています。会話で使う言葉ではありません。
- 相手のことを言う。喜んでいるのは、相手が健康で幸せに暮らしていることです。自分のことには使いません。
- あいさつの語である。用件ではなく、用件に入る前のあいさつです。
「ご清祥」は、この「清祥」に「ご」を付けた形です。辞書の例も「御清祥」と、「御」を付けた形で載っています。
なぜ、意味を知っておくのか。ひな形を写すだけなら、意味を知らなくても文書は出せます。けれども、あて名が変わったとき、相手が体調を崩していると知っているとき、ひな形の言葉がそのまま合うとは限りません。意味を知っていれば、「この相手に、この言葉で合っているか」を自分で確かめられます。
「ご清栄」「ご健勝」「ご盛栄」「ご隆盛」「ご清福」との違い
書き出しのあいさつには、「ご清祥」に似た言葉がいくつかあります。次の表は、コトバンクで語釈を確かめられた語を並べたものです。「 」の中は、辞書の文をそのまま写しています。
| 言葉(読み) | 辞書の語釈(デジタル大辞泉) | 語釈が言っていること |
|---|---|---|
| 清祥(せいしょう) | 「手紙文で、相手が健康で幸せに暮らしていることを喜ぶあいさつの語。」 | 相手の健康と、幸せな暮らし |
| 清栄(せいえい) | 「清く栄えること。手紙文などで、相手の無事と繁栄を喜ぶあいさつの語。」 | 相手の無事と、繁栄 |
| 健勝(けんしょう) | 「健康で元気なこと。また、そのさま。すこやか。多く手紙文で、「ご健勝」の形で用いる。」 | 健康で元気なこと |
| 盛栄(せいえい) | 「商売などが、盛んになること。」 | 商売などが盛んなこと |
| 隆盛(りゅうせい) | 「勢いが盛んなこと。また、そのさま。隆昌。」 | 勢いが盛んなこと |
| 清福(せいふく) | 「手紙文で、相手の幸福を祝っていう語。」(2番目の意味) | 相手の幸福 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
出典は、コトバンク「清祥」・コトバンク「清栄」・コトバンク「健勝」・コトバンク「盛栄」・コトバンク「隆盛」・コトバンク「清福」です。「清栄」と「盛栄」は、どちらも「せいえい」と読みますが、字も語釈も違います。
精選版 日本国語大辞典では、「健勝」は「からだに悪いところがなく健康なこと。また、そのさま。多く「御健勝」の形で相手の健康についていう。」、「盛栄」は「商売などがさかんであること。隆盛。繁栄。繁盛(はんじょう)。」と説明されています。
個人あて・会社あての使い分けは、辞書に書いてあるか
「ご清祥は個人あて、ご清栄は会社あて」という説明を、見聞きすることがあります。上の辞書の語釈には、「個人あてに使う」「会社あてに使う」という言葉は書かれていません。あて先で使い分ける、という公的な決まりは見当たらない、というのが、確かめられた範囲です。
語釈から言えるのは、それぞれの語が、何を喜んでいるかです。
- 「清祥」「健勝」「清福」は、健康・暮らし・幸福と、人の様子についての言葉です。
- 「盛栄」は商売、「隆盛」は勢いについての言葉です。
- 「清栄」は、無事と繁栄の両方が入っています。
ここから、自分で決めるときの基準を一つ作れます。文の主語と、語釈の中身が合うかです。「皆様には」「[担当者名]様には」と、人を主語にするなら、人の様子を言う「ご清祥」「ご健勝」が、語釈と合います。「貴社」を主語にして、会社の商売や繁栄を喜ぶなら、「ご清栄」「ご盛栄」が、語釈と合います。
これは語釈から考えた目安で、決まりではありません。会社が過去に出した文書に決まった形があれば、そちらに合わせます。「清栄」を使った時候の挨拶の文例は、時候の挨拶に月ごとにまとめています。
「ご清祥のこととお慶び申し上げます」の形:「慶ぶ」と「喜ぶ」
よく見かける一文を、三つに分けて読みます。
| 部分 | 役目 |
|---|---|
| ますます | 前よりもいっそう、という気持ちを添える |
| ご清祥のことと | 相手が、健康で幸せに暮らしているだろうと、こちらが思っていること |
| お慶び申し上げます | そのことを、めでたいことと思い、言葉にして伝える |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
「のことと」が入っているので、この文は、相手の様子を確かめたうえで言っているのではなく、「きっとそうでしょう」と思って喜ぶ形です。だから、相手が体調を崩している、不幸があった、と知っているときには、合わなくなります。
「よろこぶ」は、「喜ぶ」とも「慶ぶ」とも書かれます。デジタル大辞泉の「喜ぶ」の見出しには、「喜ぶ」のほかに「悦ぶ」「歓ぶ」「慶ぶ」の書き方が並んでいます(コトバンク「喜ぶ」)。語釈の3番目は、「よいこと、めでたいことと思う。祝福する。」です。書き出しの「およろこび申し上げます」は、この意味です。
「慶」の字については、デジタル大辞泉の「慶する」に、「めでたい事柄に対してよろこびの気持ちを表す。喜ぶ。祝う。」とあります(コトバンク「慶する」)。めでたい事柄へのよろこびを表す字だと分かります。
どちらで書くかについて、公的な決まりは見当たりません。上で見たとおり、辞書の「清祥」「清栄」の例文は、「お喜び申し上げます」と「喜」の字で書かれています。会社のひな形が「お慶び」なら「お慶び」、「お喜び」なら「お喜び」に合わせ、一通の中で混ぜないことを基準にします。
「お慶び申し上げます」の「申し上げる」は、文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日・文化庁)が、謙譲語Ⅰの特定形の例として「・申し上げる(←言う)」と挙げている語です(26ページ)。続く27ページでは、一般形の主な例に「お(ご)……申し上げる」が挙げられています。相手を立てて述べる形です。
置く場所:時候の挨拶のあと。メールでは省くことが多い
「ご清祥のことと…」の一文は、手紙の前文の中に置きます。並びは次のとおりです。
- 頭語(「拝啓」など)
- 時候の挨拶(「秋冷の候」など)
- 相手の様子を喜ぶ言葉(「皆様にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます」)←ここ
- 日ごろのお礼(「平素は格別のお引き立てをいただき、厚くお礼申し上げます」)
- 用件(「さて、」から始める)
- 結びの言葉と、結語(「敬具」など)
季節に触れ、相手の様子を喜び、日ごろのお礼を言ってから、用件に入る。この順番があるので、読む人は、どこからが用件なのかを「さて、」で見つけられます。頭語と結語の組み合わせは「拝啓」と「敬具」の使い方、月ごとの時候の挨拶は時候の挨拶、お礼状全体の並びはお礼状の書き方にまとめています。この記事では、3番目の一文だけを扱います。
場面によって、書くかどうかが変わります。次の表は一例です。
| 場面 | 書き出しの言葉(一例) | 理由 |
|---|---|---|
| 複数の取引先の担当の方へ出す案内状 | 「皆様にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます」 | 読む人それぞれの様子を喜ぶ形 |
| 会社あての送付状 | 「貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます」 | 会社の繁栄を喜ぶ形。会社のひな形に合わせる |
| 個人あての礼状 | 「[担当者名]様には、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます」 | 相手ひとりの様子を喜ぶ形 |
| 日々の仕事のメール | 書かないことが多い | 宛名・あいさつ・名乗りから始める書き方が広く行われている |
| お詫びの手紙 | 書かずに、すぐお詫びに入る書き方が広く見られる | 文面は上司と決める |
| 相手が体調を崩している・不幸や災害があったと知っているとき | 使わない | 「健康で幸せに暮らしている」と思って喜ぶ言葉が、相手の今と合わない |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
メールでは、頭語や時候の挨拶と同じく、「ご清祥のことと…」も省くことが多いです。メールは、開いてすぐ用件が分かることが求められるからです。メールの書き出しは、ビジネスメールの書き出しにまとめています。
手紙の終わりで相手の健康を願う言葉(「ご自愛ください」「ご健勝をお祈り申し上げます」)は、書き出しの「ご清祥」とは置く場所が違います。結びの言葉は、「ご自愛ください」の使い方で説明しています。
案内状・礼状の例と、書き方を比べる
次の文例は、すべて説明用の例です。[ ]と日付は、自分の案件に置き換えてください。
1. 案内状(複数の取引先の担当の方へ)
お取引先各位
拝啓 秋冷の候、皆様にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。平素は格別のお引き立てをいただき、厚くお礼申し上げます。
さて、このたび弊社では、新商品[商品名]の説明会を、下記のとおり開くことになりました。ご多用のところ恐れ入りますが、ご出席くださいますよう、ご案内申し上げます。
敬具
記
日時:◯月◯日(◯) ◯時から◯時
場所:[会場名]
以上
読むのは、それぞれの会社の担当の方です。「皆様には」と人を主語にして、「ご清祥」を置いています。時候の挨拶の「秋冷の候」は、出す月に合わせて選び直します。
2. 礼状(個人あて)
拝啓 晩秋の候、[担当者名]様には、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
さて、先日はお忙しい中、工場をご案内いただき、誠にありがとうございました。製造の流れを順に見せていただいたことで、お客様へ説明するときに、何を伝えればよいかが分かりました。
今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。
敬具
相手ひとりにあてた手紙なので、「[担当者名]様には」としています。お礼の中身は、してもらったことと、それで何が分かったかを、具体的に書きます。
書き方を比べる
- 惜しい例1:入院していると聞いた相手に、「ますますご清祥のこととお慶び申し上げます」と書く
- 惜しい例2:「ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。…貴社のご発展をお喜び申し上げます」(「慶」と「喜」が混ざっている)
- 惜しい例3:「ご清祥ご健勝のこととお慶び申し上げます」(健康を喜ぶ言葉が、二つ重なっている)
- 良い例:「拝啓 秋冷の候、皆様にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。」(あて名は複数の担当の方。一通の中の表記は「お慶び」にそろえてある)
4つとも説明用の例です。惜しい例1は、「健康で幸せに暮らしている」と思って喜ぶ言葉なので、相手の今の様子と合いません。受け取った人は、「事情を知らずに、決まった文を出したのだな」と感じます。
惜しい例2は、誤りではありませんが、前の文書をつぎはぎした跡が見えます。惜しい例3は、「清祥」にも「健勝」にも、語釈に「健康」が入っています。一つで足ります。
迷いやすい判断と、間違えて出したあと
判断1:会社あての文書に、「ご清祥」と書いてよい?
書いてはいけない、という公的な決まりは見当たりません。自分で決めるときの基準は、文の主語です。「貴社ますます」と会社を主語にするなら、会社の繁栄を言う「ご清栄」「ご盛栄」が、語釈と合います。「皆様には」「貴社の皆様には」と人を主語にするなら、「ご清祥」が合います。
会社に過去の文書があるなら、それが一番の手がかりです。先輩に、「この案内状は、いつも『ご清祥』と『ご清栄』のどちらで出していますか」と聞きます(説明用の例です)。
判断2:「お慶び」と「お喜び」、どちらで書く?
基準は、会社のひな形と、一通の中でのそろいです。ひな形があれば、その字に合わせます。ひな形が無ければ、どちらかに決めて、同じ文書の中で混ぜません。年賀状や祝いごとの文書を同じ時期に出すなら、そちらの字ともそろえると、受け取る人には、同じ会社から出た文書だと伝わります。
判断3:相手の様子が分からないとき、「ご清祥のことと」と書いてよい?
「のことと」は、確かめずに「きっとそうでしょう」と思って言う形です。様子が分からない相手に使うこと自体は、この言葉のふつうの使い方です。
気をつけるのは、良くない知らせを、すでに知っているときです。入院、身内の不幸、災害の被害などを聞いているなら、この一文は使いません。「その後、お加減はいかがでしょうか」のように様子を気づかう一文にするか、あいさつを短くして用件に入ります(説明用の例です)。どの文面にするかは、自分だけで決めず、上司に相談します。災害の直後に出す文書については、時候の挨拶の「失敗3」でも説明しています。
失敗1:「清祥」の字を、間違えて出した
その場では:同じ読みの別の字に変換されたまま出してしまった、というときは、まず上司に見せます。一通だけなら、次に連絡するときに一言おわびを添える。多くの相手に出した案内状なら、出し直すかどうかを上司と決めます。自分だけで、全員におわびの連絡を始めません。
後の記録:「変換で出た字を、そのまま確定した。次からは、辞書の見出しと一字ずつ見比べる」と書きます(説明用の例です)。「清」と「祥」の二字です。
失敗2:体調を崩していた相手に、ふだんの書き出しで出してしまった
その場では:後から事情を知ったときは、上司に伝えます。次に連絡する機会に、「先日は、ご事情を存じ上げないまま、お手紙を差し上げました。失礼いたしました」と、短く伝えます(説明用の例です)。長い言い訳は、かえって相手に気をつかわせます。
後の記録:「送り先の一覧を、ひな形のまま使った。次からは、出す前に、先輩に『最近、気をつける事情のある相手はいますか』と聞く」と書きます(説明用の例です)。
失敗3:前の文書を写して、あて名と合わない書き出しが残った
その場では:個人あての礼状なのに「貴社ますます」で始まっている、などです。出す前に気づいたら、主語と言葉をそろえて直します。出した後に気づいたら、内容の誤り(日時・金額・名前)が無いかを先に確かめます。誤りが書き出しの言葉だけなら、出し直すかどうかは上司と決めます。
後の記録:「前の文書を写したとき、本文だけ直して、書き出しを読まなかった。次からは、一行目から声に出して読む」と書きます(説明用の例です)。頭語と結語が合っていなかったときの直し方は、「拝啓」と「敬具」の使い方にあります。
今日やることは一つです。これから出す案内状か礼状を一通決め、あて名が誰かを確かめてから、書き出しの一文を、辞書の語釈と照らして選んでください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
これから出す案内状や礼状の下書き(または会社のひな形)。あて名が分かる物(名刺、送り先の一覧)。会社が過去に出した、同じ種類の文書。
記入例を見る(説明用)
出す文書の種類と、あて名=新商品の説明会の案内状。あて名は、取引先の担当の方々(「お取引先各位」として、複数の会社の担当の方へ出す)/相手の今の様子で、気になること=無し。先週、大雨の被害があった地域の取引先が一社あるので、その一社には、上司に聞いてから別の文面にする/選んだ言葉と、語釈に照らした理由=「ご清祥」。読む人それぞれの「健康で幸せに暮らしていること」を喜ぶ語なので、担当の方々に向けた文に合うと考えた。会社の過去の案内状も「皆様にはますますご清祥のことと」だった/書き出しの文=「拝啓 秋冷の候、皆様にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。平素は格別のお引き立てをいただき、厚くお礼申し上げます。」/読み返して直した所=ひな形は「お慶び」、自分が足した文は「お喜び」になっていたので、「お慶び」にそろえた。結語の「敬具」が抜けていたので足した。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
あて名が誰かを確かめてあり、選んだ言葉の語釈を自分で読んでいて、時候の挨拶のあとに置いてあり、字と表記がそろっている。
うまく進まなかったときは?
言葉を選べなければ、会社が過去に出した同じ種類の文書を見て、同じ言葉にする。相手の様子が分からなければ、先輩に「この方に、ふだんの書き出しで出してよいですか」と聞く。字に自信がなければ、辞書の見出しと一字ずつ見比べる。