NOTE 104 · 営業の実践ノート
お礼状の書き方:営業が取引先へ送る手紙・はがきの並び、文例、封筒の選び方
公開:2026年10月3日
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お礼状は、お礼を述べるための手紙やはがきです。並びは「頭語→時候の挨拶→お礼→具体的な一言→今後のこと→結語→日付・署名・宛名」が基本の形です。メールで済ませるか、手紙も出すかは、会社の習慣を先に確かめます。この記事では、営業が取引先へ送るお礼状にしぼって、並び、場面ごとの文例、封筒とはがきの選び方、出す時期の考え方を、説明用の例と一緒に並べます。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 訪問や契約、紹介、贈り物、会食のあとに、取引先へ手紙かはがきでお礼を伝えたいとき。
- 1
会社にお礼状の習慣と見本があるかを、上司に確かめる
- 2
何についてのお礼か、印象に残ったこと、この後にやることを書き出す
- 3
頭語からあて名までの並びに当てはめて、下書きを作る
- 4
相手の名前と会社名を見直し、封筒かはがきを選んで出す
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
お礼状とは:メールとの使い分けは、会社の習慣が先
初めての訪問で、長い時間をもらった。大きな契約が決まった。大事なお客様を紹介してもらった。メールでお礼は送ったが、手紙でも伝えたほうがよいのか。出すなら、何をどう書くのか。お礼状は書く機会が少ないので、いざというときに手が止まります。
「礼状」は、デジタル大辞泉で「礼を述べた書状。」、精選版 日本国語大辞典で「謝礼の手紙。」と説明されています(コトバンク「礼状」)。この記事では、営業が取引先へ、手紙やはがきで送るお礼状を扱います。
最初に確かめるのは、会社の習慣です。お礼状を出すかどうか、誰の名前で出すか、決まった見本があるかは、会社によって違います。自分だけの判断で出すと、ほかの担当者と対応がそろわなかったり、上司が知らないまま相手から返事が届いたりします。上司には、次のように聞きます。
「先日訪問したA社の佐藤様へ、お礼状を出したいと考えています。うちの会社では、お礼状を出す習慣はありますか。見本があれば、見せていただけますか」
聞き方は説明用の例です。習慣が無い会社でも、出してはいけないとは限りません。下書きを見せて、「出してよいか」を聞きます。
メールと手紙は、役目が違います。次の表は、考え方の一例です。
| 比べる点 | メール | 手紙・はがき(お礼状) |
|---|---|---|
| 届く早さ | その日のうちに届く | 届くまでに日数がかかる |
| 向いている中身 | お礼に加えて、確認事項、宿題、次の予定 | お礼の気持ちそのもの |
| 相手の手間 | すぐ読めて、すぐ返信できる | 返信を求めない形にできる |
| 使う場面(一例) | ふだんの商談のあと | 節目のお礼。会社の習慣で出しているとき。あらたまって伝えたいとき |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
宿題や期限のように、相手が後で見返す内容は、メールで先に送ります。お礼状に書くと、相手は手紙を探さないと確かめられなくなるからです。お礼メールの書き方は、営業のお礼メールにまとめています。お礼状は、メールの代わりではなく、メールとは別に、気持ちを形にして届けるものと考えると、中身を分けやすくなります。
並び:頭語から宛名まで
お礼状は、次の並びで書く形が多く使われます。下の実践シートは、3〜5番を書くためのものです。
- 頭語。「拝啓」など、手紙の最初に書く言葉です。これから手紙を始めます、という合図になります。
- 時候の挨拶。季節の言葉と、相手の様子を喜ぶ一文です。
- お礼。「さて」で話を変え、何についてのお礼かを書きます。日付と出来事を入れると、相手はどの件かをすぐ思い出せます。
- 具体的な一言。その場で聞いた話、してもらったことを、一つ書きます。ここが、その相手だけに向けた部分になります。
- 今後のこと。この後に自分がやること、これからのお付き合いのお願いを書きます。
- 結びと結語。相手の体や会社の発展を気づかう一文を添え、「敬具」などで終えます。
- 日付・署名・宛名。出す日、自分の会社名と名前、相手の会社名と名前を書きます。
なぜ、この並びなのか。1・2・6は、どの手紙にも共通する決まった部分です。3〜5が、その一通だけの中身です。決まった部分があることで、相手は「ここからが本題だ」と分かり、読み手の負担が減ります。逆に、3〜5が定型文だけだと、誰に出しても同じ手紙になります。
細かい決まりは、それぞれの記事に分けています。頭語と結語の組み合わせ、書く位置は拝啓と敬具の使い方、季節の言葉は時候の挨拶 一覧、結びで体を気づかう言葉は「ご自愛ください」の意味と使い方を見てください。
日付・署名・宛名の位置は、縦書きと横書きで変わります。縦書きの手紙では本文の後に、横書きの社用の文書では本文の前に置く形が多く使われます。会社に見本があれば、見本の形に合わせます。
文例:惜しい例と、良い例
初めての訪問のあとに出すお礼状を、二つ並べます。どちらも説明用の例です。
惜しい例
拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、先日はお忙しい中、貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。
今後とも、何とぞよろしくお願い申し上げます。
敬具
形は整っています。惜しいのは、どの訪問のお礼なのか、何がありがたかったのかが、書かれていない点です。相手の名前を変えれば、誰にでも出せる文になっています。受け取った人は、礼儀として出された手紙だと感じます。
良い例
拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、◯月◯日は、お忙しい中お時間をいただき、誠にありがとうございました。作業の現場までご案内いただき、心より御礼申し上げます。
ご案内の途中で伺った「朝の作業の前に、点検の時間を取っている」というお話が、強く印象に残っております。お使いいただく場面を、目で見て知ることができました。
ご質問いただいた納期の件は、先日メールでお送りしたとおりです。来月、あらためてご提案に伺います。
朝晩の冷え込みが強くなってまいりました。どうぞご自愛ください。
敬具
◯年◯月◯日
[自社名] [部署名] [氏名]
[相手の会社名] [部署名] [相手の名前]様
足したのは、3つです。日付と、してもらったこと(現場の案内)。相手の言葉(点検の時間の話)。この後にやること(来月の提案)。相手は、自分の話を聞いていた人からの手紙だと分かります。
相手の言葉を書くときは、商談メモを見て、言われたとおりに書きます。記憶で言い換えると、相手が言っていないことを書いてしまうことがあります。メモの取り方は、商談メモ添削にまとめています。
はがきの例
拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
先日は、お忙しい中お時間をいただき、誠にありがとうございました。現場をご案内いただいたおかげで、お使いいただく場面がよく分かりました。
来月、あらためてご提案に伺います。今後とも、よろしくお願い申し上げます。
敬具
はがきは書ける量が限られるので、お礼、具体的な一言、今後のことを、一文ずつにしぼります(説明用の例です)。
場面で変わる一言:訪問・契約・紹介・贈り物・会食
並びは同じで、変わるのは「お礼」と「具体的な一言」と「今後のこと」です。次の表は一例です。
| 場面 | お礼の一文(説明用の例) | 具体的な一言・今後のこと | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 訪問のあと | お忙しい中お時間をいただき、ありがとうございました | その場で聞いた話を一つ。次に伺う時期 | 宿題と期限は、メールで先に送る |
| 契約のあと | このたびはご契約を賜り、誠にありがとうございます | 決めていただいた理由として伺ったこと。納品や開始までの進め方 | 金額や条件は書かない。契約書と食い違う表現を避ける |
| 紹介を受けたあと | ◯◯様をご紹介いただき、誠にありがとうございました | 紹介先と会った日、その後どうなったか | 紹介先の事情を、細かく書きすぎない |
| 贈り物を受け取ったあと | 結構なお品をお送りいただき、誠にありがとうございます | 部署の皆でいただいた、など受け取った様子 | 先に、会社の決まりと上司への報告を済ませる |
| 会食のあと | 先日は、お心のこもったおもてなしをいただき、ありがとうございました | 席で伺った話を一つ。次にこちらからお伝えすること | 費用を相手が持った場合は、上司に報告してから書く |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
契約のあと。うれしさから、「ご満足いただけることをお約束します」のような一文を書きたくなります。手紙は残るものなので、約束できないことは書きません。書くのは、納品日や担当者など、すでに決まっている進め方です。
紹介を受けたあと。紹介した人は、「その後どうなったか」を気にしています。お礼と一緒に、会った日と今の段階を一文で伝えます。結果がまだ出ていなくても、「◯月◯日にお会いし、来月ご提案に伺うことになりました」と途中の様子を書きます(説明用の例です)。
贈り物を受け取ったあと。会社によっては、取引先からの贈り物を受け取れない決まりがあります。お礼状を書く前に、決まりを確かめ、上司に報告します。お歳暮を例にした確かめ方と、メールでのお礼は、お歳暮のお礼メールにまとめています。
封筒かはがきか、手書きか印刷か、いつ出すか
封筒(封書)か、はがきか
「封書」は、デジタル大辞泉で「封をした手紙。封じた書状。」と説明されています(コトバンク「封書」)。はがきとのいちばんの違いは、中身が、届くまでにほかの人の目に触れるかどうかです。
| 比べる点 | 封書(便せんと封筒) | はがき |
|---|---|---|
| 中身 | 相手が開けるまで見えない | 配達や社内で仕分けをする人にも見える |
| 書ける量 | 便せん1〜2枚 | 短い文 |
| 向いている場面(一例) | 契約や紹介のお礼。あらたまった相手。相手の言葉を引いて書くとき | 訪問のあとの短いお礼。会社の習慣ではがきを使っているとき |
| 書かないほうがよいこと | 金額や条件の細かい数字は、封書でも契約書や見積書にまかせる | 契約の中身、紹介先の名前、相手の会社の事情 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
迷ったら、ほかの人に読まれて、相手が困ることが書いてあるかどうかで決めます。少しでもあれば封書にします。封筒の大きさ、便せんの折り方、宛名の書き方は、封筒の宛名の書き方にまとめています。
送り方にも決まりがあります。総務省の信書のガイドラインは、信書を「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」とし、信書に該当する文書の例の最初に「書状」を挙げています。お礼の手紙を、品物やカタログの荷物に入れて送りたいときは、送り方によって扱いが変わります。自分で決めずに、総務の人か上司に確かめます。信書の送り方は、封筒の宛名の記事でも触れています。
手書きか、印刷か
公的な決まりは見当たりません。会社の見本が印刷なら、印刷で出します。手書きのよさは、その相手のために時間を使ったことが伝わる点です。印刷のよさは、読みやすく、間違いを直しやすい点です。
印刷の本文に、名前だけ手書きで署名する形や、最後に一行だけ手書きで添える形もあります。字に自信がなくても、ゆっくり、同じ大きさで書けば、読む人には丁寧さが伝わります。書き間違えたら、修正液で直さずに書き直す人が多いです。下書きを先に作ってから清書すると、書き直しが減ります。
いつ出すか
何日以内に出す、という公的な決まりは見当たりません。考え方は一つです。相手が、その出来事を覚えているうちに届くほうが、手紙の中身が伝わりやすいということです。日がたつほど、「あの日の、あの話」が相手の中で薄れていきます。
手紙は、書いてから届くまでに日数がかかります。お礼そのものは、当日か翌日に、メールや電話で先に伝えます。そのうえで、お礼状は書けた時点で早めに出します。上司の確認が要る会社では、確認の時間も見て、訪問の日のうちに下書きを作ります。
迷いやすい判断と、出した後で間違いに気づいたとき
判断1:メールでお礼を送った。手紙も出すと、しつこい?
基準は、中身が同じかどうかです。メールと同じ文をそのまま手紙にすると、相手は同じものを二度読むことになります。メールには確認事項と次の予定を、手紙には印象に残ったことを、と分けてあれば、重なりません。手紙に「先日はメールにて失礼いたしました」と一文添える形もあります(説明用の例です)。
判断2:縦書きと横書き、どちらにする?
公的な決まりは見当たりません。あらたまったお礼状は縦書き、社用の文書の形にそろえるなら横書き、という使い分けが多く見られます。基準は、会社の見本です。見本が無ければ、上司に「縦書きの便せんで出してよいですか」と、自分の案を添えて聞きます(説明用の例です)。
判断3:自分の名前で出す?上司の名前で出す?
基準は、お礼を言う立場にいるのは誰かです。自分が訪問して時間をもらったなら、自分の名前で出します。契約や紹介のように、会社としてお礼を言う場面では、上司の名前や、上司との連名で出す会社もあります。自分で決めずに、「契約のお礼状は、どなたの名前で出しますか」と上司に聞きます(説明用の例です)。
判断4:時候の挨拶は、省いてよい?
はがきや、急いで出すお礼では、頭語のすぐ後にお礼を書く形もあります。省いてよい場面と、「前略」を使ってよい場面は、拝啓と敬具の使い方の「迷いやすい判断」にまとめています。季節の言葉に迷うなら、季節を問わない「時下」を使う方法があります。
失敗1:相手の名前や会社名の字を、間違えて出した
その場では:名前の間違いは、お礼の手紙でいちばん相手の目に留まります。気づいたら、上司に伝えます。そのうえで、電話か、次に会ったときに、「先日お送りしたお礼状で、お名前の字を誤って書いておりました。大変失礼いたしました」と、言い訳を足さずにおわびします(説明用の例です)。書き直した手紙を出すかどうかは、上司と決めます。
後の記録:「記憶で書いた。次からは、名刺を横に置いて、宛名と本文の名前を一字ずつ見比べる」と書きます。
失敗2:頭語と結語が合っていなかった・結語を書き忘れた
その場では:お礼の気持ちは伝わっています。出し直すかどうかは、相手との関係で変わるので、上司に聞きます。立て直し方は、拝啓と敬具の使い方の「間違えたあとの立て直し」に書いてあります。
後の記録:清書の前に、最初の言葉と最後の言葉だけを見る、という確認を手順に足します。
失敗3:出すのが遅くなった
その場では:遅れたから出さない、とするより、一言おわびを添えて出すほうが、相手には伝わります。「お礼が遅くなりましたこと、おわび申し上げます」と、お礼の前に一文入れます(説明用の例です)。遅れた理由は書きません。相手にとっては、言い訳に聞こえるからです。
後の記録:「訪問の日に下書きを作らなかった。次からは、帰りの移動中に、お礼・具体的な一言・今後のことを一文ずつメモする」と書きます。
今日やることは一つです。お礼を伝えたい一件を選び、何についてのお礼か、印象に残ったこと、この後にやることを、一文ずつ書いてください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
相手の名刺(会社名・部署・名前の正しい字を見るため)。その日の商談メモ。会社のお礼状の見本(あれば)。便せんと封筒、またははがき。
記入例を見る(説明用)
送る相手と、何についてのお礼か=A社の佐藤様。◯月◯日の訪問で、時間をいただき、現場を案内していただいたこと/会社の習慣=上司に聞いた。初めて訪問した相手には、担当者の名前で封書を出している。見本が共有フォルダにある。出す前に上司が読む/具体的な一言=案内の途中で伺った「朝の作業の前に、点検の時間を取っている」という話が、印象に残った/今後のこと=ご質問いただいた納期の件は、メールで先に回答済み。来月、あらためて提案書を持って伺う/出す前に確かめたこと=相手の名前の字を名刺で確かめた。「拝啓」と「敬具」の組み合わせを確かめた。金額は書いていない。下書きを上司に見せる(今日中)。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
会社の習慣を確かめたうえで、何についてのお礼か、具体的な一言、今後のことが入った下書きがあり、相手の名前と会社名を名刺で見直してある。
うまく進まなかったときは?
具体的な一言が書けなければ、商談メモから相手の言葉を一つ探す。メモに無ければ、同行した先輩に「印象に残った話はありましたか」と聞く。手紙にするか迷うなら、上司に「◯◯様へ、お礼状を出してもよいですか。下書きはこれです」と、下書きを見せて聞く。