NOTE 83 · 営業の実践ノート
時候の挨拶 一覧:1月〜12月の「〜の候」と口語調の例、頭語・結語の組み合わせ
公開:2026年10月3日
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時候の挨拶は、手紙や文書の初めに書く、季節に触れた挨拶です。「新緑の候」のような漢語調と、「若葉の緑がきれいな季節になりました」のような口語調があります。どの語を何月に使うかには、公的な決まりが見当たりません。この記事の月別の表は、辞書の語釈と暦の日付で確かめた、目安です。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 送付状・案内状・礼状を作ることになり、書き出しの季節の言葉が決まらないとき。
- 1
文書の種類と、相手に届く日を確かめる
- 2
頭語と結語を、組で決める
- 3
届く日に合う時候の挨拶を選ぶ(迷ったら「時下」)
- 4
会社の過去の文書と見比べ、先輩に見せる
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
時候の挨拶とは:どこに、何のために書くか
資料に付ける送付状や、展示会の案内状を初めて作るとき、最初の一行で手が止まります。「拝啓」の次に、何を書けばよいのか。そこに入るのが、時候の挨拶です。
「時候」を辞書(コトバンク「時候」)で引くと、デジタル大辞泉は「四季折々の気候。その時々の陽気。」と説明しています。「新緑の候」の「候」も、同じ辞書の「候」の項に「季候。時候。」とあり、例に「残暑の候」「秋冷の候」が挙がっています。「新緑の候」は、「新緑の季節になりました」という意味の書き出しです。
あらたまった手紙や文書では、次の順に書く形が、よく使われます。
- 頭語(「拝啓」など、最初に書く言葉)
- 時候の挨拶(「新緑の候」など)
- 相手の繁栄や健康を喜ぶ言葉(「貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます」など)
- 日ごろのお礼(「平素は格別のお引き立てをいただき」など)
- 用件(「さて、」で始めることが多い)
- 結語(「敬具」など、最後に書く言葉)
3の「清栄」は、辞書(コトバンク「清栄」)のデジタル大辞泉で「手紙文などで、相手の無事と繁栄を喜ぶあいさつの語。」と説明されています。時候の挨拶は、この言葉とひと続きで、「季節に触れ、相手を気づかってから用件に入る」役目をしています。
送付状や案内状は、会社の名前で出す文書です。形のそろった書き出しがあると、相手は「きちんと出された物だ」と受け取りやすくなります。一方、日々のメールでは、時候の挨拶を省いて書く人が多いです。メールの書き出しはビジネスメールの書き出し、挨拶状の代わりに送るメールは年末の挨拶メールと新年の挨拶メールにまとめています。
月別の一覧:漢語調と口語調
時候の挨拶には、2つの調子があります。漢語調は、「新緑の候」のように「〜の候」で書く、硬い形です。会社あての送付状や案内状で使われることが多いです。口語調は、「若葉の緑がきれいな季節になりました」のように、ふだんの言葉で書く形です。個人あての礼状や、やわらかく伝えたい文書に合います。
次の表は、月ごとの一例です。漢語調の語は、後ろに「の候」を付けて使います。かっこの中は、リンク先のコトバンクに載っているデジタル大辞泉の語釈から、時期や意味が分かる部分を引用したものです。
| 月(目安) | 漢語調の語と、辞書の説明 | 口語調の例 |
|---|---|---|
| 1月 | 新春(「新年。」)/大寒(「1月20日ごろ。このころ、寒さが一年のうちで最も厳しい。」)/厳寒(「非常にきびしい寒さ。」) | 寒さの厳しい日が続いております |
| 2月 | 立春(「太陽暦で2月4日ごろ。暦の上で春がはじまる日。」)/余寒(「立春後の寒さ。」)/春寒(「立春からあとのぶり返した寒さ。」) | 立春を過ぎても、寒い日が続いております |
| 3月 | 早春(「春の初めごろ。」)/春分(「太陽暦で3月21日ごろ。」) | 日ごとに春らしくなってまいりました |
| 4月 | 陽春(「陽気のみちた暖かい春。」)/春暖(「春の暖かな陽気。」)/桜花(「桜の花。」) | 春の暖かさを感じる季節になりました |
| 5月 | 新緑(「夏の初めころの、若葉のつややかな緑色。」)/薫風(「初夏、新緑の間を吹いてくる快い風。」)/立夏(「太陽暦で5月6日ごろ。暦の上で夏の始まる日。」) | 若葉の緑がきれいな季節になりました |
| 6月 | 梅雨(「6月上旬から7月上・中旬にかけて」)/入梅(「6月11日ごろ。気象では梅雨に入る日をさし、地域や年により異なる。」)/向暑(「暑い時候に向かうこと。」) | 雨の日が多い季節になりました |
| 7月 | 盛夏(「夏の暑い盛りの時期。真夏。」)/大暑(「7月23日ごろ。一年のうちで、最も暑い時期。」)/酷暑(「真夏の厳しい暑さ。」) | 暑い日が続いております |
| 8月 | 立秋(「太陽暦で8月8日ごろ。暦の上で秋の始まる日で、以降の暑さを残暑という。」)/残暑(「立秋を過ぎてもなお残る暑さ。」)/処暑(「8月23日ごろ。暑さが落ち着く時期の意。」) | 立秋を過ぎても、暑い日が続いております |
| 9月 | 初秋(「秋の初め。」)/新涼(「秋の初めの涼しさ。」)/秋分(「太陽暦で9月23日ごろ。」) | 朝夕は涼しさを感じるようになりました |
| 10月 | 秋冷(「秋になって肌に感じられる冷ややかさ。」)/寒露(「10月8日ごろ。」)/秋晴(「秋の、よく澄んで晴れ渡っている空のようす。」) | 秋が深まってまいりました |
| 11月 | 晩秋(「秋の終わり。秋の末。」)/立冬(「太陽暦で11月7日ごろ。暦の上で冬の始まる日。」)/向寒(「しだいにさむくなること。」) | 朝晩の冷え込みが増してまいりました |
| 12月 | 師走(「陰暦12月の異称。」「太陽暦にもいう。」)/歳末(「年の暮れ。年末。」)/冬至(「太陽暦で12月22日ごろ。」) | 今年も残りわずかとなりました |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
この表を使うときに、知っておきたいことが3つあります。
1つめ。どの語を何月に使うかを決めた、公的な決まりは見当たりません。月の分け方は、辞書の語釈に合わせた目安です。「陽春」「春暖」のように、辞書が「春」としか説明していない語は、4月の欄に置きましたが、3月に使う人もいます。会社で過去に出した文書があれば、そちらに合わせてください。
2つめ。「早春」「初秋」のように「初め」を表す語は、使う時期の説明が人によって分かれます。暦の上の春は2月の立春から、秋は8月の立秋から始まるので、暦で数えるか、体で感じる季節で数えるかで、ずれるからです。迷う語は使わず、同じ月の別の語を選べば済みます。
3つめ。季節の進み方は、土地によって違います。「入梅」の語釈にも「地域や年により異なる」とあります。「桜花」「秋晴」のように花や天気を指す語と、口語調の文は、相手の所で、その様子が実際に見られる時期かを考えて使います。分からないときは、次の章の暦の語か、後で説明する「時下」を選びます。
暦をもとにする語は、日付を確かめる
表の中の「立春」「立夏」「立秋」「立冬」「大寒」「春分」などは、二十四節気(にじゅうしせっき)という、一年を24に分けた暦の区切りの名前です。日付がはっきりしているので、時候の挨拶を選ぶ目印になります。
ただし、日付は毎年同じではありません。国立天文台が発表している暦要項の「二十四節気および雑節」(令和8年(2026年)・令和9年(2027年))を見ると、次のようになっています。
| 名前 | 2026年 | 2027年 |
|---|---|---|
| 立春 | 2月4日 | 2月4日 |
| 春分 | 3月20日 | 3月21日 |
| 立夏 | 5月5日 | 5月6日 |
| 立秋 | 8月7日 | 8月8日 |
| 立冬 | 11月7日 | 11月8日 |
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この2年を比べるだけでも、1日違う日があります。辞書が「8月8日ごろ」と「ごろ」を付けているのは、このためです。区切りの前後で文書を出すときは、その年の暦要項で日付を確かめます。
日付が大事になるのは、区切りをまたぐと語が変わるからです。たとえば「残暑」は、辞書で「立秋を過ぎてもなお残る暑さ。」と説明されています。立秋より前に届く文書なら「盛夏の候」、後に届くなら「残暑の候」が、暦と合います。8月の中ごろは、体の感じはまだ真夏でも、暦の上では秋なので「残暑」と書きます。「余寒」も同じで、立春を過ぎてから使う語です。
頭語と結語の組み合わせと、文例
頭語と結語は、組で使います。次の表は、辞書(コトバンクのデジタル大辞泉)の語釈に書かれている組み合わせです。
| 頭語 | 結語 | 辞書の説明 | 使う場面(一例) |
|---|---|---|---|
| 拝啓 | 敬具 | 「拝啓」の項に「文末はふつう「敬具」で結ぶ。」、「敬具」の項に「「拝啓」と対応する。」 | 送付状・案内状・礼状など、ふだんの文書 |
| 謹啓 | 敬白・謹言 | 「謹啓」の項に「「拝啓」よりも敬意が高い。「敬白」「謹言」で結ぶ。」 | あらたまった案内や挨拶状 |
| 前略 | 草々 | 「前略」の項に「手紙文で、冒頭の時候のあいさつなどを省くという意で用いる語。」、「草草」の項に「「前略」「冠省」などと照応して用いる。」 | 急ぎの短い手紙。時候の挨拶は書かない |
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書くときの手順は、次の4つです。
- 文書の種類と、相手に届く日を確かめる。書く日ではなく、届く日で季節の語を選びます。相手が読むのは、届いた日だからです。
- 頭語と結語を、組で決める。先に結語まで書いておくと、書き忘れを防げます。
- 届く日に合う時候の挨拶を選ぶ。月別の表から選び、辞書で意味を確かめます。迷ったら「時下」にします。
- 会社の過去の文書と見比べ、先輩に見せる。会社の名前で出す文書なので、決まった文面があれば、そちらを使います。
文例を3つ並べます。社名・人名・用件は、どれも説明用の例です。
1. 送付状(漢語調)
拝啓 新緑の候、貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。平素は格別のお引き立てをいただき、厚くお礼申し上げます。
さて、◯月◯日にご依頼いただきました資料を、同封にてお送りいたします。ご査収のほどよろしくお願いいたします。
敬具
「ご査収」の意味と使い方は「ご査収ください」の使い方、送付状全体の作り方は送付状の書き方にまとめています。
2. 礼状(口語調)
拝啓 若葉の緑がきれいな季節になりました。[担当者名]様には、お変わりなくお過ごしのことと存じます。
さて、先日はお忙しい中、工場をご案内いただき、ありがとうございました。
敬具
個人あてなので、会社の繁栄を喜ぶ言葉の代わりに、相手の様子を気づかう一文にしています。会った後すぐのお礼をメールで送るときは、営業のお礼メールを見てください。
3. 季節を問わない形(「時下」)
拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、このたび下記のとおり、新商品の説明会を開くことになりました。
敬具
季節と合わないとき:「時下」と場面ごとの書き方
「時下」は、辞書(コトバンク「時下」)のデジタル大辞泉で「このごろ。当節。」と説明され、「多く手紙の冒頭のあいさつに用いる。」と書かれています。季節の語を入れずに、「このごろ」という意味で書き出せます。年中使えるので、迷ったときの無難な形です。
場面によって、選び方が変わります。次の表は一例です。
| 場面 | 起きやすいこと | 書き方(一例) |
|---|---|---|
| 季節の変わり目に出す | 届くころに、語が季節とずれる | 「時下」にする。または、暦の語を、日付を確かめて使う |
| 同じ文書を、多くの相手に一度に出す | 相手の土地によって、季節の進み方が違う | 花や天気の語を避け、「時下」か、暦の語にする |
| 天気が、季節の語と合わない(冷夏、暖冬、長雨など) | 「盛夏」「厳寒」が、実際の様子と合わない | 「時下」にする。口語調なら、実際の天気に合う文にする |
| 急ぎの短い手紙 | 前文を書く時間がない | 「前略」で始め、時候の挨拶を書かずに用件に入り、「草々」で結ぶ |
| お詫びの文書 | 季節を楽しむ言葉が、内容と合わない | 時候の挨拶を省いて、お詫びから書く形がよく使われる。文面は上司と決める |
| メールで送る | 挨拶が長いと、用件が下に押し出される | 省く人が多い。挨拶状の代わりのメールなら、口語調で一文だけ入れる |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
惜しい例1:「前略 盛夏の候、貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。」
惜しい例2:8月20日ごろに届く文書に、「盛夏の候」と書く
惜しい例3:雨の日が続いているのに、「さわやかな秋晴れが続いております」と書く
良い例:「拝啓 残暑の候、貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。」(8月20日ごろに届く文書)
説明用の例です。惜しい例1は、「前略」が時候の挨拶などを省くという意味の語なのに、すぐ後に時候の挨拶を書いています。「拝啓」に直すか、時候の挨拶を消します。
惜しい例2は、立秋を過ぎています。暦と合わせるなら「残暑の候」です。惜しい例3は、前の文書や文例集をそのまま写したときに起きます。口語調は、実際の天気と違うと目立ちます。
お詫びの文書の書き方はお詫びメールの書き方にまとめています。
迷いやすい判断と、間違えて送ったとき
判断1:月の変わり目は、どちらの月の語を使う?
基準は、相手に届く日です。月末に出して翌月の初めに届くなら、翌月の語にします。届く日が読めないときは、「時下」にするか、両方の月に合う口語調の一文にします。
それでも迷ったら、先輩に「◯月◯日に出して、月初めに届く送付状です。『時下』で始めるつもりですが、よいでしょうか」と、自分の案を添えて聞きます(説明用の例です)。
判断2:字の印象で、季節を決めてよい?
決めずに、辞書を引きます。字の印象と、実際の時期が違う語があるからです。たとえば「小春日和」は、デジタル大辞泉で「初冬のいかにも小春らしい穏やかで暖かい日和。」と説明されています。春ではなく、冬の初めの言葉です。「麦秋」も、「麦の取り入れをする季節。初夏のころ。」で、秋ではありません。
文例集で見つけた語は、使う前に一度、辞書で時期を確かめます。確かめられなかった語は、使いません。
判断3:漢語調と口語調、どちらにする?
基準は、誰あての、どんな文書かです。会社あての送付状・案内状は漢語調、個人あての礼状は口語調、という選び方がよく使われます。会社で過去に出した同じ種類の文書があれば、その調子に合わせます。
口語調は、実際の様子と合っているかを自分で確かめてから使います。確かめる時間がないときは、漢語調の暦の語か「時下」が無難です。
失敗1:季節と合わない語のまま、送ってしまった
その場では:用件が正しく伝わっているなら、時候の挨拶だけを直した文書を、もう一度送る必要はないことが多いです。相手の手間が増えるからです。自分だけで決めず、上司に「送付状の時候の挨拶が、先月の語のままでした。出し直しは必要でしょうか」と聞きます(説明用の例です)。
後の記録:原因を書きます。多いのは、前に作った文書を写して、挨拶の行を変え忘れることです。ひな形の時候の挨拶の所を、空欄か「時下」にしておくと、次から防げます。
失敗2:「拝啓」で始めたのに、結語を書き忘れた
その場では:これも、出し直すかどうかを上司に聞きます。まだ出していない分があれば、先に直します。
後の記録:「頭語を書いたら、すぐに結語も書く」と、手順を一つ足します。
失敗3:相手の所で災害があった直後に、ふだんの時候の挨拶で出した
その場では:気づいたら、すぐ上司に伝えます。季節を楽しむ言葉は、その時の相手の状況に合わないことがあります。お見舞いの連絡をするか、どう伝えるかは、会社として決めます。
後の記録:多くの相手に一度に出す文書は、出す前に、相手の所で大きな出来事が起きていないかを確かめる、と書き足します。
今日やることは一つです。次に出す文書を一つ決め、相手に届く日を見て、頭語・時候の挨拶・結語を一組書いてください。
時候の挨拶のあとに続ける「ご清祥」「ご清栄」の違いは、ご清祥とはにまとめています。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
出す文書の下書き、相手に届く日が分かる予定表、会社で過去に出した同じ種類の文書。
記入例を見る(説明用)
文書の種類と、相手=資料を郵送するときの送付状。A社の佐藤様あて/相手に届く日=◯月◯日(◯)に出して、翌日か翌々日に届く見込み。5月の中ごろ/頭語と結語=拝啓と敬具。会社の過去の送付状も同じ組み合わせだった/時候の挨拶と、その後に続ける一文=「新緑の候、貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。」続けて「平素は格別のお引き立てをいただき、厚くお礼申し上げます。」/確かめたことと、先輩に聞くこと=「新緑」を辞書で引き、夏の初めころの若葉の緑を指す語だと確かめた。立夏の日付は、国立天文台の暦要項で見た。会社の決まった文面があるかは未確認。出す前に先輩に見せる。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
相手に届く日が書いてあり、頭語と結語が組になっていて、時候の挨拶がその日の季節と合っている(迷った場合は「時下」にしてある)。
うまく進まなかったときは?
語が決まらなければ、「時下」を使う。届く日が月の変わり目なら、両方の月に合う口語調の一文にする。頭語と結語の組み合わせに自信がなければ、会社の過去の文書を見るか、先輩に「送付状の書き出しは、どの文面を使っていますか」と聞く。