NOTE 87 · 営業の実践ノート
拝啓と敬具の使い方:頭語と結語の組み合わせ、書く位置、営業の手紙の例
公開:2026年10月3日
広告:この記事にはアフィリエイトリンクが含まれます。リンク経由の購入により、当サイトに報酬が支払われる場合があります。
拝啓(はいけい)は手紙の初めに書くあいさつの語で、文末は敬具(けいぐ)で結びます。こうした書き出しの語を頭語(とうご)、結びの語を結語(けつご)と呼び、決まった組み合わせで使います。この記事では、辞書で確かめられる組み合わせ、書く位置、「記」「以上」との関係、メールでの扱い、営業の送付状・礼状・案内状・詫び状での例を説明します。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 送付状や礼状、案内状を書くことになり、「拝啓」「敬具」をどう書けばよいか分からないとき。
- 1
手紙か、メールかを確かめ、会社の過去の文書を見る
- 2
相手と用件に合わせて、頭語と結語の組み合わせを決める
- 3
頭語・前文・用件・結びのあいさつ・結語の順に書く
- 4
「記」「以上」の要否と、組み合わせを見直し、上司に見せる
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
頭語と結語とは:手紙の最初と最後に書く、対になる言葉
手紙の最初に書く「拝啓」のような語を、頭語(とうご)と呼びます。辞書(デジタル大辞泉「頭語」)には、「手紙文の冒頭に用いる語。「拝啓」「謹啓」など。」とあります。手紙の最後に書く「敬具」のような語は、結語(けつご)と呼ばれます。結語は、辞書(デジタル大辞泉「結語」)に「文章や話などの結びの言葉。」とあります。
「拝啓」は、辞書(デジタル大辞泉「拝啓」)に、「つつしんで申し上げます、の意」と説明され、「手紙の初めに書くあいさつの語。文末はふつう「敬具」で結ぶ。」とあります。「敬具」は、辞書(デジタル大辞泉「敬具」)に、「手紙などの末尾に用いる語。「拝啓」と対応する。」とあります。
つまり、拝啓と敬具は、二つで一組の言葉です。たとえるなら、訪問のときの「失礼します」と「失礼しました」のように、始まりと終わりをそろえる役目をしています。片方だけ書いたり、別の組の言葉で結んだりすると、読む人には、形を知らずに書いたことが伝わってしまいます。
営業の仕事では、書類に添える送付状、訪問や注文のお礼状、説明会や担当者変更の案内状、お詫びの手紙などで使います。初めて書くときは、どの言葉とどの言葉が組なのか、どこに書くのか、メールにも要るのか、で手が止まりがちです。この記事では、その三つを順に説明します。
組み合わせと、使う場面
次の表は、辞書の説明で確かめられる組み合わせです。「使う場面」の列は、営業の仕事での一例です。
| 頭語 | 結語 | 辞書の説明(デジタル大辞泉) | 使う場面(一例) |
|---|---|---|---|
| 拝啓 | 敬具 | 拝啓の項に「文末はふつう「敬具」で結ぶ。」、敬具の項に「「拝啓」と対応する。」 | 取引先あての、ふだんの手紙や文書。送付状、お礼状、案内状 |
| 謹啓 | 敬白/謹言 | 謹啓の項に「「拝啓」よりも敬意が高い。「敬白」「謹言」で結ぶ。」 | あらたまった案内やあいさつ、お詫びの手紙など、より丁寧にしたいとき |
| 前略 | 草々 | 草草の項に「「前略」「冠省」などと照応して用いる。」 | 急ぎの用件で、前文のあいさつを省くとき |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
表の出典は、それぞれ「拝啓」・「敬具」・「謹啓」・「草草」の項です。「草々」は、辞書では「草草」の見出しで載っています。
謹啓と「謹白」
「謹啓」で始めて「謹白」で結ぶ形も、会社の文書でよく見かけます。「謹白」は、辞書(デジタル大辞泉「謹白」)に、「手紙・文書の結びに用いて、相手に敬意を表す語。」とあり、あわせて見る項として「謹啓」が示されています。会社の過去の文書が「謹啓―謹白」なら、その形に合わせます。
前略と草々
「前略」は、辞書(デジタル大辞泉「前略」)に、「手紙文で、冒頭の時候のあいさつなどを省くという意で用いる語。」とあります。「あいさつを省きます」と断る言葉なので、前略と書いた後に、季節のあいさつは続けません。すぐ用件に入ります。
あいさつを省く形なので、初めての相手や、あらたまった用件の手紙には、合わないことが多い書き方です。営業の文書では、迷ったら「拝啓―敬具」を選ぶと、場面を選びません。
拝復:返事の手紙の書き出し
「拝復」は、辞書(デジタル大辞泉「拝復」)に「返信の冒頭に用いる語。」とあります。相手から届いた手紙に、手紙で返事を書くときの頭語です。結びにどの語を使うかは、この項には書かれていません。使うときは、会社の過去の文書か、上司に確かめて合わせます。
なぜ、組み合わせをそろえるのか
頭語と結語は、手紙の丁寧さの度合いを、最初と最後で示す言葉です。「謹啓」で丁寧に始めて「草々」で結ぶと、始まりと終わりで、度合いが食い違います。読む人が形に詳しいほど、食い違いは目に入ります。用件の中身とは別の所で、気を取らせてしまいます。
書く位置と、「記」「以上」との関係
横書きの文書での位置は、次の形が広く使われています。会社のひな形があれば、そちらに合わせます。
| 言葉 | 書く位置(横書きの一例) | 続け方 |
|---|---|---|
| 拝啓(頭語) | 本文の最初の行の先頭 | 一文字あけて、時候のあいさつなどの前文を続ける |
| 敬具(結語) | 本文の最後の文の後。行の右端 | 結びのあいさつの次の行に書く形が多い |
| 記 | 本文と、箇条書きの間。行の中央 | 次の行から、日時・場所・同封書類などを箇条書きにする |
| 以上 | 箇条書きの後。行の右端 | ここで文書が終わる |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
手紙の本文は、頭語→前文(時候のあいさつ、日ごろのお礼)→用件(「さて、」で始めることが多い)→結びのあいさつ→結語、の順に並びます。頭語と結語は、本文をはさむ位置にあります。
「記」と「以上」
日時・場所・同封した書類など、箇条書きにしたい内容があるときは、本文の後に「記」と書いて、その下に並べます。国の役所の文書の手引きである、文化審議会の「公用文作成の考え方」(解説34ページ)には、「本文中に下記部分を指す「下記」等を用い、本文と下記との間の中央に「記」と記述する。」とあります。本文には、「下記のとおり」と書いておきます。
「以上」は、辞書(デジタル大辞泉「以上」)に、「手紙・目録・箇条書きなどの末尾に記して「終わり」の意を表す。」とあります。「記」の下の箇条書きが終わったら、「以上」と書いて締めます。
並べると、拝啓→本文→敬具→記→箇条書き→以上の順が、広く使われている形です。敬具は本文の終わりの印、以上は文書全体の終わりの印なので、両方を書きます。箇条書きがない手紙なら、「記」も「以上」も要りません。敬具で終わります。
メールでは省くことが多い:場面で変わるところ
仕事のメールでは、頭語と結語を書かず、宛名・あいさつ・名乗りから始める書き方が広く行われています。書き出しはビジネスメールの書き出し、結びはビジネスメールの締めにまとめています。
頭語と結語が要るかどうかは、紙の手紙・文書か、メールの本文かで分かれます。次の表は一例です。
| 場面 | 頭語と結語 | 補足 |
|---|---|---|
| 郵送する送付状 | 拝啓―敬具が多い | あいさつを省いた短い書式を使う会社もある |
| お礼状(手紙・はがき) | 拝啓―敬具 | 急ぎで出す短いお礼は、まずメールで伝え、手紙は別に出す方法もある |
| 案内状・あいさつ状 | 拝啓―敬具。あらたまった内容は、謹啓で始める | 日時や場所は「記」の下に書く |
| お詫びの手紙 | 会社の決まりと、上司の判断に合わせる | 文面は上司と決める。自分だけで出さない |
| メールの本文 | 書かないことが多い | 宛名・あいさつ・名乗りで始める |
| メールに添付する文書(PDFなど) | 文書の中には書く | メールの本文には書かず、添付した文書の形は紙と同じにする |
| 社内の文書 | 省くことが多い | 会社の書式に合わせる |
| 届いた手紙への返事 | 拝復で始める書き方がある | 結びの語は、会社の過去の文書に合わせる |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
相手から、頭語と結語の入ったメールが届くこともあります。その場合に、こちらも同じ形で返すかどうかは、会社の慣例と相手との関係で変わります。迷ったら、先輩に、同じ相手へ送ったメールを見せてもらいます。
営業の手紙での例
次の例は、どれも説明用です。会社名・人名・日付は、自分の件に置き換えてください。季節のあいさつの選び方は、時候の挨拶にまとめています。ここでは、季節の名前が入らない「時下」を使っています。「時下」は、辞書(デジタル大辞泉「時下」)に「このごろ。当節。」の意味で、「多く手紙の冒頭のあいさつに用いる。」とあります。
1. 送付状
「拝啓」で始め、送る書類を「記」の下に並べ、「以上」で終わる形です。項目と文例は、送付状の書き方に載せています。
2. お礼状
拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、先日はお忙しい中、お時間をいただき、誠にありがとうございました。お話しいただいた納期の件は、◯月◯日までに、あらためてご連絡いたします。
今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。
(右端)敬具
お礼の中身は、「何について」のお礼かを書きます。訪問の後のお礼をメールで送る場合は、商談のお礼メールを見てください。
3. 案内状
拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。平素より格別のお引き立てをいただき、厚く御礼申し上げます。
さて、このたび下記のとおり、製品説明会を開くこととなりました。ご多用のところ恐れ入りますが、ご出席くださいますようお願い申し上げます。
(右端)敬具
(中央)記
日時:◯月◯日 ◯時から◯時
場所:[会場名]
(右端)以上
複数の取引先へ同じ案内状を出すときの宛名は、各位の使い方にまとめています。
4. お詫びの手紙
謹啓 このたびは、◯月◯日にお届けした商品に誤りがあり、多大なご迷惑をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます。
経過と今後の対応は、別紙のとおりご報告いたします。
今後は、同じことをくり返さないよう、出荷の前の確認を見直してまいります。何とぞご容赦くださいますよう、お願い申し上げます。
(右端)敬白
お詫びの手紙では、季節のあいさつを書かず、すぐお詫びに入る書き方が広く見られます。頭語を「謹啓」にするか「拝啓」にするか、誰の名前で出すかは、上司と決めます。経過をまとめる別紙の書き方は顛末書の書き方、メールで送るお詫びはお詫びメールの書き方にまとめています。
書き方を比べる
惜しい書き方1:「拝啓 さて、お見積書をお送りします。…草々」
惜しい書き方2:「前略 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。…敬具」
惜しい書き方3:「拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。…(結語なし)」
良い書き方:「拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。さて、お見積書を下記のとおりお送りいたします。…敬具」
惜しい書き方1は、拝啓を草々で結んでいて、組が合っていません。2は、「あいさつを省きます」と断った後に、あいさつを書いています。結びも、前略の組の言葉ではありません。3は、頭語だけで、結語がありません。良い書き方は、拝啓の後に前文、「さて、」の後に用件を書き、敬具で結んでいます。
迷いやすい判断と、間違えたあとの立て直し
判断1:「拝啓」と「謹啓」、どちらにする?
辞書は、謹啓を「「拝啓」よりも敬意が高い。」と説明しています。基準は、会社が同じ種類の文書で、どちらを使ってきたかです。ふだんの送付状やお礼状は拝啓、会社としてのあらたまったあいさつやお詫びは謹啓、という使い分けをしている会社が多く見られます。過去の文書が見つからなければ、拝啓で下書きし、上司に「頭語は拝啓でよいでしょうか」と聞きます。
判断2:「前略」を使ってよいのは、どんなとき?
前略は、あいさつを省くという意味の言葉です。基準は、あいさつを省いても、相手が失礼と感じない間柄と用件かです。何度もやり取りのある相手に、急ぎで書類を一枚送る、という場面で使われることがあります。初めての相手、お礼、お詫び、あらたまった案内では、拝啓か謹啓にしておくと迷いません。
判断3:「拝啓」の後の、季節のあいさつは省いてよい?
季節の言葉を選びにくいときは、季節の名前が入らない「時下」を使う方法があります。あいさつそのものを書かないなら、頭語は前略になります。「拝啓」と書いて、すぐ「さて、」と用件に入る形は、前文が抜けて見えます。拝啓なら前文を一文、前略なら前文なしと覚えておくと、組み合わせを取り違えにくくなります。
判断4:「敬具」と「以上」は、どちらも要る?
役目が違うので、「記」を書いた文書では、どちらも書きます。敬具は、拝啓で始めた本文を結ぶ言葉です。以上は、箇条書きの終わりを示す言葉です。箇条書きがない手紙は、敬具だけで終わります。逆に、頭語を書かない社内の文書で「記」を使ったときは、以上だけで終わります。
失敗1:組み合わせを間違えたまま、出してしまった
その場では:日付・金額・同封書類など、用件の中身に誤りがなければ、相手の仕事は止まりません。出し直すかどうかは、自分で決めず、上司に実物の控えを見せて聞きます。「拝啓で始めて、草々で結んでいました。出し直したほうがよいですか」と、どこが違っていたかを伝えます。
後の記録:使ったひな形を直します。「送付状のひな形の結語を、敬具に直した」と一行残します。ひな形が古いままだと、次に使う人も同じ誤りをします。
失敗2:結語を書き忘れた
その場では:封をする前なら、書き足して印刷し直します。出した後なら、失敗1と同じく、上司に見せて判断をもらいます。
後の記録:「本文を書き終えた所で、印刷した。次からは、封をする前に、最初の語と最後の語を指で確かめる」と、抜けた手順を書きます。
失敗3:メールに「拝啓」「敬具」を書いて送った
その場では:用件が伝わっていれば、訂正のメールは要らないことが多い誤りです。訂正を送ると、相手の読むメールが一通増えます。気になるときは、上司に聞きます。
後の記録:手紙の文をメールに写したときに起きやすい誤りです。「紙の文書とメールで、ひな形を分ける」と決めて、メール用の書き出しを一つ用意しておきます。
今日やることは一つです。次に出す手紙か文書を一つ選び、頭語と結語の組み合わせを決めて、書き出しから結びまでを下書きしてください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
会社が過去に出した送付状や案内状、相手の正しい会社名と名前、送る書類や用件のメモ。
記入例を見る(説明用)
手紙の種類と、相手=先週の訪問のお礼状。A社 総務部の佐藤様あて。郵送する/頭語と結語と、その理由=「拝啓」と「敬具」。ふだんの取引先あての手紙で、会社の過去のお礼状も同じ組み合わせだった/前文=「拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。」季節の言葉を入れるかどうかは、課長に確認する/用件=「さて、先日はお忙しい中、お時間をいただき、誠にありがとうございました。お話しいただいた納期の件は、◯月◯日までに、あらためてご連絡いたします。」/「記」「以上」の要否と、出す前に確かめること=箇条書きにする内容がないので、「記」「以上」は書かない。拝啓で始めて敬具で結んでいるか、敬具が右端にあるか、佐藤様の名前の字が名刺と同じかを見る。課長に見せてから出す。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
頭語と結語が、辞書で確かめられる組み合わせになっていて、頭語が行の先頭、結語が本文の後の右端にあり、「記」を書いたなら「以上」で終わっている。
うまく進まなかったときは?
組み合わせで迷ったら、「拝啓」と「敬具」にする。前文が書けなければ、会社の過去の文書の一文を借りる。メールに書くべきか迷ったら、書かずに、宛名と名乗りから始める。形が合っているか不安なら、下書きを上司に見せる。