NOTE 61 · 営業の実践ノート
ビジネスメールの書き出し:宛名・挨拶・名乗りを、相手との関係で決める
公開:2026年10月3日
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ビジネスメールの書き出しは、宛名→挨拶→名乗りの3つを、この順に短く書く形が広く使われています。どの言葉を選ぶかは、相手との関係で決めます。初めての相手なら「はじめてご連絡いたします」、やり取りが続いている相手なら「いつもお世話になっております」、社内なら「お疲れ様です」が、一般によく使われます。この記事では、関係ごとの書き出しの表と文例、敬称や時候の挨拶で迷ったときの決め方を説明します。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに メールを書こうとして、最初の一行で手が止まるとき。相手によって書き出しを変えるべきか迷うとき。
- 1
相手の会社名・部署・名前を、元の資料で確かめる
- 2
相手との関係(初めて・続いている・久しぶり・社内)を決める
- 3
宛名→挨拶→名乗りの順に、3行で書く
- 4
敬称と名前の漢字を見直し、すぐ用件に入る
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
書き出しの3つの部品:宛名・挨拶・名乗り
メールを開いた相手は、最初の数行で「自分あてか」「どんな関係の人からか」「誰からか」を確かめます。書き出しは、その確かめに答える場所です。部品は3つあります。
| 部品 | 書くこと | 相手が何に使うか |
|---|---|---|
| 宛名 | 相手の会社名・部署名・名前と敬称 | 自分あてのメールかどうかを確かめる。複数あてなら、誰が動くのかを見る |
| 挨拶 | 相手との関係に合った一文 | どんな関係の人からのメールかをつかむ。読む気持ちの準備をする |
| 名乗り | 自分の会社名(社内なら部署名)と名前 | 誰からかを確かめる。差出人の欄を見直さなくても分かる |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
3つを、宛名→挨拶→名乗りの順に書く形が、広く使われています。順番がそろっていると、相手は毎回同じ場所を見れば済みます。
初心者がつまずきやすいのは、挨拶に時間をかけすぎることです。ていねいにしようとして挨拶を何文も重ねると、用件が下に押し出されます。スマホで読む相手は、画面を送らないと用件にたどり着けません。3つの部品は短く書き、名乗りの次の行から用件に入ります。
もう一つは、宛名を省くことです。宛名がないと、CC(写しを届ける先)に入っている人や、同じ部署の人は、自分が動くメールなのかを判断できません。一行で済むので、毎回書きます。
書き出しの言葉づかいには、会社ごとの慣例があります。この記事の例は、一般に使われることが多い形です。職場の先輩が送っているメールの形があれば、そちらに合わせてください。メール全体の組み立てはビジネスメールの書き方、終わり方はビジネスメールの締めにまとめています。
相手との関係で決める:書き出しの表
挨拶と名乗りは、相手との関係で変わります。書く前に、「この人と自分は、いまどんな関係か」を一つ決めます。次の表は、よく使われる形の一例です。
| 相手との関係 | 挨拶の例 | 名乗りの例 | 気をつける所 |
|---|---|---|---|
| 初めて連絡する | はじめてご連絡いたします | [自社名]の[氏名]と申します | 名乗りの後に、連絡した理由を一文で続ける |
| やり取りが続いている | いつもお世話になっております | [自社名]の[氏名]です | 挨拶は一文にして、すぐ用件へ進む |
| 久しぶりに連絡する | ご無沙汰しております | [自社名]の[氏名]です | 前に何の件で関わったかを、一言添える |
| 社内の上司・先輩 | お疲れ様です | [部署名]の[氏名]です | 宛名の呼び方(役職を付けるか、さん付けか)は職場に合わせる |
| 複数の人あて | 相手との関係に合わせる | 上と同じ | 宛名に全員の名前を書くか、「各位」「関係者の皆様」とする。誰に何をお願いするかを本文で分ける |
| 相手のメールに返信する | ご連絡ありがとうございます | [自社名]の[氏名]です | 相手がしてくれたこと(連絡・返信・資料の送付)へのお礼を、挨拶にする |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
名乗りの終わり方は、初めての相手には「と申します」、2回目以降は「です」と書く人が多いです。「申します」は、初めて名前を伝える場面で使われることが多い言い方だからです。
同じ日に何度かやり取りが続くときは、「たびたび失礼いたします」と書くことがあります。やり取りが続いている間は、挨拶と名乗りを短くする職場もあります。相手のメールの形と、先輩の形を見て合わせます。
なぜ関係で分けるのかというと、挨拶が関係と合っていないと、相手が一瞬迷うからです。初めての相手に「いつもお世話になっております」と書くと、相手は「どこかで会ったか」と記憶を探すことがあります。久しぶりの相手に何も触れずに用件から入ると、相手は「誰だったか」を思い出す所から始めることになります。
初めての相手へ送るときの、連絡した理由の書き方と全文の例は、はじめましてのビジネスメールにまとめています。
文例:書き出しから用件の一文目まで
5つの場面の書き出しを並べます。社名・人名・日付・用件は、どれも説明用の例です。[ ]と◯の所を、自分の案件に置き換えてください。
1. やり取りが続いている取引先へ
[会社名] [部署名] [担当者名]様
いつもお世話になっております。[自社名]の[氏名]です。
◯月◯日(◯)のお打ち合わせの時間について、ご相談があり、ご連絡しました。
宛名、挨拶と名乗り、用件の一文目の3行です。用件の一文目に「何の件か」が入っているので、相手は続きを読む前に、どの話かが分かります。
2. 久しぶりに連絡する相手へ
[会社名] [担当者名]様
ご無沙汰しております。[自社名]の[氏名]です。
◯月の展示会の件では、お世話になりました。
本日は、新しい資料ができましたので、ご案内のためにご連絡しました。
前に関わった件を一文入れています。相手が思い出す手がかりになります。どの件で関わったかが自分でも分からないときは、送る前に、会社の記録か前の担当者に確かめます。
3. 社内の上司へ
[名前]課長
お疲れ様です。[氏名]です。
[会社名]様のお見積もりの件で、ご相談があります。
同じ部署の上司には、部署名を省いて名前だけを名乗ることがあります。別の部署の人には、「営業部の[氏名]です」のように部署名を付けると、相手が誰からかを確かめやすくなります。
4. 複数の人へ
[会社名]
[担当者名A]様、[担当者名B]様
(CC:弊社 [上司名])いつもお世話になっております。[自社名]の[氏名]です。
◯月◯日(◯)のお打ち合わせの議事メモをお送りします。[担当者名A]様には、2点ご確認をお願いしたいことがあります。
宛名に全員の名前を書き、だれに何をお願いするかを、用件の一文目で分けています。名前を並べる順番は、役職が上の人から書く形が多いです。順番が分からないときは、先輩に聞きます。人数が多いときは「関係者の皆様」「各位」とまとめることがあります。CCの人を宛名に書くかどうかは、会社の慣例に合わせます。
5. 相手のメールに返信する
[会社名] [担当者名]様
ご連絡ありがとうございます。[自社名]の[氏名]です。
ご質問いただいた納期について、回答します。
返信では、相手が連絡をくれたことへのお礼が、そのまま挨拶になります。「いつもお世話になっております」を前に足す人もいます。どちらの形でも、次の行で、相手の質問に答え始めます。
言い方の例:惜しい書き出しと、良い書き出し
次の4つは、説明用の例です。
- 惜しい例1:宛名がなく、「お世話になっております。先日の件ですが」から始まる
- 惜しい例2:「いつも大変お世話になっております。平素は格別のお引き立てをいただき、ありがとうございます。寒い日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか」と、挨拶が3文続く
- 惜しい例3:「[会社名] [担当者名]様 先日はありがとうございました。さて、」と、名乗りがない
- 良い例:「[会社名] [部署名] [担当者名]様/いつもお世話になっております。[自社名]の[氏名]です。/◯月◯日のお打ち合わせの時間について、ご相談があり、ご連絡しました」
惜しい例1は、誰にあてたメールかが本文から分かりません。相手が複数いる場合、だれが返事をするのかが決まらず、全員が待つことがあります。「先日の件」も、どの件かが相手に伝わりません。
惜しい例2は、言葉はていねいですが、用件が4文目まで出てきません。挨拶は一文にしぼります。残したいときは、相手との関係にいちばん合う一文を選びます。
惜しい例3は、相手が差出人の欄を見直すことになります。同じ会社に同じ名字の人がいる場合や、メールが転送された場合は、誰からかが分からなくなります。
良い例は、3つの部品が3行に収まり、用件の一文目に日付と件名があります。
挨拶に、一言だけ足したいとき
- 惜しい例:「先日はありがとうございました」
- 良い例:「◯月◯日は、お時間をいただきありがとうございました」
説明用の例です。惜しい例は、いつの何に対するお礼かが分かりません。良い例は、日付と、何へのお礼かが入っています。会った後のお礼を主な用件として書くときは、営業のお礼メールを見てください。
迷いやすい判断
判断1:「いつもお世話になっております」は、どんな相手に使う?
基準は、相手と、すでにやり取りがあるかどうかです。取引がある相手、何度かメールや電話をしている相手には、広く使われています。自分は初めてでも、会社として取引がある相手に使う職場もあります。
相手とも、相手の会社とも、やり取りがないときは、「はじめてご連絡いたします」などの書き出しのほうが、相手は迷いません。会社として取引があるかどうかが分からなければ、先輩に「[会社名]様とは、これまで取引がありますか」と聞いてから書きます。
判断2:「お疲れ様です」を、社外の人に使ってよい?
「お疲れ様です」は、社内のあいさつとして使われることが多い言葉です。社外の相手には「お世話になっております」を使う会社が多いです。一方で、長く一緒に仕事をしている協力会社との間で「お疲れ様です」を使う職場もあります。
自分で決める基準は、相手が先にどう書いてきたかと、先輩がその相手にどう書いているかです。どちらも分からないときは、社外には「お世話になっております」を選ぶと、相手が引っかかることは少なくなります。
判断3:会社名・部署・役職・敬称は、どう並べる?
一般には、会社名→部署名→役職→名前→敬称の順に書く形が多いです。敬称は、あて先によって次のように使い分けられることが多いです。
| あて先 | 敬称の例 | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 個人 | 様 | [会社名] [部署名] [担当者名]様 |
| 会社や部署(個人名が分からない) | 御中 | [会社名] [部署名] 御中 |
| 担当者の名前が分からない | ご担当者様 | [会社名] [部署名] ご担当者様 |
| 複数の人 | 各位、皆様 | 関係者各位/[部署名]の皆様 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
よく言われる点を3つ挙げます。「御中」と「様」は重ねず、個人名があるときは「様」だけにする、とされることが多いです。役職を書くときは「部長 [担当者名]様」のように名前の前に置き、「[担当者名]部長様」のように役職と様を重ねる形は避ける、とされることが多いです。「株式会社」は「(株)」と略さずに書く、とされることも多いです。
ただし、会社や業界によって慣例が違います。「お客様各位」のように、広く使われている形もあります。迷ったら、先輩が同じ相手に送ったメールを見せてもらい、その形に合わせます。役職が分からないときは、推測で書かず、名前に「様」を付けます。
判断4:相手の名前の漢字に、自信がないときは?
基準は、元の資料を見て写すことです。名刺、相手から届いたメールの署名、相手の会社のホームページを見ます。「斉藤」と「斎藤」、「高」と「髙」のように、似た字がある名前は、手で打たずに、相手のメールの署名から写すと間違いが減ります。
電話で聞いただけの名前は、漢字が分かりません。先輩か、電話を取り次いだ人に「漢字を教えてください」と聞きます。分からないまま送る場合に、名字をひらがなやカタカナで書くかどうかは、上司に聞いて決めます。
判断5:時候の挨拶は、入れたほうがよい?
時候の挨拶は、「◯◯の候」のように、季節に触れる書き出しです。日々の用件のメールでは、入れずに書く人が多いです。メールは用件を早く伝える道具として使われているからです。
入れるかどうかの基準は、そのメールが、手紙や挨拶状の代わりかどうかです。年末年始の挨拶や、あらたまった案内では、季節の言葉を入れる会社があります。年末の挨拶は年末の挨拶メール、新年の挨拶は新年の挨拶メールにまとめています。
書き出しを間違えたとき
書き出しの間違いは、相手がいちばん先に目にする所で起きます。気づいたら、そのままにせず直します。その場の動きと、後の記録をセットで行います。
失敗1:名前の漢字や会社名を間違えた
その場では:上司に伝えたうえで、おわびを送ります。どこを間違えたかを短く書き、言い訳は足しません。おわびのメールの例は、はじめましてのビジネスメールの「間違えたときの動きと記録」に載せています。
後の記録:「名前を手で打った。次からは、相手のメールの署名から写す」のように、原因と次の動きを一行で書きます。
失敗2:敬称を付け忘れた
その場では:宛名が「[担当者名]」で止まったまま送った、という失敗です。気づいた時点で、「先ほどのメールで、お名前に敬称がもれておりました。大変失礼いたしました」と、短くおわびを送ります(説明用の例です)。おわびを別のメールで送るか、次の連絡に一文を足すかは、上司に聞いて決めます。
後の記録:「宛名を後回しにして、本文から書いた。次からは、宛名の行を敬称まで書いてから本文に進む」と書きます。
失敗3:前のメールを写して、別の人の宛名のまま送った
その場では:気づいたらすぐに、上司に報告します。宛名に別の会社の名前や担当者の名前が残っていた場合は、ほかの取引先の情報が相手に伝わったことになります。相手への連絡のしかたを自分だけで決めず、会社の決まりに沿って、上司の指示で動きます。報告の順番は、営業で失敗したときにまとめています。
後の記録:「前のメールを写して使った。次からは、写した直後に、宛名と本文の中の会社名・名前を書き換え、送る前に声に出して読む」と書きます。
今日やることは一つです。これから送るメールを一通決め、相手との関係を見て、宛名・挨拶・名乗りの3行を書いてください。
書き出しの「お世話になっております」を、初めての相手や社内に使ってよいかは、「お世話になっております」の使い方にまとめています。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
相手の名刺や、相手から届いたメールの署名など、会社名と名前が分かる元の資料。これまでのやり取りの記録。職場の先輩が送ったメール(書き出しの形を見るため)。
記入例を見る(説明用)
相手と、自分との関係=取引先の[会社名]の[担当者名]様。先月から見積もりの件でやり取りが続いている。今回は、相手から届いた質問への返信/宛名と、確かめた元の資料=「[会社名] [部署名] [担当者名]様」。相手のメールの署名を見て、会社名と名前の漢字を写した。役職は署名に書かれていないので書かない/挨拶の一文=「ご連絡ありがとうございます。」返信なので、相手が連絡をくれたことへのお礼にする。「いつもお世話になっております」を前に足すかは、先輩のメールの形に合わせる(未確認。今日聞く)/名乗りの一文=「[自社名]の[氏名]です。」2回目以降なので「です」にする/用件の一文目と、送る前に見直すこと=「ご質問の納期について、回答します。」送る前に、宛名の漢字と敬称、前のメールの宛名が残っていないかを見る。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
宛名が元の資料どおりに書けていて、挨拶が相手との関係に合った一文になっていて、名乗りの次の行から用件が始まっている。
うまく進まなかったときは?
相手との関係が決められなければ、これまでのやり取りの記録を見るか、前の担当者や先輩に「この方とは、これまでどんなやり取りがありましたか」と聞く。敬称で迷ったら、先輩が同じ相手に送ったメールを見せてもらう。挨拶が2文以上になったら、一文だけ残して用件に入る。