NUSSI’S SALES NOTEウッシの営業ノート

NOTE 100 · 営業の実践ノート

「ご足労」の意味と使い方:「ご足労いただき」と「ご足労をおかけしますが」の使い分けと文例

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「ご足労」は、相手がわざわざ出向くことを、相手を敬って言う言葉です。相手に来てもらうときに使い、自分が行くときには使いません。来てもらう前は「ご足労をおかけしますが」、来てもらった後は「ご足労いただき、ありがとうございます」と、時点で形を分けます。この記事では、辞書の語釈を引いたうえで、来社のお願いのメール、当日の出迎えの一言、帰ったあとのお礼までを、説明用の例として並べます。

今日できるようになること

相手に来てもらう予定を一つ選び、来てもらう前の一文と、来てもらった後のお礼の一文を書いて、声に出して読む。

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こんなときに 取引先に自社へ来てもらうことになり、お願いのメールや、当日の最初の一言で迷うとき。

この順番で進めよう
  1. 1

    来てもらうのが誰で、どこへ・いつ来てもらうのかを書く

  2. 2

    来てもらう前の一文(お願いとおわび)を書く

  3. 3

    当日の出迎えと、見送りの一言を決める

  4. 4

    帰ったあとのお礼の一文と、次にすることを書く

会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。

「ご足労」の意味:辞書の語釈で確かめる

取引先に、自社まで来てもらうことになった。お願いのメールに「ご足労をおかけしますが」と書こうとして、「この言い方で合っているのか」「来てもらった後は、何と言えばよいのか」で手が止まる。営業を始めたばかりの時期に、起きやすい迷いです。

先に、言葉の意味を辞書で確かめます。コトバンクに載っている二つの辞書(デジタル大辞泉、精選版 日本国語大辞典)を引きました。「 」の中は、辞書の文をそのまま写したものです。

言葉辞書の語釈語釈から言えること
足労「足を疲れさせること。足を運ばせること。」(デジタル大辞泉「足労」)元の意味は、足を疲れさせること。相手に足を運ばせる、という向きの言葉
足労「足をつかれさせること。くたびれること。多く「御足労」の形で、人に来てもらう意に用いる。」(精選版 日本国語大辞典「足労」)多くは「御足労」の形で、人に来てもらう場面に使う
御足労「相手を敬って、その人がわざわざ出向くことをいう語。」(デジタル大辞泉「御足労」)敬う相手は、出向く人。「わざわざ」の意味が、言葉の中に入っている
御足労「相手を敬って、その人にわざわざ来てもらったり、行ってもらったりすることをいう語。」(精選版 日本国語大辞典「御足労」)来てもらうときだけでなく、どこかへ行ってもらうときにも使う

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

デジタル大辞泉は、使い方の例として「ご足労をかける」を挙げています。

語釈から分かることは、三つです。出向くのは相手であること。相手を敬って言う言葉であること。「わざわざ」という気持ちが、言葉の意味に入っていること。相手は、移動の時間と手間をかけて来てくれます。その手間に目を向けて、お礼やおわびを言うための言葉です。

使うのは、相手に来てもらうとき

辞書の語釈は、どちらも「相手を敬って、その人が」「その人に」と書いています。出向く人が相手のときの言葉です。自分が相手の所へ行くことには、使いません。自分の移動を「ご足労」と言うと、自分を敬う形になってしまいます。

自分が行くときは、「伺います」「参ります」を使います。敬語の種類ごとの使い分けは、尊敬語と謙譲語の使い分けにまとめています。

場面ごとに、使うかどうかを表にしました。言い方は、どれも説明用の例です。

場面使う?言い方の例
取引先に、自社へ来てもらう使う「ご足労をおかけしますが、当社までお越しいただけますでしょうか」
取引先に、展示会場や現場へ行ってもらう使う(辞書の「行ってもらったり」に当たる)「会場までご足労をおかけしますが、よろしくお願いいたします」
来てくれた相手を、出迎える使う「本日はご足労いただき、ありがとうございます」
自分が、取引先を訪問する使わない「◯月◯日の14時に、御社へ伺います」
オンラインの会議に、参加してもらう合いにくい(相手は出向いていない)「本日はお時間をいただき、ありがとうございます」
取引先に、自社の上司が同行すると伝える使わない(敬う相手が、自社の人になる)「当日は、上司の[氏名]も一緒に伺います」

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

迷ったときは、「足を運ぶのは誰か」を自分に聞きます。相手なら使える。自分や自社の人なら使わない。これで、ほとんどの場面は決められます。

もう一つ、使う前に考えることがあります。来てもらうお願いそのものが、相手に手間をかけるお願いだということです。こちらから伺える用件なら、まず「伺います」と申し出ます。実物を見てもらいたい、設備が自社にしかない、相手が希望した、といった理由があるときに、来てもらうお願いをします。

来てもらう前と後で、形を分ける

「ご足労」を使う文は、大きく二つの形に分かれます。分かれ目は、相手がもう来てくれたかどうかです。

時点形言い方の例伝わること
来てもらう前(お願い・前日の確認)ご足労をおかけしますが「ご足労をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします」これから手間をかけることへの、おわびとお願い
来てもらった後(出迎え・見送り・お礼のメール)ご足労いただき「ご足労いただき、ありがとうございます」手間をかけて来てくれたことへの、お礼
来てもらった後(こちらの都合で来てもらった)ご足労をおかけし「ご足労をおかけし、申し訳ございません」手間をかけたことへの、おわび

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

前の形は、文の終わりが「お願いいたします」になります。まだ起きていないことだからです。後の形は、「ありがとうございます」で終わります。来てくれたことは、もう起きたことだからです。

「いただく」には、恩恵を受けるという意味が入っています。文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日・文化庁)は、「いただく」について「「いただく」は,上に述べたとおり,謙譲語Ⅰであるが,謙譲語Ⅰの基本的な働きに加えて,恩恵を受けるという意味も併せて表す。」(指針17ページ)と説明しています。「ご足労いただき」は、来てくれたことを、ありがたいこととして受け取る形です。お礼の文に合います。

手順にすると、次の四つです。

  1. お願いの文に、理由を一つ書く。「実物をご覧いただきたく」のように、なぜ来てもらうのかを書きます。理由が無いと、相手は、なぜ自分が出向くのかが分かりません。
  2. 前日までに、道順と受付の方法を伝える。住所、最寄り駅、入口、受付で伝えてもらう名前を書きます。言葉でおわびをしても、当日に迷わせてしまうと、手間を増やすことになります。
  3. 当日は、最初の一言でお礼を言う。席に着く前、顔を合わせたところで言います。用件に入ってからでは、言う機会がなくなります。
  4. 帰ったあと、その日のうちにお礼を送る。お礼の一文に、話した内容と、次に自分がすることを足します。

文例:来社のお願い・出迎え・帰ったあとのお礼

次の文例は、すべて説明用の例です。[ ]と◯は、自分の件に置き換えます。

1. 来社のお願いのメール

  • 惜しい例:「◯月◯日の14時に、弊社までご足労ください。」
  • 良い例:下のメール

件名:◯月◯日(◯)お打ち合わせのお願い([自社名] [氏名])

[会社名] [部署名] [担当者名]様

いつもお世話になっております。[自社名]の[氏名]です。

先日お話しした[商品名]の件で、実物を動かしながらご説明したく、ご連絡いたしました。

本来はこちらから伺うべきところ、ご足労をおかけしますが、当社までお越しいただくことは可能でしょうか。難しい場合は、資料をお持ちして伺います。

候補日:◯月◯日(◯)14時〜/◯月◯日(◯)10時〜/◯月◯日(◯)15時〜(1時間ほど)

場所:[自社名] 3階会議室([住所]。[最寄り駅]から歩いて◯分ほど)

当日は、1階の受付で「[氏名]あて」とお伝えください。

ご都合をお聞かせいただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

[署名]

惜しい例は、来ることが決まったような言い方で、理由もありません。良い例には、来てもらう理由、断れる道(「難しい場合は、伺います」)、候補日、場所と受付の方法が入っています。「ご足労をおかけしますが」は、お願いの文の前に置いて、手間をかけることを先にわびています。

候補日の出し方と、日時が決まった後の確認の書き方は、日程調整のメールを見てください。

2. 前日の確認

明日◯月◯日(◯)14時より、お待ちしております。ご足労をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします。当日のご連絡は、[電話番号]までお願いいたします。

前日の確認は、短くて足ります。当日つながる電話番号を書いておくと、相手は、道に迷ったときや遅れそうなときに連絡できます。

3. 当日の出迎えと、見送り

出迎え:「[担当者名]様、本日はご足労いただき、ありがとうございます。会議室へご案内いたします」

見送り:「本日はお越しいただき、ありがとうございました。お気をつけてお帰りください」

出迎えでは、名前を呼んでからお礼を言い、すぐに案内に移ります。入口で長く話すと、相手を立たせたままにしてしまいます。どの席へ案内するかは、上座・下座にまとめています。

出迎えと見送りで、同じ言葉をくり返さなくても構いません。出迎えで「ご足労いただき」と言ったら、見送りは「お越しいただき」にすると、言葉が重なりません。

4. 帰ったあとのお礼のメール

  • 惜しい例:「本日はご足労いただき、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。」
  • 良い例:「本日はご足労いただき、ありがとうございました。実物をご覧いただいたうえで伺った、設置場所の寸法の件は、◯月◯日(◯)までに図面を添えてお返事いたします。」

惜しい例は、お礼だけで終わっています。相手は、時間をかけて来た結果、何が進むのかが分かりません。良い例は、来てもらったからこそ分かったことと、次に自分がすることが入っています。お礼メール全体の組み立ては、商談後のお礼メールにあります。

言い換えと、迷いやすい判断

「ご足労」のほかにも、来てもらったことを言う言葉があります。辞書の語釈と並べます。

言い方元の言葉の語釈(辞書の文のまま)合う場面
ご足労いただき「相手を敬って、その人がわざわざ出向くことをいう語。」(デジタル大辞泉「御足労」)手間をかけて来てくれたことに、お礼やおわびを言うとき
お越しいただき「(「おこし」の形で)「行く」「来る」の意の尊敬語。」(デジタル大辞泉「越す」の6番目㋑)来ることを、敬って言うとき。場所を選ばず使える
お運びいただき「(「おはこびになる」「おはこびくださる」などの形で)「来る」「行く」の尊敬語。」(デジタル大辞泉「運ぶ」の3番目)式典や催しなど、あらたまった場のあいさつ
ご来社いただき「よその人が会社を訪ねてくること。」(デジタル大辞泉「来社」)自分の会社に来てもらったとき。会社でない場所には合わない

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

違いは、「ご足労」だけが、相手の手間に目を向けた言葉だという点です。「お越し」「お運び」は、来ることそのものを敬って言う言葉です。「来社」は、会社を訪ねてくることを指す言葉で、「ご」を付けて相手の行いとして言います。どれを使っても、来てくれたことへのお礼は伝わります。

判断1:「わざわざご足労いただき」と、重ねたほうが丁寧?

辞書の語釈には、すでに「わざわざ」が入っています。「ご足労いただき」だけで、わざわざ来てくれた、という意味は足りています。重ねてはいけないという公的な決まりは見当たりませんが、短いほうが、声に出したときに言いやすくなります。

気持ちを足したいときは、言葉を重ねる代わりに、具体的なことを一つ言います。「遠いところを」「お忙しい時期に」のように、相手の事情に合った一言です(説明用の例です)。

判断2:社内の上司や、ほかの部署の人に使ってよい?

辞書の語釈は「相手を敬って」です。取引先に限る、とは書かれていません。ほかの拠点の上司に来てもらったときに「ご足労いただき、ありがとうございます」と言うのは、語釈に合った使い方です。

ただし、取引先と話しているときは別です。取引先に向かって「部長にご足労いただきます」と言うと、自社の人を敬う形になります。取引先には「部長の[氏名]も伺います」と言います(説明用の例です)。職場で決まった言い方があれば、そちらに合わせます。

判断3:相手のほうから「伺います」と言ってくれたときも、使う?

使えます。相手が自分から申し出てくれた場合でも、足を運ぶのは相手です。「ご足労をおかけしますが、お待ちしております」と受けます(説明用の例です)。

自分で決める基準は、どちらの都合で場所が決まったかです。こちらの都合なら、「申し訳ございません」とおわびを添えます。相手の希望なら、おわびを重ねず、「ありがとうございます」とお礼で受けます。相手が希望したのに何度もわびると、相手は申し出たことを気にしてしまいます。

判断4:「ご足労」が硬く感じるときは?

「お越しいただき」に言い換えます。何度も行き来している相手や、短いチャットのやり取りでは、「お越しいただき、ありがとうございます」のほうがなじむことがあります。どちらが正しい、という公的な決まりは見当たりません。先輩が取引先あてに書いたメールを一通見て、同じ言葉にそろえると迷いません。

先輩に聞くときは、「A社の佐藤様に来社をお願いするメールで、『ご足労をおかけしますが』と書こうと思います。うちの課では、どう書いていますか」と、自分の案を添えて聞きます(説明用の例です)。

言い間違えたとき・段取りで失敗したとき

失敗1:自分が行くのに、「ご足労」と言ってしまった

その場では:「明日、ご足労いたします」のように言ってしまったら、「失礼しました。明日、伺います」と言い直します。言い直しは一度で足ります。長くわびると、用件が進みません。

後の記録:「足を運ぶのが相手のときだけ使う。自分が行くときは『伺います』」と、一行で書きます。メールで書いてしまった場合は、次のメールから直せば足ります。用件に関わる誤りではないので、訂正だけのメールを送るかどうかは、先輩に聞いて決めます。

失敗2:来てもらったのに、道順や受付を伝えていなかった

その場では:相手が入口で迷った、受付で待たされた、と分かったら、最初にわびます。「ご案内が足りず、お手間をおかけしました。申し訳ございません」と言い、すぐに案内します(説明用の例です)。

後の記録:何を伝えていなかったかを書きます。「入口が2か所あることを書いていなかった。次からは、入口の場所と受付での名乗り方をメールに書く」のような形です(説明用の例です)。帰ったあとのお礼のメールにも、「本日は入口のご案内が足りず、失礼いたしました」と一文を入れます。

失敗3:来てもらったのに、用件が進まなかった

その場では:見せるはずの実物が用意できていなかった、決められる人が同席していなかった、という場合です。できなかったことを先に伝え、今日できることと、残りをいつどうするかを言います。「本日は実物をお見せできず、申し訳ございません。残りは、◯月◯日にこちらからお持ちして伺います」のように、次はこちらが足を運ぶ形を申し出ます(説明用の例です)。

後の記録:上司に報告し、何が用意できていなかったかを書きます。おわびのメールを送るときは、送る前に上司に見てもらいます。書き方は、お詫びメールの書き方にあります。

今日やることは一つです。相手に来てもらう予定を一つ選び、来てもらう前の一文と、来てもらった後のお礼の一文を書いて、声に出して読んでください。

YOUR TURN

自分の一件で、書いてみよう。

手元に用意するもの
来てもらう相手の名前と人数、日時と場所が分かるメモ。自社までの道順や受付の方法が分かるもの。

記入例を見る(説明用)

来てもらう相手と、日時・場所=[会社名]の[担当者名]様と、上司の方の2名。◯月◯日(◯)14時。当社の3階会議室/来てもらう前の一文=「本来はこちらから伺うべきところ、ご足労をおかけしますが、当社にて実物をご覧いただけますでしょうか」/当日の出迎えの一言と、見送りの一言=出迎え「本日はご足労いただき、ありがとうございます」。見送り「本日はお越しいただき、ありがとうございました。お気をつけてお帰りください」/帰ったあとのお礼の一文と、次にすること=「本日はご足労いただき、ありがとうございました。お話に出た納期の件は、◯月◯日までにお返事いたします」。その日のうちにメールで送る/相手に伝えておく道順・受付の方法=最寄り駅からの道順と、受付で伝えてもらう名前はメールに書く。来客用の駐車場が使えるかは未確認。今日、総務に聞く。

入力は自動保存されません。ページを移動する前に保存してください。保存した内容は他の人に自動送信されません。

CHECK

ここまでできたら、次へ。

来てもらう前の一文と、来てもらった後のお礼の一文が書けていて、出迎えの一言を声に出して言ってある。道順と受付の方法を、相手に伝える準備ができている。

うまく進まなかったときは?

前と後のどちらの形か迷ったら、相手がもう着いたかどうかで決める。まだなら「ご足労をおかけしますが」、着いた後なら「ご足労いただき、ありがとうございます」。言いにくければ、「お越しいただき」に言い換えてもう一度声に出す。

NEXT NOTE

次に読むなら

上座・下座:来てもらった人を、どの席へ案内するか商談後のお礼メール尊敬語と謙譲語の使い分け