NOTE 133 · 営業の実践ノート
アイスブレイクとは:商談の最初の数分で、何を話すか
公開:2026年10月3日
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アイスブレイクとは、本題に入る前に、緊張をほぐすきっかけを作ることです。営業の商談では、最初のあいさつの後の短い雑談がこれに当たります。面白い話をする必要はありません。話題は一つ、やり取りは一、二往復で区切り、用件に入ります。相手が急いでいるときは、省いてかまいません。この記事では、研修やゲームのアイスブレイクは扱わず、商談・訪問の最初の数分に絞って説明します。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 商談や訪問の最初に、何を話せばよいか分からず、黙ってしまうか、いきなり商品の説明を始めてしまうとき。
- 1
行く前に、話題を一つだけ用意する
- 2
相手の様子を見て、話すか省くかを決める
- 3
一言話し、相手の答えを一つ受ける
- 4
お礼と時間の確認を言って、用件に入る
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
アイスブレイクとは
商談の席について、名刺を交換した。その後、すぐに商品の話を始めてよいのか、何か雑談をしたほうがよいのか。初めての人が迷う所です。この、本題に入る前の短いやり取りが、アイスブレイクと呼ばれています。
コトバンクに載っているデジタル大辞泉は、「アイスブレーク」という見出しで、次のように説明しています。
《icebreakerから》緊張をほぐすためのきっかけ。本題に入る前の雑談や、研修会の前に皆で行う簡単なゲームなど。アイスブレーカー。(デジタル大辞泉「アイスブレーク」)
辞書の見出しは「アイスブレーク」ですが、「アイスブレイク」と書かれることも多い言葉です。語釈には、雑談と、研修会の前のゲームの二つが挙がっています。この記事で扱うのは雑談のほう、それも、営業の商談・訪問の最初の数分だけです。
語釈のとおり、目的は「緊張をほぐすためのきっかけ」です。相手を笑わせることでも、仲良くなることでもありません。きっかけができたら、用件に入ります。商談全体の流れは、商談とはにまとめています。
なぜやるのか、どこで区切るのか
初めて会う相手は、「この人は誰で、何を話しに来て、どれくらい時間がかかるのか」が分からないまま、席についています。こちらも緊張しています。その状態でいきなり説明を始めると、相手は聞く用意ができないまま、話を受けることになります。
最初に一言ずつ声を出し合うのは、そのためです。もう一つ、実務の上での理由があります。短いやり取りの間に、相手の様子を見られることです。時計を気にしているか、ゆっくり話したい人か。それが分かると、その後の進め方を決められます。
ただし、アイスブレイクは、やらなければ失礼になるものではありません。省いても商談はできます。逆に、長く続けると困ることが二つあります。相手からもらった時間が減ること。そして、相手が「それで、今日は何の用だろう」と待つ時間が長くなることです。
長さに、決まりはありません。この記事では、話題は一つ、やり取りは一往復か二往復、を目安にします。手順は次の4つです。
- 行く前に、話題を一つだけ用意する。いくつも用意すると、全部使おうとして長くなります。当日、目の前にもっと良い話題があれば、そちらに替えます。
- 相手の様子を見て、話すか省くかを決める。席につくまでの間に、相手が急いでいるかどうかを見ます。急いでいれば、省きます。
- 一言話し、相手の答えを一つ受ける。相手の答えに「そうでしたか」と返します。自分の話を足して広げることはしません。
- お礼と時間の確認を言って、用件に入る。「本日はお時間をいただき、ありがとうございます。30分と伺っております」と言うと、雑談が終わったことが相手にも分かります(説明用の例です)。
4つ目の一言が、区切りの合図です。この一言を先に決めておけば、雑談が続かなくても、長くなっても、そこへ戻れます。
話題の選び方と、避ける人が多い話題
話題は、次の3つの入口から選ぶと、作り話をせずに済みます。どれも、目で見て確かめられる事実から始まる話です。
| 入口 | 言い方の例 | 使いやすい理由 |
|---|---|---|
| 相手の会社の、公開されている情報 | 「ホームページで、新しい営業所を開かれたと拝見しました」 | 事前に調べてきたことが伝わる。相手が、自分の会社のこととして答えやすい |
| その日の用件に近い話 | 「お電話で、置き場所のお話を伺いました。今日はその続きを伺えればと思っております」 | 雑談から用件へ、そのままつながる |
| 来る途中や、着いてから見たもの | 「受付に、商品の見本が並んでいますね」「駐車場が広くて、入りやすかったです」 | 目の前の事実なので、相手もすぐに分かる |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
例はどれも説明用です。1つ目の入口で使うのは、相手の会社が自分で外に出している情報に限ります。ホームページのお知らせ、会社案内、受付の掲示などです。人から聞いたうわさや、担当者個人のSNSで見たことは、口にしません。相手が「どこで知ったのか」と身構えることがあります。
見たものに触れるときは、感想を大きくしません。「素晴らしい会社ですね」より、「受付に見本が並んでいますね」のほうが、相手は答えやすくなります。事実を言えば、相手が続きを話してくれます。
天気の話は、誰にでも通じます。ただ、「そうですね」で終わることが多い話題です。終わってかまいません。一往復できたら、用件に入ります。
反対に、こちらからは出さない人が多い話題があります。公的な決まりがあるわけではありません。相手や会社の習慣によっても違います。ただ、次のような話題は、仕事の場では避ける人が多いものです。
- 個人の事情に踏み込む話。家族、結婚、年齢、健康、住まい、出身、休日の過ごし方を、こちらから尋ねること。
- 政治や宗教など、考えが分かれる話。
- 相手の見た目についての感想。
- ほかの会社や人のうわさ、相手の会社の良くない知らせ。
避ける理由は、答えたくない人がいるからです。営業に来た相手から聞かれると、答えたくなくても断りにくい、という事情もあります。相手が自分から話したときは、聞いて「そうでしたか」と受けます。こちらから質問を重ねて掘り下げることはしません。
場面で変わるところ
アイスブレイクは、場面によって、やるかどうかも、やり方も変わります。次の表は、進め方の一例です。
| 場面 | 進め方(一例) |
|---|---|
| 相手が急いでいる | 省く。お礼と、かかる時間だけを言って用件に入る |
| 初めての訪問 | 話題は一つ。相手の会社の公開されている情報か、着いてから見たもの |
| 2回目以降の訪問 | 前回の話の続きから入る。前回の約束をどうしたかを先に伝える |
| 相手が複数いる | 全員に通じる話題にする。一人とだけ話し込まない |
| オンラインの商談 | 声と画面が届いているかの確認を、入口にする |
| 電話 | 雑談はしない。「今、お時間よろしいでしょうか」と聞くことが、その代わりになる |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
相手が急いでいるとき
相手が時計を見ている、立ったまま迎えられた、「今日は手短に」と言われた。こういうときは、アイスブレイクを省きます。用意した話題を使わないのは、もったいないことではありません。相手が今いちばん求めているのは、早く用件を聞くことだからです。
言い方は、「お時間をいただき、ありがとうございます。早速ですが、本日の用件をお伝えします」です(説明用の例です)。かかる時間を短く言えるなら、「15分で終えます」と足します。
オンラインの商談と、電話のとき
オンラインでは、最初に「声は届いておりますか」「画面は見えておりますか」と確かめます。この確認が、お互いに声を出すきっかけになります。相手の後ろに映っている部屋や物には、触れないでおきます。自宅から参加している人にとっては、個人の事情に当たるからです。
電話では、相手は何かの手を止めて出ています。雑談から始めると、用件が分からないまま待たせることになります。名乗った後は、「今、2、3分よろしいでしょうか」と都合を聞き、用件を言います。電話の順番は、営業電話のかけ方にまとめています。
言い方の例:惜しい例と良い例
ここに挙げる会話は、どれも説明用の例です。自分の商品と相手に合わせて、言い換えてください。
例1:初めての訪問で、話題を出す
惜しい言い方:「今日は暑いですね。……えー、では、弊社の商品をご説明します」
良い言い方:「受付に、商品の見本が並んでいました。新しく出されたものですか」(相手:「ええ、先月からです」)「そうでしたか。あらためまして、本日はお時間をいただき、ありがとうございます。30分と伺っております」
惜しい言い方は、天気の話が悪いのではありません。区切りの一言がないまま、説明に入っている所が惜しい点です。良い言い方は、見たものを一つ尋ね、答えを受け、お礼と時間の確認で区切っています。
例2:個人の事情に踏み込まない
惜しい言い方:「お住まいは、この近くですか。ご家族は、何人いらっしゃるんですか」
良い言い方:「駅から歩いてまいりました。途中の案内板が分かりやすくて、助かりました」
惜しい言い方は、親しくなろうとして、相手の暮らしを尋ねています。良い言い方は、自分が見たことを話しているので、相手は何も明かさずに「それはよかったです」と返せます。
例3:自分の話を長くしない
惜しい言い方:「実は私も、学生のころに野球をやっておりまして。ポジションは……」と、自分の話を続ける
良い言い方:「野球をされていたのですね。そのお話、後ほどまた伺わせてください。本日は、まず見積もりの件をお伝えします」
共通の話題が見つかると、つい自分のことを話したくなります。けれども、もらった時間は用件のための時間です。良い言い方は、相手の話を一つ受けてから、用件に戻っています。
例4:急いでいる相手に
惜しい言い方:「お忙しいところ、すみません。いやあ、今日は道が混んでおりまして……」
良い言い方:「お時間をいただき、ありがとうございます。15分で終えます。本日の用件は、見積もりの内容のご確認です」
急いでいる人には、短く終わることと、用件が何かを先に伝えます。それが、この場面での緊張のほぐし方です。
迷いやすい判断と、話が続かなかったあと
判断1:話題が何も思いつかないときは?
基準は、無理に作らないことです。お礼、時間の確認、今日の話の順番。この3つを言えば、それだけで始まりの言葉になります。「本日はお時間をいただき、ありがとうございます。30分と伺っております。最初に今の買い方を伺い、その後でご案内をいたします」という形です(説明用の例です)。
始めの一言の組み立ては、商談とはの「言い方の例」でも説明しています。
判断2:相手の雑談が、長く続くときは?
相手が話したいことは、さえぎらずに聞きます。その中に、仕事の事情が出てくることもあります。基準は、用件に要る時間が残っているかどうかです。残りの時間が、用件に足りなくなりそうなら、声をかけます。
言い方は、「お話の途中で恐れ入ります。◯時までと伺っておりますので、本日の用件を先にお伝えしてもよろしいでしょうか」です(説明用の例です)。事前に先輩へ聞くなら、「A社の佐藤様は、最初のお話が長い方ですか。どのあたりで用件に入ればよいですか」と尋ねます。
判断3:2回目以降の訪問では、何を話す?
前回の商談メモから選びます。いちばん使いやすいのは、前回の約束の報告です。「前回お話のあった置き場所の件、寸法を確かめてまいりました」と言えば、それが入口になり、そのまま用件につながります(説明用の例です)。メモの残し方は、商談メモ添削にまとめています。
前回、相手が自分から話した個人的なこと(家族の予定など)を、こちらから持ち出すかどうかは迷う所です。基準は、仕事の話を先にすることです。相手がもう一度その話をしたら、受けます。
判断4:先輩に同行するとき、自分も何か話す?
出発前に、先輩に聞きます。「最初のあいさつの後、私から何か話したほうがよいですか」と尋ねます。決めていなければ、雑談は先輩に任せます。自分は、名乗りとお礼を、相手に聞こえる声で言います。それだけで、同席している理由は伝わります。
失敗1:話が続かず、沈黙になった
その場では:沈黙を埋めるために、別の話題を足すことはしません。「では、本日の用件に入らせていただきます」と言って、進めます。相手は、雑談の続きを待っていたとは限りません。用件に入れば、話すことは決まっています。
帰ってからの記録:何を言い、相手がどう答えたかを、言葉のまま書きます。「天気の話→『そうですね』で終わった。次回は、前回の約束の報告から入る」のような形です(説明用の例です)。「雑談が下手だった」とは書きません。次に変えることが、分からなくなるからです。
失敗2:触れないほうがよい話題に、触れてしまった
その場では:相手の答えが短くなった、表情が変わった、と気づいたら、その話を続けません。「立ち入ったことを伺いました。失礼いたしました」と一言だけ言い、用件に入ります。長く謝ると、その話題に居続けることになります。
帰ってからの記録:どの話題で、相手がどう反応したかを書き、次回は出さないと決めます。担当が替わるときに引き継げるよう、商談メモにも残します。相手がはっきり不快を示したときは、その日のうちに上司へ伝えます。伝える順番は、営業で失敗したときにまとめています。
今日やることは一つです。次の商談について、最初に話す話題を一つと、用件に入るときの一言を書いてください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
次の商談の日時と相手が分かるメモ。相手の会社のホームページ(お知らせの欄)。前回の商談メモ(2回目以降の場合)。
記入例を見る(説明用)
次の商談の相手と、もらっている時間=A社の総務の佐藤様。初めての訪問。木曜の午後2時から30分/最初に話す話題(一つ)と、何を見て決めたか=A社のホームページのお知らせに、先月、新しい営業所を開いたと書いてあった。「ホームページで、新しい営業所を開かれたと拝見しました」と言う。当日、受付に目に入るものがあれば、そちらに替える/こちらからは出さない話題=ご家族や住まいなど個人の事情、政治や宗教、ほかの会社のうわさ。佐藤様が自分から話されたら、聞いて受けるだけにする/相手が急いでいるときの、最初の一言=「お時間をいただき、ありがとうございます。早速ですが、本日の用件をお伝えします」。話題は出さない/用件に入るときの一言=「あらためまして、本日はお時間をいただき、ありがとうございます。30分と伺っております。最初に、今の買い方を少し伺ってもよろしいでしょうか」。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
話題が一つ書いてあり、それを何で知ったかが書いてある。相手が急いでいるときに省く一言と、用件に入る一言が、声に出して言える形で書いてある。
うまく進まなかったときは?
話題が思いつかなければ、話題の欄に「なし」と書き、用件に入る一言だけを書く。それで足ります。相手の会社のことが分からなければ、ホームページのお知らせの欄を一つだけ読む。用件に入る一言が書けなければ、「本日は◯分と伺っております。最初に◯◯を伺ってもよろしいでしょうか」の◯を埋める。