NOTE 37 · 営業の実践ノート
商談とは:意味と流れ、初めての商談で準備すること
公開:2026年10月3日/更新:2026年10月4日
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商談とは、売り手と買い手が、取引の条件を話し合う場のことです。流れは「準備→あいさつ→聞く→提案→確認→次の約束→記録」の7つに分けて、この記事では説明します。初めての商談では、今日のゴールを一つ決め、聞くことを3つ書いてから行きます。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 初めての商談の前に、全体の流れと準備を確かめたいとき。
- 1
相手と場面を確かめ、今日のゴールを一つ決める
- 2
あいさつの後、聞くことから始める
- 3
決まったことと、次の約束を声に出して確かめる
- 4
建物を出たら、その日のうちに記録する
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
商談とは:売り手と買い手が、取引の条件を話し合う場
商談とは、売り手と買い手が、取引の条件を話し合う場のことです。何を、いくつ、いくらで、いつまでに、どんな条件で、という中身を、お互いに確かめながら決めていきます。一回で決まることもあれば、何回かに分けて進むこともあります。
似た言葉に「打ち合わせ」と「面談」があります。打ち合わせは、すでに決まった仕事の進め方を相談する場面、面談は、人と会って話すこと全般、という意味で使い分けられることが多い言葉です。ただ、線の引き方は会社によって違います。社内で「来週の打ち合わせ」と呼ばれている予定が、中身は商談であることもあります。
呼び名より大事なのは、その場で何を決めたいかです。初めての人は「うまく話さなければ」と考えがちです。けれども商談は、一方的に説明する場ではありません。相手と一緒に、条件を確かめていく場です。
この記事は、商談全体の地図です。全体の流れと、初めての人が準備することを説明します。各段階のくわしいやり方は、それぞれの記事へ案内します。
商談の流れ:準備から記録までの7つの段階
商談の進め方は、会社や商品で違います。ここでは、広く行われている順番を7つの段階に分けます。右の列は、その段階を飛ばすと起きやすいことです。
| 段階 | やること | 飛ばすと起きやすいこと |
|---|---|---|
| 1. 準備 | 相手を調べ、今日のゴールを一つ決め、持ち物をそろえる | 終わった後に、話が進んだのかどうかが分からない |
| 2. あいさつ | 名乗り、時間をもらったお礼を言い、用件と終わりの時刻を確かめる | 相手が「何の話で、いつ終わるのか」を気にしたまま聞くことになる |
| 3. 聞く | 今のやり方と、困っていることを聞く | 相手に関係のない説明を、長く続けてしまう |
| 4. 提案 | 聞いたことに合わせて、商品や条件を伝える | 相手が、自分の話を聞いてもらえたと感じにくい |
| 5. 確認 | 決まったことと、まだ決まっていないことを声に出す | お互いの受け取り方が違ったまま帰ることになる |
| 6. 次の約束 | 誰が・何を・いつまでにやるか、次にいつ会うかを決める | 「検討します」のまま、連絡するきっかけがなくなる |
| 7. 記録 | 聞いたことと約束を、その日のうちに書く | 約束の中身と期限を思い出せなくなる |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
それぞれの段階には、くわしい記事があります。
- 準備:相手の調べ方とゴールの決め方は、初めての訪問で準備する3つのこと。出発前の確認は営業訪問前チェックリストが使えます。
- あいさつ:名刺を出す動きは、名刺の渡し方・名刺交換のやり方。
- 聞く:質問の順番と、答えの受け取り方は、商談ヒアリング。
- 提案:紙にまとめるときは、提案書の作り方。
- 次の約束:「検討します」と言われた後の進め方は、「検討します」の後。
- 記録:メモの欄の分け方は商談メモ添削、終わった後の連絡は営業のお礼メール。
初回の商談で、7つすべてが進むとは限りません。初めて会う日は、聞くところまでで時間になり、提案は次回、という進み方もよくあります。提案まで行かなかったから失敗、ではありません。聞けたことと、次の約束が残っていれば、商談は次へつながっています。
初めての商談で準備する5つのこと
当日の受け答えは、準備で大きく変わります。前の日までに、次の5つを紙に書きます。下の実践シートと同じ並びです。
- 相手と場面を確かめる。誰が出てくるか、何人か、場所はどこか、時間は何分か。分からない点は、約束を取った人か先輩に聞きます。人数が分かると、資料と名刺の数が決まります。
- 今日のゴールを一つ決める。「次回、見積を出す約束をもらう」「今の買い方を聞く」のように、終わったときにできたかどうかが分かる形にします。ゴールがないと、何を話しても「良い商談だった」としか振り返れません。
- 聞くことを3つ書く。今のやり方、困っていること、決める人、の3つから始めると書きやすくなります。頭で覚えるより、ノートに書いて持っていくほうが、緊張しても聞きもらしが減ります。
- 持ち物をそろえる。名刺、会社案内、資料(人数分と予備)、ノートとペン、訪問先の地図や連絡先。資料は、相手の机の上で向きを変えて見せられるように、取り出しやすい順にかばんへ入れます。
- 終わりに言う一言を決める。「次回は◯◯をお持ちします。来週のご都合はいかがですか」のように、次の約束を聞く言葉を先に作っておきます。その場で考えると、言い出せないまま席を立つことになりがちです。
持ち物は、高い物である必要はありません。資料が折れずに入ること、相手の前で名刺がすぐ出せること、の2つができていれば足ります。かばんは、床に置いたときに倒れないと、資料を出す手が止まりません。
先輩に同行する場合は、もう一つあります。自分の役割を、前の日に聞いておくことです。「明日の商談で、私は何をすればよいですか。メモ係でよいですか」と聞きます。役割が分からないまま座ると、話してよいのかどうかを迷い続けて、メモも取れなくなります。
場面で変わるところ
7つの段階という骨組みは同じでも、場面によって力を入れる所が変わります。次の表は一例です。
| 場面 | 力を入れる所 | 進め方(一例) |
|---|---|---|
| 初回の商談 | 聞くことと、次の約束 | 説明は短くし、今のやり方を聞く。提案は次回に回してもよい |
| 2回目以降の商談 | 前回の約束の結果から話す | 「前回お約束した◯◯をお持ちしました」と始める。前回のメモを読んでから行く |
| 対面 | 資料の見せ方と、相手の様子 | 資料は相手が読める向きで置く。相手が資料を見ている間は、話を止めて待つ |
| オンライン | 区切りごとの確認と、終わった後の文字 | 接続と資料の画面を、始まる前に確かめる。話の区切りで「ここまでで、分かりにくい所はありませんか」と聞く |
| 相手が1人 | その人が決められる範囲を聞く | 「お決めになるのは、どなたですか」と確かめる |
| 相手が複数 | 誰が何を気にしているかを分けてメモする | 発言した人の名前を、メモの行の頭に書く。一人だけに向かって話し続けない |
| 先輩に同行 | 役割を守り、メモを取る | 話すのは先輩。聞かれたら短く答える。帰りに、先輩とメモを見比べる |
| 一人で行く | 答えられないことの持ち帰り方 | その場で決められないことは、返事の期限を約束して持ち帰る |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
オンラインでは、相手の表情や手元が見えにくくなります。対面なら、相手が首をかしげた所で説明を足せます。オンラインではそれが分かりにくいので、こちらから区切って聞きます。終わった後は、決まったことと次の予定を、メールで文字にして送ると、受け取り方の違いに早く気づけます。
相手が複数のときは、役職が上の人だけを見て話しがちです。けれども、実際に商品を使う人や、手配をする人が同席していることがあります。その人が気にしている点を聞きもらすと、後で「現場が困る」と話が止まることがあります。
相手がその場で決められない場合の進め方は、「社長に相談します」と言われたらにまとめています。
言い方の例:始めの一言と、終わりの確認
商談でいちばん言葉に詰まりやすいのは、始めと終わりです。ここに挙げる会話は、どれも説明用の例です。自分の商品と相手に合わせて言い換えてください。
始めの一言
惜しい言い方:「本日はよろしくお願いします。早速ですが、弊社の商品をご説明します」
良い言い方:「本日はお時間をいただき、ありがとうございます。30分と伺っております。最初に、今のコピー用紙の買い方を少し伺って、その後で弊社の案内をいたします。よろしいでしょうか」
惜しい言い方は、礼儀は足りていますが、相手は「何分かかるのか」「何を聞かれるのか」が分かりません。良い言い方は、時間・順番・相手の了解の3つを先に置いています。相手は、聞かれる心づもりができます。
終わりの確認
惜しい言い方:「本日はありがとうございました。ぜひご検討ください。またご連絡します」
良い言い方:「本日伺ったのは、月に一度まとめて買っておられること、置き場所が足りないこと、の2点でした。次回、小分けで納める場合の見積をお持ちします。来週の木曜か金曜で、ご都合はいかがでしょうか」
惜しい言い方は、誰が・いつ・何をするのかが残りません。「またご連絡します」は、こちらの都合だけを伝えています。良い言い方は、聞いたことの要約・自分がやること・次の日取りを言っています。聞き違いがあれば、相手がその場で直してくれます。
答えられない質問を受けたとき
惜しい言い方:「たぶん、大丈夫だと思います」
良い言い方:「正確にお答えしたいので、社内で確認します。明日の午後までに、お電話でお返事します」
「たぶん」で答えると、相手はそれを約束として受け取ることがあります。分からないことは、分からないと言い、返事の期限と方法を約束します。持ち帰ること自体は、失礼ではありません。期限がないまま持ち帰ることが、相手を待たせます。
迷いやすい判断と、失敗のあと
判断1:値引きや納期を、その場で聞かれたら?
基準は、自分に決めてよいと言われている範囲かどうかです。範囲の中なら答えます。範囲が分からない、または外なら、「できます」とも「できません」とも言わず、返事の期限を約束して持ち帰ります。
上司には、相手の言葉をそのまま伝えます。「A社から、月に2回の納品にできるかと聞かれました。お受けしてよいですか。明日の午後までに返事をすると伝えています」のように、内容と期限をそろえて聞きます(説明用の例です)。見積を出す前の確認は見積書を送る前に確認する7項目にまとめています。
判断2:相手の話が長くなり、時間が足りなくなったら?
相手の話をさえぎって、用意した説明を始める必要はありません。相手が話している内容は、聞くつもりだったことの答えであることが多いからです。基準は、終わりの時刻の5分前になったら、次の約束だけは確かめることです。
「お時間が近づいてまいりました。続きは次回、資料をお持ちしてご案内してもよろしいでしょうか」と言います。説明が残っても、次の約束があれば、続きができます。
判断3:商談中に、メモを取ってよい?
メモは取ってかまいません。始める前に「メモを取らせていただいてもよろしいですか」と一言断ると、相手も話しやすくなります。メモを取らずに聞いていると、相手からは、後で覚えているのかどうかが分かりません。
書くのは、相手の言葉のうち、数字・日付・名前と、困り事の言い回しです。全部を書こうとすると、顔を上げられなくなります。書き切れなかった所は、建物を出てすぐに足します。
判断4:商談の後、連絡はいつすればよい?
自分が「やります」と言ったことは、約束した期限までに届けます。それとは別に、会った日のうちか次の日に、お礼と、確かめた内容を短く送ると、約束の中身が文字で残ります。送る内容に迷ったら、商談後メモからお礼メールを作る道具が使えます。
失敗1:説明ばかりして、何も聞けなかった
その場では:話し過ぎたと気づいたら、そこで止めます。「ここまで一方的にお話ししてしまいました。今のやり方を、少し伺ってもよろしいですか」と言って、聞く側に回ります。残り時間が少なくても、一つ聞ければ、次回の話の入口になります。
帰ってからの記録:「説明した」で終わらせず、「聞けたこと:置き場所が足りない。聞けなかったこと:決める人、今の買い値。次回の最初に聞く」のように、聞けたことと聞けなかったことを分けて書きます(説明用の例です)。
失敗2:次の約束を決めずに、帰ってしまった
その場では:建物を出てから気づいても、間に合います。その日のうちに、お礼の連絡と一緒に、「次回、◯◯をお持ちしたいのですが、来週のご都合はいかがでしょうか」と聞きます。日がたつほど、相手の中で話が遠くなります。
帰ってからの記録:「次の約束:未定。本日メールで日程を伺った。返事がなければ、◯日に電話する」と、自分の次の動きと日付を書きます。次からは、終わりの一言をノートの最初の行に書いておきます。
失敗3:間違ったことを、答えてしまった
その場では:商談の途中で気づいたら、すぐ言い直します。「先ほどの納期は、私の思い違いでした。正しい日は、確認してお伝えします」。帰ってから気づいた場合は、次に会う日を待たず、その日のうちに連絡します。相手が、間違った内容を社内へ伝える前に直すためです。
帰ってからの記録:何を・どう間違えて・いつ・どう直したかを書き、上司にも伝えます。報告の順番は、営業で失敗したときにまとめています。
今日やることは一つです。次の商談について、今日のゴールを一つと、聞くことを3つ、ノートに書いてください。
打ち合わせの内容を残す書き方は、議事録の書き方にまとめています。
商談の最初の数分はアイスブレイクとはに、最後に決めることはクロージングとはにまとめています。
一回の訪問で話す順番は、営業トークのコツにまとめています。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
次の商談の予定(相手・日時・場所)、相手の会社のホームページ、ノートとペン。
記入例を見る(説明用)
相手と場面=A社の総務の佐藤様。初回。対面で、相手は1人の予定。先輩に同行する。時間は30分/今日のゴール=今お使いのコピー用紙の買い方を聞き、次回、見積をお持ちする約束をもらう/聞くこと3つ=(1)今はどこから、どれくらいの間隔で買っているか (2)今の買い方で困っていることはあるか (3)買う先を決めるのは、どなたか/持ち物=名刺(予備を入れて10枚)、会社案内2部、商品の一覧2部、ノートとペン、訪問先の地図/終わりに確かめること=「次回、見積をお持ちしてよいか」「いつ頃がよいか」。同行なので、最後の確認は先輩が言う。自分はメモを取り、帰りに先輩とメモを見比べる。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
今日のゴールが一つ書いてあり、聞くことが3つあり、終わりに確かめる「次の約束」を言葉にしてある。
うまく進まなかったときは?
ゴールが決まらないときは、「次に会う約束をもらう」にする。聞くことが浮かばなければ、「今はどうされていますか」「お困りの点はありますか」「どなたが決められますか」の3つから始める。相手の人数や時間が分からなければ「未確認」と書き、約束を取った人か先輩に聞く。