NUSSI’S SALES NOTEウッシの営業ノート

NOTE 119 · 営業の実践ノート

「とんでもございません」は使ってよい?褒められたとき・お礼を言われたときの返事

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「とんでもございません」は、褒められたときに軽く打ち消す言い方として、使って問題がないと考えられる。文化審議会答申「敬語の指針」は、そう説明しています。一方で、辞書には「とんでもない」は一語なので「ない」だけを置き換えるのは不適切だ、という説明も載っています。この記事では、指針と辞書に書いてあることを確かめたうえで、褒められたとき・お礼を言われたとき・お詫びを言われたときの返事を、打ち消しだけで終わらせない形にします。

今日できるようになること

褒められたとき・お礼を言われたとき・お詫びを言われたときの返事を、「打ち消す一言+お礼+次の一文」の形で、一つずつ書く。

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こんなときに 取引先や上司に褒められたり、お礼やお詫びを言われたりして、「とんでもございません」と返してよいのか迷うとき。

この順番で進めよう
  1. 1

    相手の言葉が、褒め・お礼・お詫びのどれかを聞き分ける

  2. 2

    打ち消す一言か、受ける一言かを選ぶ

  3. 3

    お礼か、相手を気づかう一言を添える

  4. 4

    用件に戻る一文を続ける

会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。

「とんでもございません」は使ってよい?「敬語の指針」の答え

取引先に「先日の資料、分かりやすかったですよ」と言われて、とっさに「とんでもございません」と返した。後で、「その言い方は誤りだと聞いたことがある」と思い出して、落ち着かなくなる。そういう迷いに、国の文書が答えています。

文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日・文化庁)の47ページに、この言葉を扱った問いがあります。部長から「いい仕事をしたね」と褒められて、「とんでもございません」と答えた。この表現は使わないほうが良いと聞いたことがあるが、何が問題なのか、という問いです。指針の解説を、区切って引用します。「 」の中は、指針の文をそのまま写したものです。

  • 「とんでもございません」(「とんでもありません」)は、相手からの褒めや賞賛などを「軽く打ち消すときの表現であり,現在では,こうした状況で使うことは問題がないと考えられる。」(指針47ページ・解説1)
  • この言い方について、「という言い方自体はかなり広まっている。」(指針47ページ・解説2)
  • 使わないほうが良いと言われる理由は、「とんでもない」全体で一つの形容詞なので、「その「ない」の部分だけを「ございません」に変えようとする発想に問題があるということである。」(指針47ページ・解説2)

つまり、指針は、使わないほうが良いと言われる理由を説明したうえで、褒められた場面で使うことは問題がないと考えられる、としています。

指針は、もう一つ大事なことを書いています。「とんでもございません」と「とんでもないことでございます」は、「意味が若干異なるという点に留意する必要がある。」(指針47ページ・解説2)。褒められた場面で「とんでもないことでございます」と言うと、「あなたの褒めたことはとんでもないことだ」という意味にも受け「取られるおそれがあるので,注意する必要がある。」(同)という説明です。

反対に、誰かのしていることを「もってのほかだ」と言いたい場面では、「とんでもございませんね」とは言えず、「とんでもないことでございますね」「などは普通に用いることができる。」(同)とも書かれています。

整理すると、次のようになります。

言い方褒められたときの打ち消し「もってのほかだ」と言いたいとき
とんでもございません使うことは問題がないと考えられる(指針47ページ)言えない(指針47ページ)
とんでもないことでございます相手の褒めを「とんでもないことだ」と言ったように受け取られるおそれがある(指針47ページ)普通に用いることができる(指針47ページ)

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

「とんでもないことでございます」のほうが正しい形だから、いつでもそちらを使えば安心、とは言えないことが分かります。

「とんでもない」の意味:辞書の語釈で確かめる

元の言葉「とんでもない」を、辞書で引きます。デジタル大辞泉「とんでもない」には、三つの意味が載っています。

  1. 「思いもかけない。意外である。」
  2. 「もってのほかである。」
  3. 「まったくそうではない。滅相もない。相手の言葉を強く否定していう。」

褒められたときの「とんでもございません」は、3番目の意味です。語釈に「強く否定していう」とあるとおり、元は、相手の言葉を強く打ち消す言葉です。2番目の「もってのほかである」という意味もあるので、言い方によっては、相手を責める言葉にも聞こえます。指針が「とんでもないことでございます」に注意を促しているのは、この二つの意味があるためです。

同じ辞書の補説には、形についての説明があります。

  • 「「とんでもない」で一語と見るのがよい。」
  • 「しかし、最近は「とんでもありません」「とんでもございません」と言う人が多くなっている。」

補説は、一語と見る立場からは「ない」を切り離して置き換えるのは不適切だ、としたうえで、指針が「現在では問題ない」としていることも紹介しています。精選版 日本国語大辞典「とんでもない」の語誌にも、「「とんでもない」の丁寧体は、「とんでもないことでございます」が本来であるが」と書かれています。

二つの資料から言えるのは、次の範囲です。褒められた場面での「とんでもございません」は、指針では問題がないと考えられている。ただ、形として本来ではない、と説明する辞書もある。この言い方を気にする人がいても、おかしくありません。次の章からは、相手がどちらの考えでも困らない返事の作り方を扱います。

褒められたとき・お礼を言われたとき・お詫びを言われたとき

「とんでもございません」が出てくる場面は、大きく三つあります。指針の問いが扱っているのは、このうち褒められたときです。お礼やお詫びへの返事については、指針に説明がありません。辞書の3番目の意味(相手の言葉を強く否定していう)に当たる使い方として、ここでは返事の例を並べます。

三つに共通する考え方は、打ち消しだけで終わらせないことです。相手は、こちらを認める気持ちや、感謝や、申し訳なさを言葉にしてくれました。「とんでもございません」だけで終えると、その言葉を押し返した形で、会話が止まります。相手は、次に何を言えばよいかが分からなくなります。打ち消す一言の後に、お礼か、相手を気づかう一言を添え、用件に戻る一文を続けます。

相手の言葉最初の一言添える一言用件に戻る一文(説明用の例)
褒め:「資料が分かりやすかった」とんでもございません/恐れ入りますありがとうございます。そう言っていただけると励みになります「本日は、続きの3ページからご説明いたします」
お礼:「急いでくれて助かった」とんでもございません/こちらこそお役に立てて、うれしく思います「届いた品に不足がありましたら、お知らせください」
お詫び:「返事が遅くなって申し訳ない」とんでもございませんお忙しいなか、ご連絡ありがとうございます「いただいた日程のうち、◯日でお願いできますでしょうか」

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

褒められたとき

指針が問題ないとしている場面です。「とんでもございません。ありがとうございます」と、打ち消しとお礼を一息で言います。打ち消すだけだと、相手の見立てを否定した形になります。お礼を足すと、「褒めてくださった気持ちは受け取りました」と伝わります。

お礼を言われたとき

お礼には、「こちらこそ、ありがとうございます」と受ける形が合います。「とんでもございません」を使うなら、「お役に立てて、うれしく思います」のように、相手のお礼を受け取る一文を続けます(説明用の例です)。相手の心づかいにお礼を言う形は、「お気遣いありがとうございます」の使い方にあります。

お詫びを言われたとき

相手が「遅くなって申し訳ない」「先日は失礼しました」と言ってくれたときです。「とんでもございません。どうぞお気になさらないでください」と受けて、すぐに用件へ戻します(説明用の例です)。相手は、お詫びの話が長く続くより、用件が進むほうが気が楽になります。

ここで分かれ道があります。相手の遅れや誤りで、納期・金額・数量に影響が出ているときは、打ち消して終わりにしません。「とんでもございません」と言うと、何も問題がなかった、という返事に聞こえます。「ご連絡ありがとうございます。一点、納期への影響だけ確かめさせてください」と、確かめることを続けます(説明用の例です)。

言い換え:恐れ入ります・恐縮です・とんでもないことでございます

相手が言葉づかいを気にする方かもしれない、と思うときは、別の言葉で受けることができます。辞書の語釈と一緒に並べます。

言い方元の言葉と語釈合う場面(一例)気をつける所
恐れ入ります恐れ入る:「相手の好意などに対して、ありがたいと思う。恐縮する。」(デジタル大辞泉「恐れ入る」の1番目)褒められたとき。お礼を言われたとき打ち消さずに受ける形。「ありがとうございます」を続けると、気持ちがはっきりする
恐縮です恐縮:「相手に迷惑をかけたり、相手の厚意を受けたりして申し訳なく思うこと。おそれいること。また、そのさま。」(デジタル大辞泉「恐縮」の2番目)相手に手間をかけてもらったうえで、褒められた・お礼を言われたとき語釈に「申し訳なく思う」とある。お詫びを言ってくれた相手への返事には向きにくい
とんでもないことでございますとんでもない:「まったくそうではない。滅相もない。相手の言葉を強く否定していう。」(デジタル大辞泉の3番目)お詫びを言われたときの打ち消し褒められた場面では、相手の褒めを「とんでもないことだ」と言ったように受け取られるおそれがある(指針47ページ)
ありがとうございます(お礼そのもの)褒められたとき。お礼を言われたとき打ち消しが無いので、短く言える。「励みになります」などを足すと、受け取ったことが伝わる

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

「恐れ入ります」と「恐縮です」は、打ち消さずに、ありがたさや申し訳なさで受ける言葉です。「とんでも」の形を気にする相手にも、引っかかりがありません。頼みごとの前に置く「恐れ入りますが」の使い方は、「恐れ入りますが」の使い方にまとめています。

どの言葉が上、ということはありません。褒めとお礼は「恐れ入ります」か「ありがとうございます」で受ける。お詫びは「とんでもございません」で打ち消す。こう決めておくと、とっさのときに迷いません。

商談・電話・メールの例

三つの場面で、惜しい例と良い例を並べます。どれも説明用の例です。

商談:提案書を褒められた

相手:「この比較表、見やすいですね」

  • 惜しい例1:「いえいえ、とんでもございません。全然たいしたものではありません」
  • 惜しい例2:「とんでもないことでございます」
  • 良い例:「恐れ入ります。ありがとうございます。御社の使い方に合わせて、項目を並べ直しました。3番目の項目から、ご説明いたします」

惜しい例1は、打ち消しが二つ重なっています。「たいしたものではない」と言うと、相手は、これから説明される資料をどう受け取ればよいか困ります。惜しい例2は、指針が注意を促している形です。良い例は、受ける一言、お礼、工夫した所、用件の順です。

電話:急ぎの手配に、お礼を言われた

相手:「昨日は、急なお願いに対応してくれて、助かりました」

「とんでもございません。間に合って、ほっとしております。届いた品に、不足はございませんでしたか」

電話は、声だけで伝わります。「とんでもございません」の後に間が空くと、相手は続きを待ちます。お礼を受ける一文と、確かめる質問までを続けて言います。

メール:返信が遅れたことを、お詫びされた

相手のメール:「ご返信が遅くなり、申し訳ございません。日程は、◯月◯日か◯日でいかがでしょうか」

[会社名] [担当者名]様

[自社名]の[氏名]です。

とんでもございません。お忙しいなか、日程をお知らせいただき、ありがとうございます。

◯月◯日(火)14時に、御社へ伺います。

当日は、どうぞよろしくお願いいたします。

メールでは、打ち消す一言を短く置き、すぐにお礼と用件へ進みます。相手のお詫びを何行も打ち消すと、相手はもう一度お詫びを返すことになり、やり取りが長くなります。返信の最初の一言については、「ご連絡ありがとうございます」の使い方にまとめています。

迷いやすい判断と、言い間違えたあと

判断1:「とんでもありません」「とんでもないです」は?

指針は、「とんでもございません」と「とんでもありません」を並べて扱い、どちらも、褒めを軽く打ち消す表現として説明しています(指針47ページ)。「とんでもない」を一語と見る立場からの丁寧な形としては、「とんでもないです」「とんでもないことでございます」「とんでものうございます」の三つを挙げています(同)。

選ぶ基準は、相手との距離です。取引先や、あらたまった場では「とんでもございません」か「恐れ入ります」。社内の先輩との会話なら、「とんでもないです。ありがとうございます」でも、ていねいさは足ります。職場で決まった言い方があれば、そちらを先にします。

判断2:相手が、言葉づかいを気にする方かもしれないときは?

相手の考えは、こちらからは分かりません。分からないときは、どちらの考えの人にも引っかからない言葉を選びます。褒めとお礼には「恐れ入ります。ありがとうございます」。これなら、「とんでも」の形の話になりません。

上司や先輩から「その言い方は直したほうがよい」と言われたら、その職場ではそちらに合わせます。気になるときは、後で「取引先には、どの言い方がよいでしょうか」と聞きます。

判断3:同じ相手に、何度も褒められたら?

毎回打ち消すと、相手は、褒めるたびに否定されることになります。打ち消すのは一度にして、二度目からは「ありがとうございます」と受けます。受けた後に、「次は、◯◯の所も直してお持ちします」のように、次にやることを足すと、話が前へ進みます(説明用の例です)。

言い間違えたあと1:「とんでもないことでございます」と言って、相手が戸惑った

その場では:褒められた場面で言ってしまい、相手の表情が止まった、という場合です。すぐに、お礼を足します。「失礼しました。お褒めいただき、ありがとうございます、という意味で申しました」と、短く言い直します(説明用の例です)。そのまま流すより、お礼の気持ちをはっきり言うほうが、相手に伝わります。

後の記録:「褒められたときに、『とんでもないことでございます』と言った。次からは、『恐れ入ります。ありがとうございます』と言う」と書きます(説明用の例です)。

言い間違えたあと2:お詫びに「とんでもございません」と返したが、確かめることが残っていた

その場では:相手が「数量を間違えて伝えていました」と詫びてくれたのに、「とんでもございません」とだけ返して、正しい数量を確かめなかった、という場合です。気づいた時点で、連絡します。「先ほどのお電話の件で、一点確かめさせてください。正しい数量は、150個でよろしいでしょうか」と、確かめたいことだけを聞きます(説明用の例です)。手配に影響があるときは、先に上司に報告します。

後の記録:「お詫びを打ち消して、確認を忘れた。次からは、打ち消した後に、数量・日付・金額に変わりがないかを、その場で聞く」と書きます(説明用の例です)。失敗を上司に報告する順番は、営業で失敗したときにあります。

今日やることは一つです。褒められたとき・お礼を言われたとき・お詫びを言われたときの返事を、「最初の一言+添える一言+用件に戻る一文」の形で、一つずつ書いてください。

YOUR TURN

自分の一件で、書いてみよう。

手元に用意するもの
最近、褒められた・お礼を言われた・お詫びを言われた場面のメモ(相手の言葉を、思い出せる範囲で)。そのとき自分が返した言葉。

記入例を見る(説明用)

相手と場面(商談・電話・メール)=A社の佐藤様。商談の冒頭で、先週お送りした比較表について言われた/相手の言葉は、褒め・お礼・お詫びのどれか=「表が見やすくて、助かりました」。褒めとお礼の両方/最初の一言(打ち消すか、受けるか)=「とんでもございません。」と軽く打ち消す。相手が言葉づかいを気にする方かどうかは未確認なので、迷うときは「恐れ入ります。」に替える/添える一言(お礼・相手への気づかい)=「お役に立てて、うれしく思います。ありがとうございます。」/用件に戻る一文と、言ってみて直した所=「本日は、あの表の3番目の項目から、ご説明いたします。」声に出したら、打ち消しの後に間が空いた。「とんでもございません。ありがとうございます」を一息で言うことにした。

入力は自動保存されません。ページを移動する前に保存してください。保存した内容は他の人に自動送信されません。

CHECK

ここまでできたら、次へ。

褒め・お礼・お詫びのそれぞれについて、最初の一言、添える一言、用件に戻る一文が書いてあり、声に出して言ってみてある。

うまく進まなかったときは?

最初の一言が決まらなければ、「ありがとうございます」から始める(褒めとお礼は、これで受けられる)。お詫びへの返事が書けなければ、「どうぞお気になさらないでください」の後に、確かめたいことを一つ書く。相手が言葉づかいを気にする方か分からなければ、「恐れ入ります」を選ぶ。

NEXT NOTE

次に読むなら

尊敬語と謙譲語の違いを確かめる「了解しました」の使い分けを確かめる「恐れ入りますが」の使い方を確かめる