NOTE 118 · 営業の実践ノート
「存じます」の意味と使い方:「思います」との違いと、「いただきたく存じます」の形
公開:2026年10月3日
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「存じます」は、「思います」を改まった形にした言葉です。辞書は「存ずる」を「「思う」「考える」の意の謙譲語。」と説明し、文化審議会答申「敬語の指針」は「存じる(←知る・思う)」を謙譲語Ⅱ(丁重語)の例に挙げています。自分の考えや希望を、相手に対して丁重に述べる形です。この記事では、「思います」「存じ上げます」との違いと、「いただきたく存じます」「お願いしたく存じます」「幸甚に存じます」の形を、出典と一緒に確かめます。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 取引先へのメールで、「思います」と「存じます」のどちらを書くか、何回使ってよいかで迷うとき。
- 1
その文が、自分の考え・希望か、事実かを分ける
- 2
考え・希望を改まって伝える文を一つ選び、「存じます」にする
- 3
事実と決まったことは「です」「いたします」で言い切る
- 4
読み直して、「存じます」が続いている所を書き分ける
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
「存じます」の意味:辞書と「敬語の指針」で確かめる
先輩のメールに、「ご確認いただきたく存じます」と書いてある。自分のメールは「ご確認いただきたいと思います」。どちらでもよいのか、取引先には「存じます」に直すべきなのかで、手が止まる。営業を始めたばかりの時期に、起きやすい迷いです。
先に、言葉の意味を辞書で確かめます。「 」の中は、辞書の文をそのまま写したものです。
- デジタル大辞泉「存ずる」の1番目:「「知る」「承知する」の意の謙譲語。」
- 同じ項目の2番目:「「思う」「考える」の意の謙譲語。」用例は「お変わりなくお過ごしのことと―・じます」
- 同じ項目の補説:「現代では多く「ます」を伴った形で、聞き手に対して、改まった気持ちをこめて丁重に言うのに用いる。」
- デジタル大辞泉「存じる」:「「ぞんずる」(サ変)の上一段化。」
「存ずる」と「存じる」は、同じ言葉の二つの形です。どちらに「ます」を付けても、「存じます」になります。
次に、敬語の種類です。文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日・文化庁)は、謙譲語Ⅱ(丁重語)の特定の形の例として、「存じる(←知る・思う)」を挙げています(指針28ページ)。謙譲語Ⅱの説明は、「自分側の行為・ものごとなどを,話や文章の相手に対して丁重に述べるもの。」(指針18ページ)です。
「存じます」の元になる言葉は、二つあります。
| 元の言葉 | 形 | 言い方(説明用の例) |
|---|---|---|
| 思う | 〜と存じます/〜たく存じます | 「ご確認いただきたく存じます」「お役に立てるかと存じます」 |
| 知っている | 存じております | 「その件は、存じております」 |
| 知らない | 存じません/存じておりません | 「申し訳ございません。その件は、存じません」 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
「知る」の意味について、指針の28ページの注は、「存じています(おります)」の形で「知っている」の謙譲語Ⅱとして使うこと、否定では「存じません」も使われることを説明しています。この記事では、主に「思う」の意味の「存じます」を扱います。
指針は、「謙譲語Ⅱは,一般に「ます」を伴って使う。」(指針19ページ)とも書いています。辞書の補説と同じ向きの説明です。
「思います」との違い:自分の考えを、改まって述べる
「思います」は、「思う」に「ます」が付いた形です。指針の分け方では、「です」「ます」は丁寧語で、「話や文章の相手に対して丁寧に述べるもの。」(指針20ページ)と説明されています。「思います」も、相手に丁寧に述べる形にはなっています。
「存じます」は、「思う」を謙譲語Ⅱの「存じる」に替え、そこに「ます」を付けた形です。意味は同じで、改まった調子が加わります。辞書の補説の言葉を借りれば、「改まった気持ちをこめて丁重に言う」形です。
「取引先に『思います』を使ってはいけない」という決まりは、指針にも、上の辞書の項目にも見当たりません。次の表は、選び方の一例です。職場に決まった書き方があれば、そちらを先にします。
| 場面 | 選びやすい形(一例) | そう選ぶ理由 |
|---|---|---|
| 同僚・後輩との会話やチャット | 思います | 改まった形にすると、距離のある言い方に聞こえることがある |
| 上司への報告(口頭) | 思います | 話し言葉では短い形のほうが聞き取りやすい。職場の習慣に合わせる |
| 取引先へのふだんのメール | お願いの一文だけ「存じます」 | いちばん伝えたい頼みを、改まった形で目立たせられる |
| 初めての相手・あいさつ状・お詫びの文書 | 存じます | 文書全体が改まった調子なので、文末もそろえる |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
気をつける所が二つあります。
一つめ。「存じます」は、自分側の「思う」に使います。指針は、謙譲語Ⅱについて「謙譲語Ⅱは,基本的には「自分側」の行為に使うものなので」と書き、相手側の行為に使うのは不適切だと説明しています(指針18ページ)。相手の考えを尋ねるときに「どのように存じますか」とは言いません。「どのようにお考えでしょうか」「いかがでしょうか」と尋ねます。
二つめ。「存じます」は、考えや希望を述べる言葉です。納期や金額のように、決まっている事実に付けると、相手は「決まったことなのか、見込みなのか」が分からなくなります。次の二つを比べます(説明用の例です)。
- 惜しい例:「納品は、◯月◯日になるかと存じます。」
- 良い例(決まっているとき):「納品は、◯月◯日です。」
- 良い例(まだ見込みのとき):「納品は、◯月◯日になる見込みです。確定しましたら、◯月◯日までにご連絡いたします。」
惜しい例は、ていねいに見えますが、相手はこの日付で予定を組んでよいのかを決められません。事実は言い切り、見込みは「見込みです」と書いて、いつ確定するかを足します。
「存じます」と「存じ上げます」の違い
よく似た形に、「存じ上げます」があります。指針は、この二つを別の種類に分けています。
| 言葉 | 指針の分け方 | その種類の説明(指針の文) |
|---|---|---|
| 存じる(←知る・思う) | 謙譲語Ⅱ(丁重語)(指針28ページ) | 「自分側の行為・ものごとなどを,話や文章の相手に対して丁重に述べるもの。」(指針18ページ) |
| 存じ上げる(←知る) | 謙譲語Ⅰ(指針26ページ) | 「自分側から相手側又は第三者に向かう行為・ものごとなどについて,その向かう先の人物を立てて述べるもの。」(指針15ページ) |
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二つの種類の違いを、指針はこう書いています。「謙譲語Ⅰは<向かう先>(上述のように,相手側である場合も,第三者である場合もある)に対する敬語,謙譲語Ⅱは<相手>に対する敬語であり,性質が異なる。」(指針19ページ)。謙譲語Ⅰについては、立てるのにふさわしい<向かう先>が「ある場合に限って使う。」(指針19ページ)とも説明しています。
これを当てはめると、次のように分けられます。
- 存じ上げる:知っている相手・思っている相手が、立てる人のとき。「佐藤様のお名前は、以前から存じ上げております」(説明用の例です)
- 存じる:立てる人が向かう先にいないとき。物事について知っている・思うとき。「その件は、存じております」「お役に立てるかと存じます」(説明用の例です)
辞書も、デジタル大辞泉「存じ上げる」を「「知る」「思う」の意の謙譲語。」と説明し、用例に「お名前は―・げております」「御清祥にてお過ごしのことと―・げます」を挙げています。どちらの用例も、相手という人について知っている・思っている文です。
物事に「存じ上げます」を使うと誤り、とまでは、指針に書かれていません。迷ったときは、人のことなら「存じ上げる」、物事や自分の考えなら「存じる」と分けると、指針の説明に沿った形になります。
なお、相手が知っていることを言うときは、尊敬語の「ご存じです」です。尊敬語と謙譲語の入れ替わりは、尊敬語と謙譲語の違いに対応表があります。
「いただきたく存じます」「お願いしたく存じます」「幸甚に存じます」の形
「存じます」は、ほかの言葉と組み合わせた形で使われることが多い言葉です。よく見る三つを、部品に分けます。
| 形 | 部品 | ふつうの言い方 | 向く場面(一例) |
|---|---|---|---|
| 〜いただきたく存じます | いただく+たい+存じます | 〜してもらいたいと思います | 相手にしてほしいことを、改まって伝える |
| 〜お願いしたく存じます | お願いする+たい+存じます | 〜をお願いしたいと思います | これから頼みごとをする、と切り出す |
| 〜いただければ幸甚に存じます | 幸甚+存じます | 〜してもらえると、たいへんありがたいと思います | 手紙や、あらたまった文書での頼み |
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〜いただきたく存じます
「いただく」は謙譲語Ⅰです。指針は、「謙譲語Ⅰの基本的な働きに加えて,恩恵を受けるという意味も併せて表す。」(指針17ページ)と説明しています。そこに、希望を表す「たい」と、「存じます」が続いた形です。「ご確認いただきたく存じます」は、「確認してもらいたいと思います」を改まった形にしたものです。
この形は、自分の希望を述べる文で、相手に尋ねる文ではありません。相手は、いつまでに、何を返せばよいかを自分で読み取ることになります。返事がほしいときは、期限を足すか、尋ねる形にします。「◯月◯日(金)までに、ご確認いただきたく存じます」「ご確認いただけますでしょうか」のような形です(説明用の例です)。
〜お願いしたく存じます
「お願いしたいと思います」の改まった形です。「お打ち合わせの日程について、ご相談をお願いしたく存じます」のように、これから頼むことを切り出すときに使われます(説明用の例です)。
この一文だけでは、何を、いつまでに、が相手に伝わりません。何をお願いするのかを、同じ文か、すぐ後の文に書きます。「お願いします」「お願いいたします」「お願い申し上げます」の違いは、「よろしくお願いいたします」の意味と使い方にまとめています。
幸甚に存じます
「幸甚」は、デジタル大辞泉「幸甚」に「(多く手紙文で用いて)この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま。」とあり、用例に「幸甚に存じます」が載っています。精選版 日本国語大辞典「幸甚」にも、「多く手紙文に用いられる。」とあります。
語釈から言えるのは、ありがたさの度合いが大きく、手紙文で使われることが多い言葉だ、ということです。あいさつ状、依頼状、初めての相手へのあらたまったメールには合います。毎日やり取りしている相手への短いメールに使うと、用件に比べて言葉が大きくなります。ふだんのメールでは、「幸いです」「幸いに存じます」が使いやすい形です。書き分けは、「幸いです」の意味と使い方にあります。
メールの例:一通に何度も使わない
「存じます」は、文末に付ければ改まった調子になるので、続けて使いやすい言葉です。次は、初めての相手に資料を送るメールの下書きです(説明用の例です)。
このたびは、お時間をいただきありがたく存じます。
弊社の資料をお送りしたく存じます。ご参考になればと存じます。
つきましては、一度お時間をいただきたく存じます。ご検討いただければ幸甚に存じます。
五つの文の全部が「存じます」で終わっています。文としては誤りではありません。ただ、読む人は、どれが事実で、どれが頼みなのかを、文末から見分けられません。資料は送ったのか、これから送るのか。時間がほしいのは、いつなのか。返事は要るのか。
指針には、「敬語をたくさん使えば丁寧になるというわけではない。」(指針35ページ)とあります。改まった形を重ねるより、文の役目ごとに文末を分けるほうが、相手は読み取りやすくなります。書き直した例です。
[会社名] [担当者名]様
はじめてご連絡いたします。[自社名]の[氏名]と申します。
[商品名]の資料を添付いたしました。
一度、30分ほどお時間をいただきたく存じます。候補日は、◯月◯日(火)午後、◯月◯日(木)午前の2つです。
◯月◯日(金)までに、ご都合をお知らせいただけますでしょうか。
どうぞよろしくお願いいたします。
「存じます」は、いちばん伝えたい頼みの一文だけに残しました。送ったことは「いたしました」、候補日は「です」、返事の頼みは「いただけますでしょうか」です。
何回までなら使ってよい、という公的な決まりは見当たりません。この記事では、ふだんのメールなら一通に一〜二回を目安にします。電話や対面でも同じで、切り出しの一文に使い、その後は「です」「ます」で話します。返信の組み立ては、ビジネスメールの返信にまとめています。
迷いやすい判断と、送ったあと
判断1:社内の上司にも、「存じます」を使う?
基準は、その職場の上司あてのメールで、ふだん使われているかどうかです。先輩が上司に送ったメールを二、三通見て、文末を確かめます。使われていなければ、「思います」「お願いいたします」で足ります。
確かめられないときは、先輩に「部長あてのメールは、『存じます』まで使ったほうがよいですか。『思います』で構いませんか」と、二つの形を並べて聞きます。
判断2:「〜かと存じます」は、使ってよい?
使ってよいかどうかは、その文が、自分の考えか、事実かで決めます。「こちらの型のほうが、御社の使い方に合うかと存じます」は、自分の考えを控えめに述べる文で、言葉と中身が合っています(説明用の例です)。
在庫の有無、納期、金額のように、相手がその答えで動くことには使いません。分かっているなら言い切り、分からないなら「確認して、◯時までにご連絡いたします」と、確かめる時期を答えます。
判断3:知らないことを聞かれたら、「存じません」でよい?
形としては、指針の注に載っている言い方です。人について聞かれたときは、「存じ上げません」になります。指針の26ページの注に、否定の形として「存じ上げません」も使われる、とあります。
ただ、「存じません」だけで終えると、相手は次に誰に聞けばよいかが分かりません。知らない、の後に、自分がどう動くかを足します。「申し訳ございません。その件は存じません。担当に確かめて、本日中にご連絡いたします」のような形です(説明用の例です)。
失敗1:相手の考えを聞く文に、「存じます」を使った
その場では:「この案について、どのように存じますか」と送った、という場合です。用件は伝わっているので、訂正だけのメールは送らなくて足ります。次の返信から、「どのようにお考えでしょうか」に直します。
後の記録:「相手の考えを聞くときに、『存じます』を使った。『存じます』は自分の考えにだけ使う。相手には『お考えでしょうか』」と書きます(説明用の例です)。
失敗2:「〜かと存じます」と書いて、相手に確定だと受け取られた
その場では:見込みのつもりで「◯日の納品になるかと存じます」と書き、相手がその日付で予定を組んでいた、という場合です。気づいた時点で、先に上司に報告し、相手に連絡します。「◯月◯日のメールで『◯日の納品になるかと存じます』とお伝えしましたが、確定した日付ではありませんでした。正しくは、◯日の見込みで、◯月◯日に確定します。分かりにくい書き方をして、申し訳ございません」と、どの文が、どう変わるかを書きます(説明用の例です)。おわびの書き方は、お詫びメールの書き方にあります。
後の記録:「見込みを『かと存じます』で書いた。次からは、決まったことは『です』、見込みは『見込みです』と書き、確定する日を足す」と書きます(説明用の例です)。
今日やることは一つです。これから送るメールを一通選び、「存じます」を使う文を一つに決めて、ほかの文を「です」「いたします」「お願いいたします」に書き分けてください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
これから送るメールの下書き(または、最近送ったメール一通)。相手の名前と、頼みたいこと・期限が分かるメモ。
記入例を見る(説明用)
送る相手と、メールの用件=A社の佐藤様。初めての相手。資料をお送りし、打ち合わせの時間をいただきたい/自分の考え・希望を述べる文(「存じます」にする候補)=「一度、お時間をいただきたい」「資料が参考になれば」「ご都合を伺いたい」の3つ/事実・決まったことを述べる文(言い切る文)=「資料を添付した」「候補日は◯月◯日(火)と◯日(木)」「返事は◯月◯日(金)までにほしい」/「存じます」を残す一文と、その理由=「一度、30分ほどお時間をいただきたく存じます。」いちばん伝えたいお願いなので、ここに使う/書き分けたあとの文と、読み直して直した所=「資料を添付いたしました。」「候補日は次の2つです。」「◯月◯日(金)までに、ご都合をお知らせいただけますでしょうか。」に直した。最初の下書きは「存じます」が4回あった。返事の期限が書かれていなかったので足した。相手の部署名は未確認。送る前に名刺で確かめる。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
「存じます」を使う文が一つ(多くても二つ)に決まっていて、事実と決まったことは「です」「いたします」で言い切ってあり、返事がほしい文には期限が書いてある。
うまく進まなかったときは?
どの文を残すか決められなければ、「相手に、いちばんやってほしいこと」が書いてある文を選ぶ。考えと事実が分けられなければ、「相手が後で確かめられること(日付・数量・場所)」を事実として、言い切る。「存じます」を取ると軽く感じるときは、文末を「いたします」「お願いいたします」に替えて、声に出して読む。