NUSSI’S SALES NOTEウッシの営業ノート

NOTE 90 · 営業の実践ノート

「幸いです」の意味と使い方:期限のある依頼は「お願いいたします」と書き分ける

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「幸いです」は、「そうしてもらえると、ありがたいです」という意味で、頼みごとをやわらげる言い方です。相手に判断をゆだねる形なので、やわらかく伝わる一方、「してもしなくてもよい」と読まれることがあります。期限のある依頼では、「◯日までにお願いいたします」と書き分けます。

今日できるようになること

今日送る依頼のメール一通について、頼みごとを「できれば」と「期限あり」に分け、期限のあるものは日付と「お願いいたします」で書く。

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こんなときに 「〜いただけますと幸いです」と書いたのに返事が来ないとき。依頼の文を、どこまで強く書いてよいか迷うとき。

この順番で進めよう
  1. 1

    頼みごとを書き出し、「できれば」か「期限あり」かを分ける

  2. 2

    「できれば」は「幸いです」、「期限あり」は日付と「お願いいたします」で書く

  3. 3

    ご教示・ご了承・ご検討など、頼む中身に合う言葉を選ぶ

  4. 4

    「幸いです」を一通に一回にして、読み直す

会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。

「幸いです」の意味:「そうしてもらえると、ありがたい」

「ご確認いただけますと幸いです」と書いて送ったのに、何日たっても返事が来ない。催促するほどのことなのか、そもそも自分の書き方が悪かったのか、分からなくなることがあります。原因が、「幸いです」という言葉の意味の中にあることがあります。

「幸い」は、デジタル大辞泉(コトバンク)に「その人にとって望ましく、ありがたいこと。また、そのさま。」とあり、用例に「御笑納いただければ幸いです」が挙がっています。同じ項目には、「さいわいに」の形の説明として、「そうしていただければしあわせだと人に頼む気持ちを表す。」という意味も載っています。

前に付く「いただく」も確かめます。文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日・文化庁)は、27ページで、謙譲語Ⅰの一般的な形の例に「お(ご)……いただく(例:読む→お読みいただく,指導する→御指導いただく)」を挙げています。17ページでは、「いただく」について、「謙譲語Ⅰの基本的な働きに加えて,恩恵を受けるという意味も併せて表す。」と説明しています。

合わせると、「ご確認いただけますと幸いです」は、「確認してもらえたら、私はありがたいです」という意味です。「確認してください」と相手に求める形ではなく、自分の気持ちを述べる形になっています。ここが、この言葉の良い所であり、伝わりにくさの元でもあります。

やわらげる働きと、伝わりにくい場面

頼みごとは、相手の時間を使います。そのまま「してください」と書くと、決めるのはこちら、という形になります。「敬語の指針」は、48ページで、自分が責任者でない立場で同僚に仕事を頼む場面について、自分が決定権を持っているような言い方ではなく、「相手に判断をゆだねるような表現を用いる方が良いだろう。」と解説しています。

「幸いです」も、するかどうかを相手にゆだねる形です。だから、押しつける感じがなくなり、やわらかく伝わります。取引先への頼みごとに使いやすいのは、そのためです。

一方で、ゆだねる形は、「してもしなくてもよい」「いつでもよい」とも読めます。相手の手元には、ほかにも多くのメールがあります。期限が書かれた依頼と、「〜いただけますと幸いです」の依頼が並んでいれば、後に回されるのは後者です。相手が悪いのではなく、こちらの文が「任意」に読めたということです。

惜しい例:「お見積もりの内容をご確認いただけますと幸いです」

良い例:「◯月◯日(◯)までに、お見積もりの内容で進めてよいかどうか、ご返信をお願いいたします。ご希望の納期に間に合う便の手配が、この日までとなっております」

どちらも説明用の例です。惜しい例は、ていねいですが、相手は「確認して、どうすればよいのか」「いつまでか」が分かりません。良い例は、期限・やってほしいこと・期限の理由の3つが入っています。理由があると、期限を書いても、こちらの都合の押しつけには見えにくくなります。

期限を書くことに気が引けるときは、ビジネスメールの締めの「相手に期限を書くのは、失礼にならない?」も読んでみてください。

書き分け:頼みの強さで決める表

書く前に、頼みごとを一つずつ、「相手がやらなかったら、どうなるか」で分けます。次の表は、分け方の一例です。

頼みの強さ書き方例(説明用)
できれば(やらなくても、話は進む)〜いただけますと幸いです写真がお手元にございましたら、お送りいただけますと幸いです
返事はほしいが、急がない〜いただけますでしょうかご都合のよい日を、お知らせいただけますでしょうか
期限がある(過ぎると、次の作業が止まる)◯月◯日(◯)までに、〜をお願いいたします(理由を添える)◯月◯日(◯)までに、ご返信をお願いいたします。手配の締め切りが、この日となっております
やらないと、相手が困る手続き〜をお願いいたします(過ぎた場合どうなるかを添える)◯月◯日(◯)までに、申込書のご返送をお願いいたします。過ぎますと、次回の受付は翌月となります

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

「◯日までにご返信いただけますと幸いです」のように、日付と「幸いです」を一緒に書く形もあります。日付があるので、何も書かないよりは伝わります。ただ、「幸いです」が付くと、その日付は「できれば」の目安に読めます。過ぎたら困る期限は「お願いいたします」、過ぎても困らない目安は「幸いです」と分けると、相手は、どちらを先に片づければよいかが分かります。

一通の中に、強さの違う頼みごとが二つあるときは、期限のあるほうを先に書きます。「幸いです」の頼みは、「あわせて」と付けて後ろに置きます。先に目に入るものが、先に片づけられやすいからです。

相手に手間のかかる作業を頼むときの前置きは、「お手数をおかけしますが」の使い方にまとめています。期限を過ぎても返事がないときの書き方は、催促メールの書き方にあります。

言い換え:幸いに存じます・助かります・ありがたく存じます・お願いいたします

「幸いです」と近い働きの言い方を、辞書の語釈と一緒に並べます。語釈は、デジタル大辞泉(コトバンク)からの引用です。

言い方元の言葉と語釈向く場面(一例)
〜いただけますと幸いです幸い:「その人にとって望ましく、ありがたいこと。また、そのさま。」取引先・上司への、できればの頼み
〜いただけますと幸いに存じます存ずる:「「思う」「考える」の意の謙譲語。」より改まった文書や、初めての相手
〜いただけますと、ありがたく存じます有難い:「人の好意などに対して、めったにないことと感謝するさま。」相手の好意に頼る頼み。無理を言うとき
〜いただけると助かります助かる:「労力・費用・負担などが少なくてすむ。楽である。」社内や、やり取りの多い相手。自分の作業が楽になる、と伝える
〜をお願いいたします(依頼そのもの)期限がある。やってもらうことが決まっている

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

「存じます」は、「思います」の改まった形です。「敬語の指針」は、28ページで、謙譲語Ⅱ(丁重語)の特定の形の例に「存じる(←知る・思う)」を挙げています。謙譲語Ⅱは、18ページで「自分側の行為・ものごとなどを,話や文章の相手に対して丁重に述べるもの。」と説明されています。辞書の補説にも、「現代では多く「ます」を伴った形で、聞き手に対して、改まった気持ちをこめて丁重に言うのに用いる。」とあります。「幸いに存じます」は、「幸いです」より、改まった調子になります。

「助かります」は、語釈のとおり、自分の負担が減ることを言う言葉です。気持ちがまっすぐ伝わるので、社内や、やり取りの多い相手には使いやすい言い方です。一方、自分の都合を前に出す形でもあります。改まった相手に使ってよいか迷うときは、「幸いです」か「ありがたく存じます」を選ぶと、迷いが減ります。

どの言い方が上、ということはありません。「敬語の指針」の35ページには、「敬語をたくさん使えば丁寧になるというわけではない。」とあります。改まった形を重ねるより、頼みの強さに合った形を、一つ選ぶほうが伝わります。

ご教示・ご了承・ご検討・ご容赦・ご承知おきの違い

「幸いです」の前に置く言葉で、相手に頼んでいる中身が変わります。似て見えますが、相手にしてもらうことが違います。語釈は、デジタル大辞泉(コトバンク)からの引用です。

言い方元の言葉と語釈相手に頼んでいること合う場面(一例)
ご教示いただけますと幸いです教示:「知識や方法などを教え示すこと。」やり方や、知っていることを教えてもらう手続きの方法、送り先、担当の部署を尋ねる
ご検討いただけますと幸いです検討:「よく調べ考えること。種々の面から調べて、良いか悪いかを考えること。」良いかどうかを、考えてもらう提案や見積を出したとき
ご了承いただけますと幸いです了承:「事情をくんで納得すること。承知すること。承諾。」こちらの事情を、納得して受け入れてもらう休業日、仕様の変更、対応できない範囲を伝える
ご容赦いただけますと幸いです容赦:「ゆるすこと。大目に見ること。」行き届かない点を、ゆるしてもらう返信が遅くなる、行き違いがあるかもしれない、と先に断る
ご承知おきいただけますと幸いです承知:「事情などを知ること。また、知っていること。わかっていること。」あらかじめ、知っておいてもらう返事は要らないが、先に伝えておきたい予定や条件

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

取り違えやすい所を、3つ挙げます。

「ご検討」は、返事の日を別に書く

「検討」は、考えることです。「ご検討いただけますと幸いです」は、考えてもらうことを頼んでいて、返事をもらうことまでは頼んでいません。返事がほしいなら、「◯月◯日(◯)ごろに、ご状況を伺ってもよろしいでしょうか」と、次に連絡する日を別に書きます(説明用の例です)。その後の進め方は、「検討します」の後にまとめています。

「ご了承」と「ご容赦」は、頼んでいることが違う

「ご了承」は、事情を分かって受け入れてもらうこと。「ご容赦」は、ゆるしてもらうことです。年末の休業日を伝えるなら、ゆるしてもらう話ではないので「ご了承」です。返信が遅れるかもしれないと先に断るなら、「ご容赦」が合います。

どちらも、こちらの都合を受け入れてもらう頼みです。理由を先に書きます。「誠に勝手ながら、◯月◯日(◯)は棚卸しのため、出荷を休ませていただきます。ご了承いただけますと幸いです」という形です(説明用の例です)。理由がないと、相手は、納得する材料がないまま受け入れることになります。

すでに起きたこちらの誤りには、「ご容赦いただけますと幸いです」だけで済ませません。先に、おわびと、起きたこと、これからの対応を書きます。順番は、お詫びメールの書き方にまとめています。

「ご承知おき」は、返事が要らない連絡に

「ご承知おきいただけますと幸いです」は、「知っておいてください」という連絡です。相手に作業や返事を求めていません。返事がほしい用件に使うと、相手は読むだけで終えます。返事が要るなら、「ご確認のうえ、ご返信をお願いいたします」と書きます。添付した書類を受け取ってもらうときの言い方は、「ご査収ください」の使い方にまとめています。

迷いやすい判断と、送ったあと

判断1:上司や取引先に、「幸いです」を使ってよい?

上の辞書の語釈にも用例にも、使う相手を限る説明はありません。「幸いです」が失礼かどうかを決めた公的な基準も、「敬語の指針」には見当たりません(この言葉は、指針に出てきません)。基準は、相手が誰かより、頼みの強さに合っているかです。

より改まった形にしたいときは、「幸いに存じます」にします。職場で使われている形が分からなければ、先輩が取引先へ送ったメールを一通見せてもらい、同じ形に合わせます。

判断2:一通に、「幸いです」が何度も出てきたら?

基準は、一通に一回です。全部の頼みに「幸いです」が付いていると、相手は、どれが大事なのかを選べません。読み直して二回以上あったら、頼みごとを強さで分け直します。期限のあるものは「お願いいたします」、返事がほしいものは「いただけますでしょうか」に変え、「幸いです」は、できればの頼み一つに残します。

判断3:「いただけると」「いただければ」「いただけますと」は、どれがよい?

意味は同じです。「いただけますと」は、「ます」が入るぶん、ていねいな調子になります。辞書の用例は「いただければ幸いです」の形です。どれかが誤りということはありません。一通の中で形をそろえると、読みやすくなります。

判断4:相手から「〜いただけますと幸いです」と届いたら?

自分が受け取る側のときは、「任意」と読まず、依頼として受け取ります。書いた人は、やわらげて書いただけで、やってほしいと思っていることがあるからです。すぐにできないときは、「◯月◯日(◯)までにお送りします」と、できる日を先に返信します。返信の順番は、ビジネスメールの返信にまとめています。

失敗1:期限があるのに「幸いです」で送り、返事が来ない

その場では:相手を責める催促にしません。期限を書かなかったのは、こちらだからです。「先日お送りしたお見積もりの件で、ご連絡しました。こちらから期限をお伝えしておらず、失礼いたしました。手配の都合で、◯月◯日(◯)までにご返信をお願いできますでしょうか」と、書き漏らしたことと、期限と、理由を伝え直します(説明用の例です)。

後の記録:「期限があるのに『幸いです』で送った。次からは、送る前に、頼みごとを『できれば』と『期限あり』に分ける」と、次の手順の形で残します。上司には、返事が遅れていることと、伝え直した期限を報告します。

失敗2:強く書きすぎて、相手の返事が固くなった

その場では:期限だけを書いて、理由を書かなかったときに起きやすい失敗です。次の連絡で、理由を足します。「期日をお願いしたのは、ご希望の納期に間に合わせるためでした。説明が足りず、失礼いたしました」と、短く伝えます(説明用の例です)。期限そのものは、必要なら変えません。

後の記録:「期限には、理由を一文添える」と書きます。期限の日・理由・相手の返事の3つを残しておくと、次に同じ相手へ頼むときの目安になります。

失敗3:「ご了承」「ご容赦」「ご教示」を取り違えて送った

その場では:意味が通じていれば、言葉を直すためだけのメールは送りません。相手にもう一通読ませることになるからです。ただし、返事が要る用件を「ご承知おきください」で送ってしまったなど、相手の次の行動が変わる取り違えは、追って送ります。「先ほどの件、ご返信をいただきたい内容でした。書き方が分かりにくく、失礼いたしました」と書きます(説明用の例です)。

後の記録:取り違えた言葉と、正しい使い分けを一行で書きます。「了承=受け入れてもらう。容赦=ゆるしてもらう」のような形です。

今日やることは一つです。今日送る依頼のメール一通について、頼みごとを「できれば」と「期限あり」に分け、期限のあるものは日付と「お願いいたします」で書いてください。

「ご教示いただけますと幸いです」の「ご教示」は、「ご教示」の意味とご教授との違いにまとめています。

「幸いに存じます」の「存じます」は、「存じます」の意味と使い方にまとめています。

YOUR TURN

自分の一件で、書いてみよう。

手元に用意するもの
これから送る依頼のメールの下書き。返事や作業の期限が分かるメモ。

記入例を見る(説明用)

頼むこと=[会社名]の[担当者名]様に、①見積の内容を確認してもらう ②設置する場所の写真を、あれば送ってもらう/「できれば」か「期限あり」か=①は期限あり。◯月◯日(◯)まで。その日を過ぎると、希望の納期に間に合う便の手配ができないため。②は「できれば」。写真がなくても見積は出せる/頼む中身に合う言葉=①は見て確かめてもらうので「ご確認」。②は「お送りいただけますと幸いです」/書いた依頼の文=「◯月◯日(◯)までに、お見積もりの内容で進めてよいかどうか、ご返信をお願いいたします。ご希望の納期に間に合う便の手配が、この日までとなっております。あわせて、設置する場所の写真がお手元にございましたら、お送りいただけますと幸いです」/「幸いです」の回数と、直した所=下書きでは①も②も「幸いです」で書いていた。①を、日付と「お願いいたします」に直し、理由を一文足した。「幸いです」は②の1回だけになった。

入力は自動保存されません。ページを移動する前に保存してください。保存した内容は他の人に自動送信されません。

CHECK

ここまでできたら、次へ。

頼みごとが「できれば」と「期限あり」に分けてあり、期限のあるものには日付と理由が書いてあり、「幸いです」が一通に一回になっている。

うまく進まなかったときは?

「できれば」か「期限あり」かを決められなければ、「相手がやらなかったら、自分の次の作業は止まるか」を考える。止まるなら「期限あり」。期限の日が分からなければ、上司に「A社の返事は、いつまでに要りますか」と聞く。強く書きすぎたか心配なら、期限の理由を一文足す。

NEXT NOTE

次に読むなら

「お手数をおかけしますが」の使い方を確かめる「取り急ぎ」の使い方を確かめる返事が来ないときの催促メールを書く