NOTE 106 · 営業の実践ノート
「よろしくお願いいたします」の意味と使い方:何をお願いするのかを、一つ前の文で書く
公開:2026年10月3日
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「よろしくお願いいたします」の「よろしく」は、辞書では「人に好意を示したり、何かを頼んだりするときに添える語。」と説明されています。頼む中身そのものは、この言葉には入っていません。だから、何をお願いしているのかを、一つ前の文で書いておくと、相手は迷わずに動けます。この記事では、「お願いします」「お願いいたします」「お願い申し上げます」の違い、「何卒」「今後とも」「引き続き」を付けたときの意味、漢字で書くかどうかを、辞書と文化庁の資料で確かめながら説明します。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに メールの結びが毎回「よろしくお願いいたします」になり、「何卒」や「申し上げます」とどう使い分ければよいか迷うとき。
- 1
相手にしてほしいことを、一つ決める
- 2
してほしいことと期限を、結びの一つ前の文に書く
- 3
相手と場面に合わせて、結びの形を一つ選ぶ
- 4
同じ結びが重なっていないかを読み返してから送る
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
「よろしくお願いいたします」の意味:辞書の語釈で確かめる
メールを書き終えて、最後に「よろしくお願いいたします」と打つ。毎日のように使う言葉ですが、「何をよろしくなのか」と聞かれると、答えにつまることがあります。先に、言葉の意味を辞書で確かめます。「 」の中は、辞書の文をそのまま写したものです。
デジタル大辞泉「宜しく」は、「よろしく」を形容詞「よろしい」の連用形からできた副詞と説明し、5つの意味を挙げています。そのうち、仕事のメールに関わるのは次の2つです。
- 1番目:「ちょうどよいぐあいに。程よく。適当に。」(例として「宜しく取り計らってくれ」)
- 2番目:「人に好意を示したり、何かを頼んだりするときに添える語。」(例として「宜しく御指導下さい」「宜しくお願いいたします」)
「よろしくお願いいたします」は、辞書が2番目の意味の例として挙げている形です。ここで見ておきたいのは、「添える語」という説明です。「よろしく」は、頼みごとに添える言葉で、頼む中身そのものは入っていません。中身が前に書かれていないと、相手は本文を読み返して、自分で推測することになります。
この記事では、言葉の形の違いと、付ける言葉の意味を確かめたうえで、何をお願いしているのかを一つ前の文で書くやり方を説明します。結びの一文を場面ごとにどう決めるかは、ビジネスメールの締めにまとめているので、この記事では「よろしくお願いいたします」という言葉そのものを扱います。
「お願いします」「お願いいたします」「お願い申し上げます」の違い
三つの形の違いは、文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日・文化庁)の敬語の分け方で説明できます。指針は敬語を5種類に分けています。関わるのは、謙譲語Ⅰ、謙譲語Ⅱ(丁重語)、丁寧語の3つです。
- 謙譲語Ⅰ:「自分側から相手側又は第三者に向かう行為・ものごとなどについて,その向かう先の人物を立てて述べるもの。」(指針15ページ)
- 謙譲語Ⅱ(丁重語):「自分側の行為・ものごとなどを,話や文章の相手に対して丁重に述べるもの。」(指針18ページ)。該当する語の例に「いたす」が挙げられています。
- 丁寧語:「話や文章の相手に対して丁寧に述べるもの。」(指針20ページ)。「です」「ます」がこれに当たります。
指針は、謙譲語Ⅰの一般的な形の主な例として「お(ご)……する」「お(ご)……申し上げる」を挙げています(指針27ページ)。また、「お(ご)……いたす」については、「両方の性質を併せ持つ敬語として「お(ご)……いたす」がある。」(指針20ページ)と書いています。両方とは、謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱのことです。これを「お願い」に当てはめると、次の表になります。
| 形 | 元になる形 | 敬語の種類(指針の分け方) | 働き |
|---|---|---|---|
| お願いします | お……する+ます | 謙譲語Ⅰ+丁寧語 | お願いする先の相手を立てる |
| お願いいたします | お……いたす+ます | 謙譲語Ⅰ兼謙譲語Ⅱ+丁寧語 | 相手を立て、さらに読み手に丁重に述べる |
| お願い申し上げます | お……申し上げる+ます | 謙譲語Ⅰ+丁寧語 | お願いする先の相手を立てる |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
「お(ご)……いたす」の働きを、指針は「自分側から相手側又は第三者に向かう行為について,その向かう先の人物を立てるとともに,話や文章の相手に対して丁重に述べる」(指針20ページ)と説明しています。「お願いします」に、丁重に述べる働きが足された形が「お願いいたします」です。
「申し上げる」については、デジタル大辞泉「申上げる」の2番目に、「「お」や「御」の付いた自分の行為を表す体言に付けて、その行為の対象を敬う。」とあります。「お願い申し上げます」は、この使い方です。
三つとも、相手を立てる敬語の形です。指針には、この三つを丁寧さの順に並べた記述は見当たりませんでした。次の表は、決まりではなく、選び方の一例です。
| 相手・場面 | 選ばれることが多い形(一例) | そう選ぶ理由 |
|---|---|---|
| 社内の先輩・同僚への日々の連絡 | よろしくお願いします | 相手を立てる形にはなっている。やり取りが多い相手に、重くなりすぎない |
| 取引先への日々のメール | よろしくお願いいたします | 丁重に述べる働きが加わる。相手がどう受け取るか分からないときに選びやすい |
| 挨拶状、お詫び、無理なお願い、あらたまった文書 | よろしくお願い申し上げます | あらたまった文書で使われることが多い形。文全体の調子をそろえやすい |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
職場に決まった形があれば、そちらを先にします。迷ったら、先輩が同じ相手へ送っているメールの結びに合わせます。尊敬語と謙譲語の見分け方は、尊敬語と謙譲語の違いにまとめています。
「何卒」「今後とも」「引き続き」を付けたとき
「よろしくお願いいたします」の前に付ける言葉にも、それぞれ意味があります。辞書の語釈を並べます。
| 言葉 | 辞書の語釈 | 合う場面(一例) |
|---|---|---|
| 何卒(なにとぞ) | 「相手に強く願う気持ちを表す。どうぞ。どうか。」(デジタル大辞泉「何卒」の1番目) | 相手に手間や無理をお願いするとき。お詫びの結び |
| 今後(とも) | 「今からのち。こののち。以後。」(デジタル大辞泉「今後」) | 取引や案件が一区切りしたとき。お礼や挨拶の結び |
| 引き続き | 「続けざまに。途切れることなく。」(デジタル大辞泉「引続き」の副詞の1番目) | 進んでいる途中の案件で、やり取りがこの後も続くとき |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
「何卒」は、強く願う言葉
「何卒」は、辞書に「強く願う気持ち」とあるとおり、お願いを強める言葉です。日々の連絡のたびに付けると、どのメールも強いお願いに見え、本当に無理をお願いしたいときとの差がなくなります。相手に負担をかける場面に取っておくと、言葉の意味と合います。
「今後とも」は、これから先の付き合いをお願いする言葉
「今後」は「今からのち」です。デジタル大辞泉は、「今後」の例として「今後もよろしく願います」を挙げています。目の前の用件ではなく、これから先の関係をお願いする形です。納品が終わった後のお礼や、年末の挨拶の結びに合います。
「引き続き」は、続いている途中で使う言葉
「引き続き」は「途切れることなく」です。すでに始まっているやり取りが、この後も続くときに合います。打ち合わせを重ねている案件の途中のメールで、「引き続き、よろしくお願いいたします」と結ぶ形です。
初めての相手には、まだ続いているものがありません。「敬語の指針」は、初対面のあいさつの例として「初めてお目に掛かります。○○と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。」(指針53ページ)という形を挙げています。初めての相手へのメールでは、「どうぞよろしくお願いいたします」のように結ぶ形が使えます。書き方の全体は、はじめましてのビジネスメールにまとめています。
「宜しく」「致します」と漢字で書く?
「宜しくお願い致します」と漢字で書いたメールを見て、どちらが正しいのか迷う人がいます。会社のメールについて、表記を決めた公的な決まりは見当たりません。手がかりとして、国の役所の文書(公用文)の書き方をまとめた文化審議会建議「公用文作成の考え方」(令和4年1月7日)の解説を見ます。
「宜しく」について。この解説は、常用漢字表の字種・音訓で書き表せない語について、「訓による語は平仮名で書く。」(解説9ページ・PDFの21枚目)とし、その例の一つに「宜しく→よろしく」を挙げています。公用文では、「よろしく」は平仮名で書く語として扱われています。
「致します」について。同じ解説は、常用漢字表に使える漢字があっても仮名で書く場合として、「動詞・形容詞などの補助的な用法」を挙げています(解説11ページ・PDFの23枚目)。例は「~(し)て頂く→ていただく」「~(し)て下さる→てくださる」などです。この例の中に、「致す」は入っていません。「お願いいたします」の「いたします」を漢字で書くかどうかは、この資料に、そのままの形では書かれていませんでした。
確かめられたことを、もう一つ書きます。この建議の本文には、「「おります」「いたします」などは必要に応じて使うが多用しない。」(PDFの8枚目)という一文があります。この文書自身は、「いたします」を平仮名で書いています。
これは国の役所の文書についての考え方で、会社のメールを縛る決まりではありません。「致します」と書くと誤りだ、とは言い切れません。
自分で決めるときの基準は、次の順です。
- 会社に表記の決まりがあれば、それに従う。文書の手引きや、署名・定型文のひな形があるかを先輩に聞きます。
- 決まりがなければ、先輩のメールに合わせる。同じ会社から届くメールの表記がそろっていると、相手は引っかからずに読めます。
- それも無ければ、平仮名で「よろしくお願いいたします」と書く。公用文の考え方と同じ向きで、どちらの書き方を習った相手にも、読みにくさが出にくい形です。
メールの例:何をお願いするのかを、一つ前の文で書く
「敬語の指針」は、同僚から突然「これ,お願いします。」と書類を置いていかれた、という例を取り上げ、「何かを頼むということは,相手には負担の掛かることだと考えられる。」(指針49ページ)と書いています。お願いは、相手に負担をかける行動です。何を頼んでいるのかが分からないお願いは、相手に「読み取る」という負担を、さらに足すことになります。
手順は、次の3つです。
- 相手にしてほしいことを、一つ決める。返信する、資料を見る、日程を選ぶ、社内で話してもらう、何もしなくてよい、のどれなのかを決めます。決めずに書くと、結びが言葉だけになります。
- してほしいことと期限を、結びの一つ前の文に書く。「◯月◯日(◯)までに、数量に変更がないかをご返信いただけますでしょうか」のように、何を・いつまでに・どうする、を一文にします(説明用の例です)。
- その後に、「よろしくお願いいたします」を一度だけ添える。前の文で頼む中身が決まっているので、「よろしく」は、辞書のとおり「添える語」として働きます。
次の3つは、取引先へ見積書を送るメールの結びを比べた、説明用の例です。
- 惜しい例1:「見積書を添付いたします。よろしくお願いいたします。」
- 惜しい例2:「ご確認のほど、よろしくお願いいたします。お手数をおかけしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。今後ともよろしくお願いいたします。」
- 良い例:「お手数ですが、◯月◯日(◯)までに、数量と納期に変更がないかをご返信いただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。」
惜しい例1は、見積書を見た後に何をすればよいのかが、書かれていません。
惜しい例2は、「よろしく」が三度出てきます。言葉が重なるほど、してほしいことが文の中にうもれます。今回の用件のお願いなのか、これから先の付き合いのお願いなのかも、分かりにくくなります。
良い例は、何を・いつまでに・どうするが一つ前の文に入っていて、結びは一度だけです。
結びまで入れた例を、二つ並べます(説明用の例です)。
例1:進んでいる途中の案件で、確認をお願いする
A社 佐藤様
お世話になっております。[自社名]の[氏名]です。
先日のお打ち合わせの内容をもとに、見積書を作成しました。添付にてお送りします。
お手数ですが、◯月◯日(◯)までに、数量と納期に変更がないかをご返信いただけますでしょうか。
引き続き、よろしくお願いいたします。
[署名]
やり取りが続いている案件なので、「引き続き」を付けています。頼む中身は、一つ前の文に書いてあります。「ご確認のほど」を使う形は、「ご確認のほどよろしくお願いいたします」の意味と使い方にまとめています。
例2:無理をお願いする
A社 佐藤様
お世話になっております。[自社名]の[氏名]です。
◯月◯日(◯)納品分について、ご相談があり、ご連絡しました。
こちらの手配の都合で、納品を◯月◯日(◯)の午前に変更させていただけないでしょうか。ご予定に差し支える場合は、お知らせください。別の方法を、こちらで考えます。
勝手なお願いで申し訳ございませんが、何卒よろしくお願い申し上げます。
[署名]
相手に負担をかけるお願いなので、「何卒」と「お願い申し上げます」を選んでいます。お願いの前置きの選び方は、「お手数をおかけしますが」の意味と使い方にまとめています。こちらの都合で予定を変えるようなお願いは、送る前に上司に下書きを見せます。
迷いやすい判断と、間違えたあと
判断1:一通の中で、何回まで使ってよい?
回数を決めた公的な決まりは見当たりません。基準は、お願いが、いくつあるかです。お願いが一つなら、結びに一度で足ります。本文の途中にも書いてあったら、途中のほうを「添付の資料をご確認ください」のように、してほしい行動そのものの文に直します。
判断2:社内の上司や先輩には、どの形?
指針の分け方では、「お願いします」も相手を立てる形です。社内で「お願いします」を使う職場も、「お願いいたします」にそろえる職場もあります。基準は、その職場で、先輩が上司にどう書いているかです。配属されたら、先輩が上司へ送ったメールを一通見せてもらうと、迷いが減ります。社内でのあいさつの言葉は、「お疲れ様です」の使い方も見てください。
判断3:「よろしくお願いいたします」以外の結びにしたほうがよい?
言い換えを増やすことより、前の一文を書くことのほうが、相手の役に立ちます。返事を強く求めないお願いには「〜いただけますと幸いです」、相手の体を気づかう結びには「ご自愛ください」があります。それぞれ、「幸いです」の意味と使い方、「ご自愛ください」の使い方にまとめています。
間違えたあと:してほしいことを書かずに送り、返事が来ない
その場では:相手は、返事が要ると知らないだけかもしれません。責める言葉は入れず、してほしいことと期限を足して送ります。「先日お送りした見積書の件で、ご連絡しました。◯月◯日(◯)までに、数量と納期に変更がないかをお知らせいただけますでしょうか。先のメールで期日をお伝えしておらず、失礼いたしました」のような形です(説明用の例です)。文面は、催促メールの書き方も見てください。
後の記録:「結びが『よろしくお願いいたします』だけだった。次からは、送る前に、結びの一つ前の文に、してほしいことと日付があるかを見る」と書きます(説明用の例です)。
今日やることは一つです。これから送るメールを一通決め、結びの「よろしくお願いいたします」の一つ前に、相手にしてほしいことと期限を一文で書いてください。
「何卒」を付けるかどうかの決め方は、「何卒」の意味と使い方にくわしくまとめています。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
これから送るメールの下書き。同じ相手に、前に送ったメール(結びの形を見るため)。職場の先輩が送ったメール(言葉づかいと表記を見るため)。
記入例を見る(説明用)
送る相手と、メールの用件=A社の佐藤様。何度かやり取りのある相手。見積書を添付して送る/相手にしてほしいこと(一つ)と、期限=数量と納期に変更がないかを見て、返信してほしい。社内の手配があるので、◯月◯日(◯)まで/結びの一つ前に書く文=「お手数ですが、◯月◯日(◯)までに、数量と納期に変更がないかをご返信いただけますでしょうか。」/結びの形と、選んだ理由=「よろしくお願いいたします。」にした。先輩が佐藤様へ送るメールが、この形だったので合わせた。「何卒」は、今回は相手に無理をお願いする内容ではないので、付けなかった/読み返して直した所=本文の途中にも「ご確認のほど、よろしくお願いいたします」と書いていて、結びと重なっていた。途中のほうを「添付の見積書をご確認ください」に直した。「宜しく」と漢字で書いていたのを、ひらがなに直した。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
結びの「よろしくお願いいたします」の一つ前に、相手にしてほしいことと期限が一文で書いてあり、同じ結びが一通の中で重なっていない。
うまく進まなかったときは?
してほしいことが書けなければ、「このメールを読んだ後、相手に何をしてもらえば自分は次に進めるか」を一つ書き出す。結びの形で迷うなら、先輩が同じ相手へ送ったメールの形に合わせる。相手に無理を頼む内容なら、送る前に上司に下書きを見せる。