NUSSI’S SALES NOTEウッシの営業ノート

NOTE 106 · 営業の実践ノート

「よろしくお願いいたします」の意味と使い方:何をお願いするのかを、一つ前の文で書く

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「よろしくお願いいたします」の「よろしく」は、辞書では「人に好意を示したり、何かを頼んだりするときに添える語。」と説明されています。頼む中身そのものは、この言葉には入っていません。だから、何をお願いしているのかを、一つ前の文で書いておくと、相手は迷わずに動けます。この記事では、「お願いします」「お願いいたします」「お願い申し上げます」の違い、「何卒」「今後とも」「引き続き」を付けたときの意味、漢字で書くかどうかを、辞書と文化庁の資料で確かめながら説明します。

今日できるようになること

これから送るメールを一通決め、結びの「よろしくお願いいたします」の一つ前に、相手にしてほしいことと期限を一文で書く。

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こんなときに メールの結びが毎回「よろしくお願いいたします」になり、「何卒」や「申し上げます」とどう使い分ければよいか迷うとき。

この順番で進めよう
  1. 1

    相手にしてほしいことを、一つ決める

  2. 2

    してほしいことと期限を、結びの一つ前の文に書く

  3. 3

    相手と場面に合わせて、結びの形を一つ選ぶ

  4. 4

    同じ結びが重なっていないかを読み返してから送る

会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。

「よろしくお願いいたします」の意味:辞書の語釈で確かめる

メールを書き終えて、最後に「よろしくお願いいたします」と打つ。毎日のように使う言葉ですが、「何をよろしくなのか」と聞かれると、答えにつまることがあります。先に、言葉の意味を辞書で確かめます。「 」の中は、辞書の文をそのまま写したものです。

デジタル大辞泉「宜しく」は、「よろしく」を形容詞「よろしい」の連用形からできた副詞と説明し、5つの意味を挙げています。そのうち、仕事のメールに関わるのは次の2つです。

  • 1番目:「ちょうどよいぐあいに。程よく。適当に。」(例として「宜しく取り計らってくれ」)
  • 2番目:「人に好意を示したり、何かを頼んだりするときに添える語。」(例として「宜しく御指導下さい」「宜しくお願いいたします」)

「よろしくお願いいたします」は、辞書が2番目の意味の例として挙げている形です。ここで見ておきたいのは、「添える語」という説明です。「よろしく」は、頼みごとに添える言葉で、頼む中身そのものは入っていません。中身が前に書かれていないと、相手は本文を読み返して、自分で推測することになります。

この記事では、言葉の形の違いと、付ける言葉の意味を確かめたうえで、何をお願いしているのかを一つ前の文で書くやり方を説明します。結びの一文を場面ごとにどう決めるかは、ビジネスメールの締めにまとめているので、この記事では「よろしくお願いいたします」という言葉そのものを扱います。

「お願いします」「お願いいたします」「お願い申し上げます」の違い

三つの形の違いは、文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日・文化庁)の敬語の分け方で説明できます。指針は敬語を5種類に分けています。関わるのは、謙譲語Ⅰ、謙譲語Ⅱ(丁重語)、丁寧語の3つです。

  • 謙譲語Ⅰ:「自分側から相手側又は第三者に向かう行為・ものごとなどについて,その向かう先の人物を立てて述べるもの。」(指針15ページ)
  • 謙譲語Ⅱ(丁重語):「自分側の行為・ものごとなどを,話や文章の相手に対して丁重に述べるもの。」(指針18ページ)。該当する語の例に「いたす」が挙げられています。
  • 丁寧語:「話や文章の相手に対して丁寧に述べるもの。」(指針20ページ)。「です」「ます」がこれに当たります。

指針は、謙譲語Ⅰの一般的な形の主な例として「お(ご)……する」「お(ご)……申し上げる」を挙げています(指針27ページ)。また、「お(ご)……いたす」については、「両方の性質を併せ持つ敬語として「お(ご)……いたす」がある。」(指針20ページ)と書いています。両方とは、謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱのことです。これを「お願い」に当てはめると、次の表になります。

形元になる形敬語の種類(指針の分け方)働き
お願いしますお……する+ます謙譲語Ⅰ+丁寧語お願いする先の相手を立てる
お願いいたしますお……いたす+ます謙譲語Ⅰ兼謙譲語Ⅱ+丁寧語相手を立て、さらに読み手に丁重に述べる
お願い申し上げますお……申し上げる+ます謙譲語Ⅰ+丁寧語お願いする先の相手を立てる

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

「お(ご)……いたす」の働きを、指針は「自分側から相手側又は第三者に向かう行為について,その向かう先の人物を立てるとともに,話や文章の相手に対して丁重に述べる」(指針20ページ)と説明しています。「お願いします」に、丁重に述べる働きが足された形が「お願いいたします」です。

「申し上げる」については、デジタル大辞泉「申上げる」の2番目に、「「お」や「御」の付いた自分の行為を表す体言に付けて、その行為の対象を敬う。」とあります。「お願い申し上げます」は、この使い方です。

三つとも、相手を立てる敬語の形です。指針には、この三つを丁寧さの順に並べた記述は見当たりませんでした。次の表は、決まりではなく、選び方の一例です。

相手・場面選ばれることが多い形(一例)そう選ぶ理由
社内の先輩・同僚への日々の連絡よろしくお願いします相手を立てる形にはなっている。やり取りが多い相手に、重くなりすぎない
取引先への日々のメールよろしくお願いいたします丁重に述べる働きが加わる。相手がどう受け取るか分からないときに選びやすい
挨拶状、お詫び、無理なお願い、あらたまった文書よろしくお願い申し上げますあらたまった文書で使われることが多い形。文全体の調子をそろえやすい

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

職場に決まった形があれば、そちらを先にします。迷ったら、先輩が同じ相手へ送っているメールの結びに合わせます。尊敬語と謙譲語の見分け方は、尊敬語と謙譲語の違いにまとめています。

「何卒」「今後とも」「引き続き」を付けたとき

「よろしくお願いいたします」の前に付ける言葉にも、それぞれ意味があります。辞書の語釈を並べます。

言葉辞書の語釈合う場面(一例)
何卒(なにとぞ)「相手に強く願う気持ちを表す。どうぞ。どうか。」(デジタル大辞泉「何卒」の1番目)相手に手間や無理をお願いするとき。お詫びの結び
今後(とも)「今からのち。こののち。以後。」(デジタル大辞泉「今後」)取引や案件が一区切りしたとき。お礼や挨拶の結び
引き続き「続けざまに。途切れることなく。」(デジタル大辞泉「引続き」の副詞の1番目)進んでいる途中の案件で、やり取りがこの後も続くとき

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

「何卒」は、強く願う言葉

「何卒」は、辞書に「強く願う気持ち」とあるとおり、お願いを強める言葉です。日々の連絡のたびに付けると、どのメールも強いお願いに見え、本当に無理をお願いしたいときとの差がなくなります。相手に負担をかける場面に取っておくと、言葉の意味と合います。

「今後とも」は、これから先の付き合いをお願いする言葉

「今後」は「今からのち」です。デジタル大辞泉は、「今後」の例として「今後もよろしく願います」を挙げています。目の前の用件ではなく、これから先の関係をお願いする形です。納品が終わった後のお礼や、年末の挨拶の結びに合います。

「引き続き」は、続いている途中で使う言葉

「引き続き」は「途切れることなく」です。すでに始まっているやり取りが、この後も続くときに合います。打ち合わせを重ねている案件の途中のメールで、「引き続き、よろしくお願いいたします」と結ぶ形です。

初めての相手には、まだ続いているものがありません。「敬語の指針」は、初対面のあいさつの例として「初めてお目に掛かります。○○と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。」(指針53ページ)という形を挙げています。初めての相手へのメールでは、「どうぞよろしくお願いいたします」のように結ぶ形が使えます。書き方の全体は、はじめましてのビジネスメールにまとめています。

「宜しく」「致します」と漢字で書く?

「宜しくお願い致します」と漢字で書いたメールを見て、どちらが正しいのか迷う人がいます。会社のメールについて、表記を決めた公的な決まりは見当たりません。手がかりとして、国の役所の文書(公用文)の書き方をまとめた文化審議会建議「公用文作成の考え方」(令和4年1月7日)の解説を見ます。

「宜しく」について。この解説は、常用漢字表の字種・音訓で書き表せない語について、「訓による語は平仮名で書く。」(解説9ページ・PDFの21枚目)とし、その例の一つに「宜しく→よろしく」を挙げています。公用文では、「よろしく」は平仮名で書く語として扱われています。

「致します」について。同じ解説は、常用漢字表に使える漢字があっても仮名で書く場合として、「動詞・形容詞などの補助的な用法」を挙げています(解説11ページ・PDFの23枚目)。例は「~(し)て頂く→ていただく」「~(し)て下さる→てくださる」などです。この例の中に、「致す」は入っていません。「お願いいたします」の「いたします」を漢字で書くかどうかは、この資料に、そのままの形では書かれていませんでした。

確かめられたことを、もう一つ書きます。この建議の本文には、「「おります」「いたします」などは必要に応じて使うが多用しない。」(PDFの8枚目)という一文があります。この文書自身は、「いたします」を平仮名で書いています。

これは国の役所の文書についての考え方で、会社のメールを縛る決まりではありません。「致します」と書くと誤りだ、とは言い切れません。

自分で決めるときの基準は、次の順です。

  1. 会社に表記の決まりがあれば、それに従う。文書の手引きや、署名・定型文のひな形があるかを先輩に聞きます。
  2. 決まりがなければ、先輩のメールに合わせる。同じ会社から届くメールの表記がそろっていると、相手は引っかからずに読めます。
  3. それも無ければ、平仮名で「よろしくお願いいたします」と書く。公用文の考え方と同じ向きで、どちらの書き方を習った相手にも、読みにくさが出にくい形です。

メールの例:何をお願いするのかを、一つ前の文で書く

「敬語の指針」は、同僚から突然「これ,お願いします。」と書類を置いていかれた、という例を取り上げ、「何かを頼むということは,相手には負担の掛かることだと考えられる。」(指針49ページ)と書いています。お願いは、相手に負担をかける行動です。何を頼んでいるのかが分からないお願いは、相手に「読み取る」という負担を、さらに足すことになります。

手順は、次の3つです。

  1. 相手にしてほしいことを、一つ決める。返信する、資料を見る、日程を選ぶ、社内で話してもらう、何もしなくてよい、のどれなのかを決めます。決めずに書くと、結びが言葉だけになります。
  2. してほしいことと期限を、結びの一つ前の文に書く。「◯月◯日(◯)までに、数量に変更がないかをご返信いただけますでしょうか」のように、何を・いつまでに・どうする、を一文にします(説明用の例です)。
  3. その後に、「よろしくお願いいたします」を一度だけ添える。前の文で頼む中身が決まっているので、「よろしく」は、辞書のとおり「添える語」として働きます。

次の3つは、取引先へ見積書を送るメールの結びを比べた、説明用の例です。

  • 惜しい例1:「見積書を添付いたします。よろしくお願いいたします。」
  • 惜しい例2:「ご確認のほど、よろしくお願いいたします。お手数をおかけしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。今後ともよろしくお願いいたします。」
  • 良い例:「お手数ですが、◯月◯日(◯)までに、数量と納期に変更がないかをご返信いただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。」

惜しい例1は、見積書を見た後に何をすればよいのかが、書かれていません。

惜しい例2は、「よろしく」が三度出てきます。言葉が重なるほど、してほしいことが文の中にうもれます。今回の用件のお願いなのか、これから先の付き合いのお願いなのかも、分かりにくくなります。

良い例は、何を・いつまでに・どうするが一つ前の文に入っていて、結びは一度だけです。

結びまで入れた例を、二つ並べます(説明用の例です)。

例1:進んでいる途中の案件で、確認をお願いする

A社 佐藤様

お世話になっております。[自社名]の[氏名]です。

先日のお打ち合わせの内容をもとに、見積書を作成しました。添付にてお送りします。

お手数ですが、◯月◯日(◯)までに、数量と納期に変更がないかをご返信いただけますでしょうか。

引き続き、よろしくお願いいたします。

[署名]

やり取りが続いている案件なので、「引き続き」を付けています。頼む中身は、一つ前の文に書いてあります。「ご確認のほど」を使う形は、「ご確認のほどよろしくお願いいたします」の意味と使い方にまとめています。

例2:無理をお願いする

A社 佐藤様

お世話になっております。[自社名]の[氏名]です。

◯月◯日(◯)納品分について、ご相談があり、ご連絡しました。

こちらの手配の都合で、納品を◯月◯日(◯)の午前に変更させていただけないでしょうか。ご予定に差し支える場合は、お知らせください。別の方法を、こちらで考えます。

勝手なお願いで申し訳ございませんが、何卒よろしくお願い申し上げます。

[署名]

相手に負担をかけるお願いなので、「何卒」と「お願い申し上げます」を選んでいます。お願いの前置きの選び方は、「お手数をおかけしますが」の意味と使い方にまとめています。こちらの都合で予定を変えるようなお願いは、送る前に上司に下書きを見せます。

迷いやすい判断と、間違えたあと

判断1:一通の中で、何回まで使ってよい?

回数を決めた公的な決まりは見当たりません。基準は、お願いが、いくつあるかです。お願いが一つなら、結びに一度で足ります。本文の途中にも書いてあったら、途中のほうを「添付の資料をご確認ください」のように、してほしい行動そのものの文に直します。

判断2:社内の上司や先輩には、どの形?

指針の分け方では、「お願いします」も相手を立てる形です。社内で「お願いします」を使う職場も、「お願いいたします」にそろえる職場もあります。基準は、その職場で、先輩が上司にどう書いているかです。配属されたら、先輩が上司へ送ったメールを一通見せてもらうと、迷いが減ります。社内でのあいさつの言葉は、「お疲れ様です」の使い方も見てください。

判断3:「よろしくお願いいたします」以外の結びにしたほうがよい?

言い換えを増やすことより、前の一文を書くことのほうが、相手の役に立ちます。返事を強く求めないお願いには「〜いただけますと幸いです」、相手の体を気づかう結びには「ご自愛ください」があります。それぞれ、「幸いです」の意味と使い方、「ご自愛ください」の使い方にまとめています。

間違えたあと:してほしいことを書かずに送り、返事が来ない

その場では:相手は、返事が要ると知らないだけかもしれません。責める言葉は入れず、してほしいことと期限を足して送ります。「先日お送りした見積書の件で、ご連絡しました。◯月◯日(◯)までに、数量と納期に変更がないかをお知らせいただけますでしょうか。先のメールで期日をお伝えしておらず、失礼いたしました」のような形です(説明用の例です)。文面は、催促メールの書き方も見てください。

後の記録:「結びが『よろしくお願いいたします』だけだった。次からは、送る前に、結びの一つ前の文に、してほしいことと日付があるかを見る」と書きます(説明用の例です)。

今日やることは一つです。これから送るメールを一通決め、結びの「よろしくお願いいたします」の一つ前に、相手にしてほしいことと期限を一文で書いてください。

「何卒」を付けるかどうかの決め方は、「何卒」の意味と使い方にくわしくまとめています。

YOUR TURN

自分の一件で、書いてみよう。

手元に用意するもの
これから送るメールの下書き。同じ相手に、前に送ったメール(結びの形を見るため)。職場の先輩が送ったメール(言葉づかいと表記を見るため)。

記入例を見る(説明用)

送る相手と、メールの用件=A社の佐藤様。何度かやり取りのある相手。見積書を添付して送る/相手にしてほしいこと(一つ)と、期限=数量と納期に変更がないかを見て、返信してほしい。社内の手配があるので、◯月◯日(◯)まで/結びの一つ前に書く文=「お手数ですが、◯月◯日(◯)までに、数量と納期に変更がないかをご返信いただけますでしょうか。」/結びの形と、選んだ理由=「よろしくお願いいたします。」にした。先輩が佐藤様へ送るメールが、この形だったので合わせた。「何卒」は、今回は相手に無理をお願いする内容ではないので、付けなかった/読み返して直した所=本文の途中にも「ご確認のほど、よろしくお願いいたします」と書いていて、結びと重なっていた。途中のほうを「添付の見積書をご確認ください」に直した。「宜しく」と漢字で書いていたのを、ひらがなに直した。

入力は自動保存されません。ページを移動する前に保存してください。保存した内容は他の人に自動送信されません。

CHECK

ここまでできたら、次へ。

結びの「よろしくお願いいたします」の一つ前に、相手にしてほしいことと期限が一文で書いてあり、同じ結びが一通の中で重なっていない。

うまく進まなかったときは?

してほしいことが書けなければ、「このメールを読んだ後、相手に何をしてもらえば自分は次に進めるか」を一つ書き出す。結びの形で迷うなら、先輩が同じ相手へ送ったメールの形に合わせる。相手に無理を頼む内容なら、送る前に上司に下書きを見せる。

NEXT NOTE

次に読むなら

メールの締めを、場面で決める「ご確認のほど」の使い方を確かめるメール全体の組み立てを確かめる