NOTE 122 · 営業の実践ノート
「ご愛顧」の意味と使い方:買っていただいている側が、お礼とお願いに使う言葉
公開:2026年10月3日
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「ご愛顧」は「ごあいこ」と読みます。辞書は「愛顧」を「目をかけ引き立てること。引き立てられる側からいう語。」と説明しています。買っていただいている側が、買ってくださる相手へ、お礼とお願いを伝えるときに使う言葉です。この記事では、辞書の語釈をもとに、使える立場、あいさつ文での形、似た言葉との違い、案内文の例を説明します。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 年末年始・移転・値上げ・周年などの案内文を任され、「ご愛顧」をどこに、どの相手に使えばよいか迷うとき。
- 1
案内を送る相手が、買ってくださる側かを確かめる
- 2
書き出しに、これまでのお礼の一文を書く
- 3
何が・いつから・どう変わるかを書く
- 4
結びに、これからのお願いを一文で書き、上司に見せる
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
「ご愛顧」の意味と読み
移転の案内や年末の挨拶状で、「平素は格別のご愛顧を賜り」という書き出しを見かけます。去年の文書を写して出す前に、言葉の意味を辞書で確かめます。「 」の中は、辞書の文をそのまま写したものです。
読みは「あいこ」です。「ご」を付けて「ごあいこ」と読みます。デジタル大辞泉「愛顧」の語釈は、次のとおりです。
- 「目をかけ引き立てること。引き立てられる側からいう語。ひいき。」(例として「今後ともいっそうの御愛顧を賜りますよう」)
同じページの精選版 日本国語大辞典は、もう少し詳しく書いています。
- 「商人や芸人、あるいは目下の者をひいきにし、ひき立てること。かわいがってよくめんどうをみること。多くひいきされる側から言う。」
二つの語釈から分かることは、二つあります。一つめは、愛顧は「引き立てること」で、引き立てるのは、お客の側だということです。精選版は、引き立てられる相手として「商人や芸人」を挙げています。営業の仕事に置き換えると、商品を買ってくださる取引先やお客様が、売る側のこちらを引き立てている、という形です。
二つめは、どちらの辞書も、引き立てられる側が言う言葉だと書いていることです。デジタル大辞泉は「引き立てられる側からいう語」、精選版は「多くひいきされる側から言う」です。この一文が、次の章の根拠になります。
自分からは「ご愛顧します」と言わない
辞書に「引き立てられる側からいう語」とあるので、「ご愛顧」は、買っていただいている側が、買ってくださる相手の行いについて言う言葉です。引き立てる側が、自分の行いについて「愛顧しています」「ご愛顧します」と言う使い方は、辞書の説明と合いません。
| 自分の立場 | 「ご愛顧」を使うか | 言い方の例(説明用) |
|---|---|---|
| 売る側(買っていただいている) | 使う。相手の行いへのお礼とお願いに | 「日頃のご愛顧に、心よりお礼申し上げます」 |
| 買う側(仕入れ先から買っている) | 自分の行いには使わない | 「いつもお世話になっております」「今後ともよろしくお願いいたします」 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
次の3つは、説明用の例です。
- 惜しい例1(買う側が、仕入れ先へ):「今後とも、貴社をご愛顧してまいります」
- 惜しい例2(売る側が、お客様へ):「これからも、お客様をご愛顧いたします」
- 良い例(売る側が、お客様へ):「日頃のご愛顧に、心よりお礼申し上げます。今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう、お願い申し上げます」
惜しい例1は、引き立てる側が、自分で「引き立ててあげます」と言う形です。相手には、上から言われたように聞こえることがあります。
惜しい例2は、向きが逆です。売る側が、お客様を「引き立てる」と言っています。お客様を大切にすると伝えたいなら、「これからも、お役に立てるよう努めてまいります」のように、自分がすることを書きます。
良い例の「賜る」は、デジタル大辞泉「賜る」の1番目に、「「もらう」の意の謙譲語。目上の人から物などをいただく。ちょうだいする。」とあります。「ご愛顧を賜り」は、「引き立てていただき」を、あらたまって言った形です。
あいさつ文での使い方:お礼の形と、お願いの形
「ご愛顧」は、あいさつ文の中で、二つの場所に置かれます。書き出しのお礼と、結びのお願いです。
| 置く場所 | 形の例 | 働き |
|---|---|---|
| 書き出し(お礼) | 平素は格別のご愛顧を賜り、厚くお礼申し上げます | これまで買っていただいたことへのお礼 |
| 書き出し(お礼) | 日頃のご愛顧に、心より感謝申し上げます | 同じ。少しやわらかい形 |
| 結び(お願い) | 今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう、お願い申し上げます | これからも、今までどおり買っていただきたい |
| 結び(お願い) | 末永くご愛顧賜りますよう、お願い申し上げます | 長く続くお付き合いをお願いする |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
お礼の形は、「これまで」のことです。お願いの形は、「これから」のことです。案内文は、お礼で始め、用件を書き、お願いで結ぶ、という順に組み立てます。
なぜ、用件の前にお礼を書くのか
移転、休業、値上げなどの案内は、相手に何かを覚え直してもらう、または負担を受け入れてもらう知らせです。いきなり用件から始めると、相手には、一方的な通知に見えます。先に、これまで買っていただいたことへのお礼を書くと、「関係が続いている相手への知らせ」として読んでもらえます。
お礼と用件を、取り違えない
ただし、案内文で相手が知りたいのは、用件です。何が、いつから、どう変わるのか。あいさつの言葉が長く、用件が後ろにうもれると、相手は読み落とします。お礼は一文、お願いも一文にして、その間に用件を、日付と一緒に書きます。
一通の中で、同じ言葉を二度使うとき
書き出しと結びの両方に「ご愛顧」を使っても、誤りではありません。同じ言葉が近くに並ぶのが気になるときは、一方を「お引き立て」に替える形があります。「平素は格別のお引き立てを賜り」で始め、「今後とも変わらぬご愛顧を」で結ぶ形です(説明用の例です)。「お引き立て」の意味は、次の章で確かめます。
一人の相手に送るメールでは、定型のあいさつの後に、その相手との出来事を一文足すと、自分あての連絡だと伝わります。その書き方は、年末の挨拶メールの「お礼の言い方を比べる」にまとめています。
「ご贔屓」「お引き立て」「ご支援」「ご高配」との違い
あいさつ文で「ご愛顧」と同じ場所に置かれる言葉を、辞書で確かめます。語釈は、すべてデジタル大辞泉のものです。
| 言葉 | 辞書の語釈 | 辞書が挙げる例 |
|---|---|---|
| ご愛顧 | 「目をかけ引き立てること。引き立てられる側からいう語。ひいき。」 | 「今後ともいっそうの御愛顧を賜りますよう」 |
| お引き立て | 「引き立てること。特に、目をかけて用いること。ひいきにすること。愛顧。」 | 「毎度お引き立てを賜り」 |
| ご贔屓(ごひいき) | 「気に入った人を特に引き立てること。後援すること。また、引き立てる人。」 | (精選版の例)「毎度ごひいきに」 |
| ご支援 | 「力を貸して助けること。」 | 「独立運動を支援する」 |
| ご高配 | 「他人を敬って、その心配りをいう語。」 | 「御高配を賜りありがとう存じます」 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
語釈を比べると、三つの組に分かれます。
一つめの組は、「ご愛顧」「お引き立て」「ご贔屓」です。どれも「引き立てる」ことを表します。辞書は、「引立て」の語釈の中に「愛顧」を、「愛顧」の語釈の中に「ひいき」を挙げていて、互いに近い言葉として扱っています。「贔屓」について、精選版 日本国語大辞典は、2番目の意味に「ある商店などを好意をもって特に利用すること。」を含め、例に「毎度ごひいきに」を挙げています。店とお客の間の言葉です。
二つめは、「ご支援」です。「力を貸して助けること」なので、買う・利用する、に限りません。活動を手伝ってもらった、協力してもらった、という関係にも使えます。
三つめは、「ご高配」です。相手の「心配り」を言う言葉で、買ったか売ったかという立場は、語釈に入っていません。「高配」について、精選版は「「御高配」の形で用いる。」と書いています。また、文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日・文化庁)は、「御高配」などを、「御」と「高」などを組み合わせた尊敬語の例に挙げ、これらの「ほとんどは書き言葉専用である。」と説明しています(指針26ページ)。話すときより、文書で使う言葉です。
ここから先は、決まりではなく、選び方の一例です。
| 相手 | 選びやすい言葉(一例) | 理由 |
|---|---|---|
| 商品を買ってくださる取引先・お客様 | ご愛顧、お引き立て | 「引き立てる」という意味が、買っていただく関係と合う |
| 仕入れ先・協力会社 | ご高配、ご支援、ご協力 | こちらが買う側なので、「引き立てられる側からいう語」が合わない |
| 立場がいろいろな相手に、同じ文書を出す | ご高配 | 立場を限らない言葉なので、どの相手にも当てはまる |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
「贔屓」の二つの字は、常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)の本表を調べたかぎり、見当たりませんでした。辞書の例も「毎度ごひいきに」と、ひらがなで書いています。書くときは「ごひいき」とすると、読み方で相手を迷わせません。日々のメールの書き出しは、「お世話になっております」の使い方にまとめています。「ご愛顧」は、案内文や挨拶状のような、あらためて出す文書に取っておくと、書き出しだけが重くなりません。
案内文の例:年末年始・移転・値上げ・周年
多くのお客様へ同じ文面で出す案内の例を、4つ並べます。すべて説明用の例です。[ ]は、自分の内容に置き換えます。日付、住所、価格は、会社の正式な通知と一字ずつ照らし、上司に見せてから出します。
例1:年末年始の休業のお知らせ
お客様各位
平素は格別のご愛顧を賜り、厚くお礼申し上げます。
年末年始の休業日を、下記のとおりお知らせいたします。
休業期間:◯月◯日(◯)から◯月◯日(◯)まで
◯月◯日(◯)の◯時までにいただいたご注文は、年内に発送いたします。それ以降のご注文は、◯月◯日(◯)から順に発送いたします。
来年も変わらぬご愛顧を賜りますよう、お願い申し上げます。
「各位」の使い方は、各位の使い方にまとめています。担当者あてに個別に送る挨拶は、年末の挨拶メールと新年の挨拶メールに文例があります。
例2:移転のお知らせ
お取引先各位
平素は格別のお引き立てを賜り、厚くお礼申し上げます。
このたび、[営業所名]は、下記へ移転することになりました。
新住所:[住所] 電話番号:[番号]([変更あり/変更なし])
新しい場所での業務は、◯月◯日(◯)から始めます。◯月◯日(◯)は、移転の作業のため、電話がつながりにくくなります。お急ぎの場合は、担当者の携帯電話へご連絡ください。
これを機に、より一層お役に立てるよう努めてまいります。今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう、お願い申し上げます。
相手が書き直すもの(住所、電話番号)と、切り替わる日を、見つけやすい形で書いています。書き出しは「お引き立て」、結びは「ご愛顧」にして、同じ言葉が並ばないようにした例です。
例3:値上げ(価格改定)のお知らせ
お客様各位
平素は格別のご愛顧を賜り、厚くお礼申し上げます。
[理由:会社が決めた説明]のため、◯月◯日(◯)のご注文分から、一部の商品の価格を改定させていただきます。
対象の商品と新しい価格は、別紙の価格表をご覧ください。
ご負担をおかけすることとなり、誠に申し訳ございません。品質とお届けの確かさを保つよう、努めてまいります。
何卒ご理解を賜り、今後とも変わらぬご愛顧をいただけますよう、お願い申し上げます。
値上げは、相手に負担を受け入れてもらう知らせです。いつから、何が、を先に書き、負担をかけることへのおわびを書いてから、お願いで結びます。理由の書き方は、自分で作らず、会社が決めた説明に合わせます。強くお願いする「何卒」の使い方と、取引先の担当者へ個別に送るメールの例は、「何卒」の意味と使い方にあります。
例4:周年のごあいさつ
お客様各位
おかげさまで、[自社名]は、◯月◯日に創業◯周年を迎えました。
これまで続けてこられましたのは、皆様の長年にわたるご愛顧のおかげです。心よりお礼申し上げます。
これからも、[自社が続けていくこと]に努めてまいります。
末永くご愛顧賜りますよう、お願い申し上げます。
周年のあいさつは、お礼が用件です。「長年にわたるご愛顧」と、続いてきた年月に触れ、結びは「末永く」と、これから先の長さに触れています。年数や創業の日は、会社の正式な記録で確かめます。
迷いやすい判断と、間違えたあと
判断1:法人の取引先あてと、一般のお客様あてで、使い分ける?
辞書の語釈は、引き立てる相手を、会社か個人かで分けていません。使い分けを決めた公的な決まりも、見当たりませんでした。基準は、会社か個人かではなく、相手が、買ってくださる側かどうかです。会社あてでも、商品を買っていただいているなら、「ご愛顧」は意味と合います。
会社によっては、法人あての文書は「お引き立て」「ご高配」、店頭やウェブサイトのお知らせは「ご愛顧」と、使い分けを決めていることがあります。先輩に「取引先あての案内では、書き出しはどの言葉を使っていますか」と聞き、去年の文書を見せてもらいます。
判断2:仕入れ先や協力会社にも、同じ案内を送るときは?
仕入れ先から見ると、買っているのはこちらです。「日頃のご愛顧」と書くと、立場が逆になります。相手の一覧に仕入れ先や協力会社が混ざるなら、相手ごとに文書を分けて、仕入れ先あては「平素は格別のご高配を賜り」で始める方法と、全員に当てはまる「ご高配」で文書を一つにする方法があります。どちらにするかは、上司に聞いて決めます。
判断3:取引が始まったばかりの相手には?
「日頃のご愛顧」「長年のご愛顧」は、これまで続いてきたことへのお礼です。初めて注文をいただいたばかりの相手には、事実と合いません。「このたびは、ご注文をいただき、ありがとうございます」と、今回のことへのお礼にします(説明用の例です)。結びの「今後ともご愛顧を賜りますよう」は、これから先のお願いなので、初めての相手にも使えます。
間違えたあと1:仕入れ先あての文書に、「ご愛顧」を写して送った
その場では:自分だけで訂正の連絡を出す前に、上司に見せます。日付や住所など、用件の中身が正しければ、相手の仕事に害は出ません。訂正の文書を出すか、次の文書から直すかを、上司と決めます。相手から指摘を受けたときは、「言葉の選び方が適切ではありませんでした。失礼いたしました」と、短くおわびします(説明用の例です)。
後の記録:「去年の、お客様あての文書を、そのまま写した。次からは、写す前に、相手が買う側か売る側かを一覧で確かめる」と書きます(説明用の例です)。
間違えたあと2:案内文の日付や住所を、間違えて出した
その場では:こちらは、すぐに訂正が要ります。相手は、その日付や住所で動くからです。上司に報告し、どこが、どう変わるのかを書いた訂正を、同じ相手の全員に出します。「◯月◯日にお送りした移転のお知らせに、誤りがありました。正しい電話番号は[番号]です。おわびして訂正いたします」のような形です(説明用の例です)。おわびの順番は、お詫びメールの書き方にまとめています。
後の記録:「新しい電話番号を、記憶で打った。次からは、正式な通知を横に置き、一字ずつ声に出して照らす」と書きます(説明用の例です)。
今日やることは一つです。これから出す案内文を一つ決め、送る相手が買ってくださる側かどうかを確かめて、お礼の一文とお願いの一文を書いてください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
これから出す案内文の下書き、または去年の同じ案内文。送る相手の一覧(お客様か、仕入れ先・協力会社かが分かるもの)。会社の文書のひな形(あれば)。
記入例を見る(説明用)
案内の種類と、送る相手(買ってくださる側か)=営業所の移転の案内。送る相手は、商品を買っていただいている取引先。仕入れ先にも同じ案内を送るかは未確認。課長に聞く/書き出しのお礼の一文=「平素は格別のご愛顧を賜り、厚くお礼申し上げます。」(仕入れ先あては、別の文にする)/伝える用件(何が・いつから・どう変わるか)=◯月◯日(◯)から、営業所が[新住所]へ移る。電話番号は[変わる/変わらない]。◯月◯日(◯)は移転の作業のため、電話がつながりにくい/結びのお願いの一文=「今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう、お願い申し上げます。」/送る前に見せる人と、確かめること=課長に見せる。新しい住所と電話番号を、会社の正式な通知と一字ずつ照らす。相手の一覧に、仕入れ先が混ざっていないかを見る。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
送る相手が買ってくださる側かどうかが書いてあり、お礼の一文、用件(何が・いつから・どう変わるか)、お願いの一文がそろっていて、見せる人が決まっている。
うまく進まなかったときは?
相手が買ってくださる側かどうか分からなければ、先輩に「この一覧の中に、仕入れ先や協力会社は入っていますか」と聞く。お礼の一文が決まらなければ、去年の案内文を見せてもらう。用件が書けなければ、「何が・いつから・どう変わるか」を箇条書きにしてから文にする。