NOTE 25 · 営業の実践ノート
「社長に相談します」と言われたら|担当者が社内で説明できる一枚
公開:2026年10月2日/更新:2026年10月4日
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商談では伝わったはずなのに、持ち帰られると話が進まない。そんなときは説明を増やす前に、担当者が社内で何を聞かれるかを整理しましょう。
この記事の目次
- 1
誰が何を確認するか聞く
- 2
問題と数字の出所をそろえる
- 3
判断材料を一枚にまとめる
- 4
担当者と不足を確認する
会話・日付・記入例は説明用です。実際の条件へ置き換え、未確認の内容は約束しないでください。
「社長に相談します」の後に、何が起きているか
商談の終わりに、担当者から「いい話だと思います。社長に相談します」と言われた。初心者はここで「よろしくお願いします」と言って帰りがちです。一週間後に連絡すると、「まだ話せていなくて」と返ってくる。よくある場面です。
担当者は、自分ひとりでは決められません。最終的に「やる・やらない」を決めることを決裁、決める人を決裁者と呼びます。担当者はこの後、決裁者の前で、あなたの代わりに説明する役になります。聞かれたことに答えられないと、話はそこで止まります。
たとえば社長から、「全部でいくらかかるのか」「現場の手間は増えないのか」「なぜ今やるのか」「うまくいかなかったら元に戻せるのか」と聞かれるかもしれません。商談であなたが口頭で答えた内容でも、担当者がそのまま再現できるとは限りません。
ウッシが資料作りで重視しているのは、「商談した相手が、自社の社長に対して同じようにプレゼンできるか」という視点です。これは運営者から聞いた考え方です。以下の手順や会話は、その考えを初心者が試せるようにした説明用の例で、特定の商談の成功記録ではありません。
資料そのものの組み立て方は、一人歩きできる資料の記事で説明しています。この記事では、「社長に相談します」と言われたその場で何を聞き、何を渡すかに絞ります。
その場で聞いておく4つのこと
「決裁者はどなたですか」と聞くだけでは足りません。社長が決める場合でも、その前に経理が費用を、現場が使い方を確認するかもしれないからです。相手の会社の進め方を決めつけず、順番を聞きます。
- 誰が、どの順番で確認するか。「この後、どなたに、どのような順番でご確認いただく予定でしょうか?」
- 何を聞かれそうか。「社内でご説明いただく際に、費用・運用・導入時期のうち、どの点を聞かれそうでしょうか?」
- 費用のほかに必要な条件。「費用以外に、社内で確認が必要な条件はありますか?」
- 次に話せる機会と、こちらが用意するもの。「次にお話しできそうなのは、いつ頃でしょうか。それまでに私のほうで用意できる資料はありますか?」
質問の前に、「ご説明しやすいように資料を補いたいので」と目的を伝えます。担当者を試すための質問ではなく、資料の足りないところを知るための質問だと分かってもらうためです。四つ全部を聞けなくてもかまいません。まずは2番だけでも聞いてみてください。
聞いた答えは、その場でメモします。実践シートの最初の欄「社内で確認する人・順番」に、そのまま書けます。相手が答えにくそうなら、無理に聞き出さなくてかまいません。
肩書や決める権限が分からなければ、推測で埋めずに「未確認」と記録します。担当者を飛び越えて上司へ直接連絡するのは避け、「同席いただいた方が確認しやすければ、ご相談できますか」と進め方を相談してください。
会話例:言われた直後のやり取り
次は説明用の会話例です。備品の補充方法を見直す、架空の提案を想定しています。
担当者:「いい話だと思うので、社長に相談してみます。」
営業:「ありがとうございます。ご説明しやすいように要点を一枚にまとめてお渡ししたいので、一つ伺ってもよろしいですか。社長にお話しされるとき、どの点を一番聞かれそうでしょうか。」
担当者:「費用と、現場が本当に続けられるのか、ですね。」
営業:「承知しました。費用の総額と、まず一拠点だけで試す方法を一枚に入れます。木曜までにメールでお送りしてよろしいでしょうか。」
担当者:「助かります。来週の月曜に話せると思います。」
営業:「では、火曜以降に一度お電話してもよろしいですか。」
営業が聞いたのは「何を聞かれそうか」の一つだけです。そのうえで、「何を・いつまでに送るか」と「次に連絡してよい日」を決めています。返事を急がせる言葉は使っていません。
約束した後の連絡の入れ方は、「検討します」の後に連絡するで説明しています。
持ち帰り用の一枚に入れる5つの枠
担当者に渡す一枚は、次の5つの枠で組み立てられます。元の資料をすべて縮めて詰め込む必要はありません。記入例は、上の会話と同じ架空の提案です。
| 枠 | 書くこと | 記入例(説明用) |
|---|---|---|
| いまの問題 | どの業務で、誰が何に困っているか | 備品の在庫を確認する担当が日によって違い、補充が遅れることがある |
| 確認した事実 | 実績の期間・件数・金額と、その出どころ | ご担当の方から伺った内容。遅れた回数は未計測 |
| 改善案 | どの作業をどう変え、何を用意するか | 担当と代わりの担当を決め、同じ表へ記録する |
| 比較 | 現状を続ける場合と変える場合の、費用・負担・不確かな点 | 変える場合は記入の手間が増える。追加費用は見積で確認中。効果は仮説 |
| 今回相談したい判断 | 本導入か、小さな試行か、追加の確認か | 一拠点で試してよいか |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
数字がない部分は、推測を実績のように書かず、「未計測」や「仮説」と示します。見積額、実績、仮定を同じ列に混ぜないことが大切です。ウッシが話した「収益構造を見える化して比較する」という経験も、まずは情報の出どころをそろえるところから応用できます。
書けたら、渡す前に担当者へ「この一枚で、説明しづらいところはありますか」と聞きます。「費用が分かりにくい」と言われたら総額と追加の条件を、「現場が使えるか心配」と言われたら試す方法を書き足します。
メールで送るときは、本文に要点を書き、一枚を添付します。
説明用のメール例:「本日はありがとうございました。社内でのご説明用に、要点を一枚にまとめました。費用の総額と、一拠点で試す方法を記載しています。追加費用の有無は確認中のため、分かり次第ご連絡します。説明しづらい点がございましたら、お知らせください。」
まだ確認できていないことは、確認中と書きます。担当者が社内で「確認済みです」と答えてしまうのを防ぐためです。
よくある失敗と直し方
- 「よろしくお伝えください」だけで帰る。担当者に、資料の読み解きまで任せることになります。帰る前に、聞かれそうな点を一つだけ聞きます。
- 担当者を飛ばして、社長へ直接連絡する。担当者の立場を悪くするおそれがあります。直接話したいときは、担当者に同席の相談をします。
- 決裁の日を無理に決めてもらう。確認の日が決まらない場合もあります。「次に確認できそうな機会」と「こちらが用意する資料」を決めるだけでも、次の対応は具体的になります。
- 不安になって、資料を何枚も追加で送る。読む量が増えると、担当者の説明はかえって難しくなります。聞かれそうな点に答える一枚に絞ります。
よくある質問
何も聞かずに帰ってしまったら?
当日か翌日のお礼メールで、一つだけ聞けます。「社内でご説明いただく際に、補足が必要な点がございましたらお知らせください。要点を一枚にまとめてお送りします」という形です。お礼メールの書き方は商談後のお礼メールの記事を見てください。
「社長に相談します」が、断りの意味だったら?
その場で見分けるのは難しいものです。見分けようとするより、「社内でどの点を聞かれそうか」を一つ聞いてみます。具体的な答えが返ってくれば、一枚を作って渡します。答えがあいまいなら、無理に進めず、次に連絡してよい時期だけを確認します。
この一枚を渡せば、承認は取れますか?
取れるとは限りません。決めるのは相手の会社です。今日作る一枚の目的は、相手が判断するために足りないものを一つ減らすことです。そこを今回の着地点にしましょう。
社長に同席してもらえることになったら?
担当者に、当日の進め方を先に相談します。誰がどこまで説明するか、社長が特に知りたい点は何かを聞いておきます。訪問前の準備には営業訪問前チェックリストが使えます。
書式はどうすればよいですか?
決まった形はありません。メールの本文に5つの枠を書くだけでも使えます。図や表まで入れた資料の例は、提案資料の完成見本で確認できます。
自分の会社の中で決裁をもらう書類は、稟議書の書き方にまとめています。
自分の一件で試す
担当者が社内で説明できる提案にする:実践シート
手元の依頼や商談記録を一件選び、分かったことから書きます。
記入例を見る(説明用)
説明用:確認する人・順番=担当者が現場責任者に確認した後、費用を社長へ相談する/問題と出どころ=在庫の確認担当が日によって違う(担当者から伺った)。補充が遅れた回数は未計測/改善案と負担=担当と代わりの担当を決め、同じ表へ記録する。記入の手間が増える。費用は見積で確認中/仮定=効果は仮説。試して確かめる/相談したい判断=一拠点で試してよいか。費用の総額と試す方法を一枚にまとめて渡す。
ここまでできたら、次へ。
誰が何を確認するか、事実と仮定、今回相談する判断が一枚で分かる。
まだ分からない欄があるときは?
無理に埋めず、確認先と次の連絡方法を決めましょう。判断する権限がない内容は、先輩や責任者へ相談します。