NUSSI’S SALES NOTEウッシの営業ノート

NOTE 95 · 営業の実践ノート

稟議書の書き方:営業が書く場面と項目、差し戻されたときの直し方

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稟議書は、自分だけでは決められないことについて、案を書いて関係者に回し、承認を求めるための書類です。営業では、値引きや特別な条件、販促の費用などで書きます。書式と決裁の流れは会社ごとに違うので、会社の決まりを先に確かめます。本文には、何を・いくらで・なぜ・いつまでに、を読むだけで分かるように書きます。

今日できるようになること

いま承認が要る一件について、件名・金額・理由・期限の4つを一行ずつ書き、会社の書式と回す順番を上司に確かめる。

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こんなときに 値引きや特別な条件について「稟議を上げて」と言われ、何を書けばよいか分からないとき。

この順番で進めよう
  1. 1

    会社の書式と、決裁の流れ(誰に・どの順番で回すか)を確かめる

  2. 2

    件名・目的・内容・金額・理由・期限を、一行ずつ書く

  3. 3

    比べた案と、添付する資料をそろえる

  4. 4

    上司に見てもらってから回し、結果をお客様への返事に反映する

会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。

稟議とは:案を作って関係者に回し、承認を求めること

稟議(りんぎ)は、辞書では次のように説明されています。デジタル大辞泉(コトバンク)の語釈は、「会社・官庁などで、会議を開催する手数を省くため、係の者が案を作成して関係者に回し、承認を求めること。」です。

稟議書は、そのための書類です。精選版 日本国語大辞典(コトバンク)には、「稟議に付するために必要な事項を書き入れた書類。」とあります。

稟議書を回した先で、最後に可否を決めることを、決裁(けっさい)と言います。デジタル大辞泉(コトバンク)では、「権限を持っている上位者が、部下の提出した案の可否を決めること。」と説明されています。

語釈から分かることが二つあります。一つは、稟議は会議の代わりだということです。書いた人がその場で説明できないので、書類だけで分かるように書きます。もう一つは、書くのは案だということです。「どうしましょうか」と尋ねる書類ではなく、「こうしたいので、承認をお願いします」と求める書類です。

書式、呼び名、回す順番、どの金額から稟議が要るかは、会社ごとに違います。紙に印を押して回す会社もあれば、画面で入力して回す会社もあります。会社の決まりが先です。この記事の項目や文例は、会社の書式に当てはめるための材料として使ってください。

営業が稟議書を書く場面

営業が稟議書を書くのは、自分や上司の持つ権限だけでは決められない約束を、お客様としたいときです。次の表は一例です。どこから稟議が要るかは、会社の決まりで確かめます。

場面決めてもらうこと添えることが多い資料
通常の範囲を超える値引きその価格で見積もりを出してよいか見積書の案、原価や利益の資料、商談の記録
特別な条件(支払いの時期、納期、返品など)通常と違う条件で約束してよいか条件を書いた案、相手からの依頼の記録
販促の費用(見本、展示、催しなど)その費用を使ってよいか費用の内訳、見込んでいる結果と、その根拠
新しい取引先との取引開始その相手と取引を始めてよいか相手の会社の情報、取引の条件。会社で決められた審査の書類
接待や贈答その費用を使ってよいか相手、目的、金額。会社の決まりで求められる書類

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

大事なのは、お客様に返事をする前に、決裁を取るという順番です。先に「その価格でできます」と答えてしまうと、後で承認されなかったとき、お客様との約束を取り消すことになります。お客様には、「社内で確認し、◯月◯日までにお返事します」と、返事の日を伝えます(説明用の例です)。

書く8つの項目と、決裁する人が知りたいこと

会社の書式があれば、その項目に合わせます。この記事では、書く項目を次の8つに分けます。

項目書くことなぜ書くか
1. 件名何について、何を決めてほしいか読む人は、件名で用件の種類と急ぎ具合を見分ける
2. 目的何のために、この承認を求めるのか目的が分からないと、金額が妥当かを判断できない
3. 内容誰に・何を・どんな条件で承認した後に、何が行われるのかをはっきりさせる
4. 金額いくらか。通常との差。内訳決裁する人が、自分の権限の範囲かどうかを見る
5. 理由なぜ必要か。承認されない場合に何が起きるか「なぜ今、これなのか」に答える所
6. 比べた案ほかにどんな方法を考え、なぜこの案にしたかほかの方法を考えたうえでの案だと分かる
7. 期限いつまでに決裁がほしいか。その理由回す人それぞれが、いつまでに見ればよいかが分かる
8. 添付見積書の案、商談の記録、費用の内訳など本文に書いた数字や事実の、出どころを示す

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

決裁する人は、その商談の場にいません。手元にあるのは、稟議書と添付だけです。決裁する人が知りたいことを、この記事では次の4つに分けて考えます。

  1. 何を決めればよいのか。承認するのは、価格なのか、条件なのか、費用なのか。件名と内容で答えます。
  2. 会社にとって、いくらの話か。出ていくお金と、入ってくる見込み。金額で答えます。見込みは、見込みと分かるように書きます。
  3. なぜ、この案なのか。ほかの方法ではだめなのか。理由と、比べた案で答えます。
  4. うまくいかなかったら、どうなるのか。今回かぎりなのか、次も同じ条件になるのか、取り消せるのか。内容に書き添えます。

書き終えたら、この4つを自分に聞いてみます。稟議書だけを読んで答えられない問いがあれば、そこが足りない所です。

5の理由には、お客様の言葉を、記録から写して書きます。「先方の強い要望」と自分の言葉でまとめるより、「◯月◯日、佐藤様から『ほかの1社と価格で比べている』と伺った」と書いたほうが、決裁する人は場面をつかめます(説明用の例です)。商談の記録の書き方は、商談メモ添削にまとめています。

惜しい例と良い例

値引きの稟議を例に、3つの項目で比べます。社名・金額・やり取りは、どれも説明用の例です。

1. 件名

惜しい例:「A社の件」

良い例:「A社向け[商品名]の特別価格の適用について(◯月◯日までに回答が必要)」

惜しい例は、開くまで何の話かが分かりません。良い例は、相手・商品・決めてほしいこと・急ぎ具合が、件名に入っています。決裁する人のもとには、ほかの稟議書も届いています。件名で用件が分かれば、見る順番を決めてもらえます。

2. 理由

惜しい例:「先方から強い値引きの要望があり、受注のためには、やむを得ないと考えます。」

良い例:「◯月◯日の商談で、ご担当の佐藤様から、ほかの1社と価格で比べていると伺いました。今回の注文の後、毎月の補充の注文があると伺っていますが、数量は未確認です。承認されない場合は、通常価格で見積もりを出します。」

惜しい例は、書いた人の判断だけが書かれていて、元になった事実がありません。良い例は、いつ・誰から・何を聞いたかと、まだ分かっていないことを分けています。承認されない場合にどうするかも書いてあるので、決裁する人は二つの道を比べられます。

「受注できます」「今後の取引が広がります」と言い切りたくなりますが、決めるのはお客様です。見込みは、「〜と伺っている」「〜は未確認」と、分かっている範囲で書きます。

3. 金額

惜しい例:「特別に値引きして提供したい。」

良い例:「通常価格[金額]円のところ、[金額]円で提供する(差額[金額]円)。適用は今回の注文のみとし、次回からは通常価格に戻すことを、見積書に書き添える。」

金額は、通常と、今回と、その差を並べます。いつまで・どの範囲に当てはめるのかも書きます。範囲が書かれていないと、決裁する人は「次からもこの価格になるのか」が分からず、承認しにくくなります。見積書の項目は、見積書の書き方で確かめられます。

短い本文の例を、一つ載せます。会社の書式があれば、その欄に分けて書きます。

件名:A社向け[商品名]の特別価格の適用について

目的:A社からの初めての注文を受けるため。

内容:[商品名][数量]を、今回の注文にかぎり、特別価格で提供する。

金額:通常価格[金額]円 → 特別価格[金額]円(差額[金額]円)。

理由:◯月◯日の商談で、ご担当の佐藤様から、ほかの1社と価格で比べていると伺った。承認されない場合は、通常価格で見積もりを出す。

比べた案:案1 通常価格のまま納期を短くする/案2 数量を増やしていただく代わりに値引きする/案3 今回のみ特別価格(本件)。佐藤様が重視されている点が価格のため、案3とした。

期限:◯月◯日(水)までに決裁をお願いしたい。A社への回答の約束が、◯月◯日(金)のため。

添付:見積書の案、◯月◯日の商談メモ、原価の資料。

差し戻されたときの直し方と、迷いやすい判断

稟議書は、途中で戻ってくることがあります。「差し戻し」と呼ぶ会社が多くあります。戻ってきたことは、否決とは限りません。足りない所を足せば、もう一度回せることがあります。

差し戻されたら:3つの順番で直す

  1. 戻した人の言葉を、そのまま書き取る。書類に書かれたコメントを読みます。口頭で言われたら、言葉のまま書きます。
  2. 何が足りないのかを、4つの問いに当てはめる。「何を決めるのか」「いくらの話か」「なぜこの案か」「うまくいかなかったらどうなるか」のうち、どれに答えられていなかったのかを見ます。
  3. 足りない所だけを直す。全部を書き直すと、すでに見てくれた人が、もう一度最初から読むことになります。直した所が分かるように、「◯◯について追記しました」と一言添えて回します。

コメントの意味が分からないときは、推測で直さず、戻した人に聞きます。

惜しい聞き方:「どこがだめだったのでしょうか」

良い聞き方:「『根拠が弱い』とコメントをいただいた件で、確かめさせてください。足りないのは、値引きの額の根拠でしょうか。それとも、今後の注文の見込みの根拠でしょうか」

どちらも説明用の例です。良い聞き方は、自分の考えを二つ出しているので、相手は選んで答えられます。

差し戻しで時間がかかると、お客様との返事の約束に間に合わなくなることがあります。間に合わないと分かった時点で、上司に伝えたうえで、お客様に連絡します。「社内の確認に時間をいただいております。◯月◯日までに、あらためてお返事します」と、新しい日を伝えます(説明用の例です)。黙って期限を過ぎるより、相手は予定を立てやすくなります。

場面によって、進め方が変わります。次の表は一例です。

場面力を入れる所進め方(一例)
急ぎで、期限まで日が無い期限と、その理由件名に期限を書く。回す前に、上司に口頭で事情を伝える。急ぎの手順が会社にあれば、それに従う
金額が大きい比べた案と、うまくいかなかった場合回す人が増えることが多い。日数を上司に聞き、お客様への返事の日を、余裕を持って約束する
前例が無い条件今回かぎりか、今後も続くか範囲と期間を、内容にはっきり書く
否決されたお客様への伝え方理由を上司に確かめ、伝えてよい範囲を聞いてから、お客様に連絡する。代わりの案があれば一緒に伝える

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

判断1:この件は、稟議が要る?

基準は、会社の決まり(決裁の権限を定めた規程など)です。自分で「このくらいなら要らない」と決めません。上司に、「A社から、通常より◯円低い価格の依頼がありました。これは稟議が要りますか」と、金額と内容を添えて聞きます(説明用の例です)。

判断2:回す前に、上司や関係者へ口頭で伝えてよい?

直属の上司には、書く前に相談するのが、進めやすい順番です。書いてから「そもそも、その条件は出せない」と分かると、書き直しになります。ほかの部署の人へ事前に伝えるかどうかは、会社や部署の習慣で違うので、上司に「先に、経理の方へ一言伝えたほうがよいですか」と聞きます(説明用の例です)。

判断3:決裁が下りる前に、お客様から「どうなりましたか」と聞かれたら?

決まっていないことを、見込みで答えません。「現在、社内で確認中です。◯月◯日までにお返事します」と、状況と日付だけを伝えます(説明用の例です)。「たぶん大丈夫です」と言うと、相手はそれを前提に社内で話を進めることがあります。

判断4:承認された後は、何をする?

承認された内容と、お客様に出す見積書や書類の内容が、同じかを見比べます。承認された価格、数量、適用の範囲と、一字ずつ合わせます。その後で起きたこと(受注した、しなかった)は、上司に報告します。次に似た稟議が回ってきたとき、決裁する人の判断の材料になります。

取引先の社内稟議を手伝う

ここまでは、自分の会社の中の稟議でした。営業には、もう一つの稟議があります。お客様の会社の中で、担当者が書く稟議書です。

お客様の担当者が「いいですね」と言った後、その人は、自分の会社で承認を取ります。そのとき担当者は、この記事の前半であなたがやったのと同じことをします。件名、目的、金額、理由、比べた案、期限を書くのです。

自分で稟議書を書いてみると、担当者が何に困るかが分かります。金額の内訳が無い。比べた案が無い。期限の理由が無い。こちらが渡す資料にそれが入っていれば、担当者は書き写すだけで済みます。

担当者に聞くことと、一枚にまとめて渡す方法は、「社長に相談します」と言われたらにまとめています。ここでは、稟議書の項目に合わせて、こちらが用意できる材料を並べます。

相手の稟議書の項目こちらが渡せる材料
金額内訳の分かる見積書。初めにかかる費用と、続けてかかる費用を分けたもの
理由今のやり方と比べて、何が変わるか。担当者から聞いた困り事を、担当者の言葉で書いたもの
比べた案自社の中で選べる案(数量、プラン、時期の違い)。他社と比べる項目は、担当者に聞いて、自社の分を正確に書く
期限見積書の有効期限、納品までにかかる日数、いつまでに注文があれば間に合うか
添付一枚にまとめた要点、仕様の分かる資料

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

気をつける点が三つあります。一つめは、相手の書式と、社内の締め日を聞くことです。「社内で申請されるとき、決まった項目や、締め日はありますか。それに合わせて資料を用意します」と聞きます(説明用の例です)。こちらの都合で作った資料より、相手の欄にそのまま入る資料のほうが、使ってもらえます。

二つめは、相手の稟議書そのものは、こちらで書かないことです。書くのは担当者です。こちらは、材料を渡す所までにとどめます。効果を、実際より大きく書いた資料も渡しません。担当者が、その数字を自分の名前で社内に出すことになるからです。確かめていない数字には、「見込み」「未確認」と書いておきます。

三つめは、他社の悪口を材料にしないことです。比べる項目には、自社の事実を書きます。

資料の作り方は一人歩きできる資料、返事を待つあいだの連絡は「検討します」の後、会社を相手にする営業の全体の流れは法人営業とはを見てください。

今日やることは一つです。いま承認が要る一件について、件名・金額・理由・期限の4つを一行ずつ書き、会社の書式と回す順番を上司に確かめてください。

YOUR TURN

自分の一件で、書いてみよう。

手元に用意するもの
会社の稟議書の書式(または入力する画面)、お客様とのやり取りの記録、見積書や原価の資料。

記入例を見る(説明用)

件名と、決めてほしいこと=「A社向け[商品名]の特別価格の適用について」。通常の値引きの範囲を超える価格で見積もりを出してよいか、を決めてほしい/内容と金額=[商品名]を[数量]、通常価格[金額]円のところ、[金額]円で提供する。差額は合計[金額]円。適用は今回の注文のみ/理由と、承認されない場合に起きること=A社は、ほかの1社と価格で比べている、と担当の佐藤様から聞いた(◯月◯日の商談メモ)。今回の注文の後、毎月の補充の注文が見込まれると聞いているが、数量は未確認。承認されない場合は、通常価格で見積もりを出す。受注できるかは分からない/比べた案=案1:通常価格のまま、納期を短くする提案。案2:数量を増やしてもらう代わりに値引きする。案3:今回のみ特別価格(この稟議)。佐藤様が重視しているのは価格と聞いたので、案3にした/期限と、添付する資料=A社への返事の約束は◯月◯日(金)。◯月◯日(水)までに決裁がほしい。添付は、見積書の案、商談メモ、原価の資料。

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CHECK

ここまでできたら、次へ。

件名を読むだけで何を決めてほしいかが分かり、金額と理由と期限が書いてあり、比べた案がある。会社の書式と、回す順番を確かめてある。

うまく進まなかったときは?

書式や回す順番が分からなければ、上司に「この件は稟議が要りますか。どの書式で、どなたに回せばよいですか」と聞く。理由が書けなければ、お客様の言葉を記録から写す。金額が決まらなければ、見積書の案を先に作り、上司に相談する。

NEXT NOTE

次に読むなら

「社長に相談します」と言われたら見積書を送る前に確認する法人営業の流れを知る