NOTE 193 · 営業の実践ノート
KPIとは:営業の初心者が、自分の一週間に当てはめる4つの手順
公開:2026年10月4日
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KPIは、目標に向かって仕事がどこまで進んだかを、数字で見るための目じるしです。この記事では、辞書の説明とKGIとの違いを確かめたあと、自分の一週間に当てはめる4つの手順をまとめます。4つとは、結果の数字を一つ決める、そこへ至る行動の数字を選ぶ、数え方を決める、週に一度見る、です。会社が決めたKPIがある人は、そちらが先です。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 上司から「KPIを意識して」と言われたが、何の数字を、どう数えればよいのかが分からないとき。
- 1
結果の数字を一つ決める(会社の目標があれば、それを使う)
- 2
そこへ至る行動の数字を、一つか二つ選ぶ
- 3
何を1件と数えるか、どこで数えるかを決める
- 4
週に一度、決めた曜日に数字を見て、変えることを一つ決める
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
KPIとは:辞書の意味
KPIは、英語の key performance indicator の頭文字です。辞書では、次のように説明されています。
「企業などの組織において、個人や部門の業績評価を定量的に評価するための指標。」(デジタル大辞泉「KPI」)
同じ項には、日本語の言い方として「重要業績評価指標。」が載っています。少し固い言葉なので、一つずつ見ます。指標は、「物事を判断したり評価したりするための目じるしとなるもの。」(デジタル大辞泉「指標」)です。定量的は、「数値・数量で表せるさま。」(デジタル大辞泉「定量的」)です。
合わせると、KPIは仕事ぶりを、数字で見るための目じるしです。これは、辞書の説明をもとにした、この記事での言い方です。
辞書の説明には、続きがあります。
「達成すべき目標に対し、どれだけの進捗がみられたかを明確にできる指標が選択される。」
「これをもとに、日々の進捗把握や業務の改善などが行われる。」
進捗(しんちょく)は、「物事がはかどること。」(デジタル大辞泉「進捗」)です。この2つの文から、3つのことが分かります。
- 目標が先にある。KPIは、目標に対する進み具合を見るものです。目標が決まっていないと、何を数えればよいかも決まりません。
- 進み具合が分かる数字を選ぶ。数えられるものなら何でもよい、というわけではありません。
- 見て終わりにしない。数字は、日々の進み具合をつかみ、やり方を直すために使います。
KPIは、もとは会社や部門の単位で使われる言葉です。何をKPIにするかは、会社が決めていることがあります。その場合は、会社の決まりが先です。この記事では、営業を始めたばかりの人が、自分の一週間を見るために使う方法を説明します。
KGIとの違い:最終的な成果と、途中の進み具合
KPIと並んで出てくる言葉に、KGIがあります。key goal indicator の頭文字です。辞書では「企業などの組織において、個人や部門が達成すべき最終的な成果を定量的に表した指標。」(デジタル大辞泉「KGI」)と説明されています。続けて、「売上高や利益額のように具体的に定義できるものが選択される。」とあります。日本語の言い方は「重要目標達成指標。」です。
2つの違いについて、百科事典には次の説明があります。
「KGIが1年や5年といった長期間を対象とするのに対し、KPIは短期間で結果のわかる数値を指標にするという違いがある。」(ニッポニカ「KPI」)
同じ項には、KPIは「日次、週次、月次など一定期間ごとに数値をチェックして」進み具合を見る、という説明もあります。整理すると、次の表のようになります。左の2列は辞書の説明、右の列はこの記事での例です。
| 言葉 | 辞書の説明(デジタル大辞泉) | 営業での例(説明用) |
|---|---|---|
| KGI | 達成すべき最終的な成果を定量的に表した指標 | 今月の受注の件数、今月の売上高 |
| KPI | 目標に対し、どれだけの進捗がみられたかを明確にできる指標 | 今週の訪問の件数、次の約束が決まった件数 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
営業を始めたばかりの時期は、売上や受注のような結果の数字が、一週間では動かないことがあります。結果だけを見ていると、今週の動きが合っていたのかどうかを、確かめる材料がありません。途中の数字を見るのは、そのためです。
ただし、途中の数字が増えれば、結果も増えるとは限りません。選んだ数字が、結果につながっていないこともあります。そのため、数字を決めたあとも、週に一度見て、選び方が合っているかを確かめます。
自分の一週間に当てはめる4つの手順
手順1:結果の数字を一つ決める
最初に決めるのは、行動の数字ではなく、行き先になる結果の数字です。会社や上司から渡された目標があれば、それを使います。「今月の受注3件」「今月の新しい見積もり4件」のような形です(説明用の例です)。
渡されていないときは、自分で作らず、上司に聞きます。「私が今月、いちばん見ておくべき数字は何でしょうか」(説明用の例です)。自分で決めた行き先が、会社の見ている方向と違うと、数えた手間がむだになるからです。
決めるときは、何を・いつまでに・いくつの3つをそろえます。「売上を伸ばす」には、期限も数もありません。これでは、あとで届いたかどうかを確かめられません。
手順2:そこへ至る行動の数字を選ぶ
次に、結果の数字から、手前へさかのぼります。辞書では、逆算は「逆の順序で、さかのぼって計算すること。」(デジタル大辞泉「逆算」)と説明されています。
たとえば、受注の前には、見積もりがあります。見積もりの前には、困り事を聞けた訪問があります。訪問の前には、約束を取る電話やメールがあります(説明用の例です)。会社や商品によって、この道すじは違います。自分の仕事の道すじは、先輩に聞いて書き出します。
道すじが書けたら、その中から、行動の数字を選びます。基準は3つです。
- 自分の行動で、増やしたり減らしたりできる。相手の返事しだいの数字だけにすると、今週なにを変えればよいかが決まりません。
- 一週間で数えられる。月に一度しか起きないことは、週に一度見ても、変化が分かりません。
- 結果につながる理由を、一文で言える。「見積もりは2回目の訪問のあとに出すことが多いので、次の約束を増やす」のような一文です(説明用の例です)。
数は、一つか二つにします。多いと、数えること自体が仕事になり、続きにくくなります。数えられる材料の例は、PDCAとはの「確かめるに使う材料」にまとめています。
手順3:数え方を決める
同じ「訪問3件」でも、数え方が決まっていないと、週によって中身が変わります。決めるのは、次の3つです。
- 何を1件と数えるか。「次に会う日時が決まった訪問を1件と数える。『また連絡します』で終わった訪問は数えない」のように、数えないものまで書きます(説明用の例です)。
- どこで数えるか。予定表、電話の発信の履歴、送ったメールの一覧など、あとから見直せる場所を決めます。記憶で数えると、週の終わりに数字があいまいになります。
- いつ書くか。動いたその日に書きます。週の終わりにまとめて思い出そうとすると、抜けが出ます。
数え方を途中で変えたら、「今週から、電話で決まった約束も数える」と、変えたことを書き残します(説明用の例です)。書いておかないと、先週と比べたときに、増えた理由を読み違えます。
手順4:週に一度見る
見る曜日と時間を、先に決めます。「金曜の夕方に15分」のような形です(説明用の例です)。決めていないと、忙しい週ほど見なくなります。見るのは、次の3つです。
- 行動の数字は、いくつだったか。
- 先週と比べて、増えたか、減ったか。
- その理由を、事実で一文書けるか。
そのうえで、来週変えることを、一つだけ決めます。いくつも変えると、何が効いたのかが分かりません。計画から見直しまでを回す考え方は、PDCAとはにまとめています。毎日の記録は、日報の書き方の5項目がそのまま使えます。
惜しい例と良い例、場面で変わるところ
決め方を、並べて見てみます。どちらも説明用の例です。
惜しい例:「今月は、訪問をもっとがんばる」
良い例:「結果の数字は、今月の新しい見積もり4件。行動の数字は、次の約束が決まった訪問を週に3件。予定表で数え、金曜の夕方に見る」
惜しい例には、数も、期限も、数え方もありません。週の終わりに、がんばれたかどうかを、気分で決めることになります。良い例は、行き先と、途中の数字と、数える場所と、見る日がそろっています。
週に一度見たときの書き方にも、差が出ます。
惜しい例:「今週は1件。少なかった。来週はがんばる」
良い例:「訪問6件のうち、次の約束が決まったのは1件。決まらなかった5件は、帰る前に次の日程を聞いていなかった。来週は、席を立つ前に日程を聞く」
惜しい例は、数字と感想だけです。良い例は、数字・理由になった事実・来週変えることの3つが書かれています。数字そのものは同じ1件でも、次の週の動きが変わります。
仕事の中身によって、選びやすい数字は違います。次の表は一例です。自分の会社の道すじに合わせて、選び直してください。
| 場面 | 行動の数字の例(説明用) | 気をつける所 |
|---|---|---|
| 新しいお客様を探す仕事が中心 | 担当の人と話ができた件数、次の約束が決まった件数 | 連絡した件数だけを追うと、話ができたかどうかが見えない |
| 決まったお客様を回る仕事が中心 | 困り事を一つ聞けた訪問の件数、宿題を期限までに返した件数 | 回った件数だけだと、顔を出して終わりの訪問も同じ1件になる |
| 電話やメールが中心 | 質問に当日中に答えた件数、次の予定が決まった件数 | 件数が多い仕事なので、数える場所を一つに決める |
| 入社して間もない | 先輩に同行した件数、同行のあとに書いたメモの件数 | 結果の数字がまだ無いときは、上司に何を見ればよいかを聞く |
| 会社のKPIが決まっている | 会社の決めた数字 | 数え方が会社で決まっているかを、先に確かめる |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
それぞれの仕事の進め方は、新規開拓とは、ルート営業、インサイドセールスとはにまとめています。
迷いやすい判断
判断1:「何件なら良い」という目安はある?
この記事では、目安の件数を示しません。商品や相手によって違い、確かな出典が無いからです。比べる相手は、2つです。会社に目標の数があるなら、その数。無いなら、先週の自分の数字です。
上司に聞くなら、自分の数字を添えます。「先週は、次の約束が決まった訪問が1件でした。週に何件を目指せばよいでしょうか」(説明用の例です)。数字があると、上司は答えやすくなります。
判断2:数字にしにくい仕事は、どうする?
お客様との関係づくりや、資料の準備のように、件数にしにくい仕事もあります。基準は、「やった・やらなかった」が、あとから分かる形にできるかです。「訪問の前の日に、前回のメモを読み返したか」なら、訪問ごとに丸を付けて数えられます(説明用の例です)。
それでも数字にならないことは、事実のメモで残します。お客様が言った言葉を、そのまま書きます。数字が少ないときの整理のしかたは、営業実績の書き方にまとめています。
判断3:会社のKPIと、自分で見たい数字が違うときは?
報告に使うのは、会社の決めた数字です。自分で選んだ数字は、手元のメモとして続けて構いません。両方を数えるのが負担なら、上司に見せて聞きます。「会社の数字のほかに、次の約束の件数も数えています。見る数字として、合っていますか」(説明用の例です)。
判断4:行動の数字を、途中で変えてよい?
変えて構いません。基準は、何週か続けて見たうえで、結果とのつながりが見えないかどうかです。一週間だけで変えると、たまたまなのか、選び方が合っていないのかを分けられません。変えるときは、変えた日と理由を書きます。
数え忘れたあと、数字が動かなかったあと
数えるのを忘れた週があった
その場では:記憶で数字を埋めません。予定表や発信の履歴から数えられる分だけを数え、「予定表から数えた」と数え方を添えます。分からない分は、「記録なし」と書きます。
次の週から:書く時刻を一つ決めます。「訪問先を出て、次の移動を始める前に書く」のような形です(説明用の例です)。それでも続かないなら、数字を一つに減らします。
行動の数字は増えたのに、結果が動かない
まず確かめること:数え方が、途中でゆるくなっていないかを見ます。「次の約束」の中に、日時の決まっていないものが混ざっていないか、です。
数え方が同じなら:選んだ数字の、一つ先を見ます。訪問は増えたのに見積もりが増えないなら、訪問の中身に理由があるかもしれません。上司には、数字を見せて相談します。「訪問は週6件に増えましたが、見積もりは増えていません。訪問で何を聞けていないか、見ていただけますか」(説明用の例です)。
報告した数字が、間違っていた
気づいた時点で、報告した相手に訂正を伝えます。「先週の訪問は6件とお伝えしましたが、予定表を数え直すと5件でした。訂正します」(説明用の例です)。数字を良く見せるために、数え方をあとから変えることはしません。数字が合わなくなり、次に何を直せばよいかが、自分でも分からなくなるからです。伝え方は、営業で失敗したときにまとめています。
今日やることは一つです。結果の数字を一つ、行動の数字を一つ決めて、何を1件と数えるかと、見る曜日を書いてください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
会社や上司から渡された目標(あれば)、今週の予定表、記録に使うノートか表。
記入例を見る(説明用)
結果の数字=今月、新しい見積もりを4件出す。上司から渡された目標/行動の数字と、選んだ理由=「次の約束が決まった訪問」を、週に3件。見積もりは、2回目の訪問のあとに出すことが多いので、まず次の約束を増やす/数え方=訪問のうち、次に会う日時が決まったものを1件と数える。「また連絡します」で終わった訪問は数えない。予定表に、次の日時を書けたものに丸を付けて数える。書くのは、訪問したその日/見る曜日と時間=金曜の夕方に15分/今週の数字と、来週変えること=訪問6件のうち、次の約束が決まったのは1件。決まらなかった5件は、帰る前に次の日程を聞いていなかった。来週は、席を立つ前に「次は、いつごろ伺ってよろしいでしょうか」と聞く。(すべて説明用の例です)
CHECK
ここまでできたら、次へ。
結果の数字と行動の数字が一つずつ決まり、何を1件と数えるかが書けましたか。一週間たったら、決めた曜日に数字を見て、来週変えることを一つ書きます。
うまく進まなかったときは?
結果の数字が決められないときは、上司に「私が今月、いちばん見ておくべき数字は何でしょうか」と聞いてください。行動の数字が選べないときは、先輩に「その数字の一つ手前で、何を数えていますか」と聞きます。数えるのが続かないときは、数字を一つに減らします。