NOTE 183 · 営業の実践ノート
新規開拓とは:営業が新しいお客様を探すときの、始める順番と全体の地図
公開:2026年10月4日
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新規開拓とは、まだ取引のない相手に働きかけて、新しいお客様を作っていく営業のことです。飛び込みや電話のような「方法」に目が行きがちですが、その前に、だれに当たるかを決める段階があり、あとには、記録と振り返りの段階があります。この記事は、新規開拓の全体の地図です。4つの段階を順に説明し、それぞれの詳しいやり方は、別の記事へ案内します。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 新規開拓を任されたが、何から始めればよいのか、全体の流れが見えていないとき。
- 1
当たる相手の条件を言葉にして、相手を洗い出す
- 2
相手に合わせて、接点の作り方(訪問・電話・メール・紹介など)を選ぶ
- 3
連絡のたびに、日付・方法・相手の言葉・次の予定を記録する
- 4
決めた間隔で記録を見返し、次に変えることを一つ決める
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
新規開拓とは:言葉の意味
新規開拓は、2つの言葉からできています。辞書では、新規は「新しく事をすること。また、そのさま。」(デジタル大辞泉「新規」)、開拓は「新しい分野・領域・進路などを切り開くこと。」(デジタル大辞泉「開拓」)と説明されています。開拓の項には、「販路を開拓する」という使い方の例も載っています。販路は、「商品を売りさばく方面。」(デジタル大辞泉「販路」)です。
営業の仕事では、まだ取引のない相手に働きかけて、新しいお客様を作っていくことを、新規開拓と呼びます。その仕事を中心にする営業を「新規開拓営業」「新規営業」と呼ぶ会社もあります。「新規開拓」という言葉そのものは、調べた辞書には見出しがありませんでした。ここでの説明は、2つの言葉の意味を合わせた、この記事での言い方です。
これから買ってくれるかもしれない相手を、見込み客と呼びます。辞書の「見込み客」の項は「セールスリード」を見るよう案内していて、そこには「潜在的・将来的に自社の商品やサービスの顧客となる見込みのある人々。」(デジタル大辞泉「セールスリード」)とあります。新規開拓は、この見込み客を見つけ、話ができる関係にしていく仕事です。
反対側にあるのが、すでに取引のあるお客様への営業です。定期的に回る仕事はルート営業、今のお客様の困り事をさらに聞いていく進め方は深耕営業にまとめています。営業の種類の全体は、営業の種類で見られます。
全体の地図:4つの段階
新規開拓というと、飛び込みや電話の場面を思い浮かべます。けれども、それは4つの段階のうちの一つです。
| 段階 | やること | やらないと起きること |
|---|---|---|
| 1. 相手の洗い出し | 当たる相手の条件を決め、一覧にする | 手当たりしだいになり、なぜ断られたのかが分からない |
| 2. 接点を作る | 訪問・電話・メール・紹介などから、方法を選んで連絡する | 相手に合わない方法で連絡し、話を聞いてもらえない |
| 3. 記録する | 連絡のたびに、相手の言葉と次の予定を書く | 同じ相手に同じ話をする。約束した連絡を忘れる |
| 4. 振り返る | 記録を見返し、次に変えることを一つ決める | 同じやり方を続けて、何が合っていないのかに気づけない |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
右の列は、起きやすいことの例です。4つは一度きりではなく、4から1に戻って、回し続けます。振り返りで「この条件の相手とは話が進みやすい」と分かれば、洗い出しの条件を直します。計画から見直しまでを回す考え方は、PDCAとはにまとめています。
この記事は地図なので、それぞれの方法の細かい言い方は書きません。段階ごとに、詳しい記事へ案内します。
段階1 相手の洗い出し
最初にやるのは、連絡することではなく、だれに連絡するかを決めることです。
条件を、言葉にする
「どんな相手なら、自分の会社の商品が役に立ちそうか」を、3つほどの条件で書きます。手がかりは、今のお客様です。今のお客様は、どんな会社で、何に困っていて、なぜ買ってくれたのか。先輩や上司に聞くと、条件の下書きができます。
惜しい例:「この地域の会社、全部」
良い例:「今のお客様と同じくらいの人数の会社で、同じ困り事がありそうな仕事をしている所。自分が通える範囲」
説明用の例です。惜しい例は、広すぎて、どこから当たるかが決まりません。断られたときに、相手が条件に合っていなかったのか、話し方が合っていなかったのかも、分けられません。良い例は、条件があるので、あとで「条件を変える」という直し方ができます。
一覧にする
条件に合う相手を、表にします。会社名、連絡先、条件に合うと考えた理由、を並べます。最初から大きな表を作らず、まず5件で始めると、記録の形を試せます(説明用の例です)。
当たる順番を決める
一覧ができたら、順番を付けます。基準は、条件に合うと考えた理由が、はっきりしている順です。「今のお客様と同じ困り事がありそうだ」と言える根拠がある相手を、先にします。理由がはっきりしている相手には、最初の連絡で「なぜ、あなたに連絡したのか」を一言で言えます。理由があいまいな相手は、後ろに回すか、もう少し調べてから当たります。
一覧の出どころを確かめる
会社から渡された一覧を使うのか、自分で調べて作るのか。ここは、会社の決まりを先に聞きます。名前や連絡先は、個人情報に当たることがあります。どこから集めてよいか、私物のノートやスマートフォンに書いてよいか、すでにほかの担当が連絡している相手ではないかを、上司か先輩に確かめます。
段階2 接点の作り方を選ぶ
接点とは、相手と最初に言葉を交わす機会のことです。方法はいくつかあり、相手と商品によって、合うものが違います。次の表は一例です。
| 方法 | どんな方法か | 詳しい記事 |
|---|---|---|
| 訪問(約束なし) | 約束を取らずに、相手の所へ行く | 飛び込み営業のやり方、どぶ板営業 |
| 電話 | 電話で、訪問や商談の約束をお願いする | テレアポとは、訪問の約束を取る |
| メール | 初めての相手に、用件とお願いを文で送る | はじめましてのメール、アポイントのメール |
| 紹介 | 今のお客様や知り合いから、相手を紹介してもらう | この記事の「判断4」 |
| 問い合わせへの対応 | 広告やホームページを見た相手からの連絡に応える | 反響営業とは、インサイドセールスとは |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
約束が取れたあとの流れは、アポイントとはにまとめています。約束の日に聞くことは商談ヒアリングです。
どの方法でも、先に確かめること
方法を選ぶ前に、会社が認めている方法かを確かめます。訪問先の建物に「営業お断り」と書かれている場合の扱いや、電話をかけてよい時間帯は、会社ごとに決まりがあることがあります。
法律の決まりもあります。相手が個人の消費者のとき、訪問や電話での勧誘には、特定商取引法の決まりがあります。消費者庁 特定商取引法ガイド「訪問販売」には、「消費者が契約締結の意思がないことを示したときには、その訪問時においてそのまま勧誘を継続すること、その後改めて勧誘することが禁止されています。」と書かれています。消費者庁 特定商取引法ガイド「電話勧誘販売」には、「特定商取引法は、電話勧誘販売に係る契約等を締結しない意思を表示した者に対する勧誘の継続や再勧誘を禁止しています。」とあります(2026年10月4日に確認)。
メールについては、総務省「迷惑メール対策」のページに、「広告・宣伝メールを送信する場合、当該メールは原則、特定電子メール法の規制対象となります。」と書かれています(2026年10月4日に確認)。
自分の仕事が、これらの決まりに当たるかどうか。この記事では言い切れません。自分で判断せず、上司や、会社の法務の担当に確かめてください。決まりの中身は、上の表の、それぞれの記事で、もう少しくわしく紹介しています。
場面で変わるところ
| 場面 | 考えること(一例) |
|---|---|
| 相手が会社 | 窓口がどこかを先に調べる。代表の電話か、問い合わせの窓口か。進み方は法人営業とはにまとめています |
| 相手が個人 | 法律の決まりに当たることがある。会社の手順を、先に上司に確かめる |
| 初めて連絡する | 名乗る・用件・小さなお願い、の3つにしぼる |
| 2回目以降の連絡 | 前回の記録を読み、相手が言った言葉から始める |
| 紹介してもらった | 紹介してくれた人の名前を出してよいかを、その人に先に確かめる |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
段階3・4 記録と振り返り
記録:連絡のたびに書く5つ
新規開拓は、一度の連絡で決まらないことが多い仕事です。次に連絡するとき、前に何を話したかが分からないと、相手に同じ説明をさせることになります。連絡のたびに、次の5つを書きます。
- 日付
- 相手(会社と、話した人。名前が分からなければ「受付の方」)
- 方法(訪問・電話・メールなど)
- 相手が言った言葉(そのまま)
- 次の予定(いつ・何をするか。無ければ「予定なし」と、その理由)
惜しい例:「A社 電話 ダメだった」
良い例:「10月4日 A社 電話。受付の方が出て、『担当は総務の佐藤ですが、今月は立て込んでいます。来月ならお話を聞けるかもしれません』とのこと。来月の第1週に、佐藤様あてにもう一度電話する」
説明用の例です。惜しい例では、次に何をすればよいのかが分かりません。良い例には、担当の部署と名前、時期という、次の連絡に使える事実が残っています。「ダメだった」「感触が良い」のような自分の感想ではなく、相手の言葉を書きます。メモの直し方は商談メモ添削に、一日の記録のまとめ方は日報の書き方にまとめています。
振り返り:数えて、一つ変える
振り返る間隔を、先に決めます。週に一度、15分、のような形です(説明用の例です)。見るのは、記録から数えられる事実です。
- 何件に連絡したか
- そのうち、何件で担当の人と話ができたか
- そのうち、何件で次の予定が決まったか
「何件のうち何件なら良い」という目安の数字は、この記事では示しません。商品や相手によって違い、確かな出典が無いからです。比べる相手は、前の週の自分の記録です。
数えたら、どこで止まっているかを見ます。担当の人と話せていないなら、連絡する時間帯や方法を変える。話せているのに次の予定が決まらないなら、お願いの中身を小さくする。そもそも条件に合う相手が少ないなら、段階1に戻って条件を直す。変えるのは、一度に一つにします。いくつも変えると、何が効いたのかが分かりません。
断られることが続くと、気持ちが重くなります。続けることについては、「腐るなよ」に、当時は「いつまで?」と思っていたに書いています。
迷いやすい判断と、連絡が重なったあと
判断1:一日に、何件当たればよい?
決まった数は、この記事では示せません。基準は2つです。会社に目標の数があるなら、それに合わせます。無いなら、記録まで書き終えられる数にします。連絡だけして記録が残らないと、段階3と4ができず、同じやり方をくり返すことになります。上司には「一日の件数の目安はありますか。記録は、この5つの項目で付けるつもりです」と聞きます(説明用の例です)。
判断2:断られた相手に、もう一度連絡してよい?
相手が個人の消費者なら、上で引いたとおり、法律の決まりがあります。自分で判断せず、会社の手順に合わせてください。
相手が会社のときの基準は、相手が何と言って断ったかです。「今は忙しい」「来月なら」は、時期の話です。相手が言った時期に、記録を読んでから連絡します。「必要ありません」「もう連絡しないでください」と言われたなら、それ以上すすめず、言われた日と言葉を記録して、上司に伝えます。会社として連絡しない相手の一覧があるなら、そこに入れてもらいます。
判断3:既存のお客様の仕事と、どちらを先にする?
基準は、約束があるほうが先です。今のお客様との約束や、期限のある宿題を先にします。新規開拓は、空いた時間にやろうとすると、後回しになりがちです。週の予定に、先に時間の枠を入れておきます。「火曜と木曜の午前は新規開拓」のような形です(説明用の例です)。割り振りに迷うなら、上司に、今週の予定を見せて聞きます。
判断4:今のお客様に、紹介をお願いしてよい?
基準は、相手が断りやすい形で聞けるかです。「同じことでお困りの方が、お知り合いにいらっしゃれば、ご紹介いただけますか。難しければ、もちろん結構です」(説明用の例です)。紹介する側は、自分の信用を使うことになります。納品や約束が守れていない時期には、お願いしません。紹介してもらったら、その後どうなったかを、紹介してくれた人に報告します。
失敗のあと:同じ会社に、同僚と重なって連絡してしまった
その場では:相手から「先日も、御社の別の方から電話がありましたよ」と言われたら、言い訳をせず、「失礼しました。社内の確認が足りていませんでした」とおわびします(説明用の例です)。そのうえで、その場では話を進めず、「社内で確かめて、担当の者からご連絡します」と伝えて切ります。
戻ってから:先に連絡していた人を探し、どちらが担当するかを上司に決めてもらいます。自分で「私が続けます」とは決めません。
記録:「いつ・どの会社に・だれと重なったか」「原因(一覧に、連絡済みの印が無かった、など)」「次は、連絡の前に、会社の記録でその会社の名前を調べる」と書きます(説明用の例です)。報告のしかたは、営業で失敗したときにまとめています。
今日やることは一つです。当たる相手の条件を3つ書き、最初の5件を表にして、記録する項目を決めてください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
会社から渡された相手の一覧(あれば)、会社の新規開拓の決まり、記録に使う表やノート。
記入例を見る(説明用)
当たる相手の条件=今のお客様と同じくらいの人数の会社。自分が通える範囲にある。今のお客様が困っていたことと、同じ困り事がありそうな仕事/最初に当たる5件と、一覧の出どころ=先輩から渡された一覧のうち、まだだれも連絡していない5社(A社〜E社)。一覧は会社のもの。持ち出してよいかは未確認(今日、先輩に聞く)/接点の作り方と、会社の決まり=まず電話で、訪問の約束をお願いする。個人のお宅には連絡しない。メールを送ってよい相手かどうかは、上司に確かめてから/記録する項目=日付、相手の会社と名前、方法、相手が言った言葉、次の予定(いつ・何を)。断られたときも、言葉のまま書く/振り返る日と、見ること=金曜の夕方に15分。何件に連絡し、何件で話ができ、何件で次の予定が決まったかを数える。変えることを一つだけ決める。(すべて説明用の例です)
CHECK
ここまでできたら、次へ。
当たる相手の条件が3つ書け、最初の5件と、記録する項目が決まりましたか。ここまでできたら、選んだ方法の詳しい記事に進んでください。
うまく進まなかったときは?
相手の条件が書けないときは、今のお客様を一社思い浮かべ、「どんな会社か」を3つ書いてください。それが条件の下書きになります。一覧が無いときは、自分で集める前に、先輩に「当たる相手は、どこから選べばよいですか」と聞きます。