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NOTE 125 · 営業の実践ノート

「お伺いします」は二重敬語?意味と、「伺います」「お伺いいたします」「参ります」の使い分け

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「お伺いします」は、形のうえでは二重敬語です。ただし、文化庁の「敬語の指針」は、習慣として定着している二重敬語の例に「お伺いする」「お伺いいたす」を挙げています。使ってかまわない形です。「伺う」には、聞く・尋ねる・訪ねるの三つの意味があるので、どの意味で使っているかが相手に分かるように書くことが、言葉の形よりも大切になります。

今日できるようになること

これから送るメールか、かける電話を一つ決め、「伺う」を使う文を書いて、訪ねるのか・尋ねるのか・聞いたのかが一文で分かるかを確かめる。

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こんなときに 「お伺いします」は二重敬語だと聞いて、使ってよいか迷うとき。「伺います」「参ります」とどう使い分けるか知りたいとき。

この順番で進めよう
  1. 1

    「伺う」を、訪ねる・尋ねる・聞くのどの意味で使うかを決める

  2. 2

    何を(どこへ・いつ)を足して、意味が一つに決まる文にする

  3. 3

    「伺います」「お伺いします」「お伺いいたします」から形を選ぶ

  4. 4

    相手側の動作に「伺う」を使っていないかを読み返す

会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。

「伺う」の意味:聞く・尋ねる・訪ねるの謙譲語

訪問の約束をするメールに「◯日にお伺いします」と書いた。送る前に、「『お伺いします』は二重敬語だ」と聞いたことを思い出して、手が止まる。この記事では、まず「伺う」の意味を辞書で確かめ、次に二重敬語かどうかを文化庁の資料で確かめます。「 」の中は、辞書や資料の文をそのまま写したものです。

デジタル大辞泉「伺う」は、「伺う」の意味として、次の三つを先に挙げています。

番号辞書の語釈辞書の例文
1「「聞く」の謙譲語。拝聴する。お聞きする。」「おうわさはかねがね伺っております」
2「「尋ねる」「問う」の謙譲語。」「この件について御意見をお伺いします」
3「「訪れる」「訪問する」の謙譲語。」「明朝、こちらから伺います」

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

例文は、辞書では「―・」という記号で書かれている部分を、読みやすく「伺」に置き換えて写しています。2番目の例文は、辞書そのものが「お伺いします」の形を使っています。

敬語の種類は、文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日・文化庁)で確かめられます。指針は「伺う」を謙譲語Ⅰの例に挙げ、謙譲語Ⅰを「自分側から相手側又は第三者に向かう行為・ものごとなどについて,その向かう先の人物を立てて述べるもの。」と説明しています(指針15ページ)。同じページの注には、「伺う」が、行く(訪ねる)のほかに聞く・尋ねるの「謙譲語Ⅰとしても使われる。」とあります。

つまり、「伺う」は、自分が訪ねる先・尋ねる先・話を聞く先の人を立てる言葉です。ここから、二つのことが言えます。

  • 相手側の動作には使わない。指針は、受付の人が客に「担当者に伺ってください」と言う例を取り上げ、「「伺う」は謙譲語Ⅰである。」と述べ、客の動作に用いる敬語ではない、と説明しています(指針37ページ)。相手に尋ねてもらうときは、「担当者にお尋ねください」「受付でお聞きください」です。
  • 立てる相手がいない行き先には使わない。指針は、謙譲語Ⅰを「立てるのにふさわしい<向かう先>がある場合に限って使う。」としています(指針19ページ)。自社の倉庫へ行くことを「倉庫に伺います」とは言いません。

尊敬語と謙譲語の見分け方の全体は、尊敬語と謙譲語の違いにまとめています。この記事では、「お伺いします」という形と、その使い方にしぼります。

「お伺いします」は二重敬語か:敬語の指針の説明

結論から書くと、形のうえでは二重敬語ですが、指針は、習慣として定着している例に挙げています。使ってかまわない形です。指針の30ページを、短く区切って引用します。

まず、二重敬語とは何か。指針の説明は「一つの語について,同じ種類の敬語を二重に使ったものを「二重敬語」という。」です。「伺う」は、それだけで謙譲語Ⅰです。そこへ、謙譲語Ⅰを作る形の「お……する」を重ねたものが「お伺いする」です。同じ種類の敬語を二つ使っているので、二重敬語に当たります。

次に、二重敬語の扱い。指針は、こう書いています。

「「二重敬語」は,一般に適切ではないとされている。ただし,語によっては,習慣として定着しているものもある。」(指針30ページ)

そして、「習慣として定着している二重敬語の例」として、尊敬語と謙譲語Ⅰの例が並んでいます。謙譲語Ⅰの例は、次の三つです。

「お伺いする,お伺いいたす,お伺い申し上げる」(指針30ページ)

「お伺いします」は「お伺いする」に「ます」が付いた形、「お伺いいたします」は「お伺いいたす」に「ます」が付いた形です。どちらも、指針が定着した例として挙げている形に入ります。

整理すると、次のようになります。

  • 二重敬語は、一般には適切ではないとされている。
  • ただし、「お伺いする」「お伺いいたす」「お伺い申し上げる」は、習慣として定着している例。
  • 指針に書かれているのは、ここまで。「お伺いします」と「伺います」のどちらがより丁寧か、という比べ方は書かれていない。

「二重敬語だから間違い」と言い切ることも、「お伺いしますのほうが丁寧」と言い切ることも、指針からはできません。次の章では、そのうえで、どう選ぶかを説明します。

「伺います」「お伺いします」「お伺いいたします」「参ります」の使い分け

四つの形を、指針の説明に沿って並べます。

形敬語の組み立て言えること
伺います伺う(謙譲語Ⅰ)+ます(丁寧語)敬語の形が一つ。この形で、向かう先の人を立てている
お伺いします伺う(謙譲語Ⅰ)に「お……する」(謙譲語Ⅰ)を重ねた形+ます二重敬語だが、指針が定着した例に挙げている
お伺いいたします「お伺いする」の「する」を「いたす」に代えた形+ます指針が定着した例に挙げている。「いたす」は謙譲語Ⅱで、話している相手に丁重に述べる働きが加わる
参ります参る(謙譲語Ⅱ)+ます話している相手に丁重に述べる言葉。行く・来るの意味だけ。聞く・尋ねるの意味は無い

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

「お(ご)……いたす」について、指針は、謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱの「両方の性質を併せ持つ敬語として「お(ご)……いたす」がある。」と説明しています(指針20ページ)。謙譲語Ⅱは、「自分側の行為・ものごとなどを,話や文章の相手に対して丁重に述べるもの。」です(指針18ページ)。

どれを選ぶかについて、公的な決まりは見当たりません。自分で決めるときの基準を、三つ書きます。

  1. 迷ったら「伺います」。敬語の形が一つで、向かう先の相手を立てる働きは足りています。二重敬語かどうかを気にせずに済みます。
  2. 職場や相手の習慣に合わせる。先輩が同じ相手へ送ったメールが「お伺いします」「お伺いいたします」なら、それに合わせます。指針が定着した例に挙げている形なので、直す必要はありません。
  3. 行き先が相手でないときは「参ります」。「来週は、展示会の会場へ参ります」のように、立てる相手がいない行き先には「伺う」を使わず、「参ります」にします(説明用の例です)。

行き先が、今話している相手自身のときは、「伺います」も「参ります」も使えます。「伺う」と「参る」の違いの詳しい説明は、尊敬語と謙譲語の違いの「伺う」と「参る」の章にあります。

一つ、気をつけたい重なりがあります。「お伺いさせていただきます」のように、さらに言葉を重ねた形です。指針が定着した例に挙げているのは、「お伺いする」「お伺いいたす」「お伺い申し上げる」の三つです。それより長い形は、例に入っていません。長くするほど丁寧になる、とは指針に書かれていないので、三つの形までにとどめます。

訪問の約束・質問・電話での例

「伺う」には三つの意味があるので、短く書くと、どの意味かが相手に伝わらないことがあります。辞書の「伺う」の補説にも、「最近、「伺う」の意味は、3の「訪れる」のみとして、1の「聞く」、2の「尋ねる」の意では使わない人が増えている。」とあります。相手が「訪問」の意味だけで受け取ることもある、ということです。

だから、何を・どこへ・いつ、を一緒に書きます。次の例は、すべて説明用です。

訪問の約束

  • 惜しい例:「では、後ほどお伺いします」
  • 良い例:「◯月◯日(◯)14時に、御社の本社へ伺います。当日は、私と上司の田中の2名で伺います」

惜しい例は、訪ねて行くのか、後で質問するのかが決まりません。日時も分かりません。良い例は、日時・場所・人数が入っていて、訪問だと分かります。なお、自社の上司が行くことを取引先に伝えるときも、「田中が伺います」と言えます。行く先の相手を立てる言葉だからです。日程の候補の出し方や、約束のメールの全体は、アポイントメールの書き方にあります。

質問をする

  • 惜しい例:「いくつかお伺いします」
  • 良い例:「お見積りを作るにあたり、2点お伺いしてもよろしいでしょうか。数量は10台でよろしいでしょうか。納品の場所は、本社でしょうか」

良い例は、質問の数と、聞く理由を先に伝えています。相手は、どれだけ答えればよいかが分かり、身構えずに済みます。商談で質問をどの順番で重ねるかは、商談ヒアリングにまとめています。

聞いたことを伝える

「聞く」の意味では、「伺っております」の形がよく使われます。

「納期の件は、前任の[前任者の名前]から伺っております」

「ご要望は、先日のお電話で佐藤様から伺いました。念のため、内容を確認させてください」

一つめの例は、聞いた相手が自社の前任者です。自社の人を立てる形になるので、取引先に話すときは「[前任者の名前]から聞いております」「引き継いでおります」のほうが合います。誰から聞いたのかで、「伺う」が合うかどうかが変わります。二つめの例は、聞いた相手が取引先の佐藤様なので、「伺いました」が合います。

電話で

「お世話になっております。[自社名]の[氏名]と申します。先日お送りした見積書の件で、1点お伺いしたく、お電話しました。佐藤様は、いらっしゃいますでしょうか」

「お名前を、もう一度伺ってもよろしいでしょうか」

「それでは、◯日の14時に伺います。失礼いたします」

電話では、文字が見えません。「伺います」が訪問なのか質問なのかは、前後の言葉で決まります。最後の例のように、日時を付けて言い直すと、聞き違いを防げます。電話のかけ方の全体は、営業電話のかけ方にあります。

「つかぬことをお伺いしますが」の意味と使う場面

デジタル大辞泉「付かぬ事」は、「つかぬこと」を「それまでの話とは関係のないこと。だしぬけのこと。」と説明し、例文に「ところで、付かぬ事を伺いますが」を挙げています。

「つかぬことをお伺いしますが」は、ここまでの話とは関係のないことを、急に尋ねるときの前置きです。「つまらないことですが」という意味ではありません。辞書の補説も、「些細でつまらないこと」という意味を、本来の意味ではないものとして扱っています。

使う場面を、表にします。

場面合うかどうか理由と、言い方の一例
納期の打ち合わせの途中で、駐車場の場所を聞く合うそれまでの話と関係がない。「つかぬことをお伺いしますが、来客用の駐車場はどちらでしょうか」
見積の話の途中で、見積の数量を聞く合わない話の続き。「数量について、1点確認させてください」
メールの本題として質問する合いにくいメールは、件名と書き出しで用件が分かる。「別件で恐れ入りますが」のほうが伝わる

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

なぜ前置きが要るのか。話の流れと関係のない質問が急に来ると、相手は「今の話と、どうつながるのか」を考えてしまいます。前置きがあれば、相手は「別の話に変わる」と分かって聞けます。

気をつけたいのは、立ち入った質問の前置きにはならないことです。相手の年齢や家族のこと、他社との取引の金額のように、答えにくいことを聞くときに「つかぬことを」と付けても、答えにくさは変わりません。仕事に必要な理由があるなら、「社内の手続きのために、確認させてください」と理由を先に言います。必要でなければ、聞きません。

クッション言葉としては、「恐れ入りますが」もよく使われます。使い方は「恐れ入りますが」の使い方にまとめています。

「お聞きします」「お尋ねします」との違いと、迷いやすい判断

指針は、「お聞きする」「お尋ねする」といった敬語も、「「伺う」と同じ謙譲語Ⅰ」だと説明しています(指針37ページ)。聞く先・尋ねる先の人を立てる、という働きは同じです。違いは、言葉の形と、意味の幅です。

言葉意味の幅選ぶ場面の一例
お伺いします聞く・尋ねる・訪ねるの三つ訪問にも質問にも使える。何を・いつを足して、意味を一つにする
お聞きします聞く(尋ねる意味でも使われる)話し言葉で、やわらかく質問したいとき
お尋ねします尋ねる(質問する)質問であることを、はっきりさせたいとき。訪問と取り違えられない

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

どれが上、という決まりは見当たりません。訪問と質問が一通のメールに両方出てくるときは、訪問を「伺います」、質問を「お尋ねします」と分けると、読み手が迷いません。

判断1:相手が「伺います」で、自分が「お伺いいたします」。合わせたほうがよい?

合わせる決まりはありません。どちらも、指針に沿った形です。基準は、同じメールの中で形をそろえることです。一通の中に「伺います」「お伺いします」「お伺いいたします」が混ざると、読み手は違いに意味があるのかと考えてしまいます。一通の中では、一つの形にします。

判断2:上司に「二重敬語だから直して」と言われたら?

その職場の書き方に合わせて、「伺います」に直します。指針は「お伺いする」を定着した例に挙げていますが、二重敬語そのものは「一般に適切ではないとされている」とも書いています。「伺います」は、どちらの立場から見ても問題のない形です。

判断3:「伺わせていただきます」は、使ってよい?

指針は、「させていただく」の形について、相手側の許可を受けて行い、そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちがある場合に使われる、と説明しています(指針40ページ)。相手から「来てもよい」と許しをもらった訪問なら、条件に合います。こちらから日時を決めて知らせるだけなら、「伺います」で足ります。「させていただく」の説明は、尊敬語と謙譲語の違いの「判断3」にあります。

間違えたあと1:相手の動作に「伺ってください」と言った・書いた

その場では:話している途中なら、「失礼しました。受付でお尋ねください」と、正しい形で言い直します。メールで、案内の内容(場所や手順)は合っているなら、訂正だけのメールを送るかどうかは先輩に相談します。

後の記録:「相手の動作に『伺う』を使った。相手の動作は『お尋ねください』『お聞きください』。送る前に、『伺う』の主語が自分側かを見る」のように、間違えた形・正しい形・次に見る所を書きます(説明用の例です)。

間違えたあと2:「お伺いします」が、訪問か質問か伝わらなかった

その場では:相手から「いらっしゃるのですか」と聞き返されたら、「失礼しました。お電話で、2点お尋ねしたいという意味でした」と、すぐに言い直します(説明用の例です)。

後の記録:行き違いが起きた文と、直した文を並べて書きます。次からは、「伺う」を書いたら、「訪問します」「質問します」に置き換えて読み、意味が一つに決まるかを確かめます。

今日やることは一つです。これから使う「伺う」の文を一つ書き、何を・どこへ・いつ、が入っているかを確かめてください。

資料やメールを見たことを伝える言い方は、「拝見しました」の意味と使い方にまとめています。

YOUR TURN

自分の一件で、書いてみよう。

手元に用意するもの
これから送るメールの下書き、または電話で話すことのメモ。訪問の日時と場所、聞きたいことが分かるメモ。職場の先輩が同じ相手へ送ったメール(言葉づかいを見るため)。

記入例を見る(説明用)

相手と、連絡の手段=A社の佐藤様。メール/「伺う」の意味と、何を・どこへ・いつ=訪ねる。A社の本社へ、◯月◯日(◯)14時に。あわせて、当日の参加人数を尋ねる/書く文=「◯月◯日(◯)14時に、御社の本社へ伺います。あわせて、当日ご参加の人数をお伺いしてもよろしいでしょうか。」/選んだ形と、選んだ理由=訪問は「伺います」。先輩が佐藤様へ送るメールがこの形だった。質問は「お伺いしてもよろしいでしょうか」。指針で定着した形とされているので、そのまま使った/読み返して直した所=最初は「後ほどお伺いします」とだけ書いていて、訪問なのか質問なのかが分からなかった。日時と場所、聞きたいことを足した。「受付で伺ってください」と書きかけた案内を、「受付でお尋ねください」に直した。

入力は自動保存されません。ページを移動する前に保存してください。保存した内容は他の人に自動送信されません。

CHECK

ここまでできたら、次へ。

「伺う」を使った文に、何を(どこへ・いつ)が入っていて、訪ねるのか尋ねるのかが一文で分かり、相手側の動作に「伺う」を使っていない。

うまく進まなかったときは?

意味が二つに取れる文になったら、「伺う」を「訪問します」「質問します」に置き換えて読み、足りない言葉(日時・場所・聞きたいこと)を足す。形で迷うなら、先輩が同じ相手へ送ったメールの形に合わせる。

NEXT NOTE

次に読むなら

尊敬語と謙譲語の違いを確かめるアポイントメールを書く商談で相手の話を聞く