NOTE 52 · 営業の実践ノート
即決営業とは:その場で決めてもらう前に、確かめること
公開:2026年10月3日
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即決営業とは、商談のその場で、契約や注文の返事をもらう進め方を指して使われることが多い言葉です。この記事では、相手を急がせる話し方は扱いません。その場で決められる場面か、持ち帰ってもらう場面かを3つの問いで見分け、返事をもらう前に、条件・相手の不安・書面を確かめる手順を説明します。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 「その場で決めてもらえ」と言われたが、相手を急がせる言い方はしたくないとき。
- 1
決める人・比べる材料・金額と条件の3つがそろっているかを見る
- 2
そろっていれば、条件を声に出して読み合わせる
- 3
決める前に気になっている点を、一つ聞いて答える
- 4
返事を受け、書面と次の予定を確かめて記録する
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
即決営業とは:商談のその場で、返事をもらう進め方
即決営業とは、商談のその場で、契約や注文の返事をもらう進め方を指して使われることが多い言葉です。「即決」は、その場ですぐに決める、という意味です。決まった定義があるわけではなく、会社や人によって指す範囲が違います。個人のお客様の家を訪問する仕事で使われることもあれば、会社どうしの商談で使われることもあります。
初めてこの言葉を聞くと、「相手に考える時間を与えず、その場で決めさせる話し方」のことだと受け取りがちです。この記事では、そうした話し方は扱いません。急がされて決めた相手は、後で「やはりやめたい」と考え直すことがあります。取り消しや苦情になれば、相手も自分も困ります。
代わりに説明するのは、相手が納得して、その場で決められる条件を先に整えるやり方です。条件がそろっていれば、その場で返事をもらえます。そろっていなければ、持ち帰ってもらいます。持ち帰りは失敗ではありません。次に誰が何をするかが決まっていれば、商談は進んでいます。
商談全体の流れは商談とはにまとめています。
その場で決められる場面と、持ち帰る場面を見分ける
その場で返事を聞いてよいかは、次の3つの問いで見分けます。3つとも「はい」のときだけ、返事を聞きます。一つでも「いいえ」か「分からない」なら、持ち帰りにします。
問い1:決める人が、その場にいるか
目の前の人が、自分で決めてよい立場かを確かめます。上司や家族と相談して決める人に返事を求めると、相手は、相談する相手に説明できないまま約束することになります。
聞き方は、「お決めになるときは、どなたかとご相談されますか」です。相談する人がいると分かったら、その人に渡せる材料を用意します。会社が相手の場合の進め方は法人営業とはと、「社長に相談します」と言われたらにまとめています。
問い2:比べる材料が、そろっているか
相手が、ほかの会社の見積もりや、今のやり方と比べている途中かを確かめます。比べ終わっていない人は、決める理由をまだ持っていません。その状態で返事を求めても、相手は答えようがありません。
聞き方は、「ほかにも比べていらっしゃるものはありますか」です。比べている途中なら、「比べるときに、どの点を見ていらっしゃいますか」と一つ聞き、その点が分かる資料を渡します。
問い3:金額と条件が、確定しているか
これは、自分の側の問いです。数量、単価、納期、支払いの条件が、社内で確かめた内容になっているかを見ます。「たぶんこの金額です」「納期はおそらく間に合います」の段階で返事をもらうと、後で条件が変わり、相手の決定をやり直してもらうことになります。
見積書を出す前の確かめ方は、見積書を送る前に確認する7項目にまとめています。
次の表は、場面ごとの進め方の一例です。
| 場面 | 3つの問い | 進め方(一例) |
|---|---|---|
| いつもの商品の追加注文。目の前の人が自分で決めている | 3つとも「はい」 | 条件を読み合わせて、その場で返事を聞く |
| 担当者は乗り気だが、上司の承認が要る | 決める人が、その場にいない | 持ち帰り。上司に説明するための資料を渡し、返事の時期を聞く |
| ほかの会社の見積もりを待っている | 比べる材料が、そろっていない | 持ち帰り。比べる点を聞き、次の連絡日を決める |
| 数量が変わり、単価をまだ確かめていない | 金額と条件が、確定していない | 自分が持ち帰る。「◯日までに確定した金額をお送りします」と伝える |
| 相手から「今日決めたい」と言われた | 相手の側はそろっている。自分の側の条件を確かめる | 確定している条件は読み合わせる。自分で決められない値引きなどは、確かめてから答える |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
個人のお客様を訪問して契約する仕事の場合
事業者が消費者の自宅などを訪問して契約をする取引は、特定商取引法の「訪問販売」として規制されています。消費者庁の特定商取引法ガイド「訪問販売」には、事業者は、契約の申込みを受けたとき、または契約を締結したときに、商品の種類、販売価格、代金の支払時期と方法、商品の引渡時期などを記載した書面を、消費者に渡さなければならない、と書かれています。
同じページは、消費者は、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、申込みの撤回や契約の解除(クーリング・オフ)ができる、と説明しています。禁止行為としては、勧誘の際に事実と違うことを告げること、故意に事実を告げないこと、相手を威迫して困惑させること、などが挙げられています。消費者が契約を結ぶ意思がないことを示したときに、その訪問時にそのまま勧誘を続けることも禁止されています。
一方で、「営業のため、又は営業として締結するもの」などは、この法律が適用されない場合として挙げられています。自分の仕事がどれに当たるかは、自分で判断しません。個人のお客様と契約する仕事なら、商談の前に、会社の法務の担当か上司に確認してください。訪問の入り方は飛び込み営業のやり方にまとめています。
その場で返事をもらう前に確かめる3つ
3つの問いがそろったら、返事を聞く前に、条件・相手の不安・書面の3つを確かめます。次の順番で進めます。
- 条件を、声に出して読み合わせる。何を、いくつ、いくらで、いつ届けるか、支払いはいつか、金額に含まれない物は何か、を読み上げます。「違う所があれば、止めてください」と先に言います。聞き違いがあれば、その場で直せるからです。
- 決める前に気になっている点を、一つ聞く。「決める前に、気になっている点はありますか」と聞き、相手が話し始めるまで待ちます。言えなかった不安は、後で取り消しの理由になることがあります。その場で答えられないことは、「確認して、◯日までにお返事します」と伝え、返事は確認の後にもらいます。
- 返事を聞く。「この内容で、進めてよろしいですか」と聞きます。答えが「はい」でも「いいえ」でも「もう少し考えたい」でも、そのまま受けます。答えを変えさせようとはしません。
- 書面で残す。注文書、申込書、契約書など、会社で決まっている書面に記入し、控えを相手に渡します。口頭の「お願いします」だけで終わらせないのは、数量や納期の記憶が、後でお互いに違ってくるからです。
- この後の予定を伝える。いつ届くか、誰から連絡が行くか、変更や取り消しをしたいときはどこへ連絡すればよいか、を伝えます。相手は、決めた直後に「これでよかったか」と考えることがあります。連絡先が分かっていれば、落ち着いて待てます。
対面でない場合も、順番は同じです。オンラインの商談では、条件を書いた資料を画面に映しながら読み合わせます。電話では、読み上げた後に、同じ内容をメールで送り、「メールの内容で進めてよろしいですか」と返事を文字でもらいます。
次は、3つの問いがそろっている場面の会話例です。
自分:「では、内容を読み上げます。違う所があれば止めてください。◯◯を10箱、単価は先月と同じ、納品は来週水曜の午前、お支払いはいつもと同じ月末締めです」
相手:「合ってるよ」
自分:「ありがとうございます。決める前に、気になっている点はありますか」
相手:「10箱だと、置き場所が足りるかな」
自分:「置き場所ですね。5箱ずつ、2回に分けてお届けすることもできます。その形でよろしければ、この内容で進めてよろしいですか」
相手:「じゃあ、それで頼むよ」
自分:「承知しました。注文書に2回の納品日を書きますので、控えをお持ちください。納品の前日に、お電話します」
商品・数量・曜日は説明用の例です。急がせる言葉は使っていません。条件を読み、不安を一つ聞き、返事を聞き、書面と次の予定を伝えています。この流れは、下の実践シートの項目とつながっています。
言い方の例:急がせる言い方と、確かめる言い方
同じ場面でも、言い方で相手の受け取り方が変わります。次の表は、惜しい言い方と、確かめる言い方を並べた例です。
| 惜しい言い方 | 確かめる言い方 | 違い |
|---|---|---|
| 「今日決めていただければ、お安くします」 | 「この見積もりの金額は、◯月◯日まで有効です。それまでに、お返事をいただけますか」 | 期限が書面に書かれた事実で、相手に考える時間がある |
| 「今だけの特別な条件です」 | 「この条件が使えるのは、◯◯の場合です。当てはまるかを、一緒に確かめさせてください」 | 「今だけ」の理由と中身が、相手にも確かめられる |
| 「皆さん、その場で決められていますよ」 | 「決める前に、気になっている点はありますか」 | ほかの人の話ではなく、目の前の相手の事情を聞いている |
| 「ご検討の必要は、ないと思いますが」 | 「ご相談される方がいらっしゃれば、その方向けの資料をお渡しします」 | 検討することを止めず、検討しやすくしている |
| 「では、こちらにサインをお願いします」 | 「内容を読み上げますので、違う所があれば止めてください」 | 書く前に、相手が中身を確かめられる |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
惜しい言い方に共通するのは、相手が考える時間を短くしようとしていることです。その場では決まっても、相手に「急がされた」という思いが残ると、次の注文の相談をしてもらいにくくなります。
期限が本当にある場合は、事実として伝えて構いません。見積もりの有効期限、キャンペーンの終了日、在庫の残り、などです。そのときは、日付と理由を、書面に書かれた形で見せます。事実でない期限は言いません。個人のお客様への訪問販売では、上で見たとおり、勧誘の際に事実と違うことを告げることが、禁止行為に挙げられています。
「検討します」と言われたときの受け方
返事を聞いて「検討します」と言われたら、その場で押し返しません。「検討します」には、本当に比べたい、決める人がほかにいる、断りにくいので言っている、など、いくつかの意味があります。どれなのかは、聞かないと分かりません。
受けるときは、次の3つを、相手の負担にならない範囲で聞きます。
- どの点を検討するか。「ありがとうございます。どの点をご検討されるか、差し支えなければ教えていただけますか」
- 誰と検討するか。「どなたかとご相談されますか。その方向けに、資料を用意します」
- いつごろ、こちらから連絡してよいか。「来週の木曜に、状況を伺うお電話をしてもよろしいですか」
相手:「いい話だけど、少し検討します」
自分:「ありがとうございます。どの点をご検討されるか、差し支えなければ教えていただけますか」
相手:「金額をね、上と相談しないと」
自分:「金額を、上司の方とご相談されるのですね。金額の内訳を一枚にまとめて、明日メールでお送りします。来週の木曜に、状況を伺うお電話をしてもよろしいですか」
相手:「木曜なら、午後にして」
やり取りと曜日は説明用の例です。3つを聞いたことで、次にやること(内訳を送る)と、連絡する日が決まりました。相手が答えにくそうなら、連絡してよい日だけを聞きます。
「今回は見送ります」とはっきり言われたら、それ以上すすめません。「承知しました。お時間をいただき、ありがとうございました」と礼を言い、言われた言葉をそのまま記録します。
検討が長引いたときの連絡のしかたや、区切りの付け方は、「検討します」の後にまとめています。
迷いやすい判断と、失敗のあと
判断1:上司から「今日、決めてこい」と言われたら?
基準は、3つの問いがそろっているかです。そろっていれば、返事を聞きます。そろっていなければ、そろえる所まで進めます。出発前に、上司へ「決める方が同席されない場合は、どこまで進めればよいですか」と聞いておくと、当日に迷いません。
帰ってからの報告は、「決まりませんでした」ではなく、事実と次の予定で伝えます。「決める方が同席されず、内訳の資料を明日送ります。木曜の午後に電話で状況を伺う約束をしました」のように言います(説明用の例です)。
判断2:相手から「今日決めるから、安くならないか」と言われたら?
基準は、自分に決める権限があるかです。値引きできる範囲を会社から任されていれば、その範囲で答えます。任されていなければ、「確認して、本日の◯時までにお電話します」と伝え、その場では約束しません。
その場で「たぶん大丈夫です」と言うと、相手はその金額で決めます。後で通らなければ、相手の決定をやり直してもらうことになります。
判断3:「いいですよ」と言われたが、迷っているように見えたら?
返事が短い、資料を見たまま顔を上げない、などの様子があれば、もう一度だけ聞きます。「一点だけ、確認させてください。気になる所が残っていれば、今日でなくても構いません」と伝えます。
それでも「大丈夫」と言われたら、そのまま進め、相手が言った言葉を記録に残します。
判断4:期限が、本当に今日までのときは?
事実として伝えます。「この価格は、本日のご注文分までです」と、日付と理由を書面で見せます。あわせて、期限を過ぎた場合の通常の条件も伝えます。相手が「それなら通常の条件で、ゆっくり決める」と選べるようにするためです。期限を延ばせるかどうかは、自分で決めず、上司に確かめます。
失敗1:急がせてしまい、後から取り消しの連絡が来た
その場では:理由を押し返さずに聞きます。「承知しました。差し支えなければ、理由を教えていただけますか」と聞き、言われた言葉をそのままメモします。取り消しの手続きは、会社の決まりに沿って進め、すぐに上司へ報告します。報告の順番は営業で失敗したときにまとめています。
後の記録:3つの問いのうち、どれを確かめていなかったかを書きます。「決める人=奥様と相談、を聞いていなかった」のように、次に聞く言葉の形で残します(説明用の例です)。
失敗2:条件を読み合わせずに注文を受け、数量が違っていた
その場では:気づいた時点で、相手に連絡します。「数量の確認が足りておりませんでした。10箱でよろしいでしょうか」と、正しい内容を確かめ、書面を作り直して送ります。
後の記録:読み合わせる項目を、自分の手順に書き足します。何を、いくつ、いくらで、いつ、支払い、含まれない物、の6つです。
失敗3:決める人がいない場で、返事を求めてしまった
その場では:相手が困った顔をしたら、すぐに引きます。「失礼しました。ご相談の後で構いません。ご相談のときに使える資料を、お渡しします」と言い直します。
後の記録:誰と相談するのか、いつごろ返事が出そうかを、分かった範囲で書きます。分からない所は「未確認」と書き、次の連絡で聞きます。
今日やることは一つです。次の商談一件について、3つの問いに答えを書き、読み合わせる条件を声に出して言ってみてください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
次の商談のメモ、見積書や条件を書いた資料、会社で使う注文書・申込書などの書面。
記入例を見る(説明用)
決める人は、その場にいるか=いる。B店の店長の田中様。毎月の注文は、ご自分で決めていると前回聞いた/比べる材料は、そろっているか=そろっている。先月と同じ商品の追加で、ほかの会社とは比べていないとのこと/金額と条件は、確定しているか=単価と納品日は、出発前に社内で確かめた。数量が増える場合の値引きは、自分では決められない(上司に確認が要る)/返事の前に読み合わせる条件=商品名、数量10箱、単価、合計、納品は来週水曜の午前、支払いはいつもと同じ月末締め。送料は含む/相手の不安と、次の予定=「置き場所が足りるか」と気にされていた。5箱ずつ2回に分ける案を伝える。返事をいただいたら、注文書の控えをその場で渡し、納品の前日に電話する。(商品・数量・曜日は説明用の例)
CHECK
ここまでできたら、次へ。
3つの問い(決める人・比べる材料・金額と条件)に、はい・いいえ・未確認のどれかが書いてあり、読み合わせる条件と、返事の後に渡す書面が書いてある。
うまく進まなかったときは?
決める人が分からなければ、「お決めになるときは、どなたとご相談されますか」と聞く。条件が確定していなければ、返事をもらう前に、自分が持ち帰って確かめる。3つがそろわないときは、その場の返事にこだわらず、次の連絡日だけを相手と決める。