NOTE 40 · 営業の実践ノート
法人営業とは:個人向けとの違いと、決まるまでの流れ
公開:2026年10月3日
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法人営業とは、会社や団体を相手に、商品やサービスを提案して販売する営業のことです。個人向けの営業と比べると、決める人が一人でないことが多く、社内の手続きを通って決まることが多い点が違います。そのため、目の前の担当者が社内で説明しやすい材料を渡すことが、仕事の中心になります。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 法人営業の担当になり、個人向けの営業と何が違うのかを知りたいとき。
- 1
窓口の担当者と、決めることに関わる人を確かめる
- 2
決まるまでの順番と時期を、担当者に聞く
- 3
担当者が社内で説明に使える材料を渡す
- 4
次に誰が何をするかと、期限を決めて記録する
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
法人営業とは:会社や団体を相手にする営業
法人営業とは、会社や団体(法人)を相手に、商品やサービスを提案して販売する営業のことです。相手は、会社のほか、店、工場、学校、団体などさまざまです。会社どうしの取引という意味で、「BtoB営業」と呼ばれることもあります。
これに対して、個人のお客様を相手にする営業は「個人営業」と呼ばれます。どちらも営業ですが、買うと決まるまでの進み方が違います。営業の仕事の全体像は営業とは、種類ごとの違いは営業の種類にまとめています。
言葉の使い方には、会社ごとの幅があります。同じ「法人営業」でも、新しい取引先を探す仕事もあれば、すでに取引のある会社を定期的に回る仕事(ルート営業)もあります。自分の担当がどこまでかは、上司や先輩に聞いて確かめます。
初めて担当になると、目の前の担当者が「いいですね」と言ってくれたのに、その後なかなか決まらない、という場面でつまずきがちです。この記事では、そうなる理由と、決まるまでの流れの例、担当者が社内で説明しやすくする工夫を説明します。
個人向けの営業との違い
次の表は、法人営業と個人営業の違いを比べた一例です。商品や会社の大きさで変わるので、「〜ことが多い」という目安として見てください。
| 比べる点 | 法人営業 | 個人営業 |
|---|---|---|
| お金を出すのは | 会社や団体 | 本人や家族 |
| 決める人 | 担当者、その上司、最後に認める人など、複数いることが多い | 本人、または家族と相談して決めることが多い |
| 決めるまでの手続き | 社内の承認、予算の確認、ほかの会社との比較などがあることが多い | その場で、または家族と話して決まることが多い |
| 選ぶ理由 | 費用、効果、納期、安全など、ほかの人に説明できる理由が求められやすい | 本人の好みや、暮らしの事情が大きい |
| 決まった後 | 納品、請求、次の注文と、取引が続くことが多い | 商品によって違う |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
どちらが難しい、どちらが上、というものではありません。準備することが違います。法人営業で初心者が知っておきたい違いは、次の3つです。
1. 決める人が、一人でないことが多い
会社の買い物には、何人かが関わります。話を聞いてくれる窓口の担当者、実際に使う現場の人、担当者の上司、お金を使うことを最後に認める人、などです。最後に認めることを「決裁(けっさい)」、認める権限を持つ人を「決裁者」と呼ぶ会社が多くあります。
目の前の担当者が「良い」と思っても、その人だけでは決められないことがあります。「いいですね」は、「私は良いと思う」という意味で、「会社として買う」という意味とは限りません。
2. 社内の手続きがある
会社によっては、買う前に書類を回して何人かの承認をもらう手続きがあります。「稟議(りんぎ)」と呼ばれることが多い手続きです。複数の会社から見積もりを取って比べる「相見積もり(あいみつもり)」をする決まりの会社もあります。
手続きの中身や、かかる日数は、会社と金額で違います。こちらで推測せず、担当者に聞いて確かめます。
3. 理由を、ほかの人に説明できることが求められやすい
担当者は、上司から「なぜこれを買うのか」「なぜこの会社なのか」と聞かれます。そのとき担当者は、あなたの代わりに説明する人になります。あなたはその場にいないことが多いので、担当者の手元に残る材料が、説明の中身を左右します。
決まるまでの流れの例:担当者→上司→決裁
次は、決まるまでの流れを説明するための例です。順番や回数は、会社・商品・金額で大きく違います。小さな注文なら、担当者がその場で決められることもあります。
- 担当者に会い、困り事と条件を聞く。今のやり方、困っていること、使う人、時期、予算の考え方を聞きます。聞き方は商談ヒアリング、商談全体の進み方は商談とはにまとめています。
- 提案と見積もりを出す。聞いた内容に合わせて、何を・いくらで・いつから、を書いて渡します。作り方は提案書の作り方、送る前の確認は見積書を送る前に確認する7項目にまとめています。
- 担当者が、上司に説明する。自分はその場にいないことが多い段階です。担当者は、手元の資料と、覚えている範囲で説明します。
- 質問や、条件の相談が戻ってくる。上司から出た質問が、担当者を通して届きます。答えを、担当者がそのまま上司に見せられる形で返します。
- 決裁される。承認されると、注文や契約の手続きに進みます。注文書や契約書の扱いは、自分の会社の決まりに従います。
- 納品し、その後も訪問する。納めた後の様子を確かめ、次の注文や相談につなげます。
手順3と4は、こちらから見えません。だから、手順1か2のうちに、「この後、どう進むか」を担当者に聞いておきます。聞いていないと、返事を待つあいだ、今どの段階なのかが分からなくなります。
惜しい聞き方1:「決裁者はどなたですか」
惜しい聞き方2:「いつごろ決めていただけますか」
良い聞き方:「ご検討いただくにあたって、この後どのような順番で進むか、教えていただけますか。必要な資料は、こちらで用意いたします」
3つとも説明用の例です。惜しい聞き方1は、目の前の担当者を「決められない人」と扱っているように聞こえることがあります。2は、こちらの都合で急がせているように聞こえがちです。良い聞き方は、相手の手続きを手伝うために聞くという理由を添えています。相手は、答える理由が分かるので、話しやすくなります。
法人への訪問では、同席する人が当日増えることがあります。資料は、会う予定の人数より多めに用意し、折れないように入れておきます。かばんは、資料を出し入れしやすく、床に置いたときに倒れにくいかを見ます。選び方は営業のかばんの選び方にまとめています。
担当者が社内で説明しやすくする工夫
法人営業では、担当者が社内で説明する場面を、こちらが手伝います。工夫は次の3つです。
1. 要点を、一枚で読める形にして渡す
口頭で伝えただけの内容は、担当者が上司に話すときに、どうしても減ります。何を・いくらで・いつから・今と何が変わるかを、一枚で読める形にして渡します。担当者は、その紙を見せながら話せます。
一枚の作り方は「社長に相談します」と言われたら、説明する人がいなくても伝わる資料の考え方は一人歩きできる資料にまとめています。
2. 上司から聞かれそうなことを、先に聞く
担当者は、自分の上司が何を気にするかを、こちらより知っています。聞かれそうなことを先に教えてもらい、答えを資料に書き足します。担当者は、上司の前で答えに困る場面が減ります。
自分:「上司の方へご説明されるとき、聞かれそうなことはありますか。答えを資料に入れておきます」
担当者:「うちの課長は、今のやり方と比べて何が変わるのかを聞くと思います。あと、いつから使えるのか」
自分:「今との違いと、使い始められる時期ですね。一枚にまとめて、金曜までにメールでお送りします」
やり取りは説明用の例です。相手の言葉をくり返してから、自分がやることと期限を言っています。
3. 次の連絡の日を、その場で決める
「ご検討をお願いします」で別れると、次にいつ連絡してよいかが分からなくなります。帰る前に、「来週の会議の後、◯日ごろに状況を伺ってもよろしいですか」と、連絡する日を相手と決めます(説明用の例です)。決めてあれば、その日の連絡は催促ではなく、約束した確認になります。
返事を待つあいだの進め方は、「検討します」の後にまとめています。
場面で変わるところと、よくある失敗
決める人と手続きを確かめ、担当者に材料を渡す、という骨組みは同じです。場面によって、力を入れる所が変わります。次の表は一例です。
| 場面 | 力を入れる所 | 進め方(一例) |
|---|---|---|
| 初めての訪問 | 相手の仕事と困り事を聞く | 商品の説明より先に、今のやり方を聞く。決まるまでの順番は、話の終わりに聞く |
| 2回目以降の訪問 | 決まるまでの順番と時期を確かめる | 前回の宿題の結果を先に伝え、「この後どう進むか」を聞く |
| 担当者だけで決められる注文 | 条件を声に出して確かめる | 数量・金額・納期・届け先をくり返し、その日のうちにメールでも送る |
| 上司や現場の人も同席する商談 | それぞれが気にする点を聞く | 窓口の担当者を立てて進める。質問は一人ずつ答え、資料は人数分を渡す |
| オンラインの商談 | 後に残る材料を送る | 資料を前の日までに送り、終わった後に、決まったことと次の予定をメールで送る |
| 相手が忙しそうな日 | 次の日程だけ決める | 用件を一つにしぼり、資料を渡して、次に連絡する日を確かめて帰る |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
同席する人が増えるほど、気にする点は分かれます。使う人は使いやすさ、上司は費用と効果、というふうにです。一人だけに向けて話すと、ほかの人の疑問が残ったまま社内の話し合いに入ることになります。
次は、よくある失敗です。その場の立て直し方と、帰ってからの記録をセットで決めておきます。
失敗1:担当者の「いいですね」を、決まったと受け取った
その場では:社内に「決まりそうです」と報告した後で、まだ上司に話が上がっていないと分かることがあります。気づいた時点で、担当者に「この後の進み方を、確認させてください」と聞き直します。
帰ってからの記録:「手応えあり」とは書きません。「担当の佐藤様は前向き。課長への説明はこれから。時期は未確認」のように、誰がどこまで知っているかを書きます(説明用の例です)。上司への報告も、同じ言葉で直します。メモの直し方は商談メモ添削にまとめています。
失敗2:担当者を通さずに、上の人へ連絡した
その場では:担当者から見ると、自分を飛ばして話が進んだことになり、社内での立場を悪くすることがあります。まず担当者に、連絡した事実とおわびを伝えます。「先に佐藤様へご相談すべきでした。申し訳ございません」と、言い訳を足さずに言います。
帰ってからの記録:誰に・いつ・何を連絡したかを書き、上司に報告します。報告のしかたは営業で失敗したときにまとめています。
失敗3:見積もりを出したまま、返事を待ち続けた
その場では:次に連絡する日を決めていなかったことが原因です。「先日の見積もりの件で、ご不明な点がないか確認のためご連絡しました」と、確かめたいことを一つ決めて連絡します。そのときに、次の連絡日も決めます。
帰ってからの記録:見積もりを出した日、相手の今の段階、次に連絡する日の3つを書きます。次からは、見積もりを出すときに連絡日を決めます。
迷いやすい判断
判断1:決める人に、直接会わせてほしいと頼んでよい?
基準は、担当者がそれを望んでいるかです。こちらから「上の方に会わせてください」と求めるより、選べる形で申し出ます。「上司の方へのご説明に、私も同席したほうがよければ伺います。資料だけのほうがよければ、説明しやすい形にまとめます」(説明用の例です)。
担当者が「資料だけで」と答えたら、それに合わせます。同席するかどうかを決めるのは、相手の会社の中を知っている担当者です。
判断2:「ほかの会社にも見積もりを頼んでいます」と言われたら?
会社の決まりとして比べていることがあり、断りの言葉とは限りません。基準は、相手が何で比べるのかを聞くことです。「比べるときに、特に重視される点はどこですか」と聞き、答えをメモします。
ほかの会社の悪口は言いません。値引きを求められた場合、自分で決めてよいと言われていなければ、その場で答えません。上司には「A社から、ほかの会社と比べていると聞きました。重視しているのは納期とのことです。条件を相談させてください」のように、相手の言葉のまま伝えます(説明用の例です)。
判断3:返事が来ないとき、いつ連絡してよい?
基準は、相手と決めた日があるかどうかです。決めた日があれば、その日に連絡します。決めていなければ、相手から聞いた予定(会議の日、手続きの時期)の後に、確かめたいことを一つ決めて連絡します。
聞いた予定もないときは、先輩に「A社へ見積もりを出して、次の連絡日を決めていません。今週、確認の連絡をしてよいですか」と聞きます。出した日と今の段階を添えると、先輩は答えやすくなります。
判断4:法人営業と個人営業、自分にはどちらが向いている?
向き・不向きは、ここでは決めつけません。同じ法人営業でも、扱う商品、相手の会社の大きさ、新しい取引先を探すかどうかで、仕事の中身が大きく違うからです。
気になる人は、仕事の中身を具体的に聞いてみてください。相手にする会社の種類、一件が決まるまでの進み方、一日の動き、記録のしかた、目標として見られる数字、の5つを聞くと、自分に合うかを考える材料になります。
今日やることは一つです。今進めている一件について、窓口の人・決める人・社内の手続き・次の期限を書き出し、分からない所に「未確認」と書いてください。
新しい取引先と取引を始める前の社内の審査は、与信とはにまとめています。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
今進めている一件のメモ、相手の名刺、出した資料や見積書の控え。
記入例を見る(説明用)
相手の会社と、窓口の担当者=A社。総務の佐藤様。先週、初めて訪問した/決めることに関わる人=佐藤様の上司の課長(名前は未確認)。金額によっては部長の承認も要る、と聞いた。実際に使うのは現場の方(人数は未確認。次回、佐藤様に聞く)/決まるまでの順番と時期=佐藤様が課長に説明→課長が部長に上げる→承認されたら注文、という順番。来月の会議で話す予定とのこと。ほかの会社にも見積もりを頼んでいるかは未確認/担当者が社内で説明するときに使う材料=提案の要点を一枚にまとめた紙と、見積書。課長から聞かれそうなこと(今のやり方と比べて何が変わるか、いつから使えるか)への答えを、一枚に書き足す/次にやること=自分:一枚の紙を金曜までにメールで送る。佐藤様:課長に説明した後、質問があれば連絡をくださる。こちらからは、会議の翌日に状況を伺う電話をしてよいと確認した。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
窓口の人、決めることに関わる人、決まるまでの順番と時期が書いてあり(分からない所は「未確認」と、誰に聞くかが書いてある)、次にやることに期限が付いている。
うまく進まなかったときは?
決める人が分からなければ、次の連絡で「この後、どのような順番で進みますか」と聞く。渡す材料が決まらなければ、担当者に「上司の方から聞かれそうなことはありますか」と聞く。期限が決まらなければ、「◯日ごろ、状況を伺ってもよろしいですか」と連絡する日だけ決める。