NOTE 35 · 営業の実践ノート
飛び込み営業のやり方:最初の30秒で伝えることと、断られた後の記録
公開:2026年10月3日/更新:2026年10月4日
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飛び込み営業とは、前もって約束をせずに訪問する営業のことです。最初の30秒で「どこの誰か」「何の用件か」「相手に関係する理由」を伝え、お願いは「担当の方に資料をお渡しする」など小さく一つにします。断られたら引き下がり、訪問した日と相手の返事を記録します。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 約束なしの訪問を任され、何から準備するか分からないとき。
- 1
会社の方針と、行ってよい先を上司に確かめる
- 2
行き先と、その会社に関係する理由を書く
- 3
名乗る・用件・理由・小さなお願いを30秒で伝える
- 4
断られたら引き下がり、日付と返事を記録する
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
飛び込み営業とは:約束なしで訪問すること
飛び込み営業とは、前もって会う約束(アポ)を取らずに、会社や店を直接訪問する営業のやり方です。まだ取引のない相手に、自分の会社と商品を知ってもらうきっかけを作るために行われます。
相手から見ると、予定になかった人が急に来る、ということです。仕事の手を止めてもらうので、断られることのほうが多くなります。断られるのは、訪問のしかたが悪いからとは限りません。相手が忙しい、担当者がいない、決まりで受けていない、など相手の事情もあります。
そこで、この記事では「うまく話す方法」より先に、次の3つを決めます。行く前に何を確かめるか、最初の30秒で何を伝えるか、断られた後に何を記録するかです。会社を訪問する法人向けの営業を基本に書きます。
電話やメールで先に約束を取るやり方は、営業のアポ取りにまとめています。どちらを使うかは、会社の方針で決まります。
行く前の準備:会社の方針・行き先・持ち物
1. 会社の方針を確かめる
飛び込みで訪問してよい相手、時間帯、渡してよい資料は、会社ごとに決まりがあります。自分で決めずに、上司へ次の点を聞きます。
- どの地域・どんな業種の会社を回るか
- 行ってはいけない先(すでに別の担当者がいる会社、以前に断られた会社など)
- 渡してよい資料と、その場で話してよい範囲(価格を言ってよいか)
- 訪問した記録を、どこに・どう書くか
建物の入口に「訪問販売お断り」「セールスお断り」などの掲示がある場合や、受付で「お約束のない方はお通しできません」と案内された場合の動き方も、先に上司と決めておきます。
個人のお宅を訪問する場合は、法律のルールがある
消費者の自宅などを訪問して商品やサービスの契約をする取引は、特定商取引法の「訪問販売」として規制されています。消費者庁の特定商取引法ガイド「訪問販売」は、事業者が訪問販売をしようとするときは、勧誘に先立って、事業者の氏名(名称)、契約の締結について勧誘をする目的であること、販売しようとする商品などの種類を告げなければならない、と説明しています。
同じページには、消費者が契約を結ぶ意思がないことを示したときは、その訪問時にそのまま勧誘を続けることと、その後改めて勧誘することが禁止されている、とも書かれています。一方で、「営業のため、又は営業として締結するもの」などは、この法律が適用されない場合として挙げられています。
自分の仕事がどれに当たるかは、自分で判断しません。個人のお宅や個人の事業主を訪問する仕事なら、訪問の前に、会社の法務の担当か上司に確認してください。
2. 行き先を決める
行き先は、「近いから」だけでなく、その会社に関係する理由を一つ言えるかで選びます。理由があると、最初の一言が作れます。理由の例は次のようなものです。
- 近くのお客様に納品していて、同じ地域を回っている
- 同じ業種のお客様で使われている商品がある
- 相手の会社のホームページで、新しい工場や店ができたと知った
訪問の前に、相手の会社のホームページで、事業の内容と所在地を見ておきます。調べ方は、初めての訪問で準備する3つのことと同じです。
3. 持ち物をそろえる
飛び込みでは、玄関先や受付で、立ったまま話すことが多くなります。持ち物は、立ったまま片手で出せるかどうかで確かめます。
- 名刺(すぐ出せる場所に入れた名刺入れ)
- 会社の案内と、商品の資料(一社に渡す分を一組にしておく)
- ノートと筆記具(訪問のたびに記録する)
- 行き先の一覧と地図
かばんは、床に置いたときに倒れず、資料を一組だけ取り出せるものだと動きやすくなります。歩く時間が長い日は、靴も歩きやすさで確かめます。選び方は営業のかばんの選び方と営業の靴の選び方と手入れにまとめています。
最初の30秒で伝える4つ:名乗る・用件・理由・小さなお願い
受付や入口で最初に対応してくれる人は、担当者ではないことが多いです。その人が知りたいのは、「誰が、何の用で来たのか」「誰に取り次げばよいのか」です。次の4つを、この順番で短く伝えます。
- 名乗る。会社名と名前を言います。「◯◯商事の山田と申します」。誰か分からない人の話は、取り次いでよいかを相手が決められません。
- 用件を言う。何の案内で来たのかを、最初に伝えます。「梱包資材のご案内で、ごあいさつに伺いました」。用件を隠して入ろうとすると、後で相手を困らせます。
- 相手に関係する理由を一つ添える。「近くのお客様へ納品しておりまして」のように、なぜこの会社に来たのかを一言で言います。理由がないと、相手には「どこにでも同じ話をしている人」に見えます。
- お願いを、小さく一つにする。「資料だけ、ご担当の方へお渡しいただけますか」「ご担当の方のお名前だけ、教えていただけますか」のように、相手がその場で答えられるお願いにします。「ご担当の方に会わせてください」は、受付の人が自分で決められないことが多く、断るしかなくなります。
自分:「お忙しいところ失礼いたします。◯◯商事の山田と申します。梱包資材のご案内で、ごあいさつに伺いました」
受付:「お約束はありますか」
自分:「いえ、お約束はいただいておりません。近くのお客様へ納品しておりまして、ごあいさつだけと思い伺いました。資料を、資材のご担当の方へお渡しいただけますか」
受付:「では、お預かりします」
自分:「ありがとうございます。名刺も添えておきます。突然失礼いたしました」
社名・商品・やり取りは説明用の例です。約束がないことは、聞かれたら正直に答えます。4つを言い終えるまでの長さは、声に出して計ってみると分かります。30秒を超えるなら、商品の説明を削ります。30秒は決まりではなく、この記事で置いた目安です。
最初の一言を比べる
同じ用件でも、言い方で相手の受け取り方が変わります。次の3つは説明用の例です。
惜しい例1:「近くまで来たので、ごあいさつに伺いました。社長はいらっしゃいますか」
惜しい例2:「◯◯商事と申します。当社は梱包資材を幅広く扱っておりまして、このたび新しい商品が出まして、従来のものと比べて……」
良い例:「◯◯商事の山田と申します。梱包資材のご案内で伺いました。近くのお客様へ納品しておりまして。資料だけ、資材のご担当の方へお渡しいただけますか」
惜しい例1は、何の用件かが分かりません。受付の人は、知り合いなのか営業なのかを確かめるところから始めることになります。後から営業と分かると、だまされたように感じる人もいます。
惜しい例2は、用件は伝わりますが、受付の人に商品の説明を聞いてもらう形になっています。その人が知りたいのは、商品のよさではなく、誰に取り次げばよいかです。良い例は、4つの部品を一文ずつで言い、最後のお願いが「渡すだけ」で済むようになっています。
入口の形で、動き方が変わる
会社や店によって、最初に会う人と場所が違います。次の表は一例です。
| 入口の形 | 最初に会う人 | 動き方(一例) |
|---|---|---|
| 受付がある | 受付の担当者 | 4つを伝え、資料と名刺を預ける。取り次ぐかどうかは相手に任せる |
| 受付がなく、事務所に直接入る | 入口の近くの席の人 | 入口で立ち止まり、「失礼いたします」と声をかけて、誰かが来てくれるのを待つ。奥まで入らない |
| 内線電話や呼び出しのボタンが置いてある | 電話に出た人 | 電話口で4つを短く伝える。「お約束のない方は」と言われたら、資料を置いてよいかだけ聞く |
| 店舗で、お客様がいる | 店員・店長 | お客様への対応が終わるまで待つ。混んでいたら、入らずに時間を改める |
| 工場・倉庫 | 守衛や事務所の人 | 構内には勝手に入らない。入口の事務所か守衛の所で用件を伝える |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
どの形でも、相手の仕事の場所に入らせてもらっている、という点は同じです。奥へ進む、作業中の人に直接声をかける、といった動きは、相手の安全や仕事のじゃまになることがあります。
名刺は、名乗るときに一枚出します。渡し方は名刺の渡し方・名刺交換のやり方にまとめています。
担当者が出てきてくれたら
その場で担当者に会えたときも、長い説明は始めません。「お時間は2〜3分で結構です」と先に伝え、資料を渡して、今使っている物で困っていることがないかを一つだけ聞きます。相手に聞く気持ちがあれば、「改めて、お時間をいただけますか」と次の約束をお願いします。
断られたときの受け方
断りの言葉は、いくつかの種類に分けられます。種類によって、その場の返し方と、後でやることが変わります。次の表は一例です。
| 相手の言葉(例) | その場の返し方 | 帰ってからやること |
|---|---|---|
| 「担当者が不在です」 | 「承知しました。資料だけお預けしてもよろしいですか」 | 担当の部署や名前が分かれば記録し、約束を取る方法を先輩に相談する |
| 「今は忙しいので」 | 「失礼しました。出直します」とすぐ帰る | 訪問した曜日と時刻を記録する |
| 「間に合っています」「必要ありません」 | 「承知しました。突然失礼いたしました」と帰る | 返事の言葉をそのまま記録し、次の扱いを上司に聞く |
| 「飛び込みは受けていません」 | 「失礼いたしました」と帰る。資料も置かない | 「約束なしの訪問は受けていない」と記録し、ほかの人も行かないよう共有する |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
どの場合も、断られたら引き下がります。「少しだけでも」と粘ると、相手の仕事を止める時間が長くなります。帰るときの一言と、お礼を言って出るところまでを、先に決めておきます。
断られたのは、今日の訪問です。自分という人を否定されたわけではありません。それでも続くとこたえるので、一日の終わりに先輩へ「今日はこういう返事が多かったです」と話すと、行き先や一言の直し方が見つかることがあります。
訪問後の記録と、次の接点
訪問したら、建物を出てすぐ、次の5つをノートに書きます。数件まとめて後で書こうとすると、どの会社の返事だったかが混ざります。
- 日付と時刻。次に行く時間帯を考える材料になります。
- 対応してくれた人。受付の方か、担当者か。名前が分かれば書きます。
- 相手の言葉。「間に合っている」「担当は午後なら居る」など、聞いた言葉をそのまま書きます。自分の感想(「感じがよかった」など)とは分けます。
- 渡した物。名刺、資料の種類。
- 次にすること。何を・いつまでに・誰がやるか。何もしないと決めた場合も、「再訪問しない」と書きます。
記録は、会社で決められた場所(日報や顧客管理の仕組み)にも写します。同じ会社へ別の人がもう一度飛び込んでしまう、という行き違いを防げます。メモを後から使える形にする書き方は、商談メモ添削にまとめています。
次の接点を、どう作るか
担当者の名前や部署が分かった会社には、次は約束を取ってから訪問する方法があります。電話やメールでのお願いのしかたは、営業のアポ取りの手順が使えます。
資料を預けただけの会社へもう一度行くかどうか、どれくらい間をあけるかは、会社の方針で決まります。はっきり断られた会社へは、自分の判断で繰り返し訪問しません。上司に記録を見せて、次の扱いを決めてもらいます。
よくある失敗と、迷いやすい判断
失敗は、その場の立て直し方と、帰ってからの記録をセットで決めておきます。
失敗1:用件を言わないまま、話し始めてしまった
その場では:「ごあいさつです」とだけ言って入ったことに気づいたら、すぐ言い直します。「申し遅れました。梱包資材のご案内で伺いました」と用件を伝えます。相手が「営業ならお断りです」と言ったら、そのまま引き下がります。
帰ってからの記録:「用件を言う前に話し始めた。次回から、名乗りの次に用件を言う」と書き、最初の一言を紙に書き直します。
失敗2:受付の人に、商品の説明を長く話した
その場では:相手の返事が短くなった、目がほかへ向いた、と気づいたら、説明を途中で止めます。「長くなり、失礼しました。資料だけお預けしてもよろしいですか」と、お願いを一つに戻します。
帰ってからの記録:話した内容ではなく、相手の反応を書きます。「説明の途中で『担当に渡しておきます』と言われた」のように、聞いた言葉をそのまま残します。
失敗3:記録を付けずに、次へ行った
その場では:数件たまってから気づいたら、覚えている順に、会社名と返事の言葉だけ先に書きます。思い出せない所は、想像で埋めずに「不明」と書きます。
帰ってからの記録:「A社:◯時ごろ。受付の方。『担当は午後なら居る』。資料と名刺を預けた。次は上司に相談」のように、5つの項目を一行ずつ埋めます(説明用の例です)。次の日からは、建物を出たら歩き出す前に書く、と順番を決めます。
判断1:資料を預けた会社へ、もう一度行ってよい?
聞く前に、記録を見て自分で分けます。基準は、相手の返事が「断り」だったか、「今は都合が悪い」だったかです。「必要ありません」「飛び込みは受けていません」は断りです。自分の判断では行きません。
「担当者が不在」「今は忙しい」は、都合の話です。この場合は、「A社は担当の方が不在でした。次は電話で約束をお願いしてもよいですか」と、記録を見せながら上司に聞きます。どれくらい間をあけるかは、会社の方針に合わせます。
判断2:担当者の名前を、教えてもらえなかったら?
名前を外の人に教えない、と決めている会社は少なくありません。重ねて聞きません。基準は、部署の名前だけでも分かったかです。「資材のご担当の方へ」と部署あてで資料を預けられれば、その訪問の役目は果たせています。
記録には「担当者名は教えていただけなかった。資材の担当の部署あてに資料を預けた」と書きます。次の手は、上司に相談します。
判断3:一日に、何件回ればいい?
この記事では、件数の目安は示しません。地域、移動の手段、商品で大きく変わるからです。目標の件数は、上司に聞いて決めます。聞くときは、「件数のほかに、何を見ればよいですか」も一緒に聞きます。
自分でも、件数とは別に「担当の部署が分かった数」「資料を預けられた数」を記録しておきます。回った数だけでは、次に何を直せばよいかが分からないからです。
判断4:何時ごろに行くのがいい?
業種によって、忙しい時間帯が違います。基準は、相手が手を止めにくい時間を避けることです。飲食店なら食事の時間帯、会社なら始業の直後や昼休みは、対応してもらいにくいことが多いです。
先輩には、「◯◯の業種を回るのですが、避けたほうがよい時間帯はありますか」と業種を添えて聞きます。自分の記録に時刻を書いておくと、会えた時間帯が後から見えてきます。
今日やることは一つです。明日回る先を3件書き出し、最初の一言を、声に出して30秒以内で言ってみてください。すでに取引のあるお客様を回る仕事については、ルート営業とはにまとめています。
問い合わせをきっかけに始める営業は反響営業とは、営業の呼び名の整理は営業の種類にまとめています。
一軒ずつ訪ねて回る営業を指す言葉の意味は、どぶ板営業とはにまとめています。
新しいお客様を探す仕事の全体の流れは、新規開拓とはにまとめています。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
上司の指示、会社の案内(会社概要や商品の資料)、行き先の候補、名刺、ノート。
記入例を見る(説明用)
会社の方針=◯◯地区の工場と倉庫が対象。「訪問お断り」の掲示がある所と、すでに取引のある会社は行かない。渡してよいのは会社案内と商品の資料。価格は、その場では言わない(上司に確認)/行き先と、その会社に関係する理由=A社。同じ通りのB社へ納品していて、近くを回っている。ホームページで、倉庫を持つ会社だと確かめた。受付のある建物かどうかは未確認/最初の一言=「◯◯商事の山田と申します。梱包資材のご案内で、ごあいさつに伺いました。近くのお客様へ納品しておりまして。資料だけ、ご担当の方へお渡しいただけますか」(声に出して計り、30秒以内だった)/断られたときの返し方=「必要ありません」なら「承知しました。突然失礼いたしました」と言って帰る。「担当者が不在」なら「資料だけお預けしてもよろしいですか」と聞く。「飛び込みは受けていません」なら、資料も置かずに帰る/訪問後に記録する項目=日付と時刻、対応した人、返事の言葉(そのまま)、渡した物、次にすること。建物を出たら、歩き出す前に書く。断りだった会社は「再訪問しない」と書き、上司に見せる。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
会社の方針を上司に確かめてあり、行き先ごとの理由と最初の一言が書けていて、断られたときの返し方と記録の項目が決まっている。
うまく進まなかったときは?
方針があいまいなら、訪問の前に上司へ聞く。最初の一言が30秒を超えるなら、商品の説明を削り、名乗りと用件とお願いの3つにする。行き先の理由が書けなければ、先輩にこれまでの回り方を聞く。