NOTE 102 · 営業の実践ノート
退職の挨拶メール:営業が取引先へ送る文例と、書くこと・書かないこと
公開:2026年10月3日/更新:2026年10月4日
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営業担当が退職するときの挨拶メールは、取引先が困らないように送るものです。書くのは、いつまで自分が担当するか、後任は誰か、進行中の件をどう引き継いだか、そしてお礼の4つです。送る時期と相手の範囲は、自分で決めず、会社の発表と上司の指示に合わせます。この記事では、取引先あての文例を中心に、社内あての短い文例と、返信をもらったときの返事までを、説明用の例として並べます。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 退職が決まり、担当している取引先へ、いつ・何を・どう伝えればよいか迷うとき。
- 1
伝えてよい時期と相手の範囲を、上司に確かめる
- 2
取引先ごとに、最後の対応日・後任・進行中の件を書き出す
- 3
一社ずつ、あて先を確かめて送る
- 4
返信が来たら、お礼と後任の案内を短く返す
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
退職の挨拶で、取引先が知りたいこと
退職が決まった。担当している取引先へ、挨拶を送らなければと思う。けれど、いつ送ればよいのか、退職の理由をどこまで書くのか、後任のことをどう書くのかで、手が止まる。
取引先から見ると、担当者の退職は、仕事の窓口が変わる出来事です。相手が知りたいことは、退職の事情よりも、自分の仕事がこの先どうなるかです。次の4つにまとめられます。
| 相手が知りたいこと | 挨拶で伝えること | 伝えないと、どうなるか |
|---|---|---|
| いつまで、この人に連絡してよいか | 自分が担当として対応できる最後の日 | 相手は、返事が来ないあて先に連絡を送り続ける |
| 次は、誰に連絡すればよいか | 後任の名前・部署・連絡先と、担当を始める日 | 急ぎの用件のとき、相手が連絡先を探すことになる |
| 進行中の件は、どうなるか | 何を引き継いだか。次に誰が、いつ連絡するか | 見積もりや納品の約束が、止まったように見える |
| これまでの関係は、どう締めくくられるか | その相手との仕事に触れた、お礼の一言 | 事務的な通知だけが届き、後任も話を始めにくい |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
日付について、気をつけることがあります。社内でいう「最終出社日」や「退職日」は、取引先にとって、そのままでは使いにくい日付です。相手に必要なのは、「いつまで自分あてに連絡してよいか」と「いつから後任あてか」の二つです。引き継ぎの都合で、最終出社日より前に、後任へ窓口を移すこともあります。取引先に関わる日付に直して書きます。
この記事は、退職する本人が送る挨拶を扱います。異動で担当が替わるときの前任・後任の挨拶や、後任が最初の訪問でやることは、担当変更の挨拶にまとめています。社内の異動の挨拶は、異動の挨拶を見てください。
送る前に上司に確かめる3つ
退職の挨拶は、文を書く前に決めることがあります。自分だけで決めず、上司に確かめます。
- 社外に伝えてよい日。退職は、社内で発表される順番が決まっていることがあります。発表の前に取引先へ伝わると、社内の人が、取引先から聞いて知ることになります。上司に「取引先には、いつからお伝えしてよいですか」と聞きます(説明用の例です)。
- 誰に、どの手段で伝えるか。メールで足りる相手、後任と一緒に訪問する相手、上司から伝える相手を、上司と分けます。取引の大きさや、相手との付き合いの長さで変わるので、自分だけで線を引きません。
- 後任と、連絡先の切り替わりの日。後任が決まっていないうちに挨拶を送ると、相手は、次の連絡先が分からないまま残されます。後任が未定のときは、当面の連絡先(上司や部署の代表)を上司に決めてもらいます。
時期の考え方は、一つです。会社の発表と上司の指示が先。そのうえで、相手が困らないだけの間があること。何日前に送るか、という日数は、会社や相手との関係で変わるので、ここでは言い切りません。退職の申し出の時期や手続きは、この記事では扱いません。会社の就業規則と、上司に確かめてください。
挨拶の前に、社内の引き継ぎを済ませます。取引先ごとの進行中の件、次の期限、まだ確かめていないことを書いて、後任に渡します。書き方は、引き継ぎメモにまとめています。メモができていれば、挨拶の文に書く材料がそろいます。
送り方:ほかの会社のあて先が、見えないようにする
取引先が多いと、同じ文を一度に送りたくなります。このとき、あて先(TO)やCCに、複数の会社のアドレスを並べて送らないようにします。受け取った人全員に、ほかの会社の名前とアドレスが見えてしまいます。どの会社と取引があるかは、外に出してよい情報とは限りません。
基本は、一社ずつ送ることです。進行中の件は取引先ごとに違うので、一社ずつ書けば、相手に合った文になります。一斉に送る必要があるときは、会社で決まっている送り方に従い、送る前に上司に見てもらいます。BCCに入れて送る方法は、TOやCCと入れ間違えやすいので、自分の判断だけで使わないようにします。
書くことと、書かないこと
| 項目 | 書く? | 書き方・理由 |
|---|---|---|
| 退職すること | 書く | 「◯月◯日をもちまして、退職することになりました」と、事実を一文で |
| 担当として対応できる最後の日 | 書く | 相手が、いつまで連絡してよいかを判断できる |
| 後任の名前・連絡先・担当を始める日 | 書く | 会社の電話番号とメールアドレスを書く |
| 進行中の件の引き継ぎ | 書く | 件を一つ挙げ、次に誰がいつ連絡するかを書く |
| お礼 | 書く | その相手との仕事に、一つ触れる |
| 退職の理由の細かい事情 | 書かない | 「一身上の都合により」で足りる。相手の仕事に必要な情報ではない |
| 転職先の社名や、次の仕事 | 書かない | 在職中の会社の名前で送るメールに、次の勤め先を書くと、相手も会社も扱いに困る |
| 私用の電話番号やメールアドレス | 会社の決まりを確かめてから | 自分の判断で書かない。決まりが分からなければ、書かずに上司に聞く |
| 会社や上司、後任への不満 | 書かない | 相手は、これからもその会社と取引を続ける |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
書かない項目に共通するのは、相手の仕事を進めるのに要らない情報だという点です。理由を詳しく書くと、相手は返事に困ります。不満を書くと、後任がやりにくくなります。
取引先の連絡先や、やり取りの記録など、仕事で知った情報の扱いは、会社の決まりに従います。退職のときに、自分の判断で持ち出したり、私用のあて先へ送ったりしません。
文例:取引先あて・社内あて
次の文例は、すべて説明用の例です。[ ]と◯は、自分の内容に置き換えます。上司に確かめて、伝えてよい日が来てから送る前提です。
取引先あて:惜しい例
件名:退職のご挨拶
お世話になっております。[自社名]の[氏名]です。
私事ですが、このたび一身上の都合により、今月末で退職することになりました。
在職中は大変お世話になりました。後任の者からあらためてご連絡いたします。
今後のご連絡は、個人のアドレス([私用のアドレス])までいただければ幸いです。
末筆ながら、皆様のご健勝をお祈り申し上げます。
ていねいな言葉で書かれています。それでも、相手が困る点が四つあります。あて名が無く、誰あてのメールかが分からない。「今月末」では、いつまで連絡してよいかが分からない。後任の名前と連絡先が無い。進行中の件に触れていない。私用のアドレスも、会社の決まりを確かめずに書いています。
取引先あて:良い例
件名:退職のご挨拶([自社名] [氏名])
[会社名] [部署名] [担当者名]様
いつもお世話になっております。[自社名]の[氏名]です。
私事で恐縮ですが、一身上の都合により、◯月◯日をもちまして退職することになりました。本来であれば直接お伺いしてご挨拶すべきところ、メールでのご連絡となりましたこと、お詫び申し上げます。
◯月◯日(◯)からは、[後任の氏名]が貴社を担当いたします。
現在お出ししているお見積もりの件と、毎月の納品の段取りは、[後任の氏名]に引き継いでおります。お見積もりへのご返事は、◯月◯日(◯)ごろ、[後任の氏名]からあらためて伺います。
◯月◯日(◯)までは、これまでどおり私あてにご連絡ください。それ以降は、下記あてにお願いいたします。
後任:[後任の氏名]([部署名]) 電話:[会社の番号] メール:[会社のアドレス]
[担当者名]様には、[納期のご相談に何度も乗っていただいたこと]で、たいへんお世話になりました。心よりお礼申し上げます。
[署名]
4つがそろっています。自分が対応できる最後の日、後任の名前と連絡先、進行中の件を誰がいつ連絡するか、そしてお礼です。お礼は、決まり文句で終えず、その相手との出来事を一つ書いています。
訪問して挨拶する相手には、「メールでのご連絡となりましたこと」の一文を外し、「あらためて、[後任の氏名]と二人でご挨拶に伺いたく存じます。ご都合のよい日時をお聞かせいただけますでしょうか」と入れ替えます。
社内あて:短い例
件名:退職のご挨拶([部署名] [氏名])
皆様
お疲れ様です。[部署名]の[氏名]です。
私事ですが、◯月◯日をもちまして退職することになりました。本日が最終出社日です。
担当していた取引先は、[後任の氏名]さんに引き継いでいます。在職中のことでお問い合わせがありましたら、[後任の氏名]さんへお願いいたします。
入社以来、たくさんのことを教えていただきました。ありがとうございました。
社内あては、短くて足ります。社内の人に必要なのは、最後の日と、仕事を誰が引き継いだかです。特にお世話になった人には、一斉のメールとは別に、直接か個別のメールでお礼を伝えます。送る日と、あて先の範囲(部署だけか、全社か)は、職場の習慣があるので、上司か先輩に確かめます。
返信をもらったときの返事
取引先から、「お世話になりました」「寂しくなります」という返信が届くことがあります。返事は短くて足ります。お礼と、後任の案内の二つを書きます。
[担当者名]様
温かいお言葉をいただき、ありがとうございます。[担当者名]様に教えていただいたことは、忘れません。
◯月◯日からは、[後任の氏名]が担当いたします。変わらぬお付き合いをいただけますと幸いです。
返信の中に、仕事の質問や依頼が入っていることもあります。その場合は、挨拶の返事と分けて、すぐに答えるか、後任に渡します。後任に渡すときは、「この件は、[後任の氏名]から本日中にお返事いたします」と、誰がいつ返すかを書きます(説明用の例です)。お礼の返し合いをどこで終えるかは、お礼メールへの返信にあります。
場面で変わるところと、迷いやすい判断
相手との関係や、残りの日数で、伝え方が変わります。次の表は一例です。どの形にするかは、上司と決めます。
| 場面 | 伝え方(一例) | 気をつけること |
|---|---|---|
| 付き合いが長い、取引が大きい相手 | メールか電話で先に伝え、後任と二人で訪問する | 訪問の前に、進行中の件を二人で確かめておく |
| やり取りが少ない相手 | メールで伝える | 後任の連絡先と、切り替わりの日を書く |
| 取引先の窓口が、複数いる | 窓口ごとに伝える。誰に伝えたかを記録する | 一人だけが知っていて、ほかの人が知らない、という状態にしない |
| 後任が、まだ決まっていない | 当面の連絡先(上司や部署の代表)を書く。決まったら、会社から連絡すると伝える | 「未定です」だけで終えない |
| 残りの日数が少ない | 進行中の件がある相手から先に、電話かメールで伝える | 期限が近い件を、先に後任と確かめる |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
判断1:取引先から、退職の理由を聞かれたら?
相手は、話の流れで聞いていることが多く、詳しい答えを求めているとは限りません。「一身上の都合で、退職することにいたしました」と短く答え、すぐに後任と進行中の件の話に移ります(説明用の例です)。
自分で決める基準は、その話が、相手の仕事に関わるかどうかです。関わらない話(会社への不満、待遇、次の仕事の中身)は、聞かれても広げません。「次はどちらへ」と聞かれたときは、「落ち着きましたら、あらためてご挨拶できればと思います」と答える形があります(説明用の例です)。
判断2:「今後も個人的に連絡を取りたい」と言われたら?
その場で私用の連絡先を渡すかどうかは、会社の決まりを確かめてから決めます。決まりが分からないうちは、「ありがとうございます。会社の決まりを確かめてから、お返事いたします」と答えます(説明用の例です)。
上司に聞くときは、「A社の佐藤様から、今後の連絡先を聞かれました。私用の連絡先をお伝えしてよいか、会社の決まりを教えてください」と、誰から何を言われたかを、そのまま伝えます(説明用の例です)。
判断3:メールだけで済ませてよい? 訪問したほうがよい?
どちらが正しい、という公的な決まりは見当たりません。上司に決めてもらうのが基本です。自分で考えるときの基準は、二つあります。進行中の件があるか。後任を、顔を合わせて紹介したほうが、相手が安心するか。どちらかに当てはまる相手は、訪問の候補として上司に挙げます。
訪問できない相手には、メールに「本来であれば直接お伺いすべきところ」と一文を入れ、後任からの連絡の予定を書きます。
判断4:最終出社日に、まとめて送ればよい?
最後の日に送ると、相手が返信や質問をしようとしたとき、もう自分はいません。相手が、進行中の件を自分に確かめられる間が残っているほうが、引き継ぎの抜けに気づけます。
基準は、伝えてよい日が来たら、後回しにしないことです。上司から「◯日から伝えてよい」と言われたら、進行中の件がある相手から順に送ります。社内あての挨拶は、最終出社日に送る職場もあります。こちらは職場の習慣に合わせます。
挨拶で失敗したとき
失敗1:複数の会社のあて先が、見える形で送ってしまった
その場では:自分で取り消そうとしたり、追いかけておわびのメールを送ったりする前に、すぐ上司に報告します。あて先が見えてしまったことは、挨拶の文の誤りとは別の、情報の扱いの問題です。会社で決まった手順があることが多く、対応は上司と会社が決めます。報告するときは、送った時刻、あて先の数、何が見える状態だったかを伝えます。
後の記録:「一社ずつ送る。あて先を入れた後、送る前に声に出して読む」と書きます。おわびのメールを送ることになったときの書き方は、お詫びメールの書き方にあります。
失敗2:社内の発表より前に、取引先へ伝わってしまった
その場では:雑談の中でつい話してしまった、という場合も含みます。隠さずに、上司へ「◯月◯日、A社の佐藤様に、退職することをお話ししてしまいました」と、誰に・いつ・何を話したかを報告します(説明用の例です)。相手への口止めを、自分の判断で頼むことはしません。その後の対応は、上司に決めてもらいます。
後の記録:「伝えてよい日を上司に確かめてから話す」と書きます。報告のしかたは、営業で失敗したときにまとめています。
失敗3:後任の名前や連絡先、日付を間違えて送った
その場では:相手は、間違った連絡先へ連絡してしまうかもしれません。気づいたら、上司に伝えたうえで、すぐに訂正を送ります。「先ほどのメールに誤りがございました。後任の電話番号は、正しくは[番号]です。申し訳ございません」と、どこが、どう変わるかを書きます(説明用の例です)。
後の記録:何を見て書いたかを書きます。「記憶で書いた。次からは、後任の名刺を見て写し、後任本人に読んでもらってから送る」のような形です(説明用の例です)。
今日やることは一つです。挨拶を送る取引先を一社選び、担当としての最後の日・後任の名前と連絡先・進行中の件の3つを書き出して、いつ・誰から伝えるかを上司に確かめてください。
上司に退職を切り出す前に確かめることは、退職の伝え方にまとめています。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
担当している取引先の一覧。取引先ごとの進行中の件(見積もり・納品・問い合わせ)が分かる記録。後任の名前と、会社の連絡先。
記入例を見る(説明用)
挨拶を送る取引先と、相手の名前=[会社名] [部署名]の[担当者名]様。窓口はもう一人、[別の担当者名]様もいる/自分が担当として対応できる最後の日=◯月◯日(◯)。この日までは、これまでどおり自分あてでよい/後任の名前・連絡先と、後任が担当を始める日=[後任の氏名]。会社の電話番号とメールアドレス。◯月◯日(◯)から/進行中の件と、引き継ぎの状況=お見積もり(◯月◯日に提出済み。返事待ち)と、毎月の納品の段取り。どちらも引き継ぎメモに書いて、後任に渡した。お見積もりの返事は、◯月◯日ごろに後任から伺う/上司に確かめたこと=社外に伝えてよいのは◯月◯日から。この取引先には、まず自分がメールで伝え、翌週に後任と二人で訪問する。もう一人の窓口の方に別のメールを送るかは未確認。明日、上司に聞く。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
担当としての最後の日、後任の名前と連絡先、進行中の件の引き継ぎの状況が書けている。伝えてよい日と伝え方を、上司に確かめてある。
うまく進まなかったときは?
伝えてよい日が分からなければ、文を書く前に上司へ「取引先には、いつからお伝えしてよいですか」と聞く。後任が決まっていなければ、当面の連絡先を上司に聞く。進行中の件が書き出せなければ、先に引き継ぎメモを作る。