NOTE 116 · 営業の実践ノート
「お手すきの際に」の意味と使い方:急がない依頼で使い、期限があるときは日付を書く
公開:2026年10月3日
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「お手すきの際に」は、「手があいたときに」という意味で、急がない依頼のときに、いつやるかを相手に任せる言い方です。辞書は「手透き」を、することがなくて暇なこと、手のあいていること、と説明しています。相手に任せる言葉なので、期限がある依頼には合いません。この記事では、使う場面の分け方、言い換え、返事が来ないときの次の一手を、説明用の例と一緒にまとめます。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 急ぎではない確認や返事を頼みたいとき。「お手すきの際に」と書いてよい相手か、期限をどう書くかで迷うとき。
- 1
返事がないと止まる作業があるかを確かめる
- 2
止まる作業がなければ、「お手すきの際に」と頼むことを書く
- 3
止まる作業があれば、日付と理由を書いて頼む
- 4
返事が来ないときに、自分がいつ・どう動くかを決めておく
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
「お手すきの際に」の意味:「手があいたときに」
取引先に、急ぎではない確認を頼みたい。先輩に、時間のあるときに資料を見てほしい。「お手すきの際に」は、こうした場面で、頼みごとの前に置く言い方です。
「手すき」は、デジタル大辞泉(コトバンク)に、見出し「手透き/手隙」で載っています。語釈は「することがなくて暇なこと。手のあいていること。また、そのさま。」です。同じページの精選版 日本国語大辞典は「手があいていること。仕事がきれてひまになること。てあき。」と説明しています。この記事では、ひらがなで「お手すき」と書きます。
つまり「お手すきの際に」は、「あなたの手があいたときに」という意味です。「いつやるか」を、こちらが決めず、相手に任せています。
形も見ておきます。文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日・文化庁)は、14ページで尊敬語を「相手側又は第三者の行為・ものごと・状態などについて,その人物を立てて述べるもの。」と説明し、状態を表す語の例に「お忙しい」を挙げています。「お手すき」は指針の例には載っていませんが、相手の状態を表す言葉に「お」を付けている点は同じです。
では、なぜ「いつやるか」を相手に任せるのでしょうか。同じ指針は、49ページの依頼の仕方の解説で、「相手に負担を掛けているのだ,という意識を持って,その気持ちを表明することが,相手に対してより配慮した表現になると言えるだろう。」と述べています。48ページには、自分が責任者でない場合の頼み方について、「相手に判断をゆだねるような表現を用いる方が良いだろう。」ともあります。
指針のこの箇所は、頼み方そのものの説明で、「お手すきの際に」について書いたものではありません。ただ、相手にも自分の仕事の順番があります。「今すぐ」と言わずに順番を相手に任せることは、負担を分かっていると伝える方法の一つです。
使う場面:急がない依頼と、期限がある依頼を分ける
相手に任せる言葉なので、任せて困らない依頼にだけ使います。書く前に、次の順で確かめます。下の実践シートと同じ並びです。
- 返事がないと止まる作業があるかを、予定表で確かめる。その返事を使う訪問、会議、提出の日を探します。頭の中だけで「急がない」と決めると、後で期限があったことに気づきます。
- 止まる作業がなければ、「お手すきの際に」と、頼むことを書く。何をしてほしいのか(見る・返事をする・電話をかける)まで書きます。前置きだけでは、相手は何をすればよいかが分かりません。
- 目安があるなら、目安として添える。「次回の訪問でお聞きします」のように、こちらが次に動く日を書きます。相手は、その日までに見ておけばよいと分かります。
- 止まる作業があるなら、「お手すきの際に」を使わず、日付と理由を書く。「◯月◯日(◯)までに、ご返信をお願いいたします。手配の締め切りが、この日となっております」(説明用の例です)。
次の表は、分け方の一例です。
| 場面 | 合うか | 書き方(一例) |
|---|---|---|
| 渡した資料の感想を、次に会うときまでに聞きたい | 合う | お手すきの際に、ご覧いただけますでしょうか |
| 急ぎではない用件で、折り返しの電話を頼む | 合う | お手すきの際に、お電話をいただけますでしょうか |
| 返事はほしいが、来週中くらいで足りる | 目安を添える | お手すきの際で構いませんので、来週中を目安にお知らせください |
| 返事がないと、手配や提出が止まる | 合わない | ◯月◯日(◯)までに、ご返信をお願いいたします(理由を添える) |
| 今日中・明日の朝までに要る | 合わない | 急ぎであることと、時刻を書く。電話も使う |
| 相手がやらないと、相手が困る手続き | 合わない | 期限と、過ぎた場合にどうなるかを書く |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
次の2つは、説明用の例です。
- 惜しい例:「お手すきの際にご確認ください。なお、明日の午前中に必要です」
- 良い例:「明日◯月◯日(◯)の午前中に、社内の会議で使います。本日中にご確認いただけますでしょうか。急なお願いで申し訳ございません」
惜しい例は、「手があいたときに」と「明日の午前中」が、一通の中でぶつかっています。相手は最初の一文を読んで後回しにし、二文めを読み落とすことがあります。良い例は、期限と理由を先に書き、急ぎであることへのおわびを添えています。
頼みの強さで書き方を変える考え方は、「幸いです」の意味と使い方に、表でまとめています。手間のかかる作業を頼むときの前置きは、「お手数をおかけしますが」の意味と使い方にあります。この記事では、「いつやるかを相手に任せてよいか」の一点にしぼります。
取引先・上司に使ってよいか
辞書の語釈にも、敬語の指針にも、「お手すきの際に」を取引先や上司に使えない、という説明は見当たりません。使ってよいかどうかは、相手や会社の習慣に合わせて決めることになります。自分で決めるための基準を、場面ごとに書きます。
社内の上司・先輩に
口頭でも、チャットでも使えます。ただ、上司や先輩は、「いつまでに見ればよいか」を知りたいことがあります。期限がないなら、「急ぎではありません」と一言足します。「お手すきの際に、見積の下書きを見ていただけますか。急ぎではありません。A社への提出は◯月◯日です」(説明用の例です)。提出の日が分かれば、相手は自分で順番を決められます。
取引先に
取引先には、こちらの都合の依頼ほど、目安を添えると親切です。「お手すきの際に」だけだと、相手は「いつでもよいのか、本当は早いほうがよいのか」を考えることになります。目安の日か、こちらが次に動く日を一つ書きます。
語釈には「暇なこと」という言葉が入っています。相手に「お暇なときに」と言っているようで気になる、というときは、次の章の「ご都合のよろしいときに」に替えられます。職場で先輩が使っている言い方があれば、それに合わせます。
相手が忙しい時期だと分かっているとき
月末や決算の時期など、相手の手があく日が当分来ないと分かっていることがあります。そのときは、「お手すきの際に」より、日付で幅を示すほうが、相手は予定に入れやすくなります。「◯月◯日以降で構いませんので、ご覧いただけますでしょうか」(説明用の例です)。
言い換え:ご都合のよろしいときに・お時間のあるときに・お手すきの折に
似た言い方がいくつかあります。次の表の語釈は、いずれもデジタル大辞泉(コトバンク)からの引用です。
| 言い方 | 元の言葉と語釈 | 向く場面(一例) |
|---|---|---|
| お手すきの際に | 手透き:「することがなくて暇なこと。手のあいていること。また、そのさま。」 | 仕事の切れ目に、短い時間でできること |
| ご都合のよろしいときに | 都合:「ぐあいがよいか悪いかということ。」 | 日時を決めるなど、相手の予定に関わること |
| お手すきの折に | 折:「過ぎゆく時の中の、区切られたある時点。機会。」 | 「際」を「折」に替えた形。意味は同じ |
| お時間のあるときに | (語釈の引用なし。言葉どおり「時間があるとき」) | まとまった時間が要ること。資料を読む、など |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
どれが丁寧で、どれが軽いかを決めた公的な表は、見当たりません。語釈から言える範囲で、選ぶ目安を書きます。
- お手すきの際に:語釈は「手のあいていること」です。作業の合間、という場面に合います。
- ご都合のよろしいときに:語釈は「ぐあいがよいか悪いか」で、手があいているかどうかに限りません。訪問や電話の日時のように、相手の予定全体に関わるときに合います。日時を決めるやり取りは、日程調整メールの書き方にまとめています。
- お手すきの折に:「折」の用例には「折りを見て伺います」が挙がっています。「際」と入れ替えて使えます。
「お手すきの際で構いませんので」は、「急がなくてよい」をはっきり言う形です。相手が「すぐ返さなければ」と構えそうなときに使います。相手に尋ねてよいかを聞く「差し支えなければ」は、役目が違う言葉です。「差し支えなければ」の使い方で扱っています。
電話・メール・チャットの例
場面によって、足す一言が変わります。次の表は一例です。
| 場面 | 相手が知りたいこと | 足す一言(一例) |
|---|---|---|
| 電話(本人が不在で、伝言を頼む) | 急ぎかどうか。何の件か | 用件と、「急ぎではございません」 |
| メール(取引先) | いつごろまでに見ればよいか | 目安の日か、こちらが次に動く日 |
| チャット(社内) | 今すぐ返すべきか | 「急ぎではありません」と、使う日 |
| 口頭(席で声をかける) | 今、手を止めるべきか | 「今でなくて大丈夫です」 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
電話の例:不在の相手に、折り返しを頼む
自分:「[自社名]の[氏名]と申します。佐藤様はいらっしゃいますでしょうか」
相手:「佐藤は、ただいま席を外しております」
自分:「承知しました。来月の納品日の件で、ご相談がございます。急ぎではございませんので、お手すきの際に、お電話をいただけますでしょうか。番号は◯◯◯◯です」
やり取りは説明用の例です。伝言を受けた人は、メモに「急ぎかどうか」を書きます。「急ぎではございません」と言葉で言うと、そのまま伝わります。こちらからかけ直すほうがよい場合は、「◯時ごろに、あらためてお電話します」と言います。電話の受け方と伝言は、電話対応の基本にまとめています。
メールの例:取引先に、資料を見てもらう
件名:新しいカタログのご案内([自社名] [氏名])
A社 佐藤様
いつもお世話になっております。[自社名]の[氏名]です。
先日お渡ししたカタログについて、お手すきの際に、気になった商品がございましたらお知らせください。
次回◯月◯日(◯)にお伺いする際に、あらためてお聞きします。それまでにご返信をいただかなくても、差し支えございません。
どうぞよろしくお願いいたします。
説明用の例です。「お手すきの際に」のあとに、こちらが次に動く日を書いています。
チャットの例:社内の先輩に、下書きを見てもらう
「[先輩の名前]さん、お疲れ様です。A社あての見積の下書きを、共有フォルダに入れました。お手すきの際に、見ていただけますか。急ぎではありません。提出は◯月◯日(◯)です」
説明用の例です。チャットは、届いた瞬間に通知が出ます。「急ぎではありません」と「使う日」の二つがあれば、相手は今の作業を止めずに済みます。
返事が来ないときの次の一手と、迷いやすい判断
「お手すきの際で構いませんので」と書いて送ったあと、返事が来ない。このとき、相手は約束を破っていません。こちらが「いつでもよい」と伝えたからです。次の順で動きます。
- 最初のメールを読み直す。期限を書いていなかったことを、自分の目で確かめます。
- 今、返事が要る理由があるかを確かめる。理由がなければ、待つか、次に会うときに口頭で聞きます。
- 理由ができたなら、「催促」ではなく「期限を初めて伝える連絡」として書く。「期限を過ぎています」「まだでしょうか」とは書きません。期限は、今回が初めてだからです。
- 日付と理由を書き、こちらの伝え方が足りなかったことを一言添える。
「◯月◯日にお送りしたカタログの件で、ご連絡しました。その際は『お手すきの際に』とお伝えしておりましたが、◯月◯日(◯)が展示会の申し込みの締め切りと分かりました。
先にお伝えできておらず、申し訳ございません。ご興味のある商品がございましたら、◯月◯日(◯)までにお知らせいただけますでしょうか」
説明用の例です。前のメールで何と書いたかを自分から言い、事情が変わったことを伝えています。期限を伝えていた場合の催促の書き方や、電話に切り替える目安は、催促メールの書き方にまとめています。
判断1:急ぎではないが、忘れられたくないときは?
基準は、次に動くのを、相手にするか自分にするかです。忘れられたくないなら、自分が動く形にします。「お手すきの際にご覧ください。◯月◯日ごろに、私からあらためてお電話します」(説明用の例です)。相手に「返事をする」という宿題を残さず、自分の予定表に「◯日に電話」と書きます。
判断2:「お手すきの際に」と目安の日を、一緒に書いてよい?
目安であることが分かれば、一緒に書けます。「来週中を目安に」「次回の訪問までに」は、過ぎても困らない目安です。過ぎたら困る日なら、目安ではなく期限です。「お手すきの際に」を外し、「◯月◯日(◯)までに、お願いいたします」と書きます。
判断3:相手から「お手すきの際にご返信ください」と届いたら、いつ返す?
「いつでもよい」と書かれていても、相手は返事を待っています。基準は、中身をすぐ返せるかどうかです。すぐ返せるなら、その日のうちに返します。調べる時間が要るなら、「◯月◯日(◯)までにお返事します」と、返す日だけを先に返します。相手は、待つ日が分かります。返信の順番は、ビジネスメールの返信にまとめています。
間違えたあと1:期限があるのに、「お手すきの際に」で送った
その場では:気づいたら、相手が後回しにする前に、訂正を送ります。「先ほどのメールで『お手すきの際に』と書きましたが、◯月◯日(◯)までにご返信が必要でした。私の書き誤りです。申し訳ございません」と、どこが、どう変わるかを書きます(説明用の例です)。期限が近いときは、電話でも伝えます。
後の記録:「予定表を見ずに、急がないと決めた。次からは、頼む前に、返事を使う日を予定表で探す」と書きます(説明用の例です)。
間違えたあと2:相手が後回しにして、そのまま忘れていた
その場では:責める言い方はしません。「いつでもよい」と伝えたのは、こちらです。次に会ったときに、「先日のカタログの件、もしご覧になっていましたら、気になった所を伺えますか」と聞きます(説明用の例です)。見ていなければ、「では、今、3ページだけご覧いただけますか」と、その場で済む大きさにします。
後の記録:「返事の方法を相手に任せた。次からは、自分が聞く日を書いて送る」と書きます(説明用の例です)。
間違えたあと3:伝言で「お手すきの際に」と言ったら、本当は急ぎだった
その場では:もう一度電話をかけ、伝言を受けてくれた人に言い直します。「先ほど、急ぎではないとお伝えしましたが、本日中にご相談したいことが出てきました。私から◯時にあらためてお電話します、とお伝えいただけますでしょうか」(説明用の例です)。こちらからかけ直す形にすると、相手の手間が増えません。
後の記録:何が急ぎに変わったのか、いつ分かったのかを書き、上司に伝えます。
今日やることは一つです。これから頼むこと一つについて、返事がないと止まる作業があるかを確かめ、「お手すきの際に」で頼むか、日付を書いて頼むかを決めて、依頼の一文を書いてください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
これから送る依頼の下書き。自分の予定表(返事がないと止まる作業と、その日を確かめるため)。
記入例を見る(説明用)
頼むことと、相手=A社の佐藤様に、先週お渡しした新しいカタログを見た感想を聞く/返事がないと止まる作業と、その日=止まる作業はない。次回の訪問(◯月◯日)で伺えれば足りる/使う言い方=期限がないので「お手すきの際に」を使う/依頼の一文=「先日お渡ししたカタログについて、お手すきの際に、気になった商品がございましたらお知らせください。次回◯月◯日(◯)にお伺いする際に、あらためてお聞きします」/返事が来ないときに、自分が動く日と方法=メールでの催促はしない。◯月◯日の訪問で、自分から口頭で伺う。もし途中で、展示会の申し込み(締め切り◯月◯日)に関わると分かったら、日付と理由を書いたメールをあらためて送る。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
頼むこと、返事がないと止まる作業の有無、使う言い方、依頼の一文、返事が来ないときに自分が動く日と方法が書いてあり、「お手すきの際に」と日付の期限が一つの文に混ざっていない。
うまく進まなかったときは?
止まる作業があるかどうかが分からなければ、予定表を開き、その返事を使う予定(訪問・会議・提出)を探す。見つかれば、その日の前を期限にする。期限を相手に言ってよいか迷うときは、先輩に「A社へ◯日までの返事をお願いしたいのですが、この書き方でよいですか」と下書きを見せる。