NUSSI’S SALES NOTEウッシの営業ノート

NOTE 111 · 営業の実践ノート

「差し支えなければ」の意味と使い方:相手が断れる形で、聞きにくいことを尋ねる

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「差し支えなければ」は、「都合の悪い事情がなければ」という意味の前置きです。辞書では、「差し支え」は「都合の悪い事情。支障。差し障り。」と説明されています。相手に都合の悪い事情があれば断ってよい、と先に伝える形なので、予算や決裁の流れ、連絡先など、答えにくいことを尋ねるときに合います。反対に、断られては困る依頼や、期限のある依頼には合いません。この記事では、使う場面と合わない場面、似た前置きとの違い、断られたときの受け方を、例で説明します。

今日できるようになること

次の商談か電話で聞きたい「答えにくいこと」を一つ選び、聞く理由・「差し支えなければ」の一文・断られたときの一言を書く。

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こんなときに 予算や決裁の流れ、ほかの会社の状況を聞きたいが、どう切り出せばよいか分からないとき。「差し支えなければ」を、どの頼みごとに付けてよいか迷うとき。

この順番で進めよう
  1. 1

    聞きたいことが、相手にとって答えにくいことかを確かめる

  2. 2

    断られても仕事が進むかを確かめる(進まないなら、別の頼み方にする)

  3. 3

    聞く理由を一文で書き、「差し支えなければ」の一文を作る

  4. 4

    断られたときの一言と、代わりに聞くことを決めておく

会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。

「差し支えなければ」の意味を、辞書で確かめる

商談で、予算のことを聞きたい。けれども、「ご予算はいくらですか」と聞くのは、踏み込みすぎる気がする。そこで「差し支えなければ」を付けようとして、意味が合っているのか、失礼にならないのかで迷う。聞きにくいことを聞く場面で、よく起きる迷いです。

先に、言葉の意味を辞書で確かめます。コトバンクに載っている二つの辞書を引きました。「 」の中は、辞書の文をそのまま写したものです。

言葉辞書の語釈
差し支え(名詞)「都合の悪い事情。支障。差し障り。」(デジタル大辞泉「差支え」)/「さしつかえること。また、都合の悪い事柄。」(精選版 日本国語大辞典「差支」の語釈の初め)
差し支える(動詞)「都合の悪いことが起こる。支障を生じる。また、妨げとなる。」(デジタル大辞泉「差支える」)/「あることを行なう際に、障害が起こる。また、障害となる。さしさわる。」(精選版 日本国語大辞典「差支える」)

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

デジタル大辞泉には、使い方の例として「差し支えがあって行けない」「日常生活には差し支えありません」が載っています。

語釈を当てはめると、「差し支えなければ」は、「都合の悪い事情がなければ」という意味になります。だれの都合か、といえば、相手の都合です。「あなたに都合の悪い事情がなければ、教えてください」。裏返すと、「都合の悪い事情があれば、教えなくて構いません」と先に言っていることになります。

「差し支えなければ」という形そのものは、二つの辞書の見出し語にはありません。文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日・文化庁)の全文を検索しても、この言葉は出てきません。どの相手に使ってよいか、という公的な決まりは見当たりません。この記事は、辞書の語釈と、指針に書いてある依頼の表現の考え方から言える範囲で書きます。

相手が断れる形にする前置き:なぜ付けるのか

予算、決めるまでの社内の流れ、ほかの会社にも相談しているか、担当者の携帯電話の番号。どれも、相手が外の人に話すかどうかを選んでよいことです。

こうしたことを、前置きなしで聞くと、相手は「答える」か「断る」かを、その場で迫られます。断る言葉を自分で考えなければならず、断った後の空気も気になります。そこで、断る道を、こちらが先に用意しておくのが、「差し支えなければ」です。

「敬語の指針」は、頼みごとの言い方について、考え方を示しています。48ページでは、自分が責任者でない立場で同僚に仕事を頼む場面について、「相手に判断をゆだねるような表現を用いる方が良いだろう。」と解説しています。49ページでは、何かを頼むことは相手に負担の掛かることだとしたうえで、「相手に負担を掛けているのだ,という意識を持って,その気持ちを表明することが,相手に対してより配慮した表現になると言えるだろう。」と述べ、前置きの「表現があるだけで,随分印象が違ってくる。」と説明しています。

指針のこの部分は、同僚に仕事を頼む場面の解説です。「差し支えなければ」を取り上げたものではありません。ただ、判断を相手にゆだねる、負担を掛けることを先に言葉にする、という考え方は、取引先に答えにくいことを聞く場面にも当てはまります。

付けると、何が変わるか。次の二つを比べてください(説明用の例です)。

惜しい例:「ご予算は、いくらですか」

良い例:「ご予算に合う案に絞ってお持ちしたいので、差し支えなければ、ご予算の目安を教えていただけますか」

惜しい例は、聞いていることは同じです。ただ、相手は、答えるか断るかを迫られ、なぜ聞かれているのかも分かりません。良い例は、聞く理由を先に言い、断ってよいことを伝え、「目安」と言って答えの幅も広げています。相手は、答え方を選べます。

使う場面と、合わない場面

「差し支えなければ」が合うかどうかは、断られても、こちらの仕事が進むかで決まります。次の表は一例です。

聞くこと・頼むこと合うかどうか理由と、合わないときの言い方
予算の目安合う社内の話で、外に言うかどうかは相手が選べる。分からなくても、案を複数出せば進む
決めるまでの社内の流れ・関わる人合う相手の社内の事情。断られたら、次回に回せる
ほかの会社にも相談しているか・比べている点合う言いたくない人もいる。聞けなくても、提案は出せる
携帯電話の番号・個人の連絡先合う教えるかどうかは相手が選ぶこと。会社の代表番号でも連絡はつく
契約書への署名・押印合わない無いと手続きが進まない。「◯日までにご返送をお願いいたします」と、期限を書いて頼む
納品先の住所・請求書の送り先合わない無いと納品や請求ができない。「納品の手配に必要ですので、教えていただけますか」と、理由を言って頼む
期限のある返事(発注の締め切りなど)合わない「してもしなくてもよい」と読まれると、期限に間に合わない。期限と理由を書く

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

合わない場面に付けると、二つの困り事が起きます。一つは、相手が「任意」と読んで、返事を後回しにすること。もう一つは、相手が本当に断ったとき、こちらが「実は、無いと困ります」と言い直すことになり、先に言った「差し支えなければ」が、うその言葉になることです。

断られたら困る頼みには、付けない。これが、いちばん大事な基準です。期限のある依頼の書き方は「幸いです」の使い方に、相手に手間をかける依頼の前置きは「お手数をおかけしますが」の使い方にまとめています。

予算や決裁の流れを、どの順番で聞くかは、商談ヒアリングにあります。会社が決まるまでの流れそのものは、法人営業とはを見てください。

似た前置きとの違い:よろしければ・可能でしたら・恐れ入りますが・お手数ですが

似た前置きが、いくつかあります。元になる言葉を辞書で引くと、何について相手に配慮しているかが違うことが分かります。

前置き元の言葉の語釈何を言っているか合う場面
差し支えなければ差し支え:「都合の悪い事情。支障。差し障り。」(デジタル大辞泉)都合の悪い事情がなければ。断ってよい答えにくいことを尋ねる
よろしければ宜しい:「さしつかえない。支障ない。」(デジタル大辞泉「宜しい」の2番目の㋑)相手がそれでよければ。断ってよい相手のためになる申し出・すすめ
可能でしたら可能:「ある物事ができる見込みがあること。ありうること。また、そのさま。」(デジタル大辞泉「可能」の1番目)できる見込みがあれば日程や数量など、できるかどうかが条件で決まる頼み
恐れ入りますが恐れ入る:「「恐れ入りますが」の形で、ものを頼んだり尋ねたりするときなどのあいさつの言葉としても用いる。」(デジタル大辞泉「恐れ入る」の2番目)頼んだり尋ねたりするときの、あいさつの言葉取り次ぎ、聞き直しなど、ふつうの頼みごと全般
お手数ですが手数:「他人のためにことさらにかける手間。」(デジタル大辞泉「手数」の2番目)手間をかけることを、先に認める記入・返送・確認など、作業を頼む

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

表から言えることを、三つに分けます。

1. 「差し支えなければ」と「よろしければ」は、近い。デジタル大辞泉は、「宜しい」の意味の一つを「さしつかえない。支障ない。」と説明しています。どちらも、断ってよいことを伝える前置きです。使われ方を見ると、「差し支えなければ」は、相手の事情に踏み込む質問(予算、連絡先、理由)に付くことが多く、「よろしければ」は、相手のためになる申し出(「よろしければ、資料をお送りします」)に付くことが多い言葉です。ただ、この使い分けを決めた説明は、辞書にも指針にもありません。入れ替えても、誤りにはなりません。

2. 「可能でしたら」は、事情ではなく、できるかどうかを聞いている。「可能でしたら、来週の火曜日にお時間をいただけますか」は、相手の予定が空いているかを聞いています(説明用の例です)。「話したくない」という事情に配慮する言葉ではありません。予算のように、答えられるけれど答えたくない、ということがある質問には、「差し支えなければ」のほうが合います。

3. 「恐れ入りますが」「お手数ですが」は、断ってよい、とは言っていない。この二つは、頼むことへの申し訳なさや、相手の手間を言葉にする前置きです。断ってよい、という意味は、言葉の中に入っていません。だから、署名や返送のように、やってもらわないと困る頼みにも付けられます。それぞれの使い方は、「恐れ入りますが」の使い方と「お手数をおかけしますが」の使い方にまとめています。

電話・商談・メールの例と、断られたときの受け方

すべて説明用の例です。[ ]は、自分の内容に置き換えてください。

電話の例:担当者の連絡先を聞く

自分:「資料の内容で、急ぎの確認が出ることがあるかもしれません。差し支えなければ、日中につながりやすいお電話番号を教えていただけますか」

相手:「会社の番号にかけてもらえれば、取り次ぎますので」

自分:「承知しました。では、こちらの代表番号におかけします。ありがとうございます」

相手は、個人の番号を言わない、という答えを選びました。これは、「差し支えがある」という返事です。受けたら、理由を聞き返さず、代わりの方法を自分から言います。「なぜですか」「皆さんに伺っているのですが」と重ねると、断ってよいと言った言葉が、うそになります。

商談の例:決めるまでの流れを聞く

自分:「必要な資料を、先にご用意したいと考えています。差し支えなければ、この後、社内でどのような順番で検討されるか、教えていただけますか」

相手:「まず私から課長に話して、その後は部長の承認ですね。時期はまだ何とも」

自分:「課長様にお話しされて、その後に部長様のご承認ですね。ありがとうございます。課長様へのご説明に使える一枚を、金曜までにお送りします」

答えてもらえたときは、聞いた言葉をくり返し、聞いた理由のとおりに使う所まで言います。「資料を用意したい」と言って聞いたのですから、資料を用意します。聞いた理由と違うことには使いません。担当者が社内で説明するときの資料は、「社長に相談します」と言われたらにまとめています。

メールの例:ほかを選んだ理由を聞く

件名:Re: [商品名]ご検討結果のご連絡

[会社名] [担当者名]様

ご連絡ありがとうございます。[自社名]の[氏名]です。

今回は見送りとのこと、承知いたしました。お時間をいただき、ありがとうございました。

今後のご提案の参考にしたく、差し支えなければ、見送りとなった理由を、一言お聞かせいただけますでしょうか。

ご返信は、ご都合のよいときで構いません。お返事が難しい場合は、このままで結構です。

断りの連絡への返信です。相手は、もう答える必要のない立場にいます。最後の一文で、返事をしなくてよいことまで書いています。こう書いておけば、返事が来なくても、こちらから催促はしません。関連する言葉に、「ご承知おきください」があります。

断られたときの受け方

断られたときの動きは、三つです。

  1. すぐに受ける。「承知しました」「失礼しました」と、短く言います。間を空けると、相手は「気を悪くしたか」と気にします。
  2. 代わりの進め方を、自分から言う。「では、価格の違う案を2つお持ちします」のように、聞けなくても進められる形を言います(説明用の例です)。相手は、断ったことで話が止まらなかったと分かります。
  3. 記録に「未確認(伺えず)」と書く。聞かなかったのか、聞いて断られたのかを分けて書きます。次に訪問する人が、同じことを同じ形で聞かずに済みます。

あいまいな答えも、断りの一つとして受けます。「まだ何とも」「そのあたりは、ちょっと」と言われたら、そこで止めます。同じ質問を、言い方を変えて重ねません。

迷いやすい判断と、間違えたあと

判断1:断られたことを、もう一度聞いてよい?

基準は、事情が変わったかどうかです。同じ日に、同じことをもう一度聞くのはやめます。次の訪問で、話が進んで、相手の側に答える理由ができたときは、聞き直せます。「お見積もりを作る段階になりましたので、差し支えなければ、ご予算の目安を伺えますか」のように、前とは違う理由を添えます(説明用の例です)。

判断2:「もし差し支えなければ」「お差し支えなければ」は、どれがよい?

意味は同じです。「もし」を付けると、仮の話であることが、少しはっきりします。「お差し支えなければ」は、「お」を付けて、相手の事情であることを表した形です。どれかが誤りだ、という説明は、辞書にも指針にも見当たりませんでした。

気をつけるのは、前置きを重ねることです。「大変恐れ入りますが、もしお差し支えなければ、ご都合のよろしいときに」と続けると、何を頼まれているのかが、後ろへ遠ざかります。指針の35ページにも、「敬語をたくさん使えば丁寧になるというわけではない。」とあります。前置きは一つ、理由を一つ、頼みを一つ、の形にします。

判断3:一つの商談で、何度も使ってよい?

「差し支えなければ」が続く、ということは、答えにくい質問が続いている、ということです。相手は、次々に内側のことを聞かれている、と感じます。前置きの回数より先に、答えにくい質問の数を減らします。

失敗1:断られては困る頼みに、「差し支えなければ」を付けて送った

その場では:返事が来ないまま期限が近づいたら、頼み直します。「先日は、『差し支えなければ』と書いてお願いしましたが、納品の手配に必要なため、あらためてお願いいたします。◯月◯日(◯)までに、納品先のご住所をお知らせいただけますでしょうか」のように、必要であること・理由・期限を書きます(説明用の例です)。前の書き方が足りなかった、と自分の側の話として書きます。

後の記録:「必要な情報に『差し支えなければ』を付けた。次からは、断られても進むかを先に確かめる」と書きます(説明用の例です)。

失敗2:断られた後に、理由を重ねて聞いてしまった

その場では:相手の返事が短くなった、表情がかたくなった、と気づいたら、そこで止めます。「失礼しました。立ち入ったことを伺いました」と言い、代わりの進め方に話を移します。

後の記録:商談メモに、「予算:伺えず。重ねて聞いてしまった。次回は聞かない」のように、事実と、次にしないことを書きます(説明用の例です)。メモの書き方は、商談メモ添削にあります。

今日やることは一つです。次の商談か電話で聞きたい「答えにくいこと」を一つ選び、聞く理由・「差し支えなければ」の一文・断られたときの一言を書いてください。

YOUR TURN

自分の一件で、書いてみよう。

手元に用意するもの
次の商談か電話の用件メモ。聞きたいことの一覧。前回の商談メモ(すでに聞いたこと・未確認のことが分かるもの)。

記入例を見る(説明用)

聞きたいこと=[会社名]の[担当者名]様に、今回の件の予算の目安を聞きたい。金額は社内の話なので、外の人には言いにくいはず/聞く理由=予算に合わない案を出して、相手の時間を使わないようにするため。案を2つに絞りたい/断られても進められるか=進められる。予算が分からなければ、価格の違う案を2つ出す/「差し支えなければ」の一文=「ご予算に合う案に絞ってお持ちしたいので、差し支えなければ、ご予算の目安を教えていただけますか。」/断られたときの一言と、代わりに聞くこと=「承知しました。では、価格の違う案を2つお持ちします。」代わりに、「今お使いのものと比べて、どの点を重視されますか」を聞く。商談メモには「予算:未確認(今回は伺えず)」と書く。

入力は自動保存されません。ページを移動する前に保存してください。保存した内容は他の人に自動送信されません。

CHECK

ここまでできたら、次へ。

聞きたいことが一つに決まり、聞く理由と「差し支えなければ」の一文が書いてあり、断られたときの一言と、代わりに聞くことが決まっている。

うまく進まなかったときは?

聞く理由が書けなければ、「それが分かると、相手にとって何が良くなるか」を一つ書く。断られたら仕事が止まる内容なら、「差し支えなければ」を外し、理由と期限を書いて頼む形に変える。言い方に自信がなければ、先輩に一文を見せて「この聞き方で、失礼に当たらないですか」と聞く。

NEXT NOTE

次に読むなら

商談で相手の話を聞く「恐れ入りますが」の使い方を見る「幸いです」との書き分けを見る