NUSSI’S SALES NOTEウッシの営業ノート

NOTE 88 · 営業の実践ノート

「お手数をおかけしますが」の意味と使い方:頼む手間に合わせて、前置きを選ぶ

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「お手数をおかけしますが」は、相手に手間のかかることを頼むとき、頼む文の前に置く一言です。「私の用件のために、あなたに手間をかけます」と先に認める意味があります。この記事では、辞書の語釈をもとに、使う場面と合わない場面、言い換えの選び方、メール・電話・口頭の例を、説明用の例として並べます。

今日できるようになること

今日送る頼みごとのメール一通について、相手の作業を書き出し、手間に合う前置きを一つ選んで、一通に一回だけ書く。

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こんなときに 取引先に書類の記入や再送、確認を頼むとき、頼む文の前に何と書けばよいか迷うとき。

この順番で進めよう
  1. 1

    相手にやってもらう作業を書き出す

  2. 2

    相手の手間か、相手の利益か、自分の用事かを分ける

  3. 3

    手間の大きさに合う前置きを一つ選ぶ

  4. 4

    何を・いつまでにを書き、前置きは一通に一回にする

会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。

「お手数をおかけしますが」の意味:相手にかける手間を、先に認める一言

取引先に、書類の記入や資料の再送を頼むメールを書いているとします。頼む文そのものは書けたのに、その前に何を置けばよいかで手が止まる。「お手数をおかけしますが」は、そういうときに使う一言です。

「手数(てすう)」は、デジタル大辞泉(コトバンク)に「他人のためにことさらにかける手間。」とあります。用例には「お手数でもよろしく」「お手数をかけて恐縮です」が挙がっています。つまり「お手数をおかけしますが」は、「私の用件のために、あなたに手間をかけますが」と、先に認める前置きです。

形も見ておきます。「かける」を「おかけする」にした形です。文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日・文化庁)は、27ページで、謙譲語Ⅰの一般的な形の例に「お(ご)……する」を挙げ、「これらの語は<向かう先>を立てる謙譲語Ⅰなので,<向かう先>の人物がある動詞に限って,これらの形を作ることができる。」と説明しています。手間をかける先は相手なので、この形が作れます。終わりの「が」は、次に続く頼む文へつなぐ役目です。

では、なぜ前置きを置くのでしょうか。同じ指針は、49ページの依頼の仕方の解説で、「何かを頼むということは,相手には負担の掛かることだと考えられる。」「相手に負担を掛けているのだ,という意識を持って,その気持ちを表明することが,相手に対してより配慮した表現になると言えるだろう。」と述べています。続けて、「前置きの表現があるだけで,随分印象が違ってくる。」とも書かれています。

前置きがないと、相手は「やって当然と思われている」と受け取ることがあります。前置きは飾りではなく、「あなたの時間を使うことを、分かっています」と伝える部分です。敬語の種類の全体は、尊敬語と謙譲語の違いにまとめています。

使う場面と、合わない場面

語釈のとおり、「手数」は、相手がこちらの用件のために動く手間のことです。だから、使うかどうかは、「相手の作業が増えるか」「それは誰のための作業か」の2つで決まります。次の表は、分け方の一例です。

場面合うか理由と、代わりの書き方(一例)
書類の記入・押印・返送を頼む合う相手の作業が、こちらの用件のために増える
資料の再送や、もう一度の確認を頼む合う一度済んだことを、もう一度やってもらう
相手の社内の人への確認や、取り次ぎを頼む合う担当者が、ほかの人に聞く手間がかかる
返事をもらうだけの質問(はい・いいえで済む)軽い言い方でよい「恐れ入りますが」など、手間を大きく言わない前置きにする
相手の利益になる案内(割引や、無料の点検の案内など)合いにくい相手が自分のためにすることなので、「よろしければ」「ご希望の場合は」にする
名刺やホームページを見れば、自分で分かること頼む前に、自分で調べる前置きを付けても、相手の手間は減らない
こちらの誤りで、やり直しを頼む前置きだけでは足りない先におわびと、何を誤ったかを書く

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

表の下の3つが、間違えやすい所です。順に理由を見ます。

相手の利益になる案内には、合いにくい

惜しい例:「お手数をおかけしますが、今月中のご注文で送料が無料になりますので、ぜひご利用ください」

良い例:「今月中のご注文は、送料が無料になります。ご希望の場合は、このメールへのご返信でお知らせください」

どちらも説明用の例です。惜しい例は、こちらが勧めたいことに「お手数」を付けています。利用するかどうかは相手が決めることで、こちらのために手間をかけてもらう話ではありません。語釈の「他人のために」と合わないので、読む人によっては、頼まれているのか案内なのかが分かりにくくなります。

ただし、案内の中でも、申込書への記入のように手続きの作業を頼む一文には使えます。「ご利用の場合は、お手数をおかけしますが、申込書にご記入のうえご返送ください」という形です(説明用の例です)。

こちらがやるべきことには、使わない

「お手数をおかけしますが、御社のご住所を教えていただけますか」と書く前に、名刺と相手の会社のホームページを見ます。そこに書いてあれば、聞く必要がありません。前置きは、手間をかけることを認める言葉で、手間を減らす言葉ではないからです。

調べても分からなかったときは、調べたことを添えます。「名刺のご住所と、ホームページのご住所が異なっておりました。お手数をおかけしますが、お送り先をお知らせいただけますでしょうか」と書くと(説明用の例です)、相手は、聞かれた理由が分かります。

こちらの誤りのやり直しは、おわびが先

添付を間違えて送り直すときなど、相手の手間の原因がこちらにある場合は、前置きの前に、おわびと、何を誤ったかを書きます。書く順番は、お詫びメールの書き方にまとめています。

言い換えと、重さの違い

頼みごとの前置きには、似た言い方がいくつかあります。辞書の語釈を並べると、何を言っている言葉なのかが分かります。次の表の語釈は、いずれもデジタル大辞泉(コトバンク)からの引用です。

前置き元の言葉と語釈向く場面(一例)
お手数をおかけしますが手数:「他人のためにことさらにかける手間。」記入・返送・再送など、作業を頼む
恐れ入りますが恐れ入る:「「恐れ入りますが」の形で、ものを頼んだり尋ねたりするときなどのあいさつの言葉としても用いる。」手間の大小を問わず、頼む・尋ねるとき。電話や口頭でも言いやすい
ご面倒をおかけしますが面倒:「手間がかかったり、解決が容易でなかったりして、わずらわしいこと。」作業が多い、込み入っている、ほかの人にも動いてもらう
お忙しいところ恐縮ですが恐縮:「相手に迷惑をかけたり、相手の厚意を受けたりして申し訳なく思うこと。」相手の時間を使わせる。急ぎで頼む

表が収まらない場合は、左右に動かせます。

どれが重く、どれが軽いかを順番に並べた公的な表は、見当たりません。ここでは、語釈から言える範囲で、選ぶ目安を書きます。

  • 恐れ入りますが:語釈は「あいさつの言葉としても用いる」です。作業の中身を言っていないので、返事だけの軽い頼みにも、大きな頼みにも付けられます。
  • お手数をおかけしますが:「手間」を名指ししています。相手に、開く・書く・送るなどの作業があるときに合います。
  • ご面倒をおかけしますが:語釈に「わずらわしいこと」が入っています。「手数」より、負担が大きいことを言う言葉です。小さな頼みに使うと、大げさに聞こえることがあります。
  • お忙しいところ恐縮ですが:作業の量ではなく、相手の時間と、こちらの申し訳ない気持ちを言っています。「敬語の指針」も、53ページで、依頼の言葉遣いの例に「お忙しいところ,急なお願いを申しまして恐縮ですが,どうかお聞き届けください」を挙げています。

迷ったら、相手の作業を数えて決めます。返事だけなら「恐れ入りますが」。作業が一つ二つなら「お手数をおかけしますが」。ほかの人にも動いてもらうなど込み入っているなら「ご面倒をおかけしますが」。急ぎで時間を割いてもらうなら「お忙しいところ恐縮ですが」です。数は目安で、決まりではありません。

「お手数ですが」との違い

元の言葉は、どちらも同じ「手数」です。辞書の用例にも「お手数でもよろしく」という短い形が載っています。意味に違いはなく、違うのは形の長さです。「お手数をおかけしますが」は、「おかけします」と自分の行いを言葉にしているぶん、長く、改まった形になります。

選び方の一例です。初めての相手や、書類を伴う改まった依頼には「お手数をおかけしますが」。やり取りが続いている相手への短いメールや、電話では「お手数ですが」。どちらかが誤り、ということではありません。相手や会社でよく使われている形に合わせます。

「お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします」は、結びの形

この形は、メールの終わりに置く結びです。前の文で、何を・いつまでに頼むかが書いてあれば、「上に書いたことを、手間をかけますがお願いします」という意味で通じます。

頼みごとが書かれていないメールの結びに置くと、相手は、何の手間のことかが分かりません。報告だけのメールなら、結びは「よろしくお願いいたします」で足ります。結びの選び方は、ビジネスメールの締めにまとめています。

メール・電話・口頭の例

例は、すべて説明用の例です。[ ]と◯は、自分の内容に置き換えます。

メールの例:申込書の記入と返送を頼む

惜しい例:

「お手数をおかけしますが、添付の申込書をご確認ください。お手数ですが、ご記入のうえご返送いただけますでしょうか。お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします」

惜しい例は、3つの文すべてに「お手数」が付いています。どの作業が本当に手間なのかが伝わらず、いつまでに返せばよいのかも書かれていません。

良い例:

「添付の申込書をお送りします。」

「お手数をおかけしますが、◯月◯日(◯)までに、黄色の3か所にご記入のうえ、PDFでご返信いただけますでしょうか。ご住所と部署名は、いただいた名刺のとおり、こちらで入力しております。」

「よろしくお願いいたします」

良い例は、前置きが一回です。その後に、何を・いつまでに・どの形でが続きます。こちらで済ませた作業(住所の入力)を書いたので、相手は、自分のやることが3か所の記入だけだと分かります。前置きの言葉より、相手の作業を減らすことのほうが、相手の助けになります。

電話の例:資料の再送を頼む

惜しい例:「あの、先日の資料なんですが、もう一回送ってもらえますか」

良い例:「恐れ入ります。先日お送りいただいた仕様書の件です。お手数ですが、2ページ目だけ、もう一度お送りいただけますでしょうか。こちらで開いたところ、文字が読めない状態でした」

電話では、長い前置きは聞き取りにくくなります。最初に「恐れ入ります」と声をかけ、頼む文の前に「お手数ですが」を一回、という短い形にしています。理由(文字が読めなかった)を添えると、相手は、なぜもう一度なのかが分かります。電話の受け方とかけ方は、電話対応の基本にまとめています。

口頭の例:社内の先輩に確認を頼む

惜しい例:「これ、見てもらっていいですか」

良い例:「お手数ですが、この見積書の金額の欄だけ、見ていただけますか。今日の15時に送る予定です」

口頭でも、形は同じです。前置きを一回、見てほしい所、期限の3つを言います。社内でどの前置きを使うかは、職場の習慣で変わります。先輩どうしの言い方を聞いて、合わせます。

迷いやすい判断

判断1:一通のメールに、何度まで使ってよい?

基準は、頼みごと一つに、前置き一つです。「敬語の指針」は、35ページで「敬語をたくさん使えば丁寧になるというわけではない。」と述べています。前置きも同じで、重ねるほど、どれが本当の頼みなのかが見えにくくなります。

頼むことが二つ以上あるなら、前置きは最初に一回だけ書き、頼むことを番号で並べます。「お手数をおかけしますが、次の2点をお願いいたします。①…… ②……」という形です(説明用の例です)。結びは「よろしくお願いいたします」にします。

判断2:手間が大きいのか小さいのか、分からないときは?

相手の作業を、自分でやるつもりで順に書き出します。添付を開く、書く、誰かに聞く、判をもらう、送る。書き出すと、返事だけなのか、ほかの人まで動くのかが見えます。

相手の社内の手続きが分からないときは、推測で決めず、先輩に聞きます。「A社に申込書の押印を頼みます。先方の中で、時間のかかる手続きでしょうか。期限を何日後にするか、決めたいです」のように、決めたいことを添えると(説明用の例です)、先輩は答えやすくなります。

判断3:上司や先輩にも、使ってよい?

使えます。相手に手間をかけることは、社内でも同じだからです。ただ、社内では「お手数ですが」や「すみませんが」のような短い形が使われる職場もあります。「敬語の指針」の35ページには、「自分の基準だけで,相手や第三者の言葉遣いが丁寧過ぎる,あるいは逆に,失礼だなどということは決められない。」とあります。自分の感覚で決めず、職場で使われている形に合わせます。

判断4:やってもらった後は、何と言う?

終わった後は、「お手数をおかけしました」と過去の形にして、お礼を続けます。「お手数をおかけしました。申込書を受け取りました。ありがとうございます」のように、何を受け取ったかを一緒に書くと(説明用の例です)、相手は、自分の作業が無事に届いたと分かります。返信の書き方は、ビジネスメールの返信にまとめています。

間違えて送ったあと

前置きの選び方を間違えても、用件が伝わっていれば、相手の仕事が止まるとは限りません。直すかどうかは、相手の次の行動が変わるかで決めます。

失敗1:相手の利益になる案内に、「お手数」を付けて送った

その場では:訂正のメールは送りません。言葉の直しだけのメールは、相手にもう一通読ませることになり、手間を増やします。次に同じ相手へ送るときから、「ご希望の場合は」に変えます。

後の記録:「案内のメールに『お手数』を付けた。次からは、相手が自分のためにすることには付けない」と、次に書く形で残します(説明用の例です)。

失敗2:前置きは書いたが、期限か、やってほしい作業が抜けていた

その場では:これは、相手の次の行動が変わるので、追って送ります。「先ほどのメールに、ご返信の期限を書き漏らしておりました。◯月◯日(◯)までにお願いできますでしょうか。重ねてのご連絡となり、申し訳ございません」と、足りなかったことだけを書きます(説明用の例です)。

後の記録:送る前に見る所を一つ足します。「頼む文に、何を・いつまでに・どの形で、の3つがあるか」です。

失敗3:自分で調べれば分かることを、相手に聞いてしまった

その場では:返事が来る前に気づいたら、すぐに伝えます。「先ほどお尋ねした件は、いただいた資料に記載がございました。ご返信には及びません。失礼いたしました」と書けば(説明用の例です)、相手は調べずに済みます。返事をもらった後なら、お礼を伝え、同じことを二度聞かないようにします。

後の記録:聞く前に見る物を書いておきます。名刺、相手のホームページ、これまでのメール、もらった資料の4つです。

今日やることは一つです。今日送る頼みごとのメール一通について、相手の作業を書き出し、手間に合う前置きを一つ選んで、一通に一回だけ書いてください。

似た前置きの「恐れ入りますが」は、「恐れ入りますが」の意味と使い方にまとめています。

YOUR TURN

自分の一件で、書いてみよう。

手元に用意するもの
これから送る頼みごとのメールの下書き。相手とのこれまでのやり取り。

記入例を見る(説明用)

頼むことと、相手にやってもらう作業=[会社名]の[担当者名]様に、申込書の記入と返送を頼む。作業は、①添付を開く ②3か所に記入する ③社内で押印をもらう ④PDFにして返信する、の4つ/相手の手間か、相手の利益か、自分で済むことか=相手の手間。押印は、担当者以外の人にも動いてもらうことになる。住所と部署名は、名刺を見て自分で先に書き入れておく/選んだ前置きと、選んだ理由=「お手数をおかけしますが」。作業が4つあり、返事だけで済む頼みではないので。「ご面倒をおかけしますが」は、今回はそこまで込み入っていないので使わない/頼む文=「お手数をおかけしますが、◯月◯日(◯)までに、ご記入のうえ、PDFでご返信いただけますでしょうか」/前置きの回数と、削った所=下書きでは、冒頭・頼む文・結びの3か所に「お手数」と書いていた。頼む文の前の1回だけ残し、結びは「よろしくお願いいたします」にした。

入力は自動保存されません。ページを移動する前に保存してください。保存した内容は他の人に自動送信されません。

CHECK

ここまでできたら、次へ。

相手にやってもらう作業が書き出してあり、手間に合う前置きが一つ選んであり、頼む文に「何を・いつまでに」が入っていて、前置きが一通に一回になっている。

うまく進まなかったときは?

前置きを選べなければ、相手の作業を「開く・書く・誰かに聞く・送る」に分けて数える。返事だけなら「恐れ入りますが」、作業があるなら「お手数をおかけしますが」から始める。会社でよく使う言い方が分からなければ、先輩が取引先へ送ったメールを一通見せてもらう。

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