NOTE 172 · 営業の実践ノート
転職理由の伝え方:営業の人が面接・面談で聞かれたときの答え方と、理由別の言い換え例
公開:2026年10月4日
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転職理由は、「本当の理由」と「伝える言葉」を分けて書き出すと、答えやすくなります。うそを作るのではありません。事実のうち、次の仕事に関わる部分を選び、「何から離れたいか」に「次に何をしたいか」を足して伝えます。この記事では、営業の人に多い理由ごとに、惜しい例と良い例を、説明用の例として並べます。転職をすすめる記事でも、止める記事でもありません。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 面接や、転職エージェントとの面談で「転職理由は何ですか」と聞かれ、不満をそのまま言ってよいのか迷うとき。
- 1
本当の理由を、人に見せない紙に全部書く
- 2
事実と気持ちを分け、次の仕事に関わる事実を選ぶ
- 3
「次に何をしたいか」を足して、3つの文にする
- 4
声に出して言い、悪口やうそが混ざっていないか確かめる
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
転職理由を聞かれて、手が止まる理由
転職は、辞書では「他の職に変わること。」(デジタル大辞泉「転職」)と説明されています。面接や、転職エージェントとの面談では、「なぜ、職を変えようと考えたのですか」と聞かれることがあります。これが転職理由です。
聞かれて手が止まるのは、本当の理由の多くが、不満だからです。数字の目標がつらい。給料が上がらない。上司と合わない。そのまま言えば悪口に聞こえそうで、きれいな言葉に言い換えれば、うそになりそうです。
抜け出す方法は、本当の理由と、伝える言葉を、別の紙に分けて書くことです。本当の理由は、消さずに全部書きます。伝える言葉は、その中から、次の仕事に関わる事実を選んで作ります。言い換えるのは言葉づかいで、事実は変えません。
この記事は、営業の仕事をしている人が、面接や面談で転職理由を伝える場面にしぼります。辞めるか続けるかで迷っている段階なら、先に営業を続けるか迷ったらで、つらさを分けてみてください。この記事は、転職をすすめることも、止めることもしません。
手順:本当の理由と、伝える言葉を分けて書く
次の4つの順に進めます。下の実践シートの項目と同じ順番です。
- 本当の理由を、人に見せない紙に全部書く。きれいに書こうとしません。「上司がきらい」「給料が安い」と、思ったままの言葉で書きます。先に全部出しておくと、面接の場で、言うつもりのなかった不満が口から出にくくなります。
- 事実と気持ちを分ける。「目標がきつい」は気持ちです。「目標は、月ごとの新しい契約の件数で決まっている」は事実です。事実は、いつ・何が・どれくらい、で書きます。数字は、日報や記録で確かめてから書き、確かめていないものは「未確認」とします。
- 次の仕事でしたいことを書く。「何から離れたいか」の裏側に、「何をしたいか」があることが多くあります。月末の押し込みがつらいなら、「お客様に合う物を、時間をかけて提案したい」かもしれません。裏返しても出てこないときは、今の仕事で、もっと時間を使いたい作業を一つ書きます。
- 3つの文にする。起きている事実(1文)、自分がやったこと・相談したこと(1文)、次にしたいこと(1文)の順です。声に出して、30秒ほどで言える長さにします。
2つ目の文(自分がやったこと)を入れる理由があります。事実と希望だけだと、「困ったら、すぐ場所を変える人」に見えることがあります。相談した、やり方を変えてみた、という動きが一つ入ると、今の場所で手を打ったうえでの判断だと伝わります。何もしていないなら、作らずに、事実のまま言えるようにしておきます。
仕事の中身を、数字や出来事で書く方法は、営業実績の書き方にまとめています。転職理由の「事実」の文は、実績の整理と同じ材料から作れます。
うそをつかない・悪口にしない
うそをつかない:言わないことと、うそを言うことは違う
本当の理由を全部話す必要はありません。話す範囲を選ぶのは、うそではありません。一方で、事実でないことを言うのは、うそです。たとえば、相談していないのに「上司に何度も相談しました」と言う。理由が別にあるのに「会社の事業がなくなるので」と言う。こうした答えは、深く聞かれたときに続きが作れず、話が合わなくなります。
面接でのうその答えについて、厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A「面接での虚偽回答は、内定取消の理由になりますか?」には、「採用内定の取消の理由として、採用面接にあたって虚偽の事実を述べたことが理由として挙げられることはありますが、それが有効か否かはケースバイケースであって一概には決められません。」と書かれています(2026年10月4日に確認)。このQ&Aは、家族について聞かれた例を扱ったものです。自分の場合にどうなるかは、ここでは言い切れません。確かなのは、うそは、あとで自分を困らせる種になるということです。
悪口にしない:人を主語にせず、出来事を主語にする
不満を伝えること自体は、悪いことではありません。悪口に聞こえるかどうかの境目は、文の主語にあります。「上司が、数字のことしか言わない」は、人を主語にした文です。「部署の目標が、月ごとの新しい契約の件数で決まっている」は、出来事を主語にした文です。同じ場面でも、後のほうは、聞く人が仕事の中身を思い浮かべられます。
人を主語にした文は、聞く側には確かめようがありません。その上司の言い分は、その場にないからです。出来事を主語にすれば、評価を足さなくても、事情は伝わります。
前の会社の取引先の名前、売上、社内の数字など、仕事で知った情報は、転職理由の説明でも外に出しません。「A社」「取引先の一社」のように、特定できない形で話します。
営業に多い理由別:惜しい例と良い例
ここからの例は、すべて説明用の例です。実際の人の発言や、運営者の体験ではありません。良い例は、そのまま使うための文ではなく、組み立て方の見本です。自分の事実に合わないことは、言わないでください。
1. 数字の目標がつらい
惜しい例:「ノルマがきつくて、毎月の数字に追われるのに疲れました」
良い例:「今の仕事は、月ごとの新しい契約の件数が目標です。月末は、その月に契約できそうな相手への連絡が中心になります。既存のお客様への訪問を増やしたいと上司に相談しましたが、目標の決め方は変わりませんでした。お客様と長く付き合い、納めたあとまで見る営業がしたいと考えています」
惜しい例は、気持ちだけで、何がつらいのかが分かりません。「目標があるのがいやな人」にも聞こえます。良い例は、目標の種類(新しい契約の件数)を言っているので、つらさの中身が伝わります。
2. 扱う商品に、自信が持てない
惜しい例:「正直、うちの商品は他社より劣っていて、売るのが苦しいです」
良い例:「今扱っている商品は、お客様の使い方によっては、合わない場合があります。合わないと分かったお客様には、そのまま伝えてきました。自分が中身をよく理解し、合う相手に自信を持ってすすめられる商品を扱いたいと考え、御社の〇〇に関心を持ちました」
惜しい例は、今の会社の商品を下げています。聞く側は、「うちの商品にも、同じことを外で言うのでは」と考えるかもしれません。良い例は、商品の評価ではなく、自分がどう動いたかと、何を扱いたいかを言っています。
3. 評価や給料
惜しい例:「これだけやっているのに、給料が上がりません。評価もおかしいと思います」
良い例:「今の会社は、勤めた年数で給料が決まる割合が大きい仕組みです。昨年度は、担当の取引先を〇社から〇社に増やしましたが、評価の仕組みの上では、反映される部分が限られていました。仕事の結果と進め方の両方を見て評価される環境で、働きたいと考えています」
給料を理由にするのは、はずかしいことではありません。惜しい例は、「おかしい」という評価だけで、仕組みも、自分の仕事も出てきません。良い例は、仕組み(事実)と自分の仕事(事実)を並べています。希望する条件は、聞かれたときに、理由とは別に答えます。
4. 働く時間
惜しい例:「残業が多すぎて、休みも取れません。もう限界です」
良い例:「今の仕事は、日中の訪問のあとに、見積もりや報告の書類を作る流れで、帰りが遅い日が続いています。訪問の順番を組み直すなど、自分でできる工夫はしましたが、書類の量そのものは変えられませんでした。長く営業を続けるために、仕事の進め方を見直せる環境で働きたいと考えています」
惜しい例は、何が長いのか、自分で何を試したのかが伝わりません。良い例は、時間が延びる理由を仕事の流れで説明しています。なお、眠れない、体調がおかしい、という状態が続いているなら、言い方を考えるより先に、医療機関や身近な人に相談してください。厚生労働省「こころの耳」には、働く人のための相談窓口の案内があります。
5. 人間関係
惜しい例:「上司と合いません。言うことが毎日変わって、ついていけません」
良い例:「今の部署では、訪問先の決め方や報告のしかたの方針が、短い間に何度か変わりました。そのたびに、確認の質問をして合わせてきました。方針を共有したうえで、チームで相談しながら進める営業がしたいと考えています」
人間関係は、いちばん悪口になりやすい理由です。良い例は、「上司が」を「方針が」に置き換え、自分がどう動いたかを足しています。
6. 営業の種類を変えたい
惜しい例:「飛び込み営業はもういやなので、ルート営業がしたいです」
良い例:「今は、新しい訪問先を自分で探す営業を〇年しています。その中で、契約のあとも続けて訪問しているお客様が〇社あり、その仕事にいちばん力が入ると気づきました。すでに取引のあるお客様を定期的に回る仕事で、その部分を伸ばしたいと考えています」
惜しい例は、「いや」が先で、次の仕事を「楽そうだから」選んだように聞こえます。良い例は、今の仕事の中で見つけた、続けたい部分から話しています。営業の種類ごとの違いは、営業の種類で確かめられます。営業の仕事の中で動くことを考えているなら、営業の転職の記事も見てください。
志望動機とのつなげ方と、深く聞かれたとき
志望動機とのつなげ方
志望動機は、就職活動の用語集では「志望動機とは、なぜその企業を志望しているのか、その理由です。」(就活用語集「志望動機」)と説明されています。転職理由は「なぜ職を変えるのか」、志望動機は「なぜこの会社なのか」です。二つは、別の質問です。
つなぎ目になるのが、転職理由の3つ目の文、次にしたいことです。「納めたあとまで見る営業がしたい」が転職理由の終わりなら、志望動機は「御社の営業は、〇〇という進め方だと求人に書かれていたので」と、そこから始められます(説明用の例です)。転職理由の「したいこと」と、志望動機の「この会社でできること」が別の話になっていると、聞く側は、どちらが本当なのか分からなくなります。
場面で変わるところ
伝える相手と場面で、話す範囲が変わります。次の表は一例です。
| 場面 | 伝え方(一例) | 気をつけること |
|---|---|---|
| 応募先の面接 | 3つの文で短く。聞かれたら、事実を足す | 最初から長く話さない。相手の質問に合わせて足す |
| 転職エージェントとの面談 | 希望する条件や、避けたい条件まで、広めに話す | 話した内容が応募先にどう伝わるかを、先に聞く |
| 応募書類に書くとき | 「次にしたいこと」を中心に、短く | 書類と、面接で話す内容を、同じ事実にそろえる |
| 今の会社に在職中 | 「在職中で、引き継ぎの期間が要る」と事実を言う | 今の会社の、外に出していない情報を話さない |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
転職エージェントの仕組みは、転職エージェントとはにまとめています。
深く聞かれたとき
転職理由を答えると、続けて質問されることがあります。答えを暗記するのではなく、事実に戻ると決めておきます。次は説明用の例です。
質問:「上司には、相談しましたか」
答え:「はい。〇月の面談で、既存のお客様への訪問を増やしたいと伝えました。部署の目標があるので難しい、という返事でした」
質問:「うちでも、数字の目標はありますよ」
答え:「はい。目標があること自体は、当然だと考えています。私が変えたいのは、目標の有無ではなく、お客様と続けて付き合える進め方かどうかです。御社の目標は、どのように決まっていますか」
質問:「同じことが起きたら、また辞めますか」
答え:「まず、上司に相談して、自分のやり方で変えられることを試します。今回も、相談と工夫をしたうえで決めました」
2つ目の答えは、自分からも質問を返しています。入ってから「思っていた仕事と違った」とならないよう、気になる点は聞いて確かめます。答えに詰まったときは、「少し考えさせてください」と言って、間を取って構いません。
迷いやすい判断と、言いすぎたあと
判断1:本当の理由が、人間関係だけのときは?
基準は、出来事として話せる事実があるかです。あるなら、「5. 人間関係」の例のように、出来事を主語にして話します。出来事にできない(相手の人柄そのものがつらい)ときは、理由の中心を「次にしたいこと」に置き、離れたい理由は「職場の環境を変えたいと考えました」と短く言うにとどめます。うそを足して、理由を作ることはしません。
いやがらせや、いじめに当たるかもしれない出来事があったなら、言い方の工夫とは別の問題です。社内の相談窓口や、厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」にある公的な窓口に、相談することができます。
判断2:家庭の事情や体調が理由のとき、どこまで話す?
基準は、次の仕事の進め方に関わるかどうかです。「家族の事情で、転勤のない仕事を探しています」のように、働き方の条件に関わる部分だけを話せば足ります(説明用の例です)。事情の細かい中身まで話す必要はありません。
厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A「就職面接の際の、プライベートな質問は不適切では?」には、公正な採用選考について、「本人が職務遂行上必要な適性・能力をもっているかどうかを採用基準とし、適性・能力に関係のない事由を採用基準としないことが必要です。」と書かれています(2026年10月4日に確認)。仕事と関係のないことを深く聞かれて困ったときは、「仕事に関わる範囲でお答えします」と伝えて構いません。
判断3:転職エージェントには、本音を全部話してよい?
希望に合う求人を探してもらうには、避けたい条件を伝えたほうが、話が早く進みます。一方で、面談で話した内容が応募先にどう伝わるかは、サービスごとに違い、ここでは言い切れません。基準は、先に聞くことです。「今からお話しする理由は、応募先にも伝わりますか」と聞いてから話します(説明用の例です)。
相手がエージェントでも、今の会社の、外に出していない情報は話しません。
失敗のあと:面接で、言いすぎてしまった
その場では:話している途中で、悪口になっていると気づいたら、そこで止めます。「言い方が強くなりました。事実だけ申し上げますと、〜です」と言い直し、出来事の文に戻ります(説明用の例です)。
帰ってからの記録:どの質問で、何を言ったかを、その日のうちに書きます。「上司に相談したか、と聞かれて、上司への不満を3つ言った」のような形です(説明用の例です)。次に、その質問への答えを、事実の文で書き直します。聞かれた質問の記録は、次の面接の準備になります。
今日やることは一つです。本当の理由を、人に見せない紙に全部書き出し、その中の一つを「起きている事実・自分がやったこと・次にしたいこと」の3つの文にしてください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
人に見せない紙かメモ、最近の仕事の記録(日報・商談メモなど)、応募先の求人の内容(決まっていれば)。
記入例を見る(説明用)
本当の理由=毎月の数字の目標がきつい。月末に、お客様に合わない商品までお願いしているのがつらい。上司は数字の話しかしない/その中の事実=目標は、月ごとの新しい契約の件数で決まっている。月末の1週間は、新しい訪問先を増やすことより、今月中に契約できる相手への連絡が中心になっている(件数は、日報で数えてから書く。今は未確認)/自分がやったこと・相談したこと=既存のお客様への定期訪問を増やしたいと、上司に一度相談した。部署の目標の決め方は変わらなかった/次の仕事でしたいこと=同じお客様と長く付き合い、納めたあとの様子を確かめながら、次の提案をする営業がしたい/伝える文=「今の仕事は、月ごとの新しい契約の件数が目標です。その中で、お客様のところへ続けて通う時間を増やしたいと上司に相談しましたが、部署の目標の決め方は変わりませんでした。同じお客様と長く付き合い、納めたあとまで見る営業がしたいと考え、転職を考えています」。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
本当の理由と伝える文が別々に書いてあり、伝える文に、起きている事実・自分がやったこと・次にしたいことの3つが入っていて、人の悪口と、事実でないことが入っていない。
うまく進まなかったときは?
本当の理由が書けなければ、最近つらかった場面を一つだけ、日付と出来事で書く。次にしたいことが出てこなければ、「今の仕事で、もっと時間を使いたい作業」を一つ書く。辞めるかどうか自体で迷っているなら、先に「営業を続けるか迷ったら」の記事で、つらさを分ける。