NOTE 188 · 営業の実践ノート
営業を辞めたいとき:決める前に、紙に書いて4つに分ける
公開:2026年10月4日
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営業を辞めたいと思ったら、決める前に、何がつらいのかを紙に書いて4つに分けます。仕事の中身、目標、人、働く条件の4つです。分けると、社内で変えられることと、会社を変えないと変わらないことが見えてきます。この記事は、辞めることを勧めも止めもしません。この記事は、体や心の調子についての判断をするものではありません。つらさが強い日が続くときは、書くより先に、医療機関や公的な相談窓口に相談してください。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 営業を辞めたいと思うが、何が理由なのかを自分でもうまく言えず、だれにも相談できていないとき。
- 1
この2週間でつらかった場面を、日付つきで3つ書く
- 2
仕事の中身・目標・人・働く条件の4つに分ける
- 3
社内で変えられそうなことに印を付け、相談する相手と聞くことを決める
- 4
見直す日を決め、その日に続けるか・動くかを考え直す
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
「辞めたい」と思ったら、決める前に書いて分ける
「営業を辞めたい」と検索する日は、たいてい、何かがあった日です。断られた。数字を言われた。帰りが遅かった。頭の中では、それらが一つにまとまって、「もう辞めたい」という一言になっています。
この記事は、辞めることを勧めることも、止めることもしません。決めるのは、あなたです。ここで扱うのは、決める前に、材料をそろえる手順です。この記事は、体や心の調子についての判断をするものではありません。
先に、一つだけお伝えします。眠れない、食べられない、朝に体が動かないなど、体や心の調子がおかしいと感じる日が続くときは、書き出すより先に相談してください。医療機関のほか、厚生労働省の「こころの耳」に相談窓口があります。くわしくは、この記事の「相談先」の章にまとめました。
書いて分ける理由は、2つあります。1つは、一言のままでは、だれに何を相談すればよいかが決まらないからです。もう1つは、会社を変えても、同じつらさがついてくる場合があるからです。たとえば、新しい相手に電話をかけることがつらいなら、同じ種類の営業に移っても、その場面は残ります。逆に、今の職場の決まりだけがつらいなら、社内で変えられるかもしれません。
手順は、次の5つです。紙を一枚用意します。
- この2週間でつらかった場面を、日付つきで3つ書く。「毎日つらい」ではなく、「◯日に、何があった」と書きます。手帳や日報を開くと、思い出しやすくなります。
- 4つに分ける。仕事の中身、目標、人、働く条件のどれに当たるかを、場面の横に書きます。分け方は、次の章で説明します。
- 社内で変えられそうなことに、印を付ける。自分のやり方で変わること、上司に頼めば変わるかもしれないこと、変わらなさそうなことを分けます。
- 相談する相手と、聞くことを書く。相手と質問を、組にして書きます。
- 見直す日を決める。2週間後、1か月後など、自分で日付を置きます。その日に、紙をもう一度開きます。
似た手順を、営業を続けるか迷ったらでも紹介しています。そちらは「仕事・職場・暮らし」の3つに分けるやり方です。この記事は、営業の仕事に合わせて4つに分け、「社内で変えられるか」まで書く所が違います。合うほうを使ってください。
4つに分ける:仕事の中身・目標・人・働く条件
4つの分け方と、場面の例です。場面は、説明のために作った例です。
| 分け方 | 場面の例 | 自分に聞くこと |
|---|---|---|
| 仕事の中身 | 新しい相手への電話が続く日は、朝から気が重い | 相手や回り方が違えば、同じようにつらいか。営業の中で、つらくない場面はあるか |
| 目標 | 月末が近づくと、数字のことで頭がいっぱいになる | つらいのは、数字の大きさか、決め方か、伝えられ方か |
| 人 | 上司への報告の時間が怖い。お客様の一人から、きつい言葉を言われた | 相手は、社内の人か、お客様か。特定の一人か、全体か |
| 働く条件 | 帰りが遅い日が続く。休みの日にも電話が来る。給料が仕事に見合わないと感じる | 何が、どのくらい変われば続けられそうか |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
分けにくい場面もあります。「上司に目標のことで強く言われた」は、目標にも人にも当たります。そのときは、両方に印を付けてかまいません。きれいに分けることが目的ではなく、どこに印が集まるかを見ることが目的です。
「目標」について補います。辞書は「ノルマ」を「各人に課せられる仕事などの量。」と説明しています(デジタル大辞泉「ノルマ」の2つめの意味)。目標の持ち方は、会社と担当で違います。つらいのが「量」なのか、「届かなかったときの扱われ方」なのかで、相談する中身が変わります。
書き方を、説明用の例で比べます。
惜しい書き方:「営業が向いていない。毎日つらい。」
良い書き方:「◯日(火)、新しい相手に電話を30件かけ、約束が一つも取れなかった。そのあと、次の電話をかけるまでに時間がかかった。→仕事の中身」(数字は架空)
惜しい書き方は、気持ちとしては本当でも、相談された人が何もできません。良い書き方は、日付と出来事があり、どの場面の話なのかが相手に伝わります。出来事と気持ちは、別の行に書くと、あとで見せるときに使いやすくなります。
あわせて、つらくなかった場面も一つ書きます。「なじみのお客様と話す時間は、苦にならない」のような一行です。残したいものが分かると、次に選ぶ道の手がかりになります。営業を動きに分けて見る方法は、営業に向いてる人・向いてない人にまとめています。
社内で変えられることと、変えられないことを分ける
4つに分けたら、それぞれについて、社内で変えられるかどうかを考えます。次の表は、考え方の一例です。実際に変えられるかどうかは、会社の決まりと、上司の判断によります。
| 分け方 | 社内で変えられるかもしれないこと | 聞く相手 |
|---|---|---|
| 仕事の中身 | やり方を教わる。担当の組み替えを相談する。異動の制度があるかを確かめる | 先輩、上司、人事 |
| 目標 | 数字の決め方の説明を受ける。届かないときに、何を見直せばよいかを一緒に考えてもらう | 上司 |
| 人 | 報告の場や方法を変えてもらう。お客様の担当について相談する。上司との関係がつらいときは、その上の人か人事に話す | 上司、人事、社内の相談窓口 |
| 働く条件 | 訪問の組み方、休みの取り方を相談する。賃金や時間の決まりを、就業規則で確かめる | 上司、人事 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
ここで大事なのは、聞いてみるまでは、変えられるかどうかが分からないことです。「どうせ無理だ」と決めてしまうと、材料が増えません。聞いて、断られたなら、「これは変わらない」と分かったことが材料になります。
聞いた結果は、3つに分かれます。
- 変わった:見直す日まで、続けて様子を見ます。
- 変わらないが、理由は分かった:それを受け入れて続けられるかを、考えます。
- 変わらず、続けられそうにない:会社の外に道を探す段階です。同じ営業で種類を変える、別の職種に移るなど、道ごとの準備は営業の転職の進め方に、営業の種類は営業の種類にまとめています。
どれになっても、書いた紙は残します。転職の面接で辞める理由を聞かれたとき、退職を上司に伝えるとき、どちらでも、この紙がもとになります。
相談先:社内の人と、公的な窓口
相談は、話しやすい相手からで、かまいません。社内なら、先輩や同僚、直属の上司、人事や社内の相談窓口です。社内で話しにくいとき、話しても進まないときは、社外に公的な窓口があります。どれも、2026年10月4日に公式ページを開いて確かめました。
気持ちがつらいとき:厚生労働省「こころの耳」
厚生労働省 こころの耳「こころの耳の相談窓口」のページは、「悩みや不安、1人で抱えていませんか。」という言葉で始まり、こう書いています。
「こころの耳」では、全国の働く方やその家族、企業の人事労務担当者の方々からのご相談をお受けしています。
同じページに、「匿名で無料でご相談いただけます。」、「電話、SNS、メールでのご相談がご利用いただけますので、ご自身に合った窓口をご利用ください。」とあります。電話相談のページには、できる相談の例として、こころの悩み、人間関係の悩み、仕事の悩みが挙げられています(こころの耳「働く人の『こころの耳電話相談』」)。
一方で、同じページの注意事項には、対応できない相談として、「病名の診断や治療方法の提示、現在受けている医療の是非の判断など、医療行為にあたる内容」や、「法令違反やハラスメントに該当するか否かの判断」が挙げられています。体の調子について診てもらいたいときは医療機関へ、職場の決まりについて確かめたいときは次の窓口へ、と分けて考えます。受付の時間と番号は変わることがあるので、公式ページで確かめてください。
職場のことで困ったとき:総合労働相談コーナー
厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」は、対象についてこう書いています。
解雇、雇止め、配置転換、賃金の引下げ、募集・採用、いじめ・嫌がらせ、パワハラなどのあらゆる分野の労働問題を対象としています。
同じページに、「専門の相談員が面談もしくは電話で対応致します。」、「予約不要、ご利用は無料です。」とあります。賃金や時間の決まり、辞めさせてもらえない、といった困り事は、ここに相談できます。自分の場合に法律の上でどうなるかは、この記事では判断しません。
ほかの窓口を探すとき
こころの耳「相談窓口案内」には、相談の中身ごとに窓口が並んでいます。たとえば「キャリアに関する相談」の所には、「キャリア形成・リスキリング相談コーナー(厚生労働省)」などが挙げられています。ページには、「※電話番号や受付時間などの詳細は、各機関のホームページよりご確認ください。」と書かれています。
場面で変わるところと、相談の言い方
| 場面 | 先にすること(一例) | 気をつけること |
|---|---|---|
| 営業を始めて1年目 | つらい場面が「まだ教わっていないこと」かどうかを分ける。やり方を先輩に聞く | 「向いていない」と決める前に、教わったあとで変わるかを、見直す日に確かめる |
| 目標に届かない月が続いている | 届かなかった理由を、数字と事実で書く。上司に、見直す点を一緒に考えてもらう | 気持ちだけを伝えると、「がんばれ」で終わりやすい |
| 上司との関係が、つらさの中心 | 上司以外の相手(その上の人、人事、社内の相談窓口)に話す。社外の窓口も使う | あったことを、日付と言葉のまま記録しておく |
| すでに辞めると決めている | 就業規則の退職の決まりを確かめ、伝える順番を決める | 伝え方は退職の伝え方にまとめた |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
上司に相談するときの言い方を、説明用の例で比べます。
惜しい例:「もう無理です。辞めたいです。」
良い例:「ご相談があります。この2週間で、つらいと感じた場面を書き出しました。新しい相手への電話の日に、手が止まることが続いています。やり方を見ていただくか、訪問と電話の割合を見直すことはできないでしょうか。」
惜しい例は、本心であっても、上司が答えられるのは「辞めるか、辞めないか」だけになります。良い例は、場面と、変えてほしいことが入っています。上司は、「では来週、電話の様子を一緒に見よう」のように、次の行動で返せます。
相談は、辞める話として切り出さなくてもかまいません。「続けるために、相談したい」という形で話すと、相手も動きやすくなります。もし、すでに気持ちが決まっているなら、相談の形を取らず、退職の話として伝えるほうが、相手に対して誠実です。
迷いやすい判断と、うまく進まなかったあと
判断1:辞めたいのは、営業そのものか、今の職場か
基準は、印がどこに集まったかです。「仕事の中身」に集まり、つらくなかった場面が一つも書けないなら、営業以外の仕事も選択肢に入ります。「人」や「働く条件」に集まるなら、営業を続けたまま、場所を変える道があります。一度書いただけで決めず、見直す日にもう一度書いて、同じ所に集まるかを見ます。
判断2:上司に相談したら、評価が下がりそうで怖い
下がらない、とは言い切れません。基準は、「できません」ではなく、「こうしたいので、相談したい」の形で話すことです。それでも上司に話しにくいなら、先輩や人事、社外の窓口から始めます。だれにも話さないまま決めるよりも、材料が増えます。
判断3:次の仕事が決まっていない。それでも辞めてよい?
これは、暮らしの事情で答えが変わるので、この記事では言い切れません。自分で決めるための材料は、3つです。当面の生活に要るお金、就業規則の退職の決まり、働きながら次を探す時間が取れるか。働きながら動くか、辞めてから動くかの考え方は、営業の転職の進め方にまとめています。ただし、体や心の調子がおかしいと感じているときは、この3つより先に、医療機関や相談窓口に相談してください。
判断4:いつまで様子を見ればよい?
決まった期間は、ありません。基準は、自分で日付を置くことです。日付が無いと、「いつまで続くのか分からない」こと自体が、つらさになります。見直す日に、変わったことと変わらなかったことを書き足し、次の日付を置くか、動くかを決めます。続けた先のことを、運営者が振り返った記事に「腐るなよ」に、当時は「いつまで?」と思っていたがあります。
失敗のあと:相談したが、何も変わらなかった
その場では:「変わらなかった」ことを、紙に書き足します。いつ、だれに、何を頼み、どう返ってきたか。それも材料です。次に、相談する相手を変えます。上司で進まなければ人事へ、社内で進まなければ社外の窓口へ、という順です。
あとの記録:見直す日に、この記録を読み返します。「頼んだが変わらなかったこと」が並んでいれば、会社の外に道を探す理由を、自分の言葉で説明できます。
失敗のあと:勢いで「辞めます」と言ってしまった
その場では:考え直したいなら、早めに、同じ相手に伝えます。「先日は、気持ちが先に立って『辞めます』と申し上げました。もう一度、考える時間をいただけないでしょうか」(説明用の例です)。申し出を取り消せるかどうかは、状況によって変わるので、この記事では言い切れません。扱いに困ったら、総合労働相談コーナーに相談できます。
あとの記録:言った日、相手、言った言葉、返ってきた言葉を書きます。次からは、「辞める」と口にする前に、この記事の紙を一枚書く、と決めておきます。本当に辞めると決めたあとの書面は、退職届の書き方にまとめています。
今日やることは一つです。この2週間でつらかった場面を3つ書き、4つのどれに当たるかを、横に書いてください。
割り当てられた数字がつらいときは、ノルマとはで、つらさを分けて相談する手順を確かめられます。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
紙とペン。この2週間の手帳や予定表、日報。就業規則(異動や休みの決まりの所。見られる場合)。
記入例を見る(説明用)
つらかった場面=◯日(火):新しい相手への電話を30件かけ、約束が取れなかった。◯日(木):月の目標との差を、朝の会議で一人ずつ言う時間があった。◯日(金):帰りが遅くなり、翌日の準備ができなかった(数字は架空)/4つのどれに当たるか=火曜は「仕事の中身」。木曜は「目標」。金曜は「働く条件」。「人」に当たる場面は、今回は無かった/社内で変えられそうなこと=電話のかけ方は、先輩に聞ける。帰りの時間は、訪問の組み方を上司に相談できそう。変えられなさそうなこと=新しい相手を探す仕事であること自体/相談する相手と、聞くこと=先輩に「約束が取れた電話は、最初に何と言っていますか」。上司に「金曜の訪問を、別の曜日に分けてもよいでしょうか」/見直す日と、その日に確かめること=◯月◯日。相談して変わったことと、変わらなかったことを書き足す。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
つらかった場面が日付つきで書いてあり、4つのどれかに分けてあり、相談する相手と聞くことが一つずつ決まっていて、見直す日が書いてある。
うまく進まなかったときは?
場面が思い出せなければ、今日から一週間、つらかったことを一日一行だけ書く。4つに分けられなければ、2つに印を付けてよい。相談する相手が思い浮かばなければ、この記事の「相談先」の公的な窓口のページを開く。書くこと自体がつらいときは、書くのをやめて、先に相談する。