NOTE 124 · 営業の実践ノート
「ご尽力」と「お力添え」の意味と使い方:辞書の語釈で違いを確かめ、お礼とお願いで選ぶ
公開:2026年10月3日
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「尽力」は、辞書では「ある目的の実現のために、力を尽くすこと。」、「力添え」は「他人の仕事を手助けすること。力を貸すこと。助力。援助。」と説明されています。「ご尽力」は相手が力を尽くしてくれたことを、「お力添え」は相手がこちらの仕事を助けてくれたことを言う言葉です。この記事では、お礼に使う形、お願いに使う形、自分のことを言うときの形を、辞書と文化庁の資料で確かめながら説明します。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに お礼のメールや礼状で「ご尽力」と「お力添え」のどちらを書けばよいか迷うとき。自分のことに「ご尽力します」と書いてよいか迷うとき。
- 1
相手がしてくれたこと(してほしいこと)を、一文で書く
- 2
力を尽くしてくれたのか、手助けなのかを見分ける
- 3
お礼・お願い・自分のことの、どれに当たるかで形を選ぶ
- 4
言葉が大きすぎないか、重なっていないかを読み返す
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
「尽力」と「力添え」の意味と、語釈から言える違い
取引先の担当者が、社内で話を通してくれた。お礼のメールに「ご尽力いただき」と書くか、「お力添えをいただき」と書くかで、手が止まる。どちらも改まったお礼の言葉なので、違いが見えにくい組み合わせです。先に、辞書で意味を確かめます。「 」の中は、辞書の文をそのまま写したものです。
| 言葉 | 辞書の語釈 | 辞書の例文 |
|---|---|---|
| 尽力(じんりょく) | 「ある目的の実現のために、力を尽くすこと。」(デジタル大辞泉「尽力」)/「力を尽くすこと。骨を折ること。ほねおり。努力。」(同じページの精選版 日本国語大辞典) | 「町の復興に尽力する」 |
| 力添え(ちからぞえ) | 「他人の仕事を手助けすること。力を貸すこと。助力。援助。」(デジタル大辞泉「力添え」) | 「よろこんでお力添えします」 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
語釈を並べると、言える違いは二つあります。
- 何を言っているか。「尽力」は、力を尽くすことそのものを言います。「力添え」は、ほかの人の仕事を手助けすることを言います。
- 誰の仕事か。「尽力」の語釈は「ある目的の実現のために」で、誰の仕事かは書かれていません。「力添え」の語釈は「他人の仕事を」です。助ける側から見て、ほかの人の仕事を手伝う、という向きが入っています。
営業の場面に当てはめると、こうなります。「ご尽力」は、相手が目的のために力を尽くしてくれたことを言う言葉。「お力添え」は、こちらの仕事を相手が手助けしてくれたことを言う言葉です。
反対に、語釈から言えないこともあります。「どちらのほうが丁寧か」「目上の人にはどちらを使うか」は、辞書に書かれていません。文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日・文化庁)の全文も検索しましたが、「尽力」「力添え」という言葉は出てきません。この記事でも、どちらが上とは書きません。
「ご」「お」の働きは、指針で確かめられます。指針は、尊敬語を「相手側又は第三者の行為・ものごと・状態などについて,その人物を立てて述べるもの。」と説明し、例に「お導き,御出席」を挙げています(指針14ページ)。相手がしてくれた「尽力」「力添え」に「ご」「お」を付けるのは、相手の行為を立てて述べる形です。
お礼に使う:「ご尽力いただき」「お力添えをいただき」
二つの言葉がよく使われるのは、相手がしてくれたことへのお礼です。形の例を並べます(説明用の例です)。
- 「ご尽力いただき、誠にありがとうございます」
- 「ご尽力を賜り、厚く御礼申し上げます」(礼状など、改まった文面)
- 「お力添えをいただき、ありがとうございます」
「ご尽力いただき」の「いただく」は、謙譲語Ⅰの形です。指針は、謙譲語Ⅰの一般的な形の例として「指導する→御指導いただく」を挙げています(指針27ページ)。「ご尽力いただく」も、同じ「お(ご)……いただく」の形です。
どちらを選ぶかは、相手がしてくれたことを先に一文で書いてから決めます。次の表は、語釈に当てはめて選んだ一例です。
| 相手がしてくれたこと(例) | 合う言葉 | 語釈に当てはめた理由 |
|---|---|---|
| 取引先の担当者が、導入のために社内で説明や調整をしてくれた | ご尽力 | 相手が、目的の実現のために力を尽くしてくれた |
| こちらが開く説明会の準備を、相手が手伝ってくれた | お力添え | こちらの仕事を、相手が手助けしてくれた |
| 資料を一枚、送り直してくれた | 「お送りいただき、ありがとうございます」 | 力を尽くす、というほどの用件ではない。してくれたことをそのまま書く |
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最後の行が、迷いやすい所です。「尽力」は「力を尽くすこと」なので、短い時間で済む用件に使うと、言葉のほうが大きくなります。小さな用件には、してくれたことをそのまま書くほうが、何に感謝しているかが伝わります。
お礼の書き方を比べる
- 惜しい例:「このたびは、ご尽力いただきありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします」
- 良い例:「このたびは、社内でのご説明と調整にご尽力いただき、誠にありがとうございます。おかげさまで、◯月からの導入が決まりました」
惜しい例は、間違いではありません。ただ、何に対するお礼なのかが書かれていないので、どの相手にも送れる文になっています。良い例は、何に力を尽くしてくれたかと、その結果どうなったかが入っています。相手は、自分のしたことが伝わっていると分かります。商談の後に送るお礼の組み立ては、商談後のお礼メールにまとめています。
お願いに使う:「お力添えをお願いいたします」
これから助けてほしいときには、「お力添え」が使われます。形の例です(説明用の例です)。
- 「お力添えをお願いいたします」
- 「お力添えいただけますと幸いです」
- 「今後とも、お力添えを賜りますようお願い申し上げます」(あいさつ文の結び)
お願いに「ご尽力ください」と書いてよいか、という決まりは、辞書にも指針にも見当たりません。ただ、語釈に当てはめると、「ご尽力ください」は「力を尽くしてください」と頼むことになります。「お力添えください」は「手助けしてください」です。頼む中身が小さいのは「お力添え」のほうなので、こちらからお願いするときは「お力添え」を選ぶと、相手に求めることが大きくなりすぎません。
お願いの文で大事なのは、言葉よりも、何をしてほしいのかを一つ前の文で書くことです。「お力添え」だけでは、相手は何をすればよいかが分かりません。
- 惜しい例:「本件につきまして、お力添えをお願いいたします」
- 良い例:「来月の説明会について、御社の現場の方へのご案内をお願いできますでしょうか。案内文はこちらで用意し、◯日までにお送りします。お力添えいただけますと幸いです」
良い例は、してほしいこと(現場の方への案内)と、こちらがすること(案内文を用意する)が先に書かれています。相手は、引き受けられるかどうかをすぐに判断できます。
場面によっても、書き方が変わります。
| 場面 | 書き方(一例) | 気をつけること |
|---|---|---|
| 具体的な頼みごとがある | してほしいこと・期限を書いた後に「お力添えいただけますと幸いです」 | 「お力添え」だけで終えない |
| 着任や年末年始のあいさつ | 「今後とも、お力添えを賜りますようお願い申し上げます」 | 決まった頼みごとは無い。結びの言葉として使う |
| 相手に負担の大きいことを頼む | してほしいことと理由を書き、断れる余地を残す | 言葉を重ねても、負担は軽くならない。上司に下書きを見せる |
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結びの「よろしくお願いいたします」との組み合わせは「よろしくお願いいたします」の使い方に、「幸いです」の使い方は「幸いです」の意味と使い方に、「何卒」を付けるかどうかは「何卒」の使い方にあります。
自分のことを言うとき:「尽力いたします」「微力ながら」
自分が力を尽くす、と伝える場面もあります。このとき、自分の動作には「ご尽力」と書きません。前の章までの「ご尽力」は、相手の行為を立てて述べる形だからです。指針は、自分のことに「お」や「御」を付けてはいけないのは「自分側の動作やものごとを立ててしまう場合である。」とし、その場合は「結果として,自分側に尊敬語を用いてしまう誤用となる。」と説明しています(指針39ページ)。
自分のことは、「ご」を付けずに「尽力いたします」と書きます。「いたす」は謙譲語Ⅱで、指針の説明は「自分側の行為・ものごとなどを,話や文章の相手に対して丁重に述べるもの。」です(指針18ページ)。形の例として「利用する→利用いたす」が挙げられています(指針28ページ)。「尽力する→尽力いたす」も同じ形です。
「ご尽力いたします」という形は、どうでしょうか。指針は、「お(ご)……いたす」を、向かう先の人物を立てる謙譲語Ⅰと、謙譲語Ⅱの両方の性質を持つ形と説明しています(指針20ページ)。ただ、指針は「尽力」という言葉を取り上げていないので、この形が適切かどうかは、指針からは言い切れません。迷わずに済むのは、「ご」を付けない「尽力いたします」です。
「力添え」のほうは、辞書の例文が「よろこんでお力添えします」です。自分が相手を手助けするときに「お力添えします」と言う形は、辞書に載っています。「力添え」は相手の仕事を手助けすることなので、手助けの向かう先に相手がいるからです。
「微力ながら」の意味
自分のことを言うときに添える言葉が「微力ながら」です。デジタル大辞泉「微力」は、1番目に「力が弱く足りないこと。また、その力。」、2番目に「自分の力量をへりくだっていう語。」を挙げ、2番目の例文を「微力ながら協力させていただきます」としています。自分の力をへりくだって言う言葉なので、相手の力については使いません。
「微力ながら、尽力いたします」は、着任のあいさつなどで使われる形です(説明用の例です)。ただ、取引先との仕事のメールでは、何を・いつまでにするかを書くほうが、相手は安心できます。「尽力いたします」は、結果を約束する言葉ではありません。相手が知りたいのは、次に何が起きるかです。
- 惜しい例:「納期の件、尽力いたします」
- 良い例:「納期の件、本日中に工場へ確かめ、明日の午前にお返事いたします。ご希望の日に間に合うよう、尽力いたします」
惜しい例では、相手は、間に合うのかどうか、いつ分かるのかを知ることができません。良い例は、することと返事の時期が先にあり、「尽力いたします」は気持ちを添える役になっています。
「ご協力」「ご支援」「お骨折り」との違いと、場面別の例
似た言葉を、辞書で確かめられた範囲で並べます。
| 言葉 | 辞書の語釈 | 語釈から言えること |
|---|---|---|
| 協力 | 「力を合わせて事にあたること。」(デジタル大辞泉「協力」) | 一緒に取り組む、という意味。相手と自分が同じことに当たる場面に合う |
| 支援 | 「力を貸して助けること。」(デジタル大辞泉「支援」)/「活動を容易にするためにささえ助けること。援助。」(同じページの精選版 日本国語大辞典) | 相手の活動を支えて助ける、という意味 |
| 骨折り | 「苦労すること。精を出して働くこと。努力。」(デジタル大辞泉「骨折り」)。例文は「お骨折りに感謝します」 | 相手の苦労に目を向けた言葉。辞書の例文も、お礼の形 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
使い分けの目安を、語釈から言える範囲でまとめます。アンケートへの回答や書類の提出のように、相手にも一緒に動いてもらうことには「ご協力」。会社やその活動を、続けて支えてもらっていることには「ご支援」。相手が苦労してくれたことへのお礼には「お骨折り」。これらも、どれが上という決まりは見当たりません。職場でよく使われている言葉に合わせます。
場面ごとの例です。社名・人名・日付は、すべて説明用の例です。
メール:導入が決まったお礼
A社 佐藤様
いつもお世話になっております。[自社名]の[氏名]です。
このたびは、社内でのご説明と調整にご尽力いただき、誠にありがとうございます。おかげさまで、◯月からの導入が決まりました。
納品の日程表は、◯月◯日(◯)までにお送りします。
引き続き、よろしくお願いいたします。
あいさつ:担当を引き継いだとき
「前任の[前任者の名前]の在任中は、ひとかたならぬお力添えをいただき、ありがとうございました。後任として、微力ながら尽力いたします。今後とも、よろしくお願いいたします」
前任者が受けた助けには「お力添え」、自分のこれからには「ご」を付けない「尽力いたします」を使っています。担当が替わるときのあいさつの全体は、担当変更のあいさつにあります。
礼状:行事が終わった後
「このたびの説明会の開催にあたりましては、会場の手配をはじめ、多大なるお力添えを賜り、厚く御礼申し上げます。」
礼状では、「賜り」「厚く御礼申し上げます」のような改まった言葉と組み合わせることが多くあります。頭語や結語、時候のあいさつを含めた全体の形は、お礼状の書き方で確かめてください。「ご指導ご鞭撻」のような、ほかのあいさつの言葉は「ご指導ご鞭撻」の使い方に、「ご愛顧」は「ご愛顧」の使い方にまとめています。
迷いやすい判断と、間違えたあと
判断1:社内の上司や先輩にも、使ってよい?
語釈には、相手を社外の人に限る、という言葉はありません。使えない、という決まりも見当たりません。基準は、してもらったことの大きさと、職場の習慣です。上司が取引先との話をまとめるために動いてくれた、という場面なら、「ご尽力いただき、ありがとうございました」は意味に合います。
日々の小さな手助けには、改まりすぎて距離を感じさせることがあります。「見積の確認をしていただき、ありがとうございました。おかげで、今日中に出せます」のように、してもらったことをそのまま言うほうが伝わります(説明用の例です)。迷ったら、同じ部署の先輩が上司にどう言っているかを聞いて、合わせます。
判断2:「ご尽力」と「お力添え」を、一通に両方書いてよい?
禁じる決まりは見当たりません。ただ、「ご尽力とお力添えをいただき」と並べると、同じことを二度言う形になり、何に感謝しているかがぼやけます。一つのことには、一つの言葉にします。別々のこと(前任者の時期に受けた助けと、今回の調整)に、一つずつ使い分けるのは、意味が通ります。
判断3:結果が出なかったときも、お礼に使える?
使えます。「尽力」は力を尽くすことを言う言葉で、結果が出たかどうかは語釈に入っていません。相手が社内で動いてくれたものの、今回は見送りになった、という場面です。
「このたびは、社内でのご検討にご尽力いただき、ありがとうございました。今回は見送りとのこと、承知いたしました。」
結果が出なかったときほど、相手は「手間をかけたのに申し訳ない」と感じていることがあります。力を尽くしてくれたこと自体へのお礼を先に書くと、相手は次の機会に声をかけやすくなります(説明用の例です)。
間違えたあと:自分のことに「ご尽力します」と書いて送った
その場では:用件(日時・金額・納期など)に関わらない言葉づかいの間違いなら、訂正だけのメールを送るかどうかは、先輩に相談して決めます。訂正のメールが、かえって相手の手を止めることもあるからです。次に送るメールから、「尽力いたします」に直します。
後の記録:「自分の動作に『ご尽力』と書いた。自分のことは『尽力いたします』。送る前に、『ご』『お』が付いた言葉が誰の動作かを見る」のように、間違えた形・正しい形・次に見る所を書きます(説明用の例です)。
今日やることは一つです。これから送るメールを一通決め、相手がしてくれたこと(してほしいこと)を一文で書いてから、言葉を選んでください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
これから送るお礼かお願いのメールの下書き。相手が何をしてくれたかが分かるメモ(日付・してくれたこと・その結果)。職場の先輩が同じ相手へ送ったメール(言葉づかいを見るため)。
記入例を見る(説明用)
送る相手と、お礼・お願い・自分のことのどれか=A社の佐藤様。お礼/相手がしてくれたこと=こちらの提案について、佐藤様が社内の会議で説明をしてくださり、導入が決まった/選んだ言葉と、選んだ理由=「ご尽力」。佐藤様ご自身が、導入という目的のために社内で動いてくださったので、「力を尽くすこと」という意味に合うと考えた/メールに書く文=「このたびは、社内でのご説明と調整にご尽力いただき、誠にありがとうございます。おかげさまで、◯月からの導入が決まりました。」/読み返して直した所=最初は「ご尽力とお力添えをいただき」と二つ並べていたので、「ご尽力」だけにした。結びに「今後とも尽力いたします」と書いていたのを、「◯日までに、納品の日程表をお送りします」と、することが分かる文に直した。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
相手がしてくれたこと(してほしいこと)が一文で書いてあり、「ご尽力」「お力添え」のどちらを選んだかと理由が書けていて、自分の動作に「ご尽力」を使っていない。
うまく進まなかったときは?
どちらが合うか決められなければ、相手がしてくれたことを「誰の仕事を・誰が・どうした」の形で書き出す。それでも迷うなら、「◯◯していただき、ありがとうございます」と、してくれたことをそのまま書く。礼状など改まった文面は、送る前に上司か先輩に下書きを見せる。