NOTE 43 · 営業の実践ノート
ソリューション営業とは:困り事から始める提案の進め方
公開:2026年10月3日
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ソリューション営業とは、お客様の課題(困っていること、良くしたいこと)を先に聞き、その解決の形として商品やサービスを提案する営業、と説明されることが多い言葉です。決まった定義はなく、会社によって意味に幅があります。この記事では、困り事を聞く→事実を確かめる→原因の見立てを相手と合わせる→提案する→小さく試す→振り返る、という進め方を説明します。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 「商品の説明だけでなく、提案型で進めて」と言われ、何から始めればよいか分からないとき。
- 1
今のやり方と困り事を、相手の言葉で聞く
- 2
いつ・どこで・どれくらいかを、事実で確かめる
- 3
原因の見立てを伝え、合っているかを相手に聞く
- 4
解決の形を提案し、小さく試して一緒に振り返る
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
ソリューション営業とは:お客様の課題を聞き、解決の形として提案する営業
ソリューション営業とは、お客様の課題を先に聞き、その解決の形として商品やサービスを提案する営業、と説明されることが多い言葉です。課題とは、相手が困っていること、今より良くしたいことです。ソリューション(solution)は、英語で「解決」「解決策」を意味します。「課題解決型の営業」と呼ばれることもあります。
決まった定義がある言葉ではありません。自分の会社の商品をいくつか組み合わせて提案することを指す会社もあれば、使い方や運用の仕組みまで含めて提案することを指す会社、部署の名前に使っている会社もあります。自分の会社でどういう意味で使っているかは、上司や先輩に聞いて確かめます。
この記事では、共通する部分として、「困り事から話を始め、解決の形を相手と一緒に決めていく進め方」を説明します。営業の仕事の全体像は営業とは、ほかの呼び名との関係は営業の種類にまとめています。
初心者がつまずきやすいのは、上司から「商品の説明だけでなく、提案型で進めて」と言われた場面です。商品の説明はできるのに、相手から「それで、うちに何の関係があるの」と聞かれると答えに詰まる。そうなるのは、話の順番が、商品から始まっているためです。
商品の説明から始める営業との違い
次の表は、話の始め方による違いを比べた一例です。実際の仕事では、二つが混ざります。
| 比べる点 | 商品の説明から始める | 困り事から始める |
|---|---|---|
| 話の始まり | 商品の特長、価格、ほかの商品との違い | 相手の今のやり方と、困っていること |
| 提案の中身 | 決まった商品と条件 | 相手の事情に合わせた、商品の組み合わせ・使い方・進め方 |
| 相手から見えること | 何を売りたいのかは分かる。自分に合うかどうかは、相手が自分で考える | 自分の困り事が、どう変わるのかが分かる |
| 準備すること | 商品の知識 | 商品の知識に加えて、相手の仕事を知ること |
| かかる時間 | 短く済むことが多い | 聞く回、確かめる回が増えることが多い |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
どちらが上、というものではありません。相手がすでに買う物を決めている場合があります。いつもの品の追加注文や、品番を指定した問い合わせです。このときは、困り事を一から聞くより、在庫・価格・納期を正確に答えるほうが、相手の役に立ちます。
困り事から始める進め方が合うのは、相手自身も「何を買えば解決するのか」がまだ決まっていない場面です。相手は商品を探しているのではなく、困り事を減らす方法を探しています。
気をつけたいことが一つあります。自分の商品を売るための入口として困り事を聞くと、質問が、売りたい商品のほうへ相手を連れていく聞き方になりがちです。相手はそれに気づきます。聞いた結果、自分の商品が合わないと分かったら、合わないと伝える。ここまで含めて、困り事から始める進め方です。
進め方:困り事を聞いてから、振り返るまでの6つの手順
手順は6つです。一回の訪問で全部を進める必要はありません。1回目で手順1と2、2回目で手順3と4、というふうに分けて構いません(回数は説明用の例です)。
- 困り事を聞く。「お困り事はありますか」と聞く前に、今のやり方を聞きます。誰が・いつ・どんな手順でやっているか、です。商品の話から入ると、相手は「買うか、買わないか」を考えながら聞くことになり、困り事を話しにくくなります。聞く順番は商談ヒアリングにまとめています。
- 事実を確かめる。「大変なんです」という言葉だけでは、困り事の大きさが分かりません。いつ・どこで・誰に・どれくらい起きているかを聞きます。数えていなければ、「未確認」と書いて、次に確かめます。困り事を事実として持ち帰る書き方は、顧客の困り事から、メーカーと改善を考えるで説明しています。
- 原因の見立てを、相手と合わせる。見立てとは、「こういう理由ではないか」という仮の考えです。聞いた事実を要約し、自分の考えを伝え、合っているかを相手に聞きます。原因の見方がずれたまま提案すると、商品が良くても、困り事は残ります。
- 解決の形を提案する。何を・誰が・いつから・今と何が変わるか・費用はいくらか、を紙にして渡します。提案で変わる部分と、変わらない部分を分けて書きます。一枚目の作り方は提案書の作り方にまとめています。
- 小さく試す。全部を一度に切り替えると、相手の負担も、合わなかったときの戻す手間も大きくなります。一つの店、一つの品目、短い期間、のように範囲をしぼります。試す前に、何を見て良し悪しを決めるかを相手と決めます。見本や試用を出せるかどうかは、会社の決まりを先に確かめます。
- 振り返る。決めた日に、決めた見るところを、相手と一緒に確かめます。変わったことと、変わらなかったことの両方を聞きます。続けるか、直すか、やめるかを決めるのは相手です。
手順3を飛ばしやすいので、会話の例を見ます。
自分:「伺った内容を確認させてください。発注は店長がお一人で、手書きの表を見て決めていらっしゃる。月末に、急ぎの注文が先月2回あった。ここまで、合っていますか」
相手:「合っています」
自分:「これは私の推測ですが、残りの数を確かめる日が決まっていないので、気づくのが遅れるのではないか、と考えました。実際のところは、いかがでしょうか」
相手:「それもあるけれど、私が休みの日に、誰も見ていないほうが大きいですね」
自分:「店長がお休みの日に、見る方がいない。そちらが大きいのですね。ありがとうございます。その点を踏まえて、案を考え直してきます」
やり取りは説明用の例です。自分の見立ては、半分外れていました。それで構いません。外れたことが、提案の前に分かったからです。「推測ですが」と断ってから言うと、相手は「違います」と言いやすくなります。
手順1〜3で聞いたことは、その場でメモします。事務所だけでなく、倉庫や売り場で立ったまま聞くこともあります。事実と自分の推測は、行を分けて書きます。メモの直し方は商談メモ添削、聞く項目を先に並べておく道具は商談ヒアリングシートにあります。
言い方の例:良い言い方と、惜しい言い方
手順ごとに、惜しい言い方と良い言い方を並べます。どれも説明用の例です。自分の商品と相手に合わせて、言葉を置き換えてください。
困り事を聞くとき
惜しい言い方:「何か、お困り事はありませんか」
良い言い方:「消耗品の発注は、今、どなたが、どんな手順でされていますか」
惜しい言い方は、質問が広すぎます。相手は、何について答えればよいかが分からず、「特にないです」と答えやすくなります。良い言い方は、今のやり方という事実を聞いています。事実なら、相手は考えこまずに答えられます。困り事は、その説明の途中で出てくることがよくあります。
原因の見立てを伝えるとき
惜しい言い方:「原因は、在庫の管理ができていないことですね」
良い言い方:「伺った範囲では、残りの数を確かめる日が決まっていないように見えました。合っていますか」
惜しい言い方は、決めつけています。相手は、自分の仕事を否定されたように感じることがあります。良い言い方は、「伺った範囲では」と範囲を区切り、最後に相手へ確かめています。
提案するとき
惜しい言い方:「この商品を入れていただければ、発注の問題は全部解決できます」
良い言い方:「急ぎの注文になる回数は、この方法で減らせると考えています。発注の表そのものを作る手間は、今回の案では変わりません」
惜しい言い方は、結果を約束しています。約束どおりにならなかったとき、相手との関係が崩れます。良い言い方は、変わる部分と変わらない部分を分けています。相手は、何を期待してよいかが分かります。
試すことを提案するとき
惜しい言い方:「とりあえず、一度使ってみてください」
良い言い方:「まず5品目だけ、1か月試してみませんか。1か月後に、急ぎの注文が何回あったかを、一緒に数えさせてください」
惜しい言い方は、範囲も、期間も、見るところも決まっていません。試した後に、良かったのかどうかを誰も言えなくなります。良い言い方は、範囲・期間・見るところ・振り返る日がそろっています。
見立てや提案は、口で言うだけでなく、その場で紙に書いて相手に見せると、ずれに気づきやすくなります。今の流れを左、変えた後の流れを右に、矢印で書くだけで足ります。相手がペンを取って書き直してくれることもあります。
場面で変わるところと、失敗のあと
6つの手順の骨組みは同じです。場面によって、力を入れる所が変わります。次の表は一例です。
| 場面 | 力を入れる所 | 進め方(一例) |
|---|---|---|
| 初めての訪問 | 聞くことと、確かめること | 提案はその場で出さず、持ち帰る。次に会う日を決めて帰る |
| 2回目以降の訪問 | 見立てを合わせること | 前回のメモを要約して話し始め、「合っていますか」と確かめてから提案に入る |
| 相手が買う物を決めている | 条件を正確に答えること | 在庫・価格・納期を先に答える。困り事は「ほかに気になっていることはありますか」と一つだけ聞く |
| 相手が忙しそうな日 | 質問を一つにしぼること | 今のやり方を一つだけ聞き、続きは次回にする |
| 何人かが同席する商談 | 人ごとに困り事が違うこと | 使う人、管理する人、お金を出す人の順に聞く。一人の答えで全員の意見としない |
| オンラインの商談 | 後に残る形にすること | 図や要点を画面に映し、終わった後に、合わせた見立てと次の予定をメールで送る |
| 自分の会社の商品では解決できない | できる範囲を正直に伝えること | その場で無理に結びつけない。持ち帰って、上司に相談する |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
相手が会社や団体のときは、目の前の担当者が、あなたの提案を社内で説明することになります。決まるまでの流れは法人営業とは、相手の仕事の流れを知る手順は業務改善の進め方にまとめています。
次は、よくある失敗です。その場の立て直し方と、帰ってからの記録をセットで決めておきます。
失敗1:困り事を聞いたまま、何も返さなかった
その場では:相手は、時間を使って話してくれました。返事がないと、「話しても変わらない」と受け取られ、次から話してもらいにくくなります。気づいた時点で連絡します。「先日伺った発注の件、お返事が遅れており申し訳ございません。◯日までに、案をお持ちします」と、おわびと期限を伝えます(説明用の例です)。
帰ってからの記録:聞いた困り事ごとに、「誰が・いつまでに・何を返すか」を一行で書きます。解決できない困り事にも、「できないと伝える日」を書きます。商談の後の整理には、商談後フォローの道具が使えます。
失敗2:見立てを確かめずに提案し、「それは違う」と言われた
その場では:言い訳や説明を足さず、まず聞きます。「失礼しました。実際には、どこがいちばんお困りでしょうか」。相手が話してくれたら、要約して確かめ、提案は持ち帰ります。
帰ってからの記録:メモを、「相手が言ったこと」と「自分が考えたこと」に分け直します。どの推測を事実のように扱っていたかが、見つかります。次の提案の前に、その部分を相手に確かめます。
失敗3:試してみたが、良い結果が出なかった
その場では:結果を良く見せようとしないでください。決めていた見るところを、相手と一緒に確かめ、「変わらなかった」と言葉にします。そのうえで、何が合わなかったのかを聞きます。範囲をしぼって試していれば、元に戻す手間は小さく済みます。
帰ってからの記録:試した範囲・期間・結果・相手の言葉を書き、上司に報告します。良くなかった結果も、次に同じ困り事を聞いたときの材料になります。報告のしかたは営業で失敗したときにまとめています。
迷いやすい判断
判断1:相手が「特に困っていない」と言うときは?
基準は、困り事を、こちらで作らないことです。「本当は困っているはずです」と押すと、相手は身構えます。今のやり方を一つだけ聞き、メモして帰ります。
帰る前に、「人が替わる、扱う量が増えるなど、やり方が変わるときには、声をかけてください」と伝えます(説明用の例です)。困り事は、相手の状況が変わったときに出てきます。そのときに思い出してもらえれば、十分です。
判断2:聞いた困り事が、自分の会社の商品では解決できないときは?
基準は、できる部分と、できない部分を分けて伝えることです。その場で決めず、「持ち帰って確認します」と言い、上司に相談します。
相談するときは、「A社で、こういう困り事を聞きました。当社の商品で対応できるのはここまで、と考えています。残りの部分で、できることはありますか」と、事実と自分の考えを分けて話します(説明用の例です)。メーカーや社内のほかの部署が、方法を持っていることがあります。
判断3:商品の知識がまだ少なくても、やってよい?
手順1と2(聞く・確かめる)は、商品の知識が少なくてもできます。むしろ、知識が少ない時期のほうが、商品に結びつけずに聞けます。
手順3より後は、一人で進めず、先輩と一緒に考えます。聞き方は、「A社で、この事実を聞きました。原因は、こうではないかと考えています。提案の方向を相談させてください」です。事実・自分の考え・相談したいこと、の順に話すと、先輩は答えやすくなります。
判断4:調べたり試したりを、どこまで無料でやってよい?
自分では決めません。見本の数、試用の期間、現場を調べる作業の範囲は、会社によって決まりが違います。相手に「やります」と言う前に、上司に確かめます。
相手には、「試せる範囲を、社内で確認してからお返事します。◯日までにご連絡します」と、返事の日を伝えます(説明用の例です)。できない約束をその場でしないことが、相手の予定を守ることにもなります。
今日やることは一つです。今進めている一件について、相手の困り事を相手の言葉で一つ書き、確かめた事実と、まだ確かめていないことを分けてください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
今進めている一件の商談メモ、相手から聞いた困り事の控え、自分の会社の商品やサービスの資料。
記入例を見る(説明用)
相手の困り事=A社の店長「月末になると、消耗品の発注が間に合わず、急ぎの注文になる」/確かめた事実=発注は店長が一人で、手書きの表を見て決めている。急ぎの注文は先月2回(店長が発注の控えで数えた)。どの品目で起きたかは未確認。次回、控えを見せていただく/原因の見立てと、相手の反応=「残りの数を確かめる日が決まっていないため、気づくのが遅れるのではないか」と伝えた。店長の答えは「それもあるが、店長が休みの日に誰も見ていないのが大きい」。見立てを直した/解決の形=よく使う5品目について、残りが決めた数を下回ったら、気づいた人が発注の表に印を付ける。印が付いた品目を、当社が週1回の訪問で確かめて補充する。費用と品目は、上司に確認してから見積書で出す/小さく試すことと、見るところ=まず5品目だけ、1か月試す。見るところは「急ぎの注文の回数」。1か月後の訪問で、店長と一緒に控えを数える。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
困り事が相手の言葉で書いてあり、確かめた事実と「未確認」が分かれている。原因の見立てには、相手の反応が書いてある。試すことには、何を見て良し悪しを決めるかが付いている。
うまく進まなかったときは?
困り事が書けなければ、次の訪問で「今は、どんな手順でされていますか」と今のやり方から聞く。事実が足りなければ、「いつ・どこで・どれくらい」のうち一つだけ聞く。見立てに自信がなければ、相手に伝える前に、先輩に「聞いた事実」と「自分の考え」を分けて話す。