NOTE 38 · 営業の実践ノート
営業とは:仕事の中身と、最初に覚える5つの動き
公開:2026年10月3日/更新:2026年10月4日
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営業とは、お客様の困り事を聞き、自分の会社の商品やサービスで役に立てる形を提案し、取引を続けていく仕事です。最初に覚える動きは、準備・聞く・提案・約束・記録の5つです。話のうまさより先に、この5つを一件ずつくり返すことから始めます。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 営業の仕事を始める前や、始めたばかりで、何をする仕事なのかを確かめたいとき。
- 1
次に会う相手を調べ、今日のゴールを一つ決める
- 2
説明の前に、今のやり方と困り事を聞く
- 3
聞いたことに合わせて提案し、次の約束を決める
- 4
聞いたことと約束を、その日のうちに記録する
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
営業とは:困り事を聞き、役に立てる形を提案し、取引を続ける仕事
営業とは、お客様の困り事や望みを聞き、自分の会社の商品やサービスで役に立てる形を提案し、取引を続けていく仕事です。売って終わりではありません。納めた後に困っていないかを確かめ、次の注文や相談につなげるところまでが、営業の仕事に含まれます。
「営業は、商品を売り込む仕事」と思われがちです。売ることは大事な役目ですが、相手の事情を聞かずに説明を始めると、相手に関係のない話が続きます。順番は、聞く→提案するです。この順番が、営業の仕事の中心にあります。
似た言葉に「販売」と「マーケティング」があります。販売は、店頭などで来たお客様に商品を売る仕事、マーケティングは、商品が知られて選ばれる仕組みを考える仕事、という意味で使い分けられることが多い言葉です。ただ、線の引き方は会社によって違い、一人で兼ねる職場もあります。
営業の中身も、会社で幅があります。納品や集金、納めた後の問い合わせの対応まで営業が受け持つ会社もあれば、約束を取る人と訪問する人が分かれている会社もあります。自分の仕事の範囲は、上司や先輩に「私の担当は、どこからどこまでですか」と聞いて確かめます。相手や訪ね方による分け方は、営業の種類にまとめています。
一件の仕事の流れと、一日の流れの例
営業の仕事は、一件のお客様について見ると、おおよそ次の順で進みます。会社や商品で順番や回数は変わるので、説明用の例として見てください。
- 会う相手を決め、約束を取る。電話やメールで、会う理由と日時を伝えます。やり方は営業のアポ取りにあります。すでに取引のあるお客様を定期的に回る仕事では、この段階は訪問日の確認になります。
- 準備して、会う。相手を調べ、聞くことを決めて訪問します。会って話し合う場の全体は、商談とはで説明しています。
- 提案と見積を出す。聞いた内容に合わせて、商品・数量・価格・納期を示します。
- 返事を待ち、質問に答える。相手が社内で相談している間に、足りない材料を届けます。進め方は「検討します」の後にあります。
- 注文を受け、納める。社内の決まった手順で手配し、約束どおりに届いたかを確かめます。
- 納めた後に、様子を聞く。使ってみて困っていないかを聞き、次の相談につなげます。定期的に回る仕事の中身は、ルート営業とはにあります。
一日の中では、複数のお客様の、別々の段階が同時に進みます。朝に予定と持ち物を確かめ、日中は訪問や電話をし、合間に記録を書き、夕方に見積や資料を作って日報を書く、という流れが一例です。時刻を入れた例は、新人営業の1日の流れに載せています。
外から見えるのは、訪問している時間だけです。けれども実際には、訪問の前の準備と、後の記録や手配にも、時間を使います。ここを知らずに始めると、「話す以外の仕事が多い」と戸惑うことになります。
最初に覚える5つの動き
営業の仕事を、初めての人が覚えやすいように、5つの動きに分けます。準備・聞く・提案・約束・記録です。どの段階のお客様に会うときも、この5つをくり返します。
1. 準備:会う前に、ゴールを一つ決める
相手の会社を調べ、前回までのメモを読み、「今日はここまで進める」というゴールを一つ決めます。ゴールがないと、訪問が終わっても、進んだのかどうかを自分で判断できません。調べ方は初めての訪問で準備する3つのことにまとめています。
持ち物も準備のうちです。外を歩いて回る仕事なら、一日歩いても足が痛くならない靴。聞いたことを書くノートとペン。どれも、今ある物で足りるなら、そのまま使います。
2. 聞く:説明の前に、今のやり方を聞く
相手が今どうしているか、何に困っているかを聞きます。聞かずに説明すると、相手は「うちには関係ない」と感じても、それを言い出しにくくなります。
惜しい聞き方:「何かお困りのことはありませんか」
良い聞き方:「今お使いの袋は、どのサイズが先になくなりますか」
どちらも説明用の例です。惜しい聞き方は、相手がその場で困り事を探さなければなりません。良い聞き方は、相手がすぐ思い出せる事実を一つ聞いています。質問の順番は、商談ヒアリングにまとめています。
3. 提案:聞いたことに、合わせて伝える
提案とは、相手の困り事に対して、「この商品を、この条件で使うと、こう変わります」と示すことです。商品の良い所を全部並べるのではなく、聞いた困り事に関係のある所から伝えます。
惜しい言い方:「この袋は丈夫で、色も選べて、値段もお手頃です」
良い言い方:「小さいサイズが先になくなると伺いました。小さいサイズだけ、月に2回お届けする形にできます」
良い言い方は、相手の言葉を先に置いています。相手は、自分の話が提案に入っていると分かります。紙にまとめるときは、提案書の作り方が使えます。
4. 約束:誰が・何を・いつまでに、を決めて帰る
帰る前に、自分がやること、相手にお願いすること、期限、次に会う日を、声に出して確かめます。約束がないまま別れると、次に連絡する理由がなくなります。そして、決めた約束は期限までに守ります。小さな約束を守ることが、次の相談をしてもらえるかどうかに関わります。
5. 記録:その日のうちに、事実と数字を書く
聞いたこと、約束したこと、期限、次の日取りを書きます。「感触は良かった」ではなく、相手が言った言葉と、数えられることを残します。記録があると、上司や先輩が、次に何をすればよいかを一緒に考えられます。
この営業ノートを書いているウッシは、初めて受けたメーカーの1か月の研修で、報告会で言えたのが「毎日がんばりました」だけでした。この経験から学んだのは、営業はデータ・数字・情報だ、ということです。そのときの話と、報告の書き方は、「頑張りました」しか報告できなかった研修にまとめています。
日々の記録は営業日報テンプレート、商談のメモの直し方は商談メモ添削を使ってください。
場面で変わるところ
5つの動きは同じでも、場面によって、力を入れる所が変わります。次の表は一例です。
| 場面 | 力を入れる動き | 進め方(一例) |
|---|---|---|
| 初めて会うお客様 | 準備と、聞く | 相手の会社を調べ、聞くことを3つ書いていく。説明は短くする |
| すでに取引のあるお客様 | 約束と、記録 | 前回の約束の結果から話し始める。前回のメモを読んでから行く |
| 対面で会う | 聞く | 相手の様子を見ながら、資料は相手が読める向きで置く |
| 電話やオンライン | 約束と、記録 | 話した内容と次の予定を、終わった後にメールで文字にして送る |
| 先輩に同行する | 記録 | 話すのは先輩に任せ、メモを取る。帰りに、先輩とメモを見比べる |
| 一人で行く | 約束 | その場で決められないことは、返事の期限を約束して持ち帰る |
| 相手が忙しそうな日 | 約束 | 用件を一つにしぼり、次に会う日だけ決めて帰る |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
初めて会う相手には、こちらのことが何も伝わっていません。だから、調べてきたことと、聞く姿勢が先に要ります。取引が続いている相手は、前回の約束がどうなったかを気にしています。同じ「訪問」でも、相手が最初に知りたいことが違います。
同行の間は、話せないことを気にしなくてかまいません。先輩が、どの順番で、何を聞いたかをメモすると、一人で行くときの手本になります。最初の時期に先輩と確かめることは、新人営業の最初の30日にまとめています。
迷いやすい判断:不安を、今日の行動に分ける
判断1:目標の数字(ノルマ)が不安なとき
売上や件数の目標は、結果の数字です。結果は、相手の事情でも変わるので、自分だけでは決められません。自分で決められるのは、行動の数です。会う約束を取る件数、訪問する件数、出す見積の数、などです。
基準は、「今週、自分で数えられる行動を一つ決めてあるか」です。決め方が分からなければ、上司にこう聞きます。「今月の目標に対して、今週は何を、何件やればよいですか」。目標の大きさを一人で抱えるより、今週の行動に分けてもらうほうが、動き出せます。目標に届かなかったときの振り返り方は、営業実績の書き方にあります。
判断2:話すのが苦手だと感じるとき
営業の仕事には、話す場面のほかに、聞く・調べる・書く・約束を守る、という場面があります。話すのが苦手でも、すぐにできないと決めなくてかまいません。
今日できる行動は2つです。一つは、聞くことを3つ、ノートに書いて持っていくこと。もう一つは、相手の言葉をくり返してから、次を聞くことです。「小さいサイズが先になくなるのですね。月にどれくらいの間隔ですか」のように進めます(説明用の例です)。自分から話題を作らなくても、会話が続きます。
判断3:断られることが続いて、つらいとき
断られた後は、理由を3つに分けて記録します。今は要らない(時期)、条件が合わない(価格や納期)、内容が伝わっていない(こちらの説明)です。相手の言葉をそのまま書き、どれに当たるかを横に書きます。
時期なら、次に連絡する月を書きます。条件なら、上司に相談する材料になります。説明なら、言い方を一つ変えて次に試します。分けて書くと、「全部だめだった」ではなく、次にやることが一つ残ります。気持ちが続かない時期の考え方は、「腐るなよ」に、当時は「いつまで?」と思っていたにも書いています。
判断4:自分に営業が向いているのか、分からないとき
向き・不向きは、ここでは決めつけません。同じ営業でも、相手、訪ね方、扱う物で、仕事の中身が大きく違うからです。今の仕事がつらいのか、営業という仕事そのものが合わないのかは、分けて考える必要があります。
基準にできるのは、5つの動きのうち、どれがつらく、どれは苦にならないかです。一週間、動きごとに一言ずつメモします。つらい場面の分け方と、相談する順番は、営業を続けるか迷ったらにまとめています。眠れない、体調がおかしい、というときは、書き出すより先に、身近な人や医療機関に相談してください。
失敗のあと:その場の立て直しと、帰ってからの記録
始めたばかりの時期に起きやすい失敗を、3つ挙げます。どれも、その場でやることと、帰ってから書くことをセットにします。
失敗1:約束したことを、忘れていた
その場では:気づいた時点で、相手から聞かれる前に連絡します。「◯日までとお約束した資料が、まだお届けできておりません。申し訳ございません。明日の午前にお持ちします」と、おわびと新しい期限を一緒に伝えます。
帰ってからの記録:約束を「中身・期限・誰がやるか」の3つで書き直します。次からは、建物を出たら、次へ向かう前に書きます。
失敗2:聞かれたことに、あいまいに答えた
その場では:「先ほどのお答えは、確かめてからお伝えし直します」と言い直します。帰ってから気づいたら、その日のうちに連絡します。相手が、あいまいな答えをもとに動き出す前に直すためです。
帰ってからの記録:聞かれた質問と、正しい答え、誰に確かめたかを書きます。同じ質問は、ほかのお客様からも受けることがあります。上司への伝え方は、営業で失敗したときにまとめています。
失敗3:訪問したのに、何も決まらなかった
その場では:席を立つ前に、一つだけ聞きます。「次回、◯◯をお持ちしてもよろしいですか」。次に会う理由が一つあれば、訪問は次につながります。
帰ってからの記録:「成果なし」とは書きません。「聞けたこと」「聞けなかったこと」「次に聞くこと」を一行ずつ書きます。終わった商談を振り返る軸は、営業三ヶ条も使えます。
今日やることは一つです。次に会うお客様一件について、準備・聞く・提案・約束・記録を、一行ずつ書いてください。
あいさつ・時間・言葉遣いなど、仕事の土台になる基本は、ビジネスマナーの基本にまとめています。
仕事を探している人向けに、求人票で営業の仕事の中身を確かめる見方は、営業職とはにまとめています。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
次に会うお客様の予定、自分の会社の商品の一覧、ノートとペン。
記入例を見る(説明用)
次に会う相手と、扱う商品=B社の店長の田中様。扱うのは、店で使う包装の資材。先月から自分が担当になった/準備:調べることと、今日のゴール=前の担当者のメモを読む。B社のホームページで、店の数と場所を見る。今日のゴールは「今使っている袋の、困っている点を一つ聞く」/聞く:最初に聞く質問=「今お使いの袋で、足りなくなりやすいサイズはありますか」/提案と約束:伝えることと、次に決めたいこと=聞いた内容に合う袋を、一覧から一つ紹介する。値段はその場で言わず、見積を次回持っていく約束をもらう。次の訪問日を決める/記録:どこに、何を書くか=会社の顧客管理の仕組みに、その日のうちに書く。聞いたこと(相手の言葉のまま)、約束したこと、期限、次の訪問日の4つ。書き方で分からない所は「未確認」として、明日、先輩に聞く。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
次に会う一件について、5つの動きがそれぞれ一行で書けていて、今日のゴールと、記録する場所が決まっている。
うまく進まなかったときは?
5つを一度に書けないときは、「聞く」の一行だけ書く。質問が浮かばなければ「今はどうされていますか」にする。記録する場所が分からなければ「未確認」と書き、先輩に「訪問の記録は、どこに、いつまでに書けばよいですか」と聞く。