NOTE 195 · 営業の実践ノート
営業トークのコツ:一回の訪問を「聞く・確かめる・提案する・次を決める」の順で話す
公開:2026年10月4日
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営業トークというと、うまい言い回しを覚えるもの、と思われがちです。けれども、客先で言葉が出なくなるのは、言い回しを知らないからというより、次に何を話す番なのかが分からなくなるから、ということがあります。この記事では、一回の訪問で話す中身を、「聞く→確かめる→提案する→次を決める」の順に組み立てる手順と、言い方の例をまとめます。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 客先で何を話せばよいか分からず、商品の説明ばかりになってしまう、または途中で言葉が止まってしまうとき。
- 1
聞く:今のやり方と、困っていることを聞く
- 2
確かめる:聞いたことを相手の言葉でくり返し、合っているかを聞く
- 3
提案する:確かめたことに結びつけて、一つにしぼって話す
- 4
次を決める:だれが・何を・いつまでにやるかを、声に出して決める
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
営業トークとは:辞書の意味と、この記事が扱う範囲
トークは、辞書では「話すこと。おしゃべりをすること。談話。」(デジタル大辞泉「トーク」)と説明されています。「営業トーク」という言葉そのものは、調べた辞書には見出しがありませんでした。近い言葉に、セールストークがあります。辞書の説明は、次のとおりです。
「販売話法。販売にあたって客の購入意欲をかきたてるような話法・話術。」(デジタル大辞泉「セールストーク」)
話法は、「話し方。」(デジタル大辞泉「話法」)です。この記事では、営業が客先で話す言葉の全体を、営業トークと呼びます。これは、この記事での言い方です。
営業トークを調べると、言い回しの例がたくさん見つかります。けれども、言い回しを覚えても、客先では、相手が台本どおりに答えてくれるわけではありません。予定と違う返事が来たときに、言葉が止まります。
そこで、この記事では、言い回しより先に、順番を決めます。順番が決まっていれば、話がそれても、「今は、どの段階にいるのか」に戻れます。扱うのは、一回の訪問で、席に着いてから席を立つまでの会話の流れです。
それぞれの部分の細かいやり方は、別の記事にまとめています。席に着いてすぐの数分はアイスブレイクとは、質問の順番は商談ヒアリング、最後の決め方はクロージングとはです。資料を使って説明する場面はプレゼンのコツ、電話で約束を取る場面はテレアポとはを見てください。準備から記録までの全体は、商談とはにあります。
全体の順番:聞く・確かめる・提案する・次を決める
一回の訪問で話す中身を、4つの段階に分けます。
| 段階 | 何のためか | 最初の一言(説明用の例) | 飛ばすと起きやすいこと |
|---|---|---|---|
| 1. 聞く | 相手の今のやり方と、困り事を知る | 「今は、どのように進めていらっしゃいますか」 | 相手に関係のない説明を続けてしまう |
| 2. 確かめる | 聞き違いを、提案の前に直す | 「ここまで伺ったことを、確かめさせてください」 | ずれた提案をして、相手が「そうではなくて」と言い直すことになる |
| 3. 提案する | 確かめた困り事に、できることを結びつける | 「先ほどの〇〇について、一つご提案があります」 | 商品の説明で終わり、相手が自分の話として聞けない |
| 4. 次を決める | このあと、だれが何をするかを決める | 「最後に、このあとの進め方を決めさせてください」 | 「検討します」で終わり、次に連絡するきっかけがなくなる |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
4つのうち、初心者が飛ばしやすいのは、2の「確かめる」です。聞いたあと、すぐに提案へ進みたくなります。けれども、聞いたつもりの内容が、相手の言いたかったことと違っていることがあります。提案の前に一度くり返すと、ずれをその場で直せます。
段階を移るときは、声に出す
表の「最初の一言」は、段階が変わる合図です。合図を言わずに話題を変えると、相手は、質問が続いているのか、説明が始まったのかが分かりません。合図があると、相手も、聞く準備ができます。
合図は、自分のためでもあります。話がそれたとき、「では、ここまでを確かめさせてください」と言えば、順番に戻れます。4つの一言を、訪問の前に紙に書き、声に出しておきます。
時間の割り振り
もらった時間のうち、半分ほどを「聞く」と「確かめる」に使うことを目安にします。これは決まりではなく、提案が長くなりすぎないための目安です。30分なら、聞く・確かめるに15分、提案に10分、次を決めるのに5分、という考え方です(説明用の例です)。
「次を決める」の時間は、先に取り分けておきます。提案が長引くと、いちばん削られやすいのが、最後の5分だからです。
聞く・確かめる:言い方の例
聞く:今のやり方から聞く
最初の質問は、相手が考えなくても答えられるものにします。「今は、どのように進めていらっしゃいますか」のように、今のやり方を聞く質問です(説明用の例です)。いきなり「お困りのことはありますか」と聞くと、相手は、何を答えればよいのかを考えるところから始めることになります。
惜しい例:「何かお困りのことはありますか」「特にないですね」「そうですか。では、弊社の商品をご説明します」
良い例:「月末の集計は、今どのような手順で進めていらっしゃいますか」「各部署から紙で集めて、私が入力しています」「入力は、佐藤様お一人でされているのですね。どのくらいの時間がかかりますか」
どちらも説明用の例です。惜しい例は、「特にない」と言われたところで、聞くことをやめています。良い例は、今のやり方を聞き、返ってきた言葉をくり返してから、次の質問をしています。くり返すと、相手は、聞いてもらえていると分かります。次の質問も、相手の言葉から作れます。
相手が話しているあいだは、途中で提案を始めません。「それなら、弊社の〇〇が」と言いたくなったら、メモに印だけ付けて、聞き続けます。質問の順番と、要約のしかたは、商談ヒアリングにまとめています。
確かめる:相手の言葉で、3つをくり返す
聞き終えたら、合図を言って、次の3つをくり返します。
- 今のやり方。「今は、各部署から紙で集めて、佐藤様が入力されている」
- 困っていること。「月末に、入力だけで丸一日かかる」
- いちばん先に何とかしたいこと。「まずは、入力の時間を減らしたい」
カッコの中は説明用の例です。最後に、「この理解で合っていますか」と聞きます。
惜しい例:「なるほど、よく分かりました。では、ご提案に移ります」
良い例:「ここまで伺ったことを、確かめさせてください。今は紙で集めて、佐藤様が入力されている。月末に丸一日かかる。まずは、その時間を減らしたい。この理解で合っていますか」
惜しい例の「よく分かりました」は、何が分かったのかを、相手に見せていません。良い例は、相手が使った言葉でくり返しています。「業務の効率化ですね」のように、こちらの言葉に言いかえると、相手の言いたかったことからずれることがあります。
「少し違います」と言われたら、それは良い知らせです。提案の前に、ずれが見つかったからです。「失礼しました。どのあたりが違っていましたか」と聞き、直してから進みます(説明用の例です)。
提案する・次を決める:言い方の例
提案する:確かめたことに結びつける
提案の最初の一言で、確かめた困り事に結びつけます。「先ほどの、月末の入力に丸一日かかる件について、一つご提案があります」(説明用の例です)。この一言があると、相手は、ここからの説明を「自分の話」として聞けます。
惜しい例:「弊社の商品には、特長が5つあります。1つ目は……」
良い例:「先ほどの、入力に丸一日かかる件についてです。この機能を使うと、各部署が直接入力する形になります。佐藤様の入力の作業は、確認の作業に変わります。ここまでで、気になる点はありますか」
どちらも説明用の例です。惜しい例は、相手の困り事と関係なく、商品の側から話しています。良い例は、困り事に結びつけ、話すことを一つにしぼり、相手の仕事がどう変わるかを言っています。最後に、相手の反応を聞いています。
気をつけるのは、次の3つです。
- 確かめていない効果を言わない。「時間が半分になります」のような数字は、根拠を示せないなら言いません。あとで守れない約束になります。
- できないことも言う。相手の困り事のうち、商品で変わらない部分があれば、それも伝えます。あとから分かるより、信用を失いにくくなります。
- 話したら、聞く。一つ話すごとに、「ここまでで、気になる点はありますか」と聞きます(説明用の例です)。相手の返事が、次に話すことを教えてくれます。
「高いですね」のような返事が来たら、言い返さず、もう一度「聞く」に戻ります。「何と比べて、そう感じられましたか」と聞きます(説明用の例です)。4つの順番は、一度通って終わりではなく、提案の途中で、聞く・確かめるに戻ってよいものです。
次を決める:だれが・何を・いつまでに
最後の5分で、合図を言い、次の3つを声に出して決めます。
- こちらがやること(何を・いつまでに)
- 相手にお願いすること(何を・いつまでに)
- 次に会う日、または連絡する日
惜しい例:「では、ご検討をお願いします。また、ご連絡します」
良い例:「最後に、このあとの進め方を決めさせてください。私は、来週の水曜までに見積もりをお送りします。佐藤様には、使う人数を確かめていただけますか。そのうえで、来週の金曜に、もう一度お時間をいただけますでしょうか」
どちらも説明用の例です。惜しい例は、だれが・いつ・何をするのかが、決まっていません。良い例は、3つを口に出し、最後を相手が選べる質問で終えています。相手が「金曜は難しい」と言えば、別の日を聞けます。
ここで言う「決める」は、契約を迫ることではありません。くわしくは、クロージングとはにまとめています。返事を待つあいだの進め方は、「検討します」の後です。
場面で変わるところと、消費者向けの訪問で禁じられていること
4つの順番は同じでも、場面によって、時間をかける段階が変わります。次の表は一例です。
| 場面 | 時間をかける段階 | 進め方(一例) |
|---|---|---|
| 初めての訪問 | 聞く | 提案まで進まなくてよい。聞いて、確かめて、次に会う日を決める |
| 2回目以降の訪問 | 確かめる・提案する | 前回の記録を読み、「前回は〇〇と伺いました。その後、変わりはありませんか」から始める |
| 時間が、急に短くなった | 確かめる・次を決める | 「10分でしたら、前回伺ったことの確認と、次のお約束だけお願いできますか」と、段階をしぼる |
| 相手が複数いる | 聞く・確かめる | 一人ずつに聞く。確かめるときは、「佐藤様は入力の時間、課長は費用、という理解で合っていますか」と、人ごとに分ける |
| オンライン | 確かめる | 表情が見えにくいので、確かめる回数を増やす。合図の一言を、はっきり言う |
| 相手が、あまり話さない | 聞く | 「はい・いいえ」で答えられる質問から始め、答えをくり返してから、次を聞く |
| 相手が、よく話す | 確かめる | 話の切れ目で、「ここまでを確かめさせてください」と合図を言い、3つにまとめる |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
初めての訪問では、提案まで行かないことがあります。それは、失敗ではありません。聞けたことと、次の約束が残っていれば、話は続いています。
個人のお客様の家を訪問して、商品をすすめる仕事の場合
相手が個人の消費者のとき、訪問での勧誘には、特定商取引法の決まりがあります。消費者庁 特定商取引法ガイド「訪問販売」は、訪問販売を「事業者が消費者の自宅等に訪問して、商品や権利の販売又は役務の提供を行う契約をする取引のこと。」と説明しています(2026年10月4日に確認)。話す中身にかかわる決まりを、同じページから引きます。
まず、最初に告げることです。「事業者は、訪問販売をしようとするときは、勧誘に先立って、消費者に対して以下のことを告げなければなりません。」として、次の3つが挙げられています。
- 「事業者の氏名(名称)」
- 「契約の締結について勧誘をする目的であること」
- 「販売しようとする商品(権利、役務)の種類」
次に、断られたあとです。
「消費者が契約締結の意思がないことを示したときには、その訪問時においてそのまま勧誘を継続すること、その後改めて勧誘することが禁止されています。」
さらに、「特定商取引法は、訪問販売において以下のような不当な行為を禁止しています。」として、4つの行為が挙げられています。そのうち、話す中身に直接かかわる3つを引きます。
- 「契約の締結について勧誘を行う際、又は契約の申込みの撤回(契約の解除)を妨げるために、事実と違うことを告げること」
- 「契約の締結について勧誘を行う際、故意に事実を告げないこと」
- 「契約を締結させ、又は契約の申込みの撤回(契約の解除)を妨げるために、相手を威迫して困惑させること」
同じページには、この法律が当てはまらない場合も書かれています。その一つが、「営業のため、又は営業として締結するもの」契約です。自分の仕事が、この決まりに当たるかどうか。この記事では言い切れません。自分で判断せず、上司や、会社の法務の担当に確かめてください。
相手が会社のときも、事実と違うことを言わない、都合の悪いことを隠さない、断られたら引く、という話し方は、信用のもとになります。
迷いやすい判断と、話しすぎたあと
判断1:トークの台本を、丸ごと覚えたほうがよい?
基準は、相手の返事で変わる部分かどうかです。変わらない部分は、覚えて構いません。名乗り、段階を移る合図の一言、最後に確かめる3つ、です。相手の返事で変わる部分は、文を覚えるより、順番を覚えます。会社に決まった台本があるなら、まずそのとおりに話し、合わない所を上司に相談します。
判断2:相手が黙ったとき、すぐに話してよい?
質問のあとに相手が黙るのは、考えているから、ということがあります。すぐに言葉を足すと、相手の考えをさえぎります。まず、待ちます。どのくらい待つかに、決まった秒数はありません。相手が困っているように見えたら、質問を小さくします。「たとえば、月末の作業ではいかがですか」(説明用の例です)。
判断3:聞いているうちに、時間がなくなったら?
提案を急いで詰めこまず、「確かめる」と「次を決める」だけをやります。「お時間になりますので、ここまでを確かめさせてください」と言い、3つをくり返します。そのうえで、「次回、今日伺ったことに合わせたご提案をお持ちしてよろしいでしょうか」と聞きます(説明用の例です)。
失敗のあと:気づいたら、自分ばかり話していた
その場では:気づいた時点で、止まります。「失礼しました。私ばかりお話ししてしまいました。ここまでで、気になった点はありますか」(説明用の例です)。そのうえで、「確かめる」に戻ります。途中からでも、順番には戻れます。
帰ってから:メモを見て、相手の言葉が何行あるかを数えます。自分が話したことばかりで、相手の言葉が少なければ、聞く時間が足りなかった、ということです。相手にはお礼の連絡をし、聞けなかったことを一つだけ質問します。メモの直し方は、商談メモ添削にまとめています。
記録:「どの段階で、話しすぎたか」「きっかけ(沈黙がこわくて説明を足した、など)」「次は、合図の一言を紙に書いて、机に置く」と書きます(説明用の例です)。次の訪問の前に、相手役を立てて練習する方法は、ロープレのやり方にまとめています。
今日やることは一つです。次の訪問一件について、4つの段階ごとに、最初の一言を一つずつ書いて、声に出してください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
次に訪問する相手のメモ(前回の記録があればそれも)、持っていく資料、筆記用具。
記入例を見る(説明用)
訪問する相手と、今日の行き先=A社 総務の佐藤様。2回目の訪問。今日は、困り事を確かめて、次回に見積もりを持ってくる約束までを決めたい/聞く:最初の質問=「前回、月末の集計に時間がかかると伺いました。今は、どのような手順で進めていらっしゃいますか」/確かめる:くり返すときの一言=「ここまで伺ったことを、確かめさせてください。〇〇と△△で、いちばんお困りなのは〇〇、という理解で合っていますか」。中身は、当日聞いた言葉を入れる/提案する:結びつける一言と、話すこと一つ=「先ほどの〇〇について、一つご提案があります」。話すのは、資料の3ページの内容だけ。費用は、概算を聞かれたら資料の4ページで答える。正式な金額は見積もりで出す/次を決める=自分:来週の水曜までに見積もりを作る。佐藤様:使う人数を確かめていただく。次回の訪問日を、その場で決める。(すべて説明用の例です)
CHECK
ここまでできたら、次へ。
4つの段階ごとに、最初の一言を書いて、声に出せましたか。訪問のあとは、どの段階まで進んだかと、次の約束を、その日のうちに書きます。
うまく進まなかったときは?
一言が書けないときは、「確かめる」の一言だけを先に書いてください。「ここまで伺ったことを、確かめさせてください」です。この一言があると、聞きすぎたときも、話しすぎたときも、順番に戻れます。それでも不安なら、先輩に相手役を頼んで、10分だけ練習します。