NOTE 181 · 営業の実践ノート
プレゼンのコツ:客先で提案を話す日の、準備・話す順番・質問の受け方・終わったあと
公開:2026年10月4日
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プレゼンは、辞書では、計画や企画案、見積もりなどを会議で説明すること、とされています。営業の仕事では、作った提案を、客先で声に出して説明する時間がこれに当たります。この記事は、資料の作り方ではなく、話す場面だけを扱います。前の日までの準備、話す順番、質問の受け方、終わったあとにやることを、順にまとめます。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 客先で提案を説明することになり、何から話せばよいか、質問にどう答えればよいかで不安なとき。
- 1
聞く人・決めてほしいこと・もらえる時間を確かめる
- 2
結論・理由・相手の場合・お願いの順に、話すことを並べる
- 3
声に出して通し、時間を計る。出そうな質問を3つ書く
- 4
話したあと、決まったことと宿題を確かめ、その日のうちに記録する
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
プレゼンとは:辞書の意味と、この記事が扱う範囲
プレゼンは、辞書では「「プレゼンテーション」の略。」(デジタル大辞泉「プレゼン」)と説明されています。プレゼンテーションは、「計画・企画案・見積もりなどを、会議で説明すること。」(デジタル大辞泉「プレゼンテーション」)です。もとは会議の場の言葉ですが、営業の仕事では、客先で提案を説明する時間を「プレゼン」と呼ぶことが多くあります。
大きな会場で、大勢の前で話す場面だけを指すわけではありません。応接室で、担当者と上司の二人に、資料を見せながら15分話す。これも、ここでいうプレゼンです。
この記事が扱うのは、話す場面です。資料の中身は、別の記事にまとめています。提案の一枚目は提案書の作り方、資料の種類と並べ方は営業資料の作り方、社内に通す計画は企画書の書き方、提案の前に相手の話を聞く順番は商談ヒアリングです。
資料ができていても、話す段になって手が止まることがあります。理由は、読む資料と、聞く説明では、相手の受け取り方が違うからです。読む人は、分からない所に戻れます。聞く人は、戻れません。そのため、話すときは、先に行き先を言い、順番を守り、途中で確かめることが要ります。
準備:前の日までに決める4つ
話し方の練習より先に、次の4つを決めます。ここが決まっていないと、当日、何を言っても話がまとまりません。
1. だれが聞くか
名前と役割を確かめます。窓口の担当者だけか、上司や、実際に使う人も同席するのか。人によって、気にする点が違うからです。分からなければ、約束を決めた相手に「当日は、どなたがご同席されますか。資料の部数を用意いたします」と聞きます(説明用の例です)。部数を理由にすると、相手は答えやすくなります。
2. 今日、何を決めてほしいか
一つにしぼります。「契約を決めてほしい」とは限りません。「2つの案のうち、どちらで見積もりを作るかを決めてほしい」「次回、現場を見せていただく日を決めてほしい」でも構いません。決めてほしいことが無いまま話すと、相手は聞き終えたあとに、何をすればよいかが分かりません。
3. 時間の割り振り
もらえる時間を確かめ、話す時間は、その半分ほどまでを目安にします。これは決まりではなく、質問と相談の時間を残すための目安です。30分なら、話すのは15分まで、という考え方です(説明用の例です)。全部を話で埋めると、相手の疑問を聞けないまま終わります。
4. 声に出して通す
本番の前のけいこを、リハーサルといいます。辞書では「演劇・音楽・放送などで、本番前に行うけいこ。」(デジタル大辞泉「リハーサル」)と説明されています。プレゼンでも、同じことをします。資料を目で追うだけでは、話す時間は分かりません。声に出して、時計で計ります。長ければ、話す速さを上げるのではなく、言うことを減らします。
通すときに、出そうな質問を3つ書き、答えを用意します。答えが分からない質問は「未確認」と書き、当日までに先輩に聞きます。相手役を立てて練習する方法は、ロープレのやり方にまとめています。
話す順番:結論・理由・相手の場合・お願い
話す順番は、次の4つです。
- 結論と、今日決めてほしいこと。最初の30秒ほどで言います。聞く人は、行き先が分かると、そのあとの話を「決めるための材料」として聞けます。
- 理由。多くても3つまでにします。聞く人は戻って読み直せないので、数が多いと、最初の理由を忘れます。
- 相手の場合。前に聞いた相手の困り事に当てはめて話します。「御社の場合は」と言える部分です。商品の説明だけで終わると、相手は「うちの話」として聞けません。
- お願い。最初に言った「決めてほしいこと」に戻ります。
最初の言い方を、並べて見てみます。説明用の例です。
惜しい例:「本日はお時間をいただき、ありがとうございます。それでは、資料の1ページ目からご説明いたします。まず、弊社の沿革ですが……」
良い例:「本日はお時間をいただき、ありがとうございます。前回伺った『月末の集計に時間がかかる』というお困り事について、2つの案をお持ちしました。結論から申しますと、A案をおすすめします。理由を10分ほどでご説明し、最後に、どちらの案で見積もりを作るかを決めていただければと思います」
惜しい例は、ていねいですが、聞く人は、話がどこへ向かうのかを知らないまま聞くことになります。良い例は、相手の言葉(お困り事)、結論、かかる時間、決めてほしいこと、の4つを先に言っています。
途中の言い方にも、差が出ます。
惜しい例:「こちらの機能は、業界でも高い評価をいただいております」
良い例:「こちらの機能を使うと、佐藤様が前回お話しくださった、月末の手入力の作業が、取り込みの作業に変わります」
惜しい例は、こちらの評価を言っています。良い例は、相手の仕事がどう変わるかを、相手が前に言った言葉を使って話しています。説明用の例なので、実際には、自分が確かめた事実だけを言ってください。確かめていない効果を言うと、あとで守れない約束になります。
区切りごとに、「ここまでで、気になる点はありますか」と聞きます(説明用の例です)。聞く人が置いていかれていないかを、その場で確かめるためです。
話しているあいだの、目と手
資料や画面だけを見て話すと、相手がうなずいているのか、首をかしげているのかが見えません。文の終わりで顔を上げ、聞く人を見ます。複数の人がいるときは、決める人だけでなく、窓口の担当者や、使う人にも目を向けます。資料のどこを話しているかは、「3ページの、上の表です」と、場所を声で言います(説明用の例です)。聞く人が、ページを探しているあいだに話が進んでしまうのを防ぐためです。
質問の受け方:聞き終える・くり返す・答える・確かめる
話のあとには、質問の時間があります。辞書では、質疑応答は「会議などの場で、質問とそれに対する答え。また、そのやりとり。」(デジタル大辞泉「質疑応答」)とされています。質問は、相手が決めるために足りない材料を教えてくれるものです。受け方は、次の4つです。
- 最後まで聞く。途中で答え始めると、相手が本当に聞きたかったことを取りこぼすことがあります。
- くり返す。「費用が、初めの年と次の年でどう変わるか、というご質問ですね」と、自分の言葉で言い直します。聞き違いを、答える前に直せます。同席している人にも、質問の中身が伝わります。
- 結論から答える。「はい」「いいえ」「〇〇です」を先に言い、理由はそのあとに一つ添えます。
- 確かめる。「お答えになっていますでしょうか」と聞きます。ずれていれば、相手がもう一度聞いてくれます。
答えられない質問が来たとき
惜しい例:「たぶん、大丈夫だと思います」
良い例:「申し訳ございません。その点は、今この場では正確にお答えできません。社内で確かめて、あさっての午前中までに、佐藤様あてにメールでお答えします」
どちらも説明用の例です。惜しい例は、推測を答えにしています。あとで違っていたときに、相手は社内で説明し直すことになります。良い例は、答えられないこと・だれに・いつまでに・どの方法で答えるかを言っています。質問はその場でメモに書き、相手の言葉のまま残します。メモの残し方は商談メモ添削にまとめています。
きびしい質問が来たとき
「他社のほうが安いですよね」のような質問は、反論から入らず、まず受け取ります。「金額の差について、というご質問ですね」とくり返し、事実で答えられる所だけを答えます(説明用の例です)。値引きなど、自分で決めてよいと言われていないことは、その場で約束せず、持ち帰ります。
場面で変わるところと、終わったあと
順番は同じでも、場面によって、気をつける所が変わります。次の表は一例です。
| 場面 | 変わるところ | 進め方(一例) |
|---|---|---|
| 聞く人が一人 | 相手の反応が見えやすい | 区切りごとに質問を受ける。相手が話し始めたら、説明を止めて聞く |
| 聞く人が複数 | 気にする点が人によって違う | 窓口の担当者を立てて進める。質問には一人ずつ答え、だれの質問かをメモする |
| オンライン | 表情や、うなずきが見えにくい | 画面に映すページを少なくする。区切りごとに名前を呼んで「〇〇様、ここまででいかがでしょうか」と聞く |
| 時間が、急に短くなった | 全部は話せない | 結論と、決めてほしいことを先に言う。理由は一つにしぼり、残りは資料で渡す |
| 決める人が、同席していない | 担当者が、あとで社内に説明する | 担当者が説明に使える一枚を渡す。上司から聞かれそうなことを、その場で聞く |
| 2回目以降の説明 | 前回の続きから始まる | 前回決まったことと、宿題の答えを最初に言う |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
決める人が同席していないときの材料の渡し方は、「社長に相談します」と言われたらと一人歩きできる資料にまとめています。
資料を渡すタイミング
紙の資料を先に配るか、話し終えてから渡すかに、決まりはありません。先に配ると、相手は書き込みながら聞けます。一方で、先のページを読み進めて、話と目が別の所にいる、ということも起こります。先に配るなら、「今日は、3ページと5ページを中心にお話しします」と、見る場所を先に伝えます(説明用の例です)。迷うときは、約束を決めた相手に「資料は、事前にお送りしたほうがよろしいでしょうか」と聞いて、相手に合わせます(説明用の例です)。
終わる前に、声に出して確かめる
席を立つ前に、「本日決まったことは〇〇、私の宿題は△△で、金曜までにお送りします。この理解でよろしいでしょうか」と言います(説明用の例です)。口に出すと、食い違いがあれば、その場で直してもらえます。
帰ってから、その日のうちに
記録するのは、決まったこと、出た質問(相手の言葉のまま)、宿題(だれが・いつまでに)の3つです。そのうえで、お礼と確認のメールを送ります。書き方は営業のお礼メールに、返事を待つあいだの進め方は「検討します」の後にまとめています。
迷いやすい判断と、言い間違えたあと
判断1:資料を、そのまま読み上げてよい?
読み上げてはいけない、という決まりはありません。基準は、相手が自分で読めることを、声でくり返していないかです。資料に書いてある文は、相手も目で追えます。声では、資料に書いていない「御社の場合は」を足します。数字や条件など、間違えられない所は、資料を指さしながら読んで構いません。
判断2:話している途中で、質問が入ったら?
基準は、短く答えられるかどうかです。一言で答えられるなら、その場で答えます。相手の疑問が残ったまま先へ進むと、そのあとの話が耳に入りにくくなるからです。長くなる質問なら、「そのご質問には、このあとの3ページ目でお答えします」と、いつ答えるかを伝え、質問をメモします(説明用の例です)。あとで、答えたかどうかを自分から確かめます。
判断3:時間が足りなくなりそうなら?
早口にするのではなく、言うことを減らします。理由の2つ目、3つ目を「資料の5ページにまとめています」と渡し、「お願い」に進みます(説明用の例です)。時間をこえそうなときは、「お約束の時間になりますが、あと5分いただいてもよろしいでしょうか」と、相手に決めてもらいます(説明用の例です)。黙って延ばすと、相手は次の予定を気にしながら聞くことになります。
判断4:緊張で、言うことが飛んだら?
緊張をなくす方法は、この記事では示せません。できるのは、戻る場所を決めておくことです。最初の30秒の文と、「今日決めてほしいこと」を、手元の紙に書いておきます。言うことが飛んだら、「失礼しました。少し整理します」と言って紙を見て、そこから話し直します(説明用の例です)。聞く人が困るのは、黙ることよりも、話がどこにいるのか分からなくなることです。
失敗のあと:数字や条件を、言い間違えた
その場では:気づいたら、すぐに直します。「先ほど、納期を2週間と申しましたが、正しくは3週間です。訂正いたします」と、間違えた内容と、正しい内容を言います(説明用の例です)。言い訳は足しません。どちらが正しいか自信がないときは、「確かめて、本日中にご連絡します」と持ち帰ります。
帰ってから気づいたら:その日のうちに、メールで訂正を送ります。相手が、間違った数字のまま社内に説明してしまう前に届けるためです。上司にも、何を言い間違えたかと、訂正を送ったことを伝えます。伝え方は営業で失敗したときにまとめています。
記録:「どの数字を、何と言い間違えたか」「原因(資料を見ずに言った、など)」「次は、数字は資料を指さして読む」と、次の行動まで書きます(説明用の例です)。
今日やることは一つです。次に客先で話す提案一件について、最初の30秒で言う文を書き、声に出して時間を計ってください。
画面ごしに提案を話すときの準備は、オンライン商談の準備と進め方にまとめています。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
話す提案の資料、相手の名前と役割が分かるメモ、時間を計れるもの(時計やスマートフォン)。
記入例を見る(説明用)
聞く人と、もらえる時間=A社 総務の佐藤様と、上司の課長(お名前は未確認。当日、名刺をいただく)。時間は30分と聞いている/今日、決めてほしいこと=2つの案のうち、どちらで見積もりを作るか/最初の30秒で言う文=「本日は、前回伺った『月末の集計に時間がかかる』というお困り事について、2つの案をお持ちしました。結論から申しますと、A案をおすすめします。理由を10分ほどでご説明し、最後に、どちらの案で見積もりを作るかを決めていただければと思います」。声に出して計ったら、30秒に収まった/出そうな質問3つと、答え=費用はいくらか→概算は資料の4ページ。正式な金額は見積もりで出す。いつから使えるか→未確認。先輩に聞いて、当日までに答えを用意する。今のやり方と比べて何が変わるか→資料の3ページの表で答える/終わったあとの記録=話したあとに書く。決まったこと、宿題、だれが・いつまでに、の3つ。(すべて説明用の例です)
CHECK
ここまでできたら、次へ。
最初の30秒で言う文を、声に出して言えましたか。話し終えたあとは、決まったことと宿題を、その日のうちに書きます。資料そのものを直したくなったら、提案書や営業資料の記事に進んでください。
うまく進まなかったときは?
最初の文が書けないときは、「今日、相手に決めてほしいことは何か」を一つだけ書いてください。それが決まらないなら、話す前に、先輩か上司に「今回の説明で、何を決めていただくのがよいでしょうか」と聞きます。時間が足りないと分かったら、話すことを増やすのではなく、理由を一つ減らします。