NOTE 156 · 営業の実践ノート
お断りメールの書き方:断る前に確かめることと、場面別の文例、断られたときの返事
公開:2026年10月4日
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お断りメールは、「お礼→結論→短い理由→代わりの案や次の機会→結び」の順に書きます。相手は、返事を待つあいだ、次の予定を決められずにいます。受けられないことを、はっきり、早く伝えることが、相手の助けになります。書く前に、その件を自分で断ってよいのかを、上司に確かめます。
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こんなときに 取引先からの値引きや納期の依頼、誘い、提案を受けられず、どう書けば角が立たないか迷うとき。
- 1
自分で断ってよい件かを、上司に確かめる
- 2
断る範囲(全部か、一部か、今回だけか)を決める
- 3
お礼→結論→短い理由→代わりの案→結びの順に書く
- 4
送ったあと、相手の返事と次の予定を記録する
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
「断る」「辞退」「遠慮」「見送る」の意味:辞書で確かめる
取引先から、値引きを頼まれた。納期を早めてほしいと言われた。会食に誘われた。受けられないと分かっていても、どう書けばよいかで手が止まります。きつく書けば関係が悪くなりそうで、やわらかく書けば伝わらない気がします。
お断りメールでよく使う言葉を、辞書で確かめます。
| 言葉 | 辞書の語釈 |
|---|---|
| 断る | 「相手の申し出などに応じられないことを告げる。拒絶する。辞退する。」(デジタル大辞泉「断る」) |
| 辞退 | 「勧められたことを遠慮して断ること。また、自分の既得の地位・権利などを遠慮して放棄すること。」(デジタル大辞泉「辞退」)/「へりくだる気持から命令や依頼などを受けないで引きさがること。自分にはふさわしくないとしてことわること。また単に、ことわること。」(精選版 日本国語大辞典「辞退」) |
| 遠慮 | 「人に対して、言葉や行動を慎み控えること。」(デジタル大辞泉「遠慮」)/「辞退すること。また、ある場所から引き下がること。」(デジタル大辞泉「遠慮」) |
| 見送る | 「やりすごす。さしひかえる。」(デジタル大辞泉「見送る」)/「今、事を行うのは不利と考えて、そのままにしておく。」(デジタル大辞泉「見送る」) |
| 見合わせる | 「事情を考慮し実行するのを差し控えてようすを見る。」(デジタル大辞泉「見合せる」) |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
語釈から言えるのは、次の範囲です。
- 断るは、応じられないことを告げる言葉。語釈には「拒絶する」も「辞退する」も並んでいて、幅があります。
- 辞退は、勧められたことを、遠慮して、またはへりくだる気持ちから受けないこと。誘いや、見積の依頼を受けないときに合います。
- 遠慮には、慎み控える意味と、辞退する意味の両方があります。
- 見送る・見合わせるは、今は行わずにおく、差し控える、という意味。語釈に「拒絶」という言葉は入っていません。
どの言葉が失礼で、どの言葉なら失礼でない、という決まりは、辞書の語釈には書かれていません。相手や会社の習慣に合わせます。ただ、語釈の違いから、一つ気をつけたいことがあります。「見送る」「見合わせる」は、今はしない、という意味なので、相手が「では、次はあるのだな」と受け取ることがある点です。次の予定がないなら、そう読める言葉だけで終えないようにします。
文の中でよく添える「あいにく」は、「期待や目的にそぐわないさま。都合の悪いさま。」(デジタル大辞泉「生憎」)と説明されています。相手の期待に添えないことを、先に知らせる言葉です。
断る前に確かめる3つ:自分で断ってよい件か
書き始める前に、次の3つを確かめます。
1. 自分で断ってよい件か
値引き、納期、見積を出すかどうかは、会社として決めることです。営業が一人で「できません」と返すと、会社が受けられたはずの注文を、失うことがあります。逆に、一人で「できます」と返すのと同じくらい、勝手な判断になります。
上司には、相手の依頼の文をそのまま見せて、「A社から、この依頼が来ました。受けられないと思いますが、お断りしてよいですか。代わりに出せる案はありますか」と聞きます(説明用の例です)。次の表は、確かめる相手の例です。
| 頼まれた・誘われたこと | 確かめる相手(一例) | 確かめること |
|---|---|---|
| 値引き | 上司 | 断ってよいか。出せる条件が、ほかにあるか |
| 納期の短縮 | 上司、出荷や製造の担当 | どこまでなら早められるか。分けて納められるか |
| 見積の依頼 | 上司 | 出さないと決めてよいか。理由をどう伝えるか |
| 取引先からの会食・ゴルフの誘い | 上司 | 会社の決まりで、受けてよい誘いか。誰が出るか |
| 営業を受けた(売り込みの電話やメール) | その商品を決める担当の人 | 自分が返事をしてよい件か |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
2. どこまでを断るのか
全部を断るのか、一部なら受けられるのか、今回だけ受けられないのか。ここがあいまいだと、文もあいまいになります。「水曜に全部は無理。半分なら出せる」のように、受けられない所と受けられる所を、一行で書いてみます(説明用の例です)。
3. 代わりに出せるものがあるか
別の日、別の数量、別の商品、別の担当者。代わりの案があると、相手は次の一歩を決められます。案が無いときは、無理に作りません。出せない案を書くと、もう一度断ることになります。
書く順番:お礼→結論→理由は短く→代わりの案や次の機会→結び
- お礼。頼んでくれたこと、誘ってくれたことへのお礼を、一文で書きます。相手は、こちらを選んで声をかけています。
- 結論。受けられないことを、一文で書きます。ここをぼかすと、相手は返事を待ち続けます。
- 理由は短く。相手が納得するのに要る分だけ書きます。社内の事情を長く書くと、言い訳に読めます。
- 代わりの案や、次の機会。出せる案があれば書きます。次も声をかけてほしいなら、そう書きます。
- 結び。期待に添えないことへのおわびを、一文で添えます。
結論を2番目に置くのは、相手がいちばん知りたいことだからです。理由を先に長く書くと、相手は最後まで読まないと、受けてもらえるのかどうかが分かりません。
惜しい例
お世話になっております。ご依頼の件ですが、現在、社内がたいへん立て込んでおりまして、製造のほうとも相談したのですが、なかなか難しい状況でございます。引き続き検討いたしますので、何卒よろしくお願いいたします。
説明用の例です。ていねいですが、受けられるのか、受けられないのかが書かれていません。「難しい状況」「引き続き検討」と読んだ相手は、まだ可能性があると考えて、待ちます。ほかの手を打つのが遅れて、後で困るのは相手です。
良い例
A社 佐藤様
お世話になっております。納期のご相談をいただき、ありがとうございます。
確認しましたところ、水曜に全数をお納めすることは、いたしかねます。製造の日程の都合によるものです。
代わりに、水曜に半数、金曜に残りの半数をお納めすることでしたら可能です。
ご希望に添えず、申し訳ございません。分けてお納めする案でよろしいか、明日の午前中までにお聞かせいただけますでしょうか。
これも説明用の例です。お礼、結論、短い理由、代わりの案、結びの順になっています。相手は、水曜に全部は届かないと分かり、半分で足りるかどうかをすぐに考えられます。納期の内訳の考え方はリードタイムとはにまとめています。
結びの「申し訳ございません」の使い方は「申し訳ございません」の意味と使い方、先に許しを願う「ご容赦ください」は「ご容赦ください」の使い方で説明しています。
場面別の文例
ここからの文例は、すべて説明用の例です。どれも、上司に確かめたあとで送る前提で書いています。
1. 値引きの依頼を断る
お見積について、ご相談をいただき、ありがとうございます。
社内で検討いたしましたが、お出しした金額からのお値引きは、いたしかねます。
数量を増やしていただく場合の金額でしたら、あらためてお出しできます。ご希望がありましたら、お知らせください。
ご期待に添えず、申し訳ございません。
「社内で検討いたしましたが」は、実際に上司と話したあとにだけ書きます。代わりの案も、上司が認めたものだけです。見積を送る前の確かめは見積書を送る前に確認する7項目にまとめています。
2. 納期の短縮を断る
上の「良い例」が、この場面です。代わりの案が無いときは、「金曜のお届けが、最短となります」のように、できることを言い切って終えます。
3. 見積の依頼を辞退する
このたびは、お見積のご依頼をいただき、ありがとうございます。
社内で検討いたしましたが、ご指定の仕様は、弊社では対応しておらず、今回のお見積は辞退させていただきます。
せっかくお声がけいただいたにもかかわらず、申し訳ございません。対応できる内容のご相談がありましたら、またお声がけいただけますと幸いです。
辞書の「辞退」は、勧められたことを遠慮して断ること、でした。見積の依頼を受けないときに合う言葉です。出さないと決めたら、早く伝えます。相手は、ほかの会社に頼む時間が要ります。相見積もりの流れは相見積もりとはで説明しています。
4. 取引先からの会食やゴルフの誘いを断る
お誘いいただき、ありがとうございます。
あいにく、その日は先約があり、今回は参加を見送らせていただきます。
お声がけいただき、うれしく思っております。またの機会がありましたら、ぜひお願いいたします。
最後の一文は、次も誘ってほしいときにだけ書きます。会社の決まりで受けられない誘いなら、「先約」のような別の理由を作らず、「社内の決まりにより、ご遠慮しております」と書くかどうかを、上司に相談します。社内の先輩からの誘いへの返事はカラオケに誘われたら、ゴルフに参加すると決めたあとの準備は接待ゴルフ・社内コンペに初めて呼ばれたらにまとめています。
5. 営業を受けたとき(売り込みを断る)
ご案内をいただき、ありがとうございます。
社内で確認しましたが、現在のところ、導入の予定はございません。
今回は、お見送りとさせてください。必要になりました際は、こちらからご連絡いたします。
営業をしていると、自分が営業を受ける側になることもあります。「必要になったら、こちらから連絡する」と書くと、相手は、追いかけの連絡をしなくてよいと分かります。自分が決める担当でなければ、返事をする前に、担当の人に渡します。
断られたときの返事:お礼と、次に連絡してよいかの確認
営業をしていると、断られる場面は何度もあります。断りのメールが届いたら、返事を書きます。書くのは、次の3つです。
- お礼。検討してくれたこと、返事をくれたことへ。
- 受け取ったこと。「承知いたしました」と、結論をそのまま受け取ります。
- 次に連絡してよいかの確認。よいか・いつごろがよいかを、相手に決めてもらいます。
惜しい例:「承知いたしました。ただ、条件を見直せば、ご検討いただける余地はありますでしょうか。来週、あらためてお電話いたします」
良い例:「お返事をいただき、ありがとうございます。今回は見送りとのこと、承知いたしました。半年ほど先に、あらためてご案内をお送りしてもよろしいでしょうか。ご不要でしたら、その旨お知らせください」
どちらも説明用の例です。惜しい例は、相手の結論を受け取らず、連絡の予定をこちらで決めています。良い例は、結論を受け取ったうえで、次に連絡してよいかを相手に聞き、「不要」と答える道も残しています。
「不要です」と返ってきたら、それ以上は連絡しません。言われた日と言葉を記録します。断られた理由の聞き方は「ご検討のほどよろしくお願いいたします」の使い方、受注にならなかった案件の振り返りは失注直後の振り返りシートにまとめています。
迷いやすい判断と、あいまいに書いて誤解されたあと
判断1:メールで断ってよい?電話のほうがよい?
公的な決まりは見当たりません。基準は、相手がどれだけ急いでいるかと、相手がどの方法で頼んできたかです。メールで来た依頼には、メールで返して構いません。相手が今日・明日の予定を決めようとしているなら、先に電話で結論を伝え、そのあとメールで同じ内容を送ります。記録が残り、言った・言わないの行き違いが減ります。
判断2:「今回は」と書いてよい?
基準は、次があるかどうかです。条件が変われば受けられる、次の機会には参加したい、というときは「今回は」と書きます。この先も受ける予定がないのに「今回は」と書くと、相手はもう一度、同じ依頼をしてきます。そのときは、「現在のところ、予定はございません」のように、今の状態を書きます。
判断3:断ったあと、もう一度同じことを頼まれたら?
自分の中で答えを変えず、もう一度上司に伝えます。相手の事情が変わっているかもしれないからです。「A社から、もう一度、値引きの相談がありました。今回は『他社と比べている』とのことです」と、新しく聞いたことを添えます(説明用の例です)。答えが同じなら、同じ結論を、前より短く返します。理由を足していくと、言い訳が増えていくように読めます。
判断4:上司から「断っておいて」とだけ言われたら?
そのまま書き始めず、3つを聞きます。「全部をお断りしますか、一部ならお受けできますか」「理由は、どこまで書いてよいですか」「代わりに出せる案はありますか」。書いた文は、送る前に上司に見せます。
あいまいに書いて、誤解されたあと
「難しいかもしれません」と書いて送ったところ、相手は受けてもらえたと考えて、準備を進めていた。こうした行き違いに気づいたら、次のように動きます。
その場では:まず上司に報告します。自分が送った文と、相手の返信を見せます。そのうえで、相手には電話で、早く伝えます。「◯日にお送りしたメールの書き方が、分かりにくいものでした。申し訳ございません。お受けできない、という意味でした」と、どのメールの・どこが・正しくはどうかを言います(説明用の例です)。
相手がすでに進めていた分をどうするかは、自分で約束しません。「いったん持ち帰り、本日中にご連絡します」と伝え、上司と決めます。電話のあと、同じ内容をメールでも送ります。おわびの文の組み立てはお詫びメールの書き方、報告の順番は営業で失敗したときにまとめています。
後の記録:送った文のどこが、どう読めたのかを書きます。「『難しいかもしれません』と書いた。相手は『できるかもしれない』と読んだ。次からは、結論の一文に『いたしかねます』か『可能です』のどちらかを書く」のような形です(説明用の例です)。
今日やることは一つです。いま断らなければならない一件について、自分で断ってよいかを確かめ、結論の一文と、代わりの案を一つ書いてください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
相手からの依頼や誘いのメール(または電話のメモ)、上司に確かめた答え、代わりに出せる案のメモ。
記入例を見る(説明用)
断る相手と、頼まれた・誘われた内容=A社の佐藤様。メールで「来週の金曜の納品を、水曜に早めてほしい」と頼まれた/自分で断ってよい件か=自分では決められない。課長と、出荷の担当に確かめた。水曜に全部を納めることはできない。半分なら水曜に出せる、との答え/結論の一文=「水曜に全数をお納めすることは、いたしかねます。」/短い理由と、代わりの案=理由は「製造の日程の都合」。代わりの案は「水曜に半数、金曜に残りの半数をお納めする」/結びと、次にやること=「ご希望に添えず、申し訳ございません。分けてお納めする案でよろしいか、明日の午前中までにお聞かせいただけますでしょうか」と書く。佐藤様の返事を受けて、出荷の担当に伝える。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
自分で断ってよい件かを確かめた答えが書いてあり、結論の一文が「受けられない」とはっきり読め、代わりの案か、次の機会についての一文がある。
うまく進まなかったときは?
自分で断ってよいか分からなければ、上司に「A社からの依頼を、お断りしてよいですか」と、依頼の文を見せて聞く。結論の一文が書けなければ、「何が・できない」を主語と述語だけで書いてみる。代わりの案が無ければ、無理に作らず、お礼と結論と結びだけで送る。