NOTE 132 · 営業の実践ノート
「ご理解賜りますようお願い申し上げます」の意味と使い方:理由を先に書き、一方的に聞こえないようにする
公開:2026年10月3日
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「理解」は、辞書に「他人の気持ちや立場を察すること。」という意味が載っています。「賜る」は、「もらう」の謙譲語です。「ご理解賜りますようお願い申し上げます」は、「こちらの事情を察していただけますよう、お願いします」と、あらたまって述べる結びの文です。値上げや仕様の変更など、相手に負担が出る知らせで使われます。この記事では、似た言い方との違いと、理由を先に書いて一方的に聞こえないようにする書き方を、辞書の語釈と説明用の例でまとめます。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに 値上げ、仕様の変更、休業、受けられない依頼を伝える文面で、「ご理解賜りますようお願い申し上げます」と結んでよいか、ほかの言い方とどう違うかで迷うとき。
- 1
何が・いつから変わるかを、一文で書く
- 2
会社が決めた理由を、そのまま書く
- 3
相手に出る影響と、相手ができることを書く
- 4
負担へのお詫びを書き、結びの形を一つ選ぶ
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
「ご理解賜りますようお願い申し上げます」の意味を、辞書で確かめる
値上げのお知らせや、休業の案内の最後に、「何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます」と書いてある。会社の文書でよく見る結びです。意味を知らずに写すと、合わない場面にも使ってしまいます。言葉を分けて確かめます。「 」の中は、辞書と資料の文をそのまま写したものです。
「理解」は、デジタル大辞泉「理解」に、意味が分けて載っています。1番目は「物事の道理や筋道が正しくわかること。意味・内容をのみこむこと。」、2番目は「他人の気持ちや立場を察すること。」です。2番目の用例は「彼の苦境を理解する」です。
「賜る」は、デジタル大辞泉「賜る」の1番目に、「「もらう」の意の謙譲語。目上の人から物などをいただく。ちょうだいする。」とあります。「ご理解を賜る」は、「理解をいただく」を、あらたまって言った形です。
結びの「お願い申し上げます」は、文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日・文化庁)が、謙譲語Ⅰの一般的な形の主な例に挙げている「お(ご)……申し上げる」の形です(指針27ページ)。「お願いいたします」との違いは、「よろしくお願いいたします」の意味と使い方にまとめています。
合わせると、「ご理解賜りますようお願い申し上げます」は、「こちらの事情を察していただけますよう、お願いします」と、あらたまって述べる文です。
ここで、「理解」の1番目の意味が大事になります。事情を察してもらうには、その前に、相手が中身をのみこめていなければなりません。何が変わるのか、なぜなのかが書かれていない文面で「ご理解を」と結ぶと、相手は、分かる材料がないまま、分かってくれと言われた形になります。理由を先に書くという、この記事の中心は、辞書の語釈から出てくることです。
なお、指針の全文を検索しましたが、「賜る」という言葉は出てきませんでした。使ってよい相手や場面を決めた公的な説明は、見当たりません。
使う場面と、合わない場面
この結びが使われるのは、こちらの都合で、相手に不便や負担が出る知らせです。次の表は一例です。
| 場面 | 相手に出る負担 | 結びの前に書くこと |
|---|---|---|
| 値上げ(価格の改定) | 支払いが増える | いつの注文分からか。理由。新しい価格を見られる場所 |
| 仕様の変更 | 使い方や、置き場所を変える必要がある | 変わる点と、変わらない点。相手の側ですること |
| 休業・受付時間の変更 | その間、注文や問い合わせができない | いつからいつまでか。急ぎのときの連絡先 |
| 対応できないことの案内 | 希望した対応を受けられない | 受けられない理由。代わりにできること |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
四つとも、こちらの事情で、相手に我慢を頼んでいます。合わない場面もあります。
- こちらの誤りで、迷惑をかけたとき。納期に遅れた、金額を間違えた、という場面で使うと、詫びる側が、「こちらの立場を察してください」と頼む文になります。先に書くのは、お詫びと、事実と、これからの対応です。順番は、お詫びメールの書き方にまとめています。結びは、「重ねてお詫び申し上げます」などのお詫びの形にします。
- 相手が、選べる話のとき。提案や見積は、相手が良いか悪いかを決める話です。「ご理解」ではなく、「ご検討」をお願いします。「ご検討のほどよろしくお願いいたします」の使い方を見てください。
「ご理解ください」「ご理解のほど」「ご理解とご協力を」「ご了承」「ご容赦」との違い
「ご理解」を使った結びには、いくつかの形があります。頼む中身は同じで、伝わり方が違います。
| 言い方 | 伝わり方 | 合う場面(一例) |
|---|---|---|
| ご理解ください | 頼みを、相手に直接伝える。短い | 店頭の掲示や、注意書きの一文 |
| ご理解いただけますと幸いです | してもらえるとありがたい、という気持ちを述べる | 相手の不便が小さい知らせ。個別のメール |
| ご理解のほどよろしくお願いいたします | 「のほど」で、言い切りをやわらげる | 取引先の担当者へのメール |
| ご理解いただけますよう、お願い申し上げます | あらたまったお願い。「賜る」より、ふだんの言葉に近い | 担当者あての、負担をお願いするメール |
| ご理解賜りますようお願い申し上げます | 「賜る」を使った、あらたまった形 | 会社の名前で出す案内文。「お客様各位」の文書 |
| ご理解とご協力をお願い申し上げます | 察してもらうことに加えて、相手にも動いてもらう | 相手の側で、手続きや作業が要るとき |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
「ご理解ください」は、指針が尊敬語の形の例に挙げている「お(ご)……くださる(例:読む→お読みくださる,指導する→御指導くださる)」(指針24ページ)に当たります。「ご理解いただけますと」は、謙譲語Ⅰの形の例にある「お(ご)……いただく(例:読む→お読みいただく,指導する→御指導いただく)」(指針27ページ)を元にした形です。どれが正しいという公的な決まりは、見当たりません。
選ぶ基準は、文面全体の調子とそろえることです。ふだんの調子のメールの結びだけが「賜りますよう」になると、そこだけが浮いて見えます。
「ご理解とご協力を」は、相手にしてもらうことがあるときだけ
「協力」は、デジタル大辞泉「協力」に、「力を合わせて事にあたること。」とあります。相手にも、何かをしてもらう言葉です。書類の形が変わるので、新しい用紙で出してもらう、といった、相手の側の行動があるときに合います。
「ご協力」と書くなら、その前に、してほしいことを一文で書きます。
「ご了承」「ご容赦」との違い
辞書の語釈を並べます。語釈は、デジタル大辞泉からの引用です。
| 言葉 | 語釈 | 相手にお願いしていること |
|---|---|---|
| 理解 | 理解の2番目:「他人の気持ちや立場を察すること。」 | こちらの事情や立場を、察してもらう |
| 了承 | 了承:「事情をくんで納得すること。承知すること。承諾。」 | 事情をくんで、納得して受け入れてもらう |
| 容赦 | 容赦の1番目:「ゆるすこと。大目に見ること。」 | 行き届かない点を、許してもらう |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
「了承」の語釈には、「承諾」が入っています。「理解」の語釈には、入っていません。相手の返事が要る話では、結びを「ご理解」にするだけでなく、「◯月◯日までに、ご回答をお願いいたします」と、返事を別に頼みます(説明用の例です)。返事が要るかどうかは、上司に確かめます。
どれが丁寧かを決めた説明は、辞書にも指針にもありませんでした。「ご了承」のくわしい使い方は「ご承知おきください」の意味と使い方に、「ご容赦」は「ご容赦ください」の意味と使い方にまとめています。
理由を先に書く:一方的に聞こえないようにする順番
相手に不利益のある知らせは、書き方によって、「決まったので従ってください」と聞こえます。相手が知りたいことが書かれていないまま、「ご理解を」で終わっているときです。次の順に書きます。
- 何が、いつから変わるかを書く。「◯月◯日(◯)のご注文分から」のように、日付と、何を基準にした日かを書きます。
- 理由を書く。会社が決めた説明を、そのまま書きます。自分で言葉を足したり、作ったりしません。
- 相手に出る影響と、変わらないことを書く。変わる点だけを書くと、相手は「ほかも変わるのか」と不安になります。「品質と納品の日数は、これまでと同じです」のように、変わらないことも書きます(説明用の例です)。
- 相手ができることを書く。問い合わせ先、質問の期限、説明に伺えること、代わりの方法などです。相手の側に次の一手があると、文面は一方的になりにくくなります。
- 負担をかけることへのお詫びを書く。「ご負担をおかけすることとなり、申し訳ございません」と、一文書きます。
- 結びで、お願いする。前の章の表から、文面の調子に合う形を一つ選びます。
指針は、人に何かを頼むことについて、こう書いています。「相手に負担を掛けているのだ,という意識を持って,その気持ちを表明することが,相手に対してより配慮した表現になると言えるだろう。」(指針49ページ)。上の5番目は、この考え方に当たります。
次の三つは、どれも説明用の例です。
惜しい例1:「◯月◯日より、価格を改定いたします。ご理解賜りますようお願い申し上げます。」
惜しい例2:「諸般の事情により、受付時間を変更いたします。あしからずご理解ください。」
良い例:「[理由:会社が決めた説明]のため、◯月◯日(◯)から、お電話での受付時間を変更いたします。メールでのご注文は、これまでどおりお受けします。お急ぎの際は、担当の[氏名]まで直接ご連絡ください。ご不便をおかけしますが、ご理解いただけますよう、お願い申し上げます。」
惜しい例1は、理由も、相手ができることも書かれていません。あらたまった結びは、中身の足りなさを補ってはくれません。惜しい例2の「諸般の事情により」は、理由を書いていないのと同じです。
良い例は、変わること、変わらないこと、急ぎのときの方法を書いてから、お願いしています。誰に、どの順で伝えるかは、上司と決めます。
例:個別のメールと、「お客様各位」の案内文
次の例は、すべて説明用の例です。[ ]と◯は、自分の内容に置き換えます。どちらも、会社として決めたことを伝える文面です。文面と送る時期は、上司の指示に合わせます。
例1:個別のメール(値上げの案内のあと、据え置きの希望に添えないと伝える)
値上げを最初に知らせるメールの例は「何卒」の意味と使い方に、「お客様各位」あての値上げの案内文の例は「ご愛顧」の意味と使い方に載せています。ここでは、その後の場面を扱います。取引先から「今の価格のままにできないか」と相談があり、上司と相談した結果、応じられないと決まった場面です。
件名:価格改定についてのご相談へのお返事([自社名] [氏名])
A社 佐藤様
いつもお世話になっております。[自社名]の[氏名]です。
先日は、価格改定の件で、率直なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
いただいたご希望を、社内で検討いたしました。[理由:会社が決めた説明]のため、今回は、ご希望に添うことができませんでした。申し訳ございません。
改定後の価格は、先日お送りした価格表のとおりです。適用は、◯月◯日(◯)のご注文分からです。それより前のご注文分は、これまでの価格で承ります。
ご負担を抑える方法として、[会社が決めた代わりの案]をご用意できます。よろしければ、あらためてご説明に伺います。
ご負担をおかけするお願いで、心苦しく存じます。何卒ご理解いただけますよう、お願い申し上げます。
[署名]
話を聞いたことへのお礼、結論と理由、変わらないこと(それまでの注文分)、相手ができること、お願い、の順です。理由も、代わりの案も、会社が決めたものだけを書きます。自分で値引きや特別な条件を約束しません。結びは、ふだんの調子のメールに合わせて、「ご理解いただけますよう」にしています。
例2:「お客様各位」の案内文(電話の受付時間の変更)
お客様各位
平素は格別のお引き立てを賜り、厚くお礼申し上げます。
このたび、[理由:会社が決めた説明]のため、お電話での受付時間を、下記のとおり変更させていただきます。
変更日:◯月◯日(◯)から
変更後の受付時間:◯時から◯時まで(これまでは、◯時から◯時まで)
メールとファクスでのご注文は、これまでどおり、終日お受けいたします。お急ぎの際は、担当者まで直接ご連絡ください。
お客様にはご不便をおかけすることとなり、誠に申し訳ございません。
何卒ご理解賜りますよう、お願い申し上げます。
全員に同じ文面が届くので、全員に当てはまることだけを書いています。書き出しが「賜り」というあらたまった形なので、結びも「賜りますよう」でそろえています。あて名の「各位」は各位の使い方、書き出しの言葉の選び方と休業の案内文の例は「ご愛顧」の意味と使い方にあります。
迷いやすい判断と、送ったあと
判断1:取引先の担当者あてのメールに、「賜りますよう」は重すぎる?
使ってはいけない、という説明は、辞書にも指針にもありません。基準は、文面のほかの部分と、調子がそろっているかです。結びだけが急にあらたまって聞こえるなら、「ご理解いただけますよう、お願い申し上げます」にします。
判断2:会社から、理由の説明が出ていないときは?
理由を、自分で作りません。思いついた理由を書くと、後で会社の説明と食い違ったときに、相手は、どちらを信じればよいかが分からなくなります。
上司に、「A社の佐藤様に理由を聞かれたら、どう説明すればよいですか」と聞きます。答えをもらうまでは、相手に「理由は、確認して、◯日までにお答えします」と伝えます(説明用の例です)。
判断3:相手から「理解できない」「納得できない」と返ってきたら?
「ご理解」は、お願いです。相手が納得しないこともあります。言い返したり、同じ文面をもう一度送ったりしません。
まず、相手の言葉を、そのまま書き留めます。「どの点が、いちばんお困りでしょうか」と聞きます。困っているのが、金額か、時期か、知らせ方かで、上司と相談することが変わります。その場で、「では、特別に」と約束することはしません。「いただいたお話を、社内で相談し、◯日までにお返事いたします」と伝え、上司に、相手の言葉のまま報告します(説明用の例です)。苦情として受けたときの聞き取りの項目は、クレーム対応の基本にまとめています。
失敗1:理由を書かずに送り、相手から「急に言われても困る」と電話が来た
その場では:「ご説明が足りず、申し訳ございません」と、知らせ方が足りなかったことを先にお詫びし、理由と、相手ができることを伝え直します。答えられない質問は、いつまでに答えるかを約束します。電話の後、話した内容をメールで残します。
後の記録:「変わることと日付だけを書いて送った。次からは、理由・変わらないこと・相手ができることを書いてから、結びを書く」と残します(説明用の例です)。
失敗2:こちらの誤りなのに、「ご理解賜りますよう」で結んでいた
その場では:上司に報告し、お詫びを伝え直すかどうかを決めます。伝え直すなら、「先ほどのメールは、お詫びの言葉が足りませんでした。申し訳ございません」と、短く書きます(説明用の例です)。
後の記録:「値上げの案内の文面を、お詫びのメールに使い回した。次からは、原因がこちらの誤りか、会社の決定かを、書く前に一行で書く」と残します(説明用の例です)。
今日やることは一つです。相手に負担が出る知らせを一件選び、何が・いつから変わるか、理由、相手ができることを書いてから、結びの形を一つ決めてください。文面は、送る前に上司に見てもらいます。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
会社が出した通知文や、上司から聞いた説明のメモ。変わる日付。問い合わせを受ける窓口の名前と連絡先。
記入例を見る(説明用)
何が、いつから変わるか=電話での受付時間が短くなる。◯月◯日(◯)から/理由(会社が決めた説明のとおりに)=[会社が決めた説明]。上司から受け取った通知文のとおりに写す。自分の言葉で足さない/相手に出る影響と、変わらないこと=夕方に電話で注文していたお客様は、その時間に電話がつながらなくなる。メールとファクスでの受付は、これまでどおり/相手ができること(問い合わせ先・期限・代わりの方法)=夕方の注文は、メールで受ける。急ぎのときの連絡先は未確認。今日、上司に聞く/結びの一文と、その形を選んだ理由=「ご不便をおかけしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。」お客様全体に出す案内文で、会社としてのあらたまった文書だから。担当者あての個別のメールは「ご理解いただけますよう、お願い申し上げます」にする。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
何が・いつから変わるか、会社が決めた理由、相手に出る影響と相手ができることが、結びより前に書いてあり、結びの形が一つに決まっている。
うまく進まなかったときは?
理由が書けなければ、自分で作らず、上司に「お客様には、理由をどう説明すればよいですか」と聞く。相手ができることが思いつかなければ、「この知らせを受けた相手が、最初に困ることは何か」を一つ書き、その答えを上司に聞く。結びの形で迷ったら、会社が過去に出した同じ種類の文書を見せてもらう。