NOTE 91 · 営業の実践ノート
「ご無沙汰しております」の意味と使い方:目上への形・返事・久しぶりのメールと電話の例
公開:2026年10月3日
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「ご無沙汰しております」は、しばらく訪問も連絡もしていなかった相手に、そのことをわびる気持ちをこめて言うあいさつです。辞書の語釈に「長い間」「長らく」とあるだけで、何か月から使う、という決まりは見当たりません。あいさつは一文で済ませ、続けて「前にどの件で関わったか」と「今日の用件」を書くと、相手は思い出してから読み進められます。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに しばらく連絡していない取引先へ、メールや電話をすることになったとき。
- 1
相手と最後にやり取りした時期と、用件を確かめる
- 2
あいさつの言葉を一つ選ぶ
- 3
前のつながりを一文、今日の用件を一文で書く
- 4
相手の担当や連絡先が変わっていないかを確かめてから送る
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
「ご無沙汰しております」の意味:辞書で確かめる
半年ほど連絡していなかった取引先に、メールを書くことになった。書き出しを「お世話になっております」にするか、「ご無沙汰しております」にするか、「お久しぶりです」にするかで、手が止まる。この記事は、その迷いを扱います。
先に、言葉の意味を辞書で確かめます。コトバンクに載っている二つの辞書(デジタル大辞泉、精選版 日本国語大辞典)を引きました。「 」の中は、辞書の文をそのまま写したものです。
| 言葉 | 辞書の語釈 | 語釈から言えること |
|---|---|---|
| 無沙汰 | 「長い間訪問や音信をしないこと。」(デジタル大辞泉「無沙汰」の1番目)/「訪問や音信などをしないでいること。長い間挨拶や便りを怠って礼儀に反すること。」(精選版 日本国語大辞典の4番目) | 訪ねていない、連絡していない、という状態を指す言葉 |
| 御無沙汰 | 「相手を敬って、その人への「無沙汰」をいう語。あなたさまへの無沙汰の意。長らく訪ねなかったり、便りをしないままでいたりすること。また、それをわびるあいさつに用いる語。」(デジタル大辞泉「御無沙汰」) | 相手を敬う言い方で、わびるあいさつにも使う |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
「沙汰」には、「便り。知らせ。音信。」(デジタル大辞泉「沙汰」の3番目)という意味があります。便りが無い、というのが「無沙汰」です。
語釈から分かることは二つあります。一つめは、「ご無沙汰」は、こちらから訪問や連絡をしていなかったことを指す言葉だということ。二つめは、それをわびるあいさつとして使われるということです。「久しぶりに会えてうれしい」と言うだけの言葉ではなく、「連絡をせずにいて、失礼しました」という向きが入っています。
どのくらい空いたら使う?「お久しぶりです」との違い
「何か月空いたら、ご無沙汰と言うのか」と迷うことがあります。上の二つの辞書の語釈にあるのは、「長い間」「長らく」という言葉だけです。何日、何か月という長さは書かれていません。文化審議会答申「敬語の指針」の全文も検索しましたが、「無沙汰」という言葉は出てきませんでした。期間についての公的な決まりは、見当たりません。
決まりが無いので、自分で決める基準を持っておきます。基準は、前のやり取りを、相手がすぐ思い出せるかどうかです。
| 相手との間 | 選びやすいあいさつ(一例) | そう選ぶ理由 |
|---|---|---|
| 先週も今週もやり取りがある | お世話になっております | 連絡は続いている。わびる所が無い |
| 数週間ぶり。相手は前の件を覚えていそう | お世話になっております/先日はありがとうございました | 前の件にすぐ入れる。「ご無沙汰」と言うと、相手が「そんなに空いたか」と考えることがある |
| 数か月以上、訪問も連絡もしていない | ご無沙汰しております | こちらから連絡しなかったことを、先に一言わびる |
| 担当が変わり、自分は初めて連絡する | はじめてご連絡いたします | 自分はその相手に「無沙汰」をしていない。会社としての間は、本文で一言ふれる |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
表は決まりではなく、選び方の一例です。迷ったら、その取引先あての先輩のメールを一通見て、合わせます。ふだんの書き出しの選び方は、「お世話になっております」の使い方とメールの書き出しにまとめています。
「お久しぶりです」との違い
「久し振り」の語釈は、「前にそのことを経験してから、再び同じことになるまでに長い日数のあったこと。また、そのさま。」(デジタル大辞泉「久し振り」)です。長い日数が空いた、という事実を言う言葉で、語釈に「わびる」という言葉は入っていません。
つまり、二つの違いは、間の長さではありません。連絡しなかったことをわびる向きが、言葉の意味に入っているかどうかです。
- ご無沙汰しております:こちらから連絡や訪問をしていなかった、という向きがある。取引先や上司へのメール・電話の書き出しに使いやすい。
- お久しぶりです:間が空いた、という事実を言う。会えたことを喜ぶ場面や、同僚、以前の同期などに使いやすい。
「お久しぶりです」を目上の人に使ってはいけない、という記述は、この辞書の項目にも指針にもありませんでした。この記事でも、失礼だとは言い切りません。ただ、取引先への連絡で、こちらが間を空けていた場合は、「ご無沙汰しております」のほうが、言葉の意味が場面に合います。
取引先・上司に使う形:「しております」と「いたしております」
「ご無沙汰しております」の「おる」は、敬語の指針で謙譲語Ⅱ(丁重語)に挙げられている言葉です。謙譲語Ⅱの説明は「自分側の行為・ものごとなどを,話や文章の相手に対して丁重に述べるもの。」で、該当する語の例として「参る,申す,いたす,おる」が並んでいます(指針18ページ)。「しています」を「しております」にすると、相手に対して丁重に述べる形になります。
| 言い方 | 形 | 使いやすい相手・場面(一例) |
|---|---|---|
| ご無沙汰しています | 「ご無沙汰」+しています | 社内の先輩、やり取りの多かった相手 |
| ご無沙汰しております | 「いる」を「おる」にした形 | 取引先、上司。メールでも電話でも使いやすい |
| ご無沙汰いたしております | 「する」を「いたす」に、「いる」を「おる」にした形 | より改まった文面。あいさつ状や、長く間が空いた相手への手紙 |
| 大変ご無沙汰しております | 「大変」を足した形 | 間が長いことを、自分でも分かっていると伝えたいとき |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
「ご無沙汰いたしております」は、敬語を重ねすぎでは、と気になる人もいます。指針は、「二つ(以上)の語をそれぞれ敬語にして,接続助詞「て」でつなげたもの」を「敬語連結」と呼び、同じ種類の敬語を一つの語に二重に使う「二重敬語」とは区別しています(指針30ページ)。「いたしております」は、「する」と「いる」という二つの語を、それぞれ「いたす」「おる」にして「て」でつないだ形で、この説明に当てはまります。
指針は敬語連結について、「多少の冗長感が生じる場合もある」としたうえで、使い方が適切で意味に不合理がなければ基本的に許容される、と説明しています(指針30ページ)。なお、「いたしております」という形そのものは、指針の例には挙がっていません。
ふだんのメールと電話なら、「ご無沙汰しております」で足ります。尊敬語と謙譲語の分け方は、尊敬語と謙譲語の違いにまとめています。
久しぶりの取引先へ:メールと電話の例
あいさつは、入り口です。久しぶりに連絡を受けた相手が知りたいのは、「誰だったか」「前に何の件で関わったか」「今日は何の用か」の三つです。次の三文で組み立てます。
- あいさつと名乗り。「ご無沙汰しております。[自社名]の[氏名]です。」と書きます。間が空いているので、会社名と名前を省きません。相手は、名前だけでは思い出せないことがあるからです。
- 前のつながりを一文。いつ、何の件で関わったかを書きます。相手は、ここで思い出してから先を読めます。これが無いと、相手は自分のメールや名刺を探すことになります。
- 今日の用件を一文。何のための連絡かを書きます。あいさつだけで終わると、相手は返事に何を書けばよいか分かりません。
メールの例
社名・人名・時期・用件は、どれも説明用の例です。
- 惜しい例1:「ご無沙汰しております。その後、いかがでしょうか。」
- 惜しい例2:「ご無沙汰しております。長らくご連絡できず、誠に申し訳ございません。社内の体制が変わり、引き継ぎに時間がかかっておりました。」(用件が出てこない)
惜しい例1は、何の件が「その後」なのかが書かれていません。相手は、前のやり取りを自分で探すことになります。惜しい例2は、わびる文が続き、相手が知りたい用件にたどり着きません。
件名:保管用の棚の新しい資料をお送りします([自社名] [氏名])
[会社名] [部署名] [担当者名]様
ご無沙汰しております。[自社名]の[氏名]です。
昨年秋の展示会では、弊社の席にお立ち寄りいただき、ありがとうございました。
そのときお話のあった保管用の棚について、新しい資料ができましたので、添付にてお送りします。
今のお困りごとに合う所があるか、15分ほどお電話でお聞かせいただけないでしょうか。来週でしたら、◯月◯日(火)と◯日(木)の午後が空いております。
[署名]
良い例は、あいさつが一文、前のつながりが一文、用件が一文です。件名には、あいさつではなく用件を書いています。件名が「ご無沙汰しております」だけだと、相手は開くまで中身が分かりません。日程をお願いする書き方は、アポイントメールの書き方にあります。
電話の例
自分「[自社名]の[氏名]と申します。総務部の佐藤様は、いらっしゃいますでしょうか」
(相手が出た後)「ご無沙汰しております。[自社名]の[氏名]です。昨年の秋に、展示会でごあいさつをさせていただきました」
相手「ああ、棚の件のときの」
自分「はい、その節はありがとうございました。本日は、その棚の新しい資料ができましたので、お送りしてよいか伺いたく、お電話しました。今、2分ほどよろしいでしょうか」
やり取りは説明用の例です。電話では、相手は声だけで思い出すことになります。「ご無沙汰しております」のすぐ後に、いつ・何の件で会ったかを言い、相手が思い出すのを一拍待ちます。思い出してもらう前に用件を話し始めると、相手は「誰だろう」と考えながら聞くことになります。電話のかけ方の全体は、営業電話のかけ方にまとめています。
間が空いた理由を、どこまで書くか
基準は、相手を待たせていたかどうかです。
| 場面 | 書くこと(一例) | 理由 |
|---|---|---|
| こちらから連絡する約束は無かった | あいさつの一文だけ。理由は書かない | 「ご無沙汰しております」に、わびる向きがすでに入っている。事情を並べると、用件が遠くなる |
| 「また連絡します」と言ったまま、連絡していなかった | 「その後のご連絡ができておらず、失礼いたしました」と一文 | 相手は待っていたかもしれない。約束にふれて、短くわびる |
| 返事や資料を約束していたのに、出していなかった | おわびと、いつ出すかを先に書く | これは「ご無沙汰」ではなく、約束の遅れ。あいさつで済ませない |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
「忙しくて」「ばたばたしておりまして」という理由は、書かなくて足ります。相手から見れば、後回しにされたと読めることがあるからです。約束を守れていなかった場合のおわびの書き方は、お詫びメールの書き方にまとめています。担当が変わったときのあいさつは、担当変更のあいさつにあります。
言われたときの返事と、迷いやすい判断
相手から「ご無沙汰しております」と言われたときの返事に、決まった形はありません。よく使われる形を、一例として並べます(説明用の例です)。
| 場面 | 返事(一例) | 考え方 |
|---|---|---|
| こちらも連絡していなかった | 「こちらこそ、ご無沙汰しております」 | 間を空けたのはお互いさま、と伝える |
| 相手が連絡をくれた | 「ご連絡ありがとうございます。こちらこそ、ご無沙汰しております」 | 先に、連絡をくれたことへのお礼を言う |
| 上司や、以前の上司から言われた | 「こちらこそ、ご無沙汰しております。その節はお世話になりました」 | 前に世話になった件に、一言ふれる |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
返事でも、あいさつは一文です。続けて、相手の用件に答えます。メールへの返信の組み立ては、ビジネスメールの返信にまとめています。
判断1:先月会った相手に、「ご無沙汰しております」は使う?
基準は、相手が前の件をすぐ思い出せるかどうかです。先月の打ち合わせの続きなら、「先日はありがとうございました」のほうが、前の件にそのまま入れます。期間ではなく、それまでの付き合いの間隔と比べて決めます。
判断2:相手が自分を覚えているか、分からないときは?
覚えていない前提で書きます。「ご無沙汰しております」の後に、会社名、名前、いつ・どこで・何の件で会ったかを足します。「覚えていらっしゃいますか」と聞く形にはしません。相手が覚えていなかったとき、答えにくいからです。
判断3:名刺を交換しただけで、その後やり取りの無い相手には?
辞書の語釈は、「その人への「無沙汰」をいう語」でした。前に訪問や連絡があった相手に向けた言葉です。名刺交換だけの相手には、「◯月の展示会で、名刺を交換させていただきました」と、事実から書き始めるほうが伝わります(説明用の例です)。初めてに近い相手への書き方は、はじめましてのビジネスメールにあります。
判断4:「大変」「長らく」を足したほうが、丁寧になる?
指針には「敬語をたくさん使えば丁寧になるというわけではない。」(指針35ページ)とあります。「大変長らくご無沙汰いたしておりまして、誠に申し訳ございません」と重ねても、相手が知りたい中身は増えません。足すなら「大変」を一つだけにして、残りの文で、前のつながりと用件を書きます。
間違えたときの動きと記録
失敗1:前のつながりを、間違えて書いた
その場では:「展示会でお会いした」と書いたが、実際は先輩の同行で訪問した相手だった、という間違いです。相手から指摘されたら、「失礼いたしました。◯月にご訪問した際に、ごあいさつしておりました」と、正しい内容を言い直します。言い訳は足しません。
後の記録:「記憶で書いた。次からは、前のメールか商談メモを開いてから一文を書く」のように、原因と次の動きを書きます(説明用の例です)。メモの残し方は、商談メモ添削にまとめています。
失敗2:相手が、もうその部署にいなかった
その場では:メールが戻ってきた、電話で「異動しました」と言われた、という場面です。電話なら、「失礼いたしました。現在、◯◯の件のご担当はどなたでしょうか」と、今の担当を聞きます。新しい担当には「ご無沙汰しております」ではなく、「はじめてご連絡いたします」で始めます。
後の記録:前の担当の名前、異動を知った日、新しい担当の名前と部署を書きます。会社の顧客の記録も直し、上司に伝えます。
失敗3:あいさつだけ送って、返事が来ない
その場では:「ご無沙汰しております。その後いかがでしょうか」とだけ送った場合、相手は何を返せばよいか分かりません。同じ文をもう一度送らず、用件を一つ決めて送り直します。「先日のメールでは用件が分かりにくく、失礼いたしました。本日は、◯◯の資料をお送りしたく、ご連絡しました」と書きます(説明用の例です)。
後の記録:「用件を決めずに送った。次からは、実践シートの4つめを書いてから送る」と残します。
今日やることは一つです。しばらく連絡していない相手を一人決め、あいさつ・前のつながり・今日の用件の三文を書いてください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
その相手との前のメールや商談メモ、名刺、相手の会社のホームページ(部署名や所在地が変わっていないかを見るため)。
記入例を見る(説明用)
連絡する相手と、最後にやり取りした時期・用件=A社 総務部の佐藤様。最後のやり取りは、去年の秋の展示会のあとに資料を送ったメール。その後、こちらからは連絡していない/あいさつの言葉=取引先で、こちらから連絡していなかったので「ご無沙汰しております」にする/前のつながりを思い出してもらう一文=「昨年秋の展示会では、弊社の席にお立ち寄りいただき、ありがとうございました。」/今日の用件の一文=「そのときお話のあった保管用の棚について、新しい資料ができましたので、お送りします。」/送る前に確かめること=佐藤様が今も総務部にいるかは未確認。A社のホームページで部署名が変わっていないかを見る。前に担当していた先輩に、その後のやり取りがなかったかを今日聞く。
CHECK
ここまでできたら、次へ。
あいさつが一文で、前のつながりと今日の用件が一文ずつ書いてあり、相手の担当と連絡先を確かめてある(分からない所には「未確認」と、誰に聞くかが書いてある)。
うまく進まなかったときは?
前のつながりが思い出せなければ、前のメールと商談メモを探し、無ければ先輩に「A社の佐藤様と、最後に何の件でやり取りしましたか」と聞く。用件が書けなければ、送るのをいったん止めて、相手に伝えたいことを一つ決める。あいさつの言葉で迷うなら「ご無沙汰しております」にして、残りの二文に時間を使う。